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コンクリートのひび割れ補修方法は?原因や放置リスク・DIYと業者の違いを解説

マンションの大規模修繕や日常のメンテナンスにおいて、よく見かけるのがコンクリートのひび割れです。
小さな割れでも「放置していいのか?」「どこまで自分で直せるのか?」と、不安になる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、コンクリートのひび割れについて原因や補修方法をわかりやすく解説し、DIYと業者対応の見極め方まで詳しくご紹介します。

目次

コンクリートのひび割れが起こる主な原因

マンションの大規模修繕や建物の維持管理において、コンクリートのひび割れは非常に多く見られる劣化現象です。
ひび割れの原因を正しく理解することは、適切な補修と長期的な建物の耐久性確保に欠かせません。
ここでは、代表的なひび割れの原因を詳しく解説します。

乾燥収縮

コンクリートは施工直後に含まれる水分が蒸発し、体積が縮小する「乾燥収縮」が発生します。
この過程で表面に細かいひび割れ(ヘアクラック)が生じることが多く、主に美観の低下や表層の劣化促進につながります。
構造に大きな影響を与えない場合でも、早めの補修で悪化を防ぎましょう。

地盤沈下

築年数の経過したマンションでは、地盤の不均一な沈下が起こりやすく、基礎や躯体に過剰な応力が加わることで「構造クラック」と呼ばれる深刻なひび割れが発生します。
このタイプのひび割れは建物の耐久性に直結するため、専門の調査・補修が必須です。

凍結融解の繰り返し

寒冷地や冬季には、コンクリート内部の水分が凍結・融解を繰り返すことで膨張と収縮が起こり、ひび割れを引き起こします。
こうした凍結による劣化は、コンクリートの耐久性低下や剥離の原因になるため、適切な防水処理や補修が重要です。

施工不良や経年劣化

施工時の養生不足や鉄筋の配置ミス、長年の風雨や紫外線による劣化もコンクリートにひび割れが起きる要因です。
特にマンションの大規模修繕では、こうした施工不良や経年劣化の有無を細かく点検し、適切な補修計画を立てることが長寿命化の鍵となります。

ひび割れの種類と特徴

コンクリートのひび割れには種類があり、それぞれ性質や危険度が異なります。
種類の把握は、適切な補修と長期的な建物保全のために重要です。
ここでは代表的なひび割れの種類と特徴、見分け方をわかりやすく解説します。

ひび割れの種類と違い

クラック種類特徴影響・注意点
構造クラック建物の耐力に関わる深刻なひび割れ建物の安全性に直結する。専門業者による調査・補修が必須。
ヘアークラック表面の軽微なひび割れ美観の低下や表層劣化の進行につながる。

幅によるひび割れの見分け方

ひび割れの幅は、危険度を判断する重要なポイントです。
一般的に幅0.3mm以下は「ヘアークラック」と呼ばれ、緊急性は低いとされています。
一方、0.3mmを超えるひび割れは水の浸入リスクが高まるため、速やかな補修が推奨されます。

ひび割れでも「誘発目地」の可能性がある

コンクリートのひび割れと一言で言っても、その種類や発生原因はさまざまです。
なかでも誘発目地によるひび割れは、建物の劣化ではなくコンクリートの特性を利用した設計上のひび割れであるため、理解しておくことが重要です。

誘発目地とは

誘発目地は、コンクリートの乾燥収縮や温度変化によるひび割れをあらかじめコントロールするために、意図的に設けられたものです。
コンクリートは乾燥や温度変化で収縮するときに無秩序に割れると、建物の強度低下や美観の悪化につながります。
そのため、あらかじめ弱い部分を設けてひび割れを誘発させ、ひび割れ位置を限定・管理しやすくする工法です。

マンションの大規模修繕時における注意点

マンションの外壁や床面に見られるひび割れが、誘発目地かどうかを正確に判断することは重要です。
誤って誘発目地のひび割れを「劣化によるクラック」と判断し、過剰な補修をすると無駄なコスト増加につながります。
また、本当に劣化が進行しているクラックを見逃すと建物の安全性に影響が出るため、専門業者による正確な調査・診断を受けることが重要です。

ひび割れ誘発目地と伸縮目地の違い

コンクリートの打設や仕上げでは、ひび割れを防ぐために目地を設けることがあり、目的や構造に応じて使い分けられています。

項目ひび割れ誘発目地伸縮目地
目的コンクリートの乾燥収縮や温度変化による自然なひび割れを、あらかじめ想定した位置で発生させる構造物の膨張・収縮、地震や振動による変形を吸収し、破損を防ぐ
特徴目地にあえて弱点を設けて、ひび割れを誘導。他の部分への不規則なクラックを防止ゴムやスポンジ材などの弾性材を挿入し、構造の動きや変形を許容する

ひび割れを放置するとどうなる?

