2025.05.02
マンションの大規模修繕でローン利用できる?管理組合による借入方法も解説
マンションに長く安全に住みながら資産価値を維持するためには、定期的な大規模修繕が不可欠です。
しかし、大規模修繕には多額の費用がかかることが一般的で、毎月積み立てている修繕積立金だけでは不足してしまうケースも少なくありません。
国土交通省の調査でも、築年数の経過とともに劣化が進み、大規模修繕にかかる費用が高額になる傾向が示されています。
修繕積立金が不足した場合、必要な工事が実施できなかったり、工事内容を削減せざるを得なくなったりするリスクが生じます。
このような資金不足を補い、マンションの長期的な安全性や快適性を維持するために必要な修繕を計画通りに実施するための有効な選択肢となるのが、マンション大規模修繕ローンです。
この記事では、マンション大規模修繕にかかる費用やその資金準備方法、大規模修繕ローンの種類やメリット・デメリット、そしてローンを賢く利用するためのポイントについて詳しく解説します。
マンションの大規模修繕とは?
マンションの大規模修繕とは、建物の経年劣化に伴い、建物や設備を定期的に修繕する工事であり、長期的な安全性や快適性を維持するために行われる大規模な修繕工事を指します。
具体的には、紫外線や風雨にさらされる外壁や屋根などの劣化(ひび割れ・タイルの剥がれなど)や、耐用年数を迎えた設備の故障や不具合などを未然に防ぎ、建物の機能を維持・回復させることが主な目的です。
建物の寿命を延ばし、資産価値を維持・向上させるために非常に重要な工事であると位置づけられています。
修繕が遅れると、雨漏り発生など生活に支障が生じたり、後々の修繕費用が高額になったり、建物の寿命を縮める可能性もあります。
大規模修繕の目的と一般的な内容
大規模修繕の主な目的は、建物の寿命を延ばし、資産価値を維持・向上させることです。
また、居住者の安全性を確保し、安心して暮らせる環境を提供することも重要な目的です。
一般的な大規模修繕の内容としては、外壁の補修や塗装・屋上やバルコニーの防水工事・給排水管や設備の更新・共用部分(廊下・階段・エントランスなど)の補修や設備更新・エレベーターの改修などが挙げられます。
これらの作業は、建物の美観を回復させるだけでなく、雨風からの保護や劣化の防止をはじめ、雨漏りを防ぎ建物の劣化を遅らせる・漏水や詰まりを防ぎ生活の利便性を向上させるといった機能的な側面も持ち合わせています。
さらにバリアフリー化や省エネ対策など、時代の変化に合わせて建物の機能や性能を向上させる改修工事を行う良い機会でもあります。
修繕工事と改修工事の違い
大規模修繕に関連して「修繕工事」と「改修工事」という言葉が使われることがあります。
両者は似ていますが、目的と内容に違いがあります。
修繕工事
建物の劣化や損傷を修復し、おおむね新築時の性能まで回復させることを目的とした工事です。
老朽化や経年劣化による不具合を修理し、建物の機能を維持することが重要視されます。
例えば、外壁のひび割れ補修・防水層の再施工・給排水設備の修理などが該当します。
改修工事
建物の機能やデザインを改善し、現状よりも良くすることを目的とした工事です。
単なる修理に留まらず、設備の最新化・内装デザインの変更・エネルギー効率の向上など、建物全体の性能向上を図るための工事です。
バリアフリー化や省エネ対策なども、改修工事に含まれます。
修繕の周期と適切なタイミング
大規模修繕の一般的な周期は、12年から15年ごととされています。
ただし、これはあくまで目安であり、建物の築年数・構造・立地環境(海岸部など)・劣化状況・これまでの修繕履歴などによって適切なタイミングは異なります。
適切な修繕のタイミングを見極めるためには、定期的な建物診断が不可欠です。
専門家による診断を通じて、外壁のひび割れやタイルの浮き・コンクリートの中性化・防水層の劣化・給排水管の老朽化など、各部の劣化状況を正確に把握することができます。
雨漏りや外壁の剥がれといった目に見える劣化の兆候が現れた場合は、早急に修繕を検討するべきサインです。
計画的な修繕は、劣化が進行して大規模な工事が必要になる前に対応できるため、結果的に費用を抑えることにも繋がります。
長期修繕計画を策定し、建物の状態に応じた最適な時期に修繕を実施することが重要と言えるでしょう。
大規模修繕の対象となる範囲とは?
