コラム    

空き家が多いマンションは大規模修繕が進まない?問題点や対策について解説

日本の社会構造の変化に伴い、深刻な課題となっているのが「空き家問題」です。

とくに、少子高齢化の進行や都市部への人口集中といった背景は、地方だけでなく都市部の郊外などでも空き家を増加させています。

この空き家問題は、戸建て住宅にとどまらず、マンションにも大きな影響を与えつつあります。

なかでも築年数が経過した中小規模の分譲マンションでは、住人の高齢化や相続未登記・転出などが原因で空室が目立つようになっており、長期的な大規模修繕工事の実施に重大な支障をきたしているケースもあります。

このような現状が続くと、マンションの劣化を招き、居住環境の悪化や資産価値の低下に直結しかねません。

本記事では、マンションに空き家が多い場合に、大規模修繕がどのように影響を受けるのか、その具体的な課題・背景・そして管理組合や関係者が取りうる対応策、さらに将来に向けた備えについて詳しく解説していきます。

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大規模修繕工事とは?その重要性と目的

大規模修繕工事は、マンションの共用部分を対象として計画的かつ長期的に実施されるメンテナンス作業です。

ここでいう共用部分とは、専有部分(各住戸内)以外の全ての部分を指し、具体的には建物の骨格となる構造体・屋上やバルコニーの床・外壁・共用廊下・階段・エントランス・エレベーター・給排水管などが含まれます。

主要な目的

建物の物理的な劣化を防ぐ

年月とともに紫外線や雨風に晒される外壁や屋上、日常的に使用される給排水設備などは必ず劣化します。

これらの劣化を放置すると、雨漏りやひび割れ・配管の腐食といった問題が発生し、建物の安全性や耐久性を著しく損なうことになります。

大規模修繕は、これらの劣化箇所を修繕・交換することで、建物の寿命を延ばし、長期にわたって安全性を維持するために不可欠な工事です。

住環境の快適性を維持・向上させる

外壁の再塗装やタイルの補修は建物の美観を回復させ、住民にとって心地よい住環境を保つことにつながります。

さらに、断熱性能の向上やバリアフリー化といった改修を伴う場合もあり、より現代のニーズに合った快適な住まいを提供できるようになります。

加えて、マンション全体の美観を維持することは、その資産価値を保つうえでも非常に重要な要素です。

適切に管理され、定期的に大規模修繕が行われているマンションは、市場においても高い評価を得やすく、将来的な売却や賃貸においても有利に働く可能性が高まります。

しかし後述するように、空き家が増加すると、長期修繕計画に基づく準備や計画通りの実施が極めて困難になるため、マンションに欠かせない大規模修繕を行えないことがあるのです。

空き家が多いマンションが抱えるリスク

マンション内に空き家が増加することは、大規模修繕工事の実施にとって無視できないいくつかの深刻なリスクをもたらします。

これらのリスクは、単に工事が遅れるだけでなく、マンション全体の資産価値低下や居住者の安全・安心な暮らしを脅かす可能性があります。

主なリスクについて、詳しく紹介します。

修繕積立金の未納・滞納による工事予算の不足

マンションの管理費や修繕積立金は、各住戸の所有者が負担することが管理規約で定められています。

しかし、空き家となっている住戸の所有者が、これらの費用を支払わない、あるいは支払えないケースが増加しています。

所有者が死亡して相続が未了であったり、投資目的で購入したものの放置していたりする場合、管理組合からの請求が所有者に届かず未払となるケースが多いです。

修繕積立金は、将来の大規模修繕工事の費用に充てるために、毎月積み立てられている重要な資金源です。

この修繕積立金の未納や滞納が多数発生すると、管理組合の収入が減少し、計画していた大規模修繕工事に必要な予算が確保できなくなります。

とくに、所有者が不明である場合や国外に居住している場合などは、請求行為自体が困難となり、費用回収が極めて難しくなります。

予算が不足すれば、工事の規模を縮小せざるを得なくなったり、工事自体を延期したり中止したりすることになるため、建物の劣化を放置してしまう状況を招きます。

総会の議決が成立しにくいことによる意思決定の困難

マンションの大規模修繕工事を実施するためには、管理組合の最高意思決定機関である総会において、区分所有法や管理規約に定められた一定割合以上の賛成を得て決議を行う必要があります。