コンクリートのひび割れは見た目の問題だけでなく、建物の耐久性や安全性に直結する重大なサインです。
特にマンションのような集合住宅では、共用部や外壁のひび割れが建物全体の劣化を加速させる恐れがあります。
ひび割れを放置した場合に考えられるリスクは、以下の通りです。

鉄筋の腐食と構造耐力の低下

ひび割れから浸入した雨水や湿気は、コンクリート内部にある鉄筋を錆びさせる原因です。
鉄筋が腐食すると体積が膨張し、さらにコンクリートを押し広げてひび割れが拡大します。
補修が遅れると鉄筋の強度が著しく低下し、建物の耐震性や構造耐力に深刻なダメージを与えるでしょう。
耐震基準を満たすためにも、早期の点検と補修が不可欠です。

劣化進行の加速

初期のひび割れはごく小さくても、時間が経つにつれて拡大し、ひび割れを通じて水分や塩分・二酸化炭素が侵入します。
その結果、コンクリートの中性化や凍結融解劣化を促進するケースもあります。
マンションの外壁や共用部分に広がると、建物全体の耐久性が低下し、補修コストや大規模修繕の負担が増加するため注意が必要です。

資産価値の減少

目に見えるひび割れは、管理が不十分な建物として購入希望者や不動産評価者からマイナス評価を受ける原因になります。
特に中古マンション市場では、ひび割れや外壁の劣化は売却価格に直結する重要な判断材料です。
適切な修繕記録がないと、修繕履歴が不透明な物件として敬遠されることもあり、日頃のメンテナンス記録の管理も資産価値の維持には欠かせません。

DIYで対応できるケースと業者に依頼すべきケースの見極め方

コンクリートのひび割れ補修は、自分でできる場合と専門業者に依頼すべき場合があります。
特にマンションの大規模修繕では、補修の範囲を正しく見極めることが重要です。
ここでは、DIY補修が可能なケースとプロに依頼すべきケースの判断ポイントを詳しく解説します。

DIYで対応可能なケース

  • 幅0.3mm以下のヘアークラック:幅が非常に細く、建物の構造に影響しないヘアークラックは、DIYでの補修も可能です。市販の補修材で簡単に補修できるため、早めに対処することで悪化を防げるでしょう。
  • 表面の軽微なひび割れや塗膜の剥がれ:外壁の表面に起こる軽度なひび割れや塗膜のはがれは、自分で補修や再塗装を行える場合もあります。
    小さな補修でも定期的に行うことで、建物の美観を保ち、劣化の進行を遅らせることができるでしょう。

【業者に依頼すべきケース】

  • 幅0.3mmを超えるひび割れや構造クラック:幅が広く、建物の耐力に影響を与える可能性があるひび割れは、専門的な診断と補修が必要です。素人判断での補修は安全性を損なう恐れがあるため、必ずプロに依頼しましょう。
  • ひび割れに伴う下地の損傷や剥離:表面のひび割れだけでなく、下地に欠損や剥離がある場合は、修復工事が複雑になります。劣化部分を的確に判断し、適切な工法を選ぶためにも業者の専門知識が欠かせません。
  • 繰り返しひび割れが発生する場合や原因不明の場合:同じ場所でひび割れが繰り返し起きる、または原因が特定できない場合は、構造的な問題が潜んでいる可能性があります。
    安全を第一に考え、早急に専門家の調査を受けることが重要です。

ひび割れをDIYで補修する注意点

  • 補修の品質や耐久性にばらつきが出る:専門知識や技術が不足していると、補修材の選定ミスや施工不良につながることがあります。結果的にひび割れの再発や劣化が早まるリスクがあります。
  • 大規模なひび割れや構造クラックには対応できない:幅が広いひび割れや建物の安全性に関わるクラックは、専門家による調査と補修が必須です。自己判断でのDIYは危険を伴います。
  • 安全面のリスク:高所作業や足場の悪い場所での補修は、事故やケガの原因になります。無理をせず、適切な環境で作業を行うことが必要です。
  • 時間と労力がかかる:DIYは自分で材料の選定から施工まで行うため、慣れていない場合は作業時間が長くなりがちです。また、細かな工程を省くと補修効果が低減します。