マンションの大規模修繕の対象は、主に共用部分です。
共用部分とは、マンション全体の住民が共同で利用するスペースを指し、その維持管理は管理組合が行います。具体的には、外壁・屋上・階段・手すり・給排水管(共用部分)・エレベーター・共用廊下・エントランス・インターホン・宅配ボックスなどが含まれます。
また共有部分ではあるものの、特定の区分所有者が使用を認められている専用使用部分も大規模修繕の対象となる場合があります。
これには、玄関扉(外側)・玄関ポーチ・サッシ・窓枠・1階の専用庭・トランクルームなどが該当します。
ただし管理規約によって異なる場合があるため、事前に確認が必要です。
一方、専有部分は各住戸の居住者が専有的に利用するスペースであり、原則としてその管理や修繕は区分所有者自身が行う責任があります。
例えば、玄関扉の内側や給排水・ガス給湯配管の専有部分にあたる箇所(枝管)、室内の床・壁・天井などが該当します。
大規模修繕にかかる費用とその内訳
マンションの大規模修繕にかかる費用は、マンションの規模・築年数・劣化状況・修繕内容によって大きく異なりますが、一般的に高額になります。
国土交通省の調査によると、大規模修繕工事回数と工事金額の割合が多い価格帯は以下のようになっています。
- 1回目:4,000万円〜6,000万円
- 2回目:6,000万円〜8,000万円
- 3回目以上:6,000万円〜8,000万円、1億円〜1億5,000万円
費用の主な内訳としては、以下のような項目が挙げられます。
- 外壁の補修や塗装…建物全体の美観と耐久性を保つために重要で、最も大きな部分を占めることが多いです。ひび割れや剥がれが多い場合は費用が増加します。
- 防水工事…屋上やバルコニー、外壁の防水層の劣化を防ぐための工事で、雨水の侵入を防ぎ建物の内部構造を保護します。使用する材料や工法によって費用が変動します。
- 給排水設備の更新…古くなった配管の更新など。漏水や詰まりを防ぎ、建物全体の衛生状態を保つために不可欠ですが、高額になることが多い項目です。
- 共用部分の設備更新…エレベーター交換、共用廊下改修、照明設備更新など。特にエレベーター交換は非常に高額になります。
- 管理費や諸経費…工事計画、監督、検査のための専門家費用や、修繕期間中の居住者対応費用などです。
その他、足場設置費用・シーリング工事・下地補修工事・タイル工事・洗浄工事・電気・水道・外溝工事なども含まれます。
大規模修繕費用の平均的な例
大規模修繕にかかる費用は、マンション全体の規模や築年数によって大きく変動します。
大規模修繕工事回数と戸あたり工事金額の割合が多い価格帯は、以下の通りです。
- 1回目:100万円〜125万円/戸
- 2回目:75万円〜100万円/戸、100万円〜125万円/戸
- 3回目以上:75万円〜100万円/戸
部屋数の少ないマンションでは、戸あたりの大規模修繕にかかる費用が大きくなるケースもあります。
例えば、10戸程度のマンションの場合、大規模修繕の費用目安は1,000万円から1,500万円程度とされています。
また、マンション全体の規模が大きい場合や劣化が激しい場合、質の高い塗装を希望する場合には、費用が1億円を超えることもあります。
費用を抑えるためのポイント
大規模修繕にかかる費用を抑えるためには、いくつかのポイントがあります。
定期的な診断と早期発見
建物の状態を定期的に診断し、劣化の兆候を早期に発見することで、大きな問題になる前に対処できます。これにより、修繕範囲を最小限に抑え、費用削減につながります。
複数業者の見積もり比較
修繕工事を行う際には、複数の業者から見積もりを取り、比較検討することが重要です。適正な価格を把握し、コスト削減の余地を見つけることができます。ただし、価格だけでなく、業者の信頼性や施工実績も確認することが大切です。
適切なタイミングでの実施
建物の状態や長期修繕計画に基づき、適切なタイミングで修繕を実施することで、劣化が進行しすぎる前に対応できます。計画的な修繕は、結果的に後々の費用増大を防ぐことになります。
修繕内容の優先順位付け
全ての修繕を一度に行うのではなく、緊急性の高い部分から順次進めることで、費用を分散させることができます。
専門家のアドバイス活用
建築士や施工業者などの専門家からアドバイスを受けることで、修繕の最適な方法やコスト削減のアイデアを得られます。
補助金や助成金の活用
国や地方自治体が提供する補助金や助成金制度を活用することで、費用負担を軽減できる場合があります。
大規模修繕の資金準備方法
マンションの大規模修繕工事にかかる費用は、主にマンションの所有者から毎月徴収している修繕積立金で賄われます。
しかし、建物の劣化状況や工事内容によっては想定よりも工事費がかかり、修繕積立金だけでは足りない可能性もあります。
修繕積立金が不足した場合の対応策としては、以下の方法が考えられます。
- 修繕積立金の一時金徴収…不足分を区分所有者から一時金として集める方法
- 大規模修繕ローンの利用…金融機関から費用を借り入れる方法
- 長期修繕計画の見直し…将来的な修繕費用を正確に予測し、修繕積立金の値上げを含めて計画を見直す方法
マンション大規模修繕ローンとは?
