2025.06.05
初めてのマンション大規模修繕ガイド|流れ・費用・注意点まで解説
マンションの大規模修繕に初めて関わる方にとって、「何から手をつければいいの?」「自分が理事として正しく対応できるのか?」といった不安はつきものです。住民全体に関わる大きな工事だからこそ、責任やプレッシャーも大きく感じるでしょう。
しかし、事前に正しい知識を得ておけば、必要以上に怖がる必要はありません。本記事では、大規模修繕の基本知識から流れ、費用、業者選び、住民との合意形成、トラブル対策まで、初めての方にもわかりやすく丁寧に解説します。
目次
大規模修繕とは?はじめてでも分かる基本知識
マンションの大規模修繕とは、経年劣化によって傷んだ建物の外壁や屋上の防水、共用部の設備などを定期的に改修するための工事です。外観の美しさを保つだけでなく、建物の安全性や快適性を維持するうえで欠かせない工程といえるでしょう。おおむね12〜15年周期で行われることが多く、あらかじめ計画された「長期修繕計画」に基づいて実施されます。
なお、「大規模修繕」と「リノベーション」は混同されやすいですが、目的が異なります。大規模修繕は基本的に原状回復が目的であり、設備や構造をよりよくする“改良”は含みません。長く安心して住める建物にするため、劣化部分を的確に直すのが主眼です。
大規模修繕の流れと期間|いつ・何をするのか?
大規模修繕工事は長期間にわたり、段階的に進められるのが特徴です。工事が始まるまでにも多くの準備が必要で、住民の合意形成や専門家との連携がカギとなります。以下は代表的な工程の流れです。
- 長期修繕計画の確認と予備調査:管理組合が、今後の修繕スケジュールを確認し、必要に応じて建物の劣化診断などを実施します。
- 修繕委員会・理事会での検討:修繕の範囲、時期、予算などについて検討し、実施体制を整えます。
- コンサルタント(設計監理者)選定:設計や仕様の立案、施工監理を担う専門家を選定します。
- 施工業者の選定(見積もり・コンペ):複数社から見積もりを取り、内容を比較・評価して施工業者を決定します。
- 住民説明会と合意形成:全戸に対して工事の必要性やスケジュール、費用について説明し、理解と同意を得ます。
- 工事着工(2~6ヶ月程度):足場設置、工事開始。工程管理や進捗確認を行います。
- 完了検査・引渡し:工事終了後に検査を行い、管理組合に引き渡されます。
着工までに1年前後の準備期間が必要とされるため、計画的な進行が大切です。工事中も定期的な報告や住民対応が求められます。
初めての理事・修繕委員でも安心!マンション大規模修繕における役割と心構え
大規模修繕を進めるうえで、理事会や修繕委員会は中心的な存在です。初めて理事や委員に就任した方は、「何をすればよいのか分からない」「専門知識がないから不安」と感じるかもしれません。
しかし、必要なのは完璧な知識よりも、誠実な対応と協力体制です。この章では、理事・委員の基本的な役割や、スムーズに進めるための心構えについて分かりやすく解説します。
理事会・修繕委員の主な役割
- 長期修繕計画の見直しと建物の現状把握:劣化の程度を理解し、今後の対応方針を整理します。
- コンサルタント・施工業者の選定と契約内容の精査:提案内容や見積もりの妥当性を確認し、適正な判断を行います。
- 住民説明会の企画・資料作成:住民への理解を得るための情報整理や配布資料作成を担当します。
- 工事期間中の進捗確認と課題対応:定例会議や現場確認を通じて、計画通り進んでいるかを管理します。
修繕委員は多くの場合、有志で構成されており、建築や工事に関する知識がなくても問題ありません。大切なのは、住民の立場で意見を伝え、外部専門家や管理会社と連携しながら公平で透明性のあるプロジェクト運営を目指すことです。
初めての方でも、周囲と協力しながら一つずつ取り組むことで、大規模修繕は必ず成功へとつながります。
実録!7階建てマンションの大規模修繕工事の流れと費用・施工事例
東京都墨田区にある7階建てマンションにて、ワンオーナー物件の大規模修繕工事を新東亜工業が対応しました。外壁の塗装やシーリングの補修、防水工事の必要性、見積比較の不安など、オーナー様の悩みに対しどのような提案と判断を行ったのか——その一連の流れを、実際の会話を交えながらご紹介します。
お問い合わせ〜現地調査|過去施工の確認と細部の劣化診断