多くの場合、大規模修繕などの重要な事項は、組合員総数および議決権総数の各過半数以上の賛成が必要とされています。

しかし、マンション内に空き家が増えると、総会に出席する区分所有者が減少し、総会を開催しても議決に必要な組合員の人数や議決権の数が足りず、決議が成立しないという事態が発生しやすくなります。

総会が成立しない、あるいは決議に必要な賛成が得られない状態が続くと、大規模修繕工事の実施を決定することができず、必要な修繕が進みません。

これは、マンションの維持管理上、非常に深刻な問題です。

たとえ修繕の必要性が明らかであっても、正式な手続きを経て決定ができないため、事態は悪化の一途をたどる可能性があります。

緊急性がある修繕でも実施できない危険性

外壁タイルの剥落・バルコニーの手すりのぐらつき、配管の腐食による水漏れなど、建物の安全に関わる緊急性の高い修繕が必要になることもあります。

区分所有法や標準的な管理規約では、専有部分への影響がある場合や多額の費用がかかる修繕については、総会の決議を必要とするケースが多いです。

しかし空き家が多く総会が成立しない状況では、こうした緊急性の高い修繕ですら、必要な決議が迅速に得られないリスクがあります。

建物の安全性が損なわれた状態が続けば、居住者の生命や財産に危険が及ぶ可能性が高まります。

例えば、外壁の剥がれ落ちた部分が通行人に当たったり、配管からの水漏れが階下の住戸に被害を及ぼしたりといった具体的な危険性が現実になりかねません。

このように、空き家の増加はマンションの管理体制そのものを麻痺させ、安全な居住環境の維持を困難にするのです。

空き家が増える背景:現代社会の構造変化

なぜ、マンションの空き家が増加しているのでしょうか。

その背景には、現代社会の構造的な変化や個々の所有者の事情など、複数の要因が複雑に絡み合っています。

主な背景として、以下の点が挙げられます。

所有者の高齢化と相続未対応

マンションの区分所有者が高齢化し、介護施設への入所や、死亡後にその住戸の相続手続きが放置されてしまうケースが増えています。

とくに相続人が複数いたり、遠方に住んでいたりする場合、遺産分割協議がまとまらず、所有権移転登記が行われないままになることも多いです。

このような住戸は、登記簿上の所有者と現在の実質的な所有者が異なり、「所有者不明」の状態となってしまいます。

管理組合が総会の案内や修繕積立金の請求をしようにも、誰に連絡を取ればよいのか分からず、結果として連絡が取れない「塩漬け」状態の空き家が発生します。

地方や郊外のマンションの需要低下

日本の総人口が減少傾向にあるなかで、若年層や子育て世帯はより利便性の高い都市部への集中が進んでいます。

これに伴い、地方都市や都市部の郊外に立地するマンションでは、新たな居住者を見つけることが難しくなっています。

空室が発生しても、賃貸や売却の需要が低いため、買い手や借り手が見つからず、そのまま空き家として放置されてしまうことも少なくありません。

物件価格や賃料を大幅に下げても買い手・借り手がつかない場合、所有者は維持管理の手間や費用を嫌い、積極的に活用することも手放すこともせず、結果的に放置という選択をしてしまう傾向があります。