マンションの大規模修繕ローンとは、マンションの大規模修繕工事を実施する際に発生する費用を補うために利用できる金融商品です。
修繕積立金だけでは費用が不足する場合や、手元に現金を残しておきたい場合などに活用されます。
このローンを利用することで、必要な修繕を資金不足で遅らせることなく、計画通りに実施できることが最大のメリットです。
一般的に、銀行や信用金庫・住宅金融支援機構などの金融機関が提供しています。
大規模修繕ローンの種類
マンション大規模修繕で活用できるローン商品には、主に以下の2種類があります。
- 管理組合向けローン…マンションの管理組合が修繕費用の総額に対して融資を受ける形式です。大規模修繕の工事費用の大部分をカバーする場合に利用される
- 区分所有者個人向けローン…マンションの区分所有者が、自身が負担すべき修繕費用(一時金など)を借り入れる形式です。修繕積立金の値上げ分や一時金の支払いに個人として対応する場合などに利用される
管理組合向けローンについて
管理組合向けローンは、マンション管理組合が主体となって、大規模修繕工事の費用総額に対して融資を受ける形式です。
数千万円から数億円といったまとまった資金調達が必要な場合に利用されます。
管理組合向けローンの主な特徴としては、以下の点が挙げられます。
- 借入限度額…修繕見積金額の80%〜100%程度
- 金利…変動金利が一般的だが、住宅金融支援機構の融資は全期間固定金利
- 融資期間…5〜20年程度
修繕時期が予定より早まったり、想定を上回る費用がかかったりした場合など、修繕積立金だけで全額を賄うのが困難なケースでローンの利用が検討されます。
また商品によっては、共用部分の資金であれば幅広い用途に利用可能で、保証料が不要な場合があるなどの特徴を持つものもあります。
区分所有者個人向けローンについて
区分所有者個人向けローンは、マンションの区分所有者が、自身に按分された修繕費用(一時金や修繕積立金の値上げ分など)を借り入れる形式です。
大規模修繕工事で個人負担が100万円から数百万円単位となる場合に利用されることがあります。
収入の一時的な減少や、他の生活費との兼ね合いで修繕費用の準備が難しい場合などが想定されている商品がほとんどです。
区分所有者個人向けローンの主な特徴としては、以下の点が挙げられます。
- 借入限度額…修繕費用の個人分担金の範囲内
- 金利…固定金利が中心
- 融資期間…3〜35年程度。
マンションの共用部分リフォームに活用できる融資制度の一例
マンションの共用部分に関するリフォーム工事や耐震改修工事などの費用に利用できる融資制度があります。
マンションの戸数や規模に関わらず利用できる点が特徴です。
このような融資制度では、管理組合が申込主体となる形態(管理組合申込み)と、区分所有者が一時金などを負担する場合に個人で申し込む形態(区分所有者申込み)があります。
ここでは主に、管理組合が申請するケースについて紹介します。
対象となる工事費用には、屋上防水・外壁塗装・バルコニー補修・駐車場増設・階段や廊下の補修・オートロックの設置・エレベーター設置・内壁塗装などが含まれます。
このような融資制度の主な特徴
- 全期間固定金利…借入時点で返済額が確定するため、長期的な返済計画を立てやすく、管理組合内での合意形成も進めやすくなります。金利は民間の金融機関よりも低めに設定されている場合があります。
- 法人格の有無を問わず申込み可能:…管理組合に法人格がなくても申し込みできる制度もあります。
- 担保不要…建物や土地などの担保を提供する必要がない融資もあります。
- 特定の工事による金利優遇…一定の条件を満たすことで、金利の引き下げを受けられる制度もあります。
金利引き下げの対象となる取り組み例
以下のような取り組みを行うことで、金利の優遇が受けられる場合があります。
- 耐震改修工事…法律に基づいた計画の認定を受けた上で耐震改修を行う場合
- 浸水対策工事…電気設備の保護を目的とした止水板や防水扉の設置など、所定の基準を満たす対策を行う場合
- 省エネルギー対策工事…省エネ基準を満たす設備導入などを行う場合
- 特定の債券の積立て…管理組合向けの債券を所定の条件で積み立てている場合