ひび割れを業者に依頼するメリット・デメリット

マンションのコンクリートひび割れ補修を業者に依頼することは、専門性や品質の面で安心感がありますが、一方でコストやスケジュール面での課題もあります。
ここでは、業者に依頼する際のメリットとデメリットを詳しく解説します。

メリット

  • 専門的な知識と技術による高品質な補修:建築士や施工管理技士などの有資格者が在籍する業者は、ひび割れの原因分析から最適な補修工法の提案まで、科学的根拠に基づいた施工を行います。これにより、補修の効果が長持ちし、再発リスクを大幅に軽減できます。
  • 安全かつ効率的な作業が可能:高所や狭い場所・複雑な構造の補修は、専門の技術と設備が必要です。業者は足場設置や安全対策を徹底しているため、事故や施工ミスのリスクを抑えつつ迅速に作業を進められます。
  • 保証やアフターサポートが充実:施工後の不具合やトラブルに対応する保証制度を備えている業者が多く、万が一の際も安心です。また、定期点検やメンテナンスの提案も受けられるため、長期的な建物管理がしやすくなります。
  • 複雑な補修や大規模工事にも対応可能:幅の広い構造クラックや鉄筋腐食が進んだ場合など、DIYでは対応困難な案件も専門業者なら適切な材料や工法で補修できます。耐震補強などの高度な工事も依頼可能です。

デメリット

  • 費用が高くなる傾向がある:専門業者に依頼すると、材料費や人件費・管理費用などがかかり、DIYに比べて費用が割高になることが一般的です。特に大規模修繕や高度な補修になると、予算を十分に確保する必要があります。
  • スケジュール調整が必要:業者の繁忙期や現場の状況によっては、補修工事開始までに時間がかかることがあります。迅速な対応が求められる場合は、早めの相談と計画が重要です。
  • 業者選びに失敗するとトラブルに繋がる可能性がある:技術力や対応力にばらつきがあり、信頼できる業者選びが難しい場合があります。適切な業者を選ばなければ、施工不良やアフターサービスの不備などの問題が起こるリスクがあります。

コンクリートのひび割れにおける補修方法の種類

コンクリートのひび割れ補修には、ひび割れの状態や原因に応じてさまざまな工法があります。
ここでは、代表的な4つの補修方法を紹介します。

被覆工法

被覆工法は、ひび割れのあるコンクリート表面に補修用のモルタルや塗膜を施工し、表面を覆う方法です。
主に表面の美観回復や水の浸入防止を目的とし、比較的浅いひび割れに適しています。
工期が短くコストも抑えられるため、軽微なひび割れの補修に広く用いられます。

注入工法

注入工法は、エポキシ樹脂やウレタン樹脂などの高性能補修材を、ひび割れ内部に圧力をかけて注入する方法です。
深く広がったひび割れや構造クラックの補修に適しており、鉄筋の腐食防止や構造強度の回復が期待できます。
注入材の選定や施工技術が補修効果を左右するため、専門業者による施工が必要です。

充填工法

充填工法は、ひび割れに沿ってU字やV字にカットし、材料を充填して埋める方法です。
注入工法よりも簡易的な補修として使われ、幅の広いひび割れや欠損部分の補修に適しています。
鉄筋にサビが発生している場合、サビを取り除いてから防サビ処理を行います。

止水工法

止水工法は、ひび割れからの水の侵入を防ぐために、水膨張性の樹脂や止水材を用いて補修する方法です。
特に地下や地下駐車場など、水の影響を受けやすい場所の補修に適しています。
水の浸入を確実に防ぐため、止水性能の高い材料選びと正確な施工が求められます。

信頼できる業者の選び方

コンクリートのひび割れ補修やマンションの大規模修繕では、信頼できる業者を選ぶことが成功の鍵となります。
業者選びの際に、重視すべきポイントを以下に詳しく解説します。

専門の資格を持つスタッフがいるか

建築士や施工管理技士といった国家資格を持つ専門スタッフが在籍している業者は、技術力や知識レベルが高い証拠です。
資格者がいることで、適切な診断・施工計画が可能となり、安心して任せられます。
特に大規模修繕のような複雑な工事では、専門知識を持つスタッフの存在が重要です。

施工実績が豊富か

多数の施工実績がある業者は、さまざまな現場での経験を積んでいるため、問題解決能力が高く、品質の安定した工事を期待できます。
過去の施工事例やお客様の声をチェックし、信頼性や評判を確認することをおすすめします。

アフター対応や補償制度が整っているか

施工後の不具合やトラブルに対して迅速に対応してくれる業者は、長期的に安心して付き合えるパートナーです。
そのため、補償制度がしっかりしているかどうかも確認しておきましょう。
保証期間や内容が明確で、万が一の際に適切なサポートが受けられる業者を選ぶことが重要です。