投資目的で購入された住戸の放置

一部には、賃貸に出す目的でマンションの住戸を購入した投資家が、住戸ごと放置してしまうケースも見られます。

計画通りに入居者が確保できず、収益が得られないために管理費や修繕積立金の支払いを滞納し続けることがきっかけになることがほとんどです。

とくに、不動産投資に関する十分な知識や経験がない個人投資家や、適切な管理が行われていない物件に手を出すといった場合に起こりやすい傾向にあります。

また、国外に居住する所有者の場合、日本国内での管理や連絡が難しく、問題が発生した場合に管理組合が連絡を取り、費用を回収することがさらに困難になる場合もあります。

これらの背景が複合的に作用することで、マンションにおける空き家の問題は複雑化し、大規模修繕の進行を阻む大きな壁となっているのです。

空き家が多くても大規模修繕を進めるための対応策

空き家が多いマンションでも大規模修繕を円滑に進めるためには、管理組合が主体となり、さまざまな角度からのアプローチを検討する必要があります。

具体的な対策を、5つの視点から紹介します。

管理規約の見直し

総会での合意形成が困難な状況を改善するために、管理規約を改正し、議決権数のカウント方法や総会の成立要件を見直すことが有効な手段となり得ます。

例えば、書面や電磁的方法による議決権行使を促進したり、一定期間連絡が取れない所有者の議決権の取り扱いについてルールを明確化したりすることで、総会成立や議決のハードルを下げることが期待できます。

ただし、規約改正自体も総会での特別決議が必要となるため、そのハードルは決して低くありませんが、長期的な視点で見れば不可欠な取り組みです。

弁護士・専門家への相談

所有者不明の住戸や、管理費・修繕積立金の長期滞納者への対応には、法的な知識や手続きが必要となるケースが多々あります。

そのため、管理組合だけで抱え込まず、弁護士や司法書士といった専門家と連携することが強く推奨されます。

専門家は、登記簿や住民票・戸籍などを調査して所有者を特定するための相続調査を支援したり、所有者が見つかった場合の法的請求手続きをサポートしたりしてくれます。

また所有者が特定できない場合に、公的機関へ適切な手続きを申請するためのアドバイスや代行にて実施することも可能です。

専門家の知識と経験を活用することで、管理組合だけでは難しかった法的な問題解決の道が開けるでしょう。

修繕積立金の見直しと積立方式の変更

修繕積立金の不足は、大規模修繕を阻む最も大きな要因の一つです。

現在の積立金が将来の修繕費用に対して明らかに不足している場合は、積立金の金額そのものを見直す必要があります。

また、積立方式をマンションの実情に合わせて柔軟に変更することも有効です。

例えば、当初の積立金が低く設定されている場合に、段階的に積立金を増額していく「段階増額方式」への移行や、大規模修繕時に不足が見込まれる場合に一時金として徴収する「随時徴収方式」を導入・活用することも検討できます。

しかし、いずれの方式を採用するにしても、住民への十分な説明と合意形成を忘れてはいけません。

修繕ローンの活用

一時的に大規模修繕に必要な資金が不足する場合、金融機関が提供する「マンション修繕ローン」を利用することも一つの選択肢です。

これは、管理組合が金融機関から工事費用を借入し、毎月の修繕積立金や一時金などで返済していくというものです。

これにより、必要な工事を必要なタイミングで実施できる可能性が高まります。

ただし、ローンを利用したからといって費用負担がなくなるわけではなく、最終的には住民からの修繕積立金や一時金が返済の原資となるため、返済計画を慎重に立てる必要があります。