- 管理計画の認定取得…マンションの管理適正化を図るための管理計画を作成し、行政の認定を受けている場合
これらの条件を満たすことで、返済負担の軽減が期待できる制度もあります。
大規模修繕ローンを利用するメリット
マンション大規模修繕でローンを利用することには、いくつかのメリットがあります。
全体として、資金不足を解消し必要な修繕を計画通りに行える点が大きな利点です。
必要な修繕に取り組める
修繕積立金だけでは大規模修繕の費用が不足する場合でも、ローンを利用することで不足分を補えるため、必要な修繕工事を遅滞なく、計画通りに実施できる点が最大のメリットです。
費用の関係で必要な工事を一部実施しなかった場合、劣化が進行してさらなるトラブル発生や資産価値の減少につながる可能性があるため、ローンを活用することでこれを回避できます。
外壁塗装や防水工事など、高額になる一般的な工事も適切なタイミングで実施できます。
手元の現金を確保できる
大規模修繕に必要な資金が手元に十分にある場合でも、ローンを利用することで手元に現金を残しておくことができます。
これにより、修繕期間中や将来にわたる予期せぬ突発的な出費や緊急事態(自然災害や大規模な設備故障など)に備えることができ、資金繰りの安定に寄与します。
賃貸物件の場合、入居率低下時にも対応できる安心感が得られます。
経営的な観点からも、手元資金を残しておくことは重要視されます。
想定外の修繕に対応できる
建物の劣化は予測できない場合もあり、長期修繕計画で想定していなかった箇所の修繕が必要になったり、劣化の進行が早く急な対応が求められたりすることも少なくありません。
このような想定外の修繕が必要になった場合でも、ローンを利用していれば資金不足で工事を後回しにすることなく、迅速に対応できることを示します。
工事を遅らせることで劣化がさらに進み、結果的に余計な出費につながるリスクを回避できます。
大規模修繕ローンを利用するデメリット
大規模修繕ローンを利用することには、メリットだけでなくデメリットも存在します。
ローンの利用を判断する際には、これらのデメリットもしっかりと理解しておくことが重要です。
利息の支払いが発生する
大規模修繕ローンは金融機関からの借入であるため、返済時には借入元本に加えて利息の支払いが発生します。
金利は比較的低めに設定されている場合が多いとはいえ、借入額が大きい場合は利息の負担も大きくなり、総支払額が増加する点がデメリットです。
長期にわたる返済期間の場合、利息の負担は無視できません。
例えば、1億円を金利1%で10年間借りた場合、約1,000万円の利息が発生すると試算されています。
修繕積立金の増額・負担増の可能性
大規模修繕工事のためにローンを利用するということは、多くの場合、修繕積立金だけでは費用が不足していることを意味します。
ローンの返済は、将来の修繕積立金から行われることが多いため、ローンの利息負担や、次回の大規模修繕に向けた資金不足を回避するために、将来的に修繕積立金の値上げが必要になる可能性があります。
ローンの返済と並行して積立が必要になるため、マンション所有者全体の費用負担が大きくなることを把握しておく必要があります。
特に管理組合向けローンの場合、利息の返済はマンション所有者全員で負担することになるため、そのぶん修繕積立金が値上げされる可能性が高まるでしょう。
修繕積立金の値上げは、居住者からの反発を招く可能性もあります。
現預金を活用するメリット・デメリットの比較
大規模修繕の資金を、ローンを利用するか、手元の現預金を活用するかは、管理組合や区分所有者にとって重要な判断です。
それぞれのメリット・デメリットを比較検討することで、最適な資金調達方法を選択できます。
現預金を活用するメリット
- 金利負担がない…ローンと異なり、利息の支払いが発生しないため、総支払額を抑えることができる
- 資金計画がシンプル…ローン手続きや返済計画の考慮が不要で、資金計画が分かりやすくなるうえ、融資審査も不要なため、スピーディーな資金調達が可能
現預金を活用するデメリット
- 手元資金の減少…多額の費用を支払うことで手元の流動資産が大きく減少し、資金繰りが厳しくなる可能性がある