工事のきっかけは「前回の色選びに失敗した」「屋上防水は5年前に済ませたが今回も必要か不安」といったメール相談でした。
お客様とのやり取り
お客様:「屋上の防水は5年前にやってるんですけど、それでもやるべきですか?」
新東亜工業:「一度状態を拝見してから判断しましょう。無理にやる必要がなければ省く判断もできます」
現地では図面をもとにバルコニーや外壁、庇などを細かく確認。シーリングの劣化が目立ったため、全撤去と打ち替えの提案を行いました。

お客様とのやり取り
新東亜工業:「ここのシーリング、かなりひび割れてます。全て打ち替えですね」
お客様:「これ全部やるとなると…かなりの距離ですよね?」
新東亜工業:「ざっと見ても1000mは超えてきます」
見積り提示|屋上防水の有無で2プラン提案+実数精算の説明
調査後は「屋上防水あり・なし」2パターンの見積を作成。各項目の違いと予算の幅をわかりやすく提示しました。
お客様とのやり取り
新東亜工業:「下地補修は“実数精算”になります。今見えてない部分も足場を組んでから補修範囲を確定します」
お客様:「100万円とか一気に増えることもありますか?」
新東亜工業:「状態は悪くないので10〜20万円程度の上下です。むしろ減る可能性もありますよ」
他社と比較されることも想定し、工事項目の説明や「新規打設」のリスクも正直に伝えました。
契約成立|「新規打設」との違いを丁寧に解説し信頼獲得
価格では他社より若干高めだったものの、工法や保証内容の丁寧な説明でご納得いただきました。
お客様とのやり取り
お客様:「他社には“新規打設”って書いてあります」
新東亜工業:「それは既存シールを撤去せず上からかぶせる方法で、密着不良やひび割れの原因になります。当社では必ず撤去・打ち替えを行います」
結果、「屋上防水なしプラン(852万円)」でご契約いただきました。
着工前の打ち合わせ|色決め・足場・近隣への配慮も徹底
工事前の打ち合わせでは、オーナー様が特に重視されたのが「色の選定」。過去2回の失敗を経て、今回は慎重に。
お客様とのやり取り
新東亜工業:「今回は色のイメージをどうされたいですか?」
お客様:「前の2回、どちらもイメージと違って…。今回は絶対に失敗したくない!」
色見本板を用意し、納得のいく色を選定。中学校敷地への足場越境や1階テナントのバイク駐輪スペース確保など、周辺環境への配慮も抜かりなく実施しました。
工事中の対応|トラブルの早期発見と柔軟な対応で信頼感
施工中には、前回業者が「増し打ち」を行っていた痕跡を確認。
お客様とのやり取り
新東亜工業:「やはり前回は増し打ちでしたね。しっかり撤去してから打ち換えますのでご安心ください」
お客様:「やっぱり!最初に“それはダメ”って言ってもらえて良かったです」
さらにバルコニー防水ではガス配管の位置により仕上げ調整を行うなど、現場での判断力も発揮。仕上がりにはご満足いただけました。
お客様とのやり取り
お客様:「本当にイメージ通りの外壁色で嬉しいです。母も喜んでました!」
引き渡しと今後の対応|最終確認と事務手続きまで丁寧に対応


完工後は外回りも含めた最終チェックを実施。仕上がりの満足度は非常に高く、保証書や請求書もスムーズに手配されました。
お客様とのやり取り
新東亜工業:「この庇も塗装・防水完了済みです」
お客様:「本当にきれいになってよかった。ありがとうございました!」
工事概要まとめ
- 契約金額:852万円(屋上防水なしプラン)
- 施工期間:約50日間
本事例を通じて、オーナー様の不安や悩みに寄り添いながら、適切な判断と施工を提供することの重要性が見えてきます。
「前回の修繕に不満がある」「見積内容が適正か判断できない」とお感じの方は、ぜひ一度ご相談ください。
大規模修繕の費用と積立金の目安
大規模修繕の費用はマンションの規模や劣化状況、選定する業者や工法によっても大きく異なりますが、一般的に1戸あたり75〜125万円程度が相場とされています。
そのため、多くのマンションでは毎月「修繕積立金」を徴収し、長期間にわたって資金を準備しています。国土交通省のガイドラインによると、30戸規模のマンションでは毎月1万円前後の積立が必要とされています。
ただし、築年数が進んでから積立を開始したマンションでは、資金が不足するケースもあり、その場合は追加徴収や借入れ、工事の内容縮小などの対応が求められます。事前にシミュレーションを行い、どのような工事にいくらかかるのかを把握することが大切です。