マンションのコンクリートひび割れ補修費用を抑えるコツ

マンションのコンクリートひび割れ補修は、建物の安全性を保つために欠かせませんが、費用も決して安くはありません。
そこで、コストを抑えつつ効果的な補修を行うためのポイントを解説します。

可能であれば足場を組まずに工事をする

足場の設置は、工事費用の大きな割合を占めます。
そのため、可能な範囲で足場を組まずに作業できる場合、費用を大幅に節約できる可能性があります。
例えば、低層階の補修や部分補修の場合は、ゴンドラや高所作業車を活用することで足場設置の必要を減らせるでしょう。
ただし、安全面を最優先にし、施工の質が落ちない範囲で検討することが重要です。

相見積もりでコンクリートのひび割れ補修費用を比較する

複数の専門業者から見積もりを取ることで、補修費用の相場感を把握できます。
また、業者ごとの施工内容や使用材料・保証内容なども比較でき、費用対効果の高い業者を選びやすくなります。
相見積もりは、価格交渉の材料にもなるため、必ず複数社に依頼することをおすすめします。

コンクリートひび割れを予防するには?

コンクリートのひび割れは放置すると建物の耐久性を損ない、補修費用も増大します。
特にマンション管理組合としては、日頃から適切な管理と予防策を講じることが重要です。ひび割れの再発や、新たな発生を防ぐためにできる具体的な対策を解説します。

定期点検とメンテナンスの実施

マンションの外壁や床面は、日々の気候変化や経年劣化によって少しずつダメージを受けています。
管理組合が定期的に専門業者による点検を行うことで、ひび割れやその他の異常を早期に発見することが可能です。
早期発見は被害の拡大防止につながり、大規模な補修工事を回避できるため、長期的にはコスト削減にも寄与します。

防水・保護塗装の定期的な活用

コンクリート表面の劣化を防ぐために、防水層や保護塗装の定期的な塗り替えは非常に効果的です。
これらの塗装は、紫外線や雨水・凍結融解などの外的要因からコンクリートを守り、水分の浸透を防止します。
塗膜の劣化はひび割れの原因となるため、塗装の状態を点検し、適切なタイミングでメンテナンスを行いましょう。

初期段階での早期対応の徹底

ひび割れを見つけた際は「放置せずすぐに対応する」ことが、最も重要な予防策です。
初期の小さなひび割れであれば補修コストも比較的低く抑えられますが、放置するとひび割れが拡大し、鉄筋腐食など建物全体の耐久性に関わる重大な問題に発展することもあります。
管理組合では住民への周知や定期点検の報告を徹底し、迅速な対応体制を整えておくことが求められます。

よくある質問(FAQ)

建物の維持管理や補修に関して、よく寄せられる質問をまとめました。
ぜひ参考にしてみてください。

Q

ひび割れ補修は雨の日でもできますか?

A

できません。補修材が密着せず、施工不良の原因になります。乾燥した日を選びましょう。

Q

アスファルトとコンクリートの補修方法の違いは?

A

アスファルトとコンクリートは成分が異なります。また強度にも違いがあり、コンクリートの方が強度が高いといわれています。

Q

補修してもまた割れることはありますか?

A

あります。原因が改善されていない場合や、経年劣化により再発することも少なくありません。そのため、定期的な点検をおすすめします。

Q

ひび割れを完全に防ぐことはできますか?

A

完全に防ぐのは難しいですが、設計段階での目地計画や適切な施工・メンテナンスによってリスクを大幅に減らすことは可能です。定期的な点検や防水処理・ひび割れ誘発目地の活用などが予防につながります。

まとめ

コンクリートのひび割れは、たとえ小さくても放置せず、原因を見極めて適切に補修することが大切です。
特にマンションの大規模修繕時には、ひび割れの有無を細かく点検し、放置せず速やかに対処することで建物の安全性と資産価値を守れます。

また信頼できる業者を選ぶには、資格保有スタッフの有無・施工実績の豊富さ・アフターサービスの充実度をしっかり確認しましょう。
これらのポイントを押さえることで、コンクリートひび割れ補修や大規模修繕の品質を高め、長期的な安心を手に入れることができます。
コンクリートのひび割れは、DIYで対応できるケースもありますが、マンションの大規模修繕では専門業者の診断が欠かせません。
将来的な資産価値や住民の安心・安全のためにも、しっかりとした対応を心がけましょう。

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