- 他の緊急時に対応できる資金が不足する可能性…大規模修繕に現預金を多く使うと、自然災害や予期せぬ故障など、他の緊急事態に対応できる余裕が減る
- 運用機会の損失…手元資金を修繕に充てることで、本来であれば資産運用に回せた資金が減り、運用益を得る機会を失い、また投資用資産を現金化する必要が生じる可能性もある
現預金で対応できる十分な資金がある場合でも、今後の修繕費用や税金、その他の不測の事態に備えて、ある程度手元に現金を残しておくべきという考え方もあります。
特に、相続税対策としてローンを活用することで、借入金がマイナスとなり相続財産を圧縮できるというメリットもあります。
大規模修繕ローンの融資を受けるまでの流れ
マンション大規模修繕ローンの融資を受けるまでの流れは、金融機関の種類や管理組合の状況によって多少異なりますが、一般的な流れは以下の通りです。
融資を受けるまでに不備があると工事に支障が生じる可能性があるため、事前に流れを把握しておくことが大切です。
- STEP
金融機関に相談する
大規模修繕ローンを提供している複数の金融機関に、まずは融資について相談します。
マンションの規模や修繕計画に応じた借入条件などを確認しておきましょう。 - STEP
修繕内容・見積額を決定する
修繕内容や工事費用について、専門家や施工業者と協議し、詳細な見積もりを作成します。
- STEP
管理組合総会で決議する
大規模修繕工事の実施、工事内容、費用、そして融資を受けることについて、マンションの管理組合総会で特別多数決(議決権総数の4分の3以上など)による承認を得る必要があります。
- STEP
融資を申込む
総会での承認が得られたら、選定した金融機関に正式に融資を申し込みます。
この際、総会議事録や工事請負契約書・見積書・長期修繕計画書・管理規約・決算書類など、さまざまな書類の提出が必要です。 - STEP
融資審査
金融機関による審査が行われます。
審査では、修繕計画の妥当性、管理組合の財政状況、返済能力などが確認されます。
審査期間は金融機関によって異なりますが、融資決定まで約2〜3週間が一般的です。 - STEP
融資の決定
審査に通過すると、金融機関から融資決定の通知がなされます。
- STEP
工事の着工
融資決定後、選定した施工業者による大規模修繕工事が開始されます。
- STEP
工事の完了
工事が完了し、引き渡しが行われます。
- STEP
融資総額の決定
工事完了後、最終的な工事費に基づき、金融機関に書類(工事完了届・工事請負契約書など)を提出し、融資総額が決定されます。
これには約2週間ほどかかるのが一般的です。 - STEP
保証料の支払い・融資契約
保証会社が必要な場合は保証料を支払い、金融機関と正式な融資契約を結びます。
- STEP
借入金の受け取り
契約に基づき、金融機関から管理組合に借入金が実行されます。
一連の流れをスムーズに進めるためには、事前に必要書類を確認し、金融機関と密に連携を取ることが重要です。
ローンの選び方
大規模修繕ローンを選ぶうえで、金利は返済総額に大きく影響するため、重要な比較ポイントです。
金利を比較する際には、以下の点を考慮しましょう。
- 固定金利 or 変動金利
- 固定金利…借入期間中、金利が変わらないため、返済計画が立てやすい点がメリットで、金利変動リスクを避けたい場合に適している
- 変動金利…市場金利に連動して金利が変動し、初期金利は固定金利より低いことが多いものの、金利が上昇すると返済額が増えるリスクがある
- 実質年率で比較…表示されている年利だけでなく、手数料や保証料なども含めた実質年率で比較し、実際の負担額を正確に把握しておくことが重要
- 各種手数料・保証料の確認…金利が低くても、手数料(事務手数料など)や保証料が高い場合があるため、これらを含めた総費用で比較検討が必要
- 金利引き下げ条件の確認…ローン内容によっては、特定の工事や取り組みで金利引き下げが受けられる場合があるため、これらの条件に該当するかどうかも確認が必要
ローン返済期間の選び方
ローンの返済期間も、月々の返済負担や総返済額に大きく影響します。