既存の修繕積立金に加えてローンの返済が必要になることで、住民一人当たりの負担が増加する可能性も考慮し、住民への十分な説明と理解を得ることが重要です。

住民への丁寧な情報提供

空き家の所有者のなかには、高齢の方や遠方に住んでいる方・マンション管理への関心が薄い方もいます。

そのような方に、総会への出席を促したり、修繕の必要性を理解してもらったりするためには、書面による通知だけでなく、訪問や電話による個別のフォローアップも大切です。

なぜ今、大規模修繕が必要なのか、工事を行わないと建物や自分たちの資産にどのような影響があるのかを、分かりやすく丁寧に説明する努力が求められます。

根気強くコミュニケーションを図ることで、協力を取り付けられる可能性が高まるでしょう。

とくに、高齢の所有者に対しては、家族や介護関係者と連携することも有効な場合があります。

これらの対応策は、単独で実施するだけでなく、複数組み合わせて取り組むことで、より効果を発揮する可能性があります。

重要なのは、管理組合が問題を認識し、解決に向けて積極的な行動を開始することです。

将来の備えとして今できること

空き家問題は、今後多くのマンションが直面する可能性のある課題です。

現在空き家が少ないマンションであっても、将来的なリスクに備えて、今からできる対策に取り組んでおくことが賢明です。

将来のトラブルを回避し、持続可能なマンション管理を実現するための備えとして、以下の点が挙げられます。

定期的な修繕計画の見直しと可視化

長期修繕計画は一度作成したら終わりではなく、建物の劣化状況や社会情勢の変化に応じて定期的に見直しを行うことが重要です。

また、計画の内容や必要な費用について、居住者や所有者全体に分かりやすく情報を提供し、「見える化」することで、修繕の必要性に対する意識を高められます。

そのためにも、計画の進捗状況や積立金の状況を常に共有することが大切です。

管理規約の柔軟な設計

将来の空き家問題や高齢化に対応できるよう、管理規約に柔軟性を持たせておくことが望ましいです。

例えば、書面やオンラインでの総会参加・議決権行使に関する規定を明確にする、連絡が取れない所有者への対応ルールを設けるなど、将来起こりうる状況を見越した条項を検討しておくことが有効です。

積立金不足のリスクへの備え

将来の修繕費用が積立金で賄いきれないリスクを想定し、早めに積立金額の見直しや、段階増額方式への移行を検討することが重要です。

長期修繕計画に基づき、将来必要となる修繕費を正確に見積もり、それに見合った積立金が確保できるよう、計画的に取り組む必要があります。

計画的な積立は、一時金徴収や修繕ローンといった負担の大きい方法を避けるためにも不可欠です。

外部専門家との連携体制づくり

日頃からマンション管理士や建築士・弁護士などの外部専門家と連携できる体制を構築しておくことも有効です。

専門家から定期的にアドバイスを受けることで、問題が深刻化する前に適切な対応を取るための知見を得られます。

また、実際に問題が発生した際に、速やかに専門家のサポートを受けられる関係性を築いておくことも重要です。

若年層への住み替え促進・空室対策

マンションの活力を維持するためには、新たな居住者を呼び込む努力も必要です。

空き家となっている住戸の所有者に対して、賃貸や売却を促すための情報やサポートの提供・マンション全体の魅力を高めるための改善などを行うことで、若年層や子育て世帯の住み替えを促す効果が期待できます。

空室率を低下させる取り組みを実施することで、将来の修繕費用確保や合意形成の基盤となるでしょう。

これらの備えをすぐに行うのは難しいですが、管理組合を中心に、居住者・所有者全体の意識を高め協力して取り組むことが、将来にわたってマンションを健全な状態で維持していくためには不可欠です。

まとめ:空き家と向き合い、未来へつなぐマンション管理

空き家が多いマンションの大規模修繕は、現代のマンション管理における最も喫緊かつ大きな課題の一つです。

空き家の増加は、修繕積立金の不足・総会での合意形成の困難さ・所有者不明問題への法的対応の煩雑さなど、多くの問題を引き起こす要因になっています。

これらの問題を放置すれば、建物の劣化は加速度的に進み、居住環境の悪化・マンションの資産価値の低下を招く恐れがあります。

また最悪の場合、建物の維持管理が不可能となり、スラム化や建替え・売却も困難な「負動産」化しかねません。

だからこそ、現状の問題から目を背けず、今できる準備を一つずつ着実に進めていくことが求められています。

重要なのは、空き家を減らすための対策と、大規模修繕を円滑に進めるための体制整備を並行して整えていくことです。

マンションは、区分所有者一人ひとりの財産であり、同時に多くの人が共同で生活する「場」です。

居住者も、そして空き家となっている住戸の所有者も、等しく「将来に責任を持つ」という意識を共有することが何よりも重要です。

そのうえで、管理組合がリーダーシップを発揮し、必要に応じて行政の支援や法的な制度を賢く活用し、さらに弁護士やマンション管理士・建築士といった外部の専門家と協力し合うことで、困難な課題に立ち向かう力を得られます。

空き家問題は容易には解決しない課題ですが、関係者が互いに協力・情報の共有を行い、粘り強く取り組むことが、健全なマンション運営を持続させ、大切な資産と安全・快適な住環境を守り抜くことにつながります。

未来を見据えた計画的な取り組みこそが、空き家時代におけるマンション管理の鍵となるでしょう。

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