また、地方自治体によっては補助金制度を設けている場合もあります。外壁や屋上の断熱改修に関するものや、バリアフリー化工事に対する助成なども含め、使える制度を積極的に調べて活用しましょう。
マンション大規模修繕で初めて業者を選ぶときのポイントと注意点
初めてマンションの大規模修繕を担当する方にとって、「どんな業者を選べば失敗しないのか?」は最も重要なテーマのひとつです。業者の良し悪しが工事の品質や住民の満足度に直結するため、慎重に選定を行う必要があります。
ここでは、「初めてでも安心して選べる業者の見極め方」と「ありがちな失敗例・注意点」をあわせてご紹介します。
初めてでも安心!業者選びのチェックポイント
以下の点に着目することで、信頼できる業者を見極めやすくなります。
- 過去の実績と施工規模:同規模のマンション大規模修繕の実績があるか確認しましょう。
- 元請け・下請けの比率:中間マージンの発生や品質管理の観点から、自社施工中心の業者が望ましいです。
- 足場の自社保有の有無:足場を自社保有している業者は、コスト面でも融通が利くことが多いです。
- 見積もりの透明性:単価や工事項目が明確に記載されているかをチェック。
- 保証内容とアフターフォロー:施工後の保証期間や点検体制なども確認ポイントです。
よくある業者選びの失敗例と対策
初めての業者選定でよくあるのが、「価格だけで決めてしまう」「知人の紹介をそのまま鵜呑みにする」「管理会社任せにしてしまう」といったパターンです。
- 失敗例1:価格重視でトラブル続出
- 安さだけで選んだ結果、施工不良や工期遅延が発生。結果として追加費用が発生したケースもあります。
- 失敗例2:管理会社に丸投げ
- 管理会社主導で進めた結果、管理会社の利害関係が優先され、入居者の意向が十分に反映されなかった事例もあります。
- 失敗例3:比較検討を行わない
- 見積もりが1社だけでは、相場や適正価格の判断ができません。最低3社以上から見積もりを取りましょう。
初めての大規模修繕業者選びでは、**「信頼性」「説明力」「実績」**の3つを軸に判断するのが基本です。迷ったときは、第三者のコンサルタントの助言を仰ぐのも有効な手段です。
住民説明会と合意形成|反対意見があるときは?
住民全体の合意を得るためには、透明性のある情報開示と丁寧な説明が不可欠です。特に費用負担が発生する局面では、「本当に必要なのか?」「安くできないのか?」といった疑問や反対意見が出るのは当然です。
説明会では以下のような点に配慮するとよいでしょう
- 工事の必要性・目的を分かりやすく伝える
- ビジュアル資料(写真・図解)を用いた説明
- 住民からの質問や不安に真摯に対応する
- 複数回開催し、参加しやすい時間帯を設定する
また、情報は文書でも共有し、説明会に参加できなかった方にも配慮を忘れずに。反対意見を封じるのではなく、丁寧に対応することが長期的な信頼につながります。
よくあるトラブルと回避方法【初めての方向けQ&A】
Q
工期が延びたら費用も増えるの?
A
天候や不可抗力による延長であれば費用は変わりませんが、追加工事や設計変更が発生すると、別途費用がかかることがあります。契約時に条件を明確にしておくことが重要です。基本契約で明記されている範囲なら追加費用は発生しません。仕様変更時は事前承認を取りましょう。
Q
工事中の騒音が心配です。
A
事前に作業時間や騒音が予想される日程を掲示し、住民に対して丁寧な案内を行います。また、苦情対応の専用窓口を設けておくことで、不満を早期に把握し対応する体制を整えます。
Q
資金不足になったらどうする?
A
想定より費用がかさんだ場合は、まず工事項目を見直し、優先順位を整理します。その上で、必要に応じて管理組合での借入れや、住民からの一時金徴収などを検討します。補助金制度の活用も選択肢の一つです。
まとめ|初めての大規模修繕も、正しい知識と準備で成功へ
大規模修繕は、決して特別な知識が必要なものではありません。初めて理事や委員になった方でも、正しい情報を集め、信頼できる専門家と連携しながら進めていけば、着実に進行できます。
重要なのは、早めの準備と住民の理解を得ることです。曖昧な説明や独断ではなく、オープンで丁寧な対応が、長期的な信頼関係の構築につながります。
この記事を参考に、自信をもって第一歩を踏み出していただければ幸いです。あなたの行動が、マンションの未来を守る大切な一歩になります。