返済期間が長いと月々の負担は軽くなりますが、利息が増え総返済額は多くなります。
一方、返済期間が短いと毎月の負担は重くなりますが、利息を抑えながら総返済額を減らせます。
手元資金を確保したい場合は長期返済、早期完済を目指すなら短期返済が適しています。
ただし返済期間を選ぶ際には、管理組合の財政状況・将来的な修繕積立金の収入見込み・今後の大規模修繕計画などを考慮し、無理のない返済計画を立てることが重要です。
返済シミュレーションを活用して、月々の負担額や総返済額を確認しましょう。
また金融機関によっては、返済期間に応じた金利条件を設定している場合があるため、こちらも確認が必要です。
借入上限額や手数料・保証料の確認
ローンの選び方では、金利や返済期間以外にも重要な確認事項があります。
- 借入上限額…必要な大規模修繕費用を賄える借入上限額かどうかを確認しておく
- 手数料・保証料…金利とは別に発生する手数料(事務手数料など)や、保証会社に支払う保証料の有無や金額も重要な比較要素
これらの条件は金融機関によって異なるため、複数の金融機関から見積もりを取り、比較検討することが大切です。
大規模修繕で活用できる補助金や助成金
マンションの大規模修繕には多額の費用がかかりますが、国や地方自治体によっては、大規模修繕工事に対して補助金や助成金制度を設けている場合があります。
これらを活用することで、費用負担を軽減できる可能性があるため、事前に確認しておくようにしましょう。
一般的に、大規模修繕で活用できる補助金や助成金の種類と条件は、以下の通りです。
- 省エネ改修補助金…建物の断熱性能向上や省エネルギー設備の導入(断熱材追加、高効率給湯器・LED照明設置など)に対して支給され、一定のエネルギー効率改善が見込まれることが条件
- 耐震改修補助金…建物の耐震性を向上させる工事(耐震補強、柱・梁の補強など)に対して支給され、耐震診断の結果に基づいた改修であることが条件
- バリアフリー改修補助金…高齢者や障害者のためのバリアフリー化工事(スロープ・エレベーター・手すり設置など)に対して支給され、公共性が認められることが条件
これらの補助金や助成金の条件や内容は、自治体によって異なる場合があるため、事前に各自治体のウェブサイトや窓口で詳細を確認することが重要です。
まとめ
マンションの大規模修繕は、建物の長期的な維持管理と資産価値の維持・向上に不可欠であり、多額の費用がかかります。
修繕積立金だけでは費用が不足するケースも少なくないため、大規模修繕ローンは有効な資金調達手段の一つとなります。
大規模修繕に対応したローンを利用することで、資金不足の場合でも必要な修繕を計画通りに実施でき、手元に現金を残しておけるうえ、想定外の修繕にも対応できるといったメリットがあります。
特に、必要な修繕を遅らせることで劣化が進み、将来的に費用が増大するリスクを回避できる点は重要です。
一方、ローンを利用するデメリットとして、利息の支払いが発生し総返済額が増加すること、そして修繕積立金の増額など、将来的な区分所有者の費用負担が増える可能性がある点を理解しておく必要があります。
ローンを利用するか、あるいは現預金を活用するかは、管理組合の財政状況や今後の計画、そしてリスクに対する考え方によって異なります。
現預金活用には金利負担がないメリットがありますが、手元資金が減少し、他の緊急時に対応できなくなるリスクがあります。
マンション大規模修繕でローンを検討する際には、安易な利用ではなく、全体の資金計画や長期修繕計画に基づき、メリット・デメリットを慎重に比較検討し、判断することが極めて重要です。
さまざまな金融機関のローンの種類・金利(実質年率)・返済期間・借入上限額・手数料・保証料などを十分に比較検討し、マンションの状況に最適なローンを選ぶことが大切です。
計画的な修繕積立金の確保を基本としつつ、必要に応じてローンをうまく活用することで、マンションの価値を守り、居住者の安全で快適な暮らしを長期にわたって維持していくことができるでしょう。
専門家のアドバイスも参考にしながら、マンションの未来を見据えた最適な資金計画と修繕計画を進めていくことが求められます。