2025.07.01
マンションの長期修繕計画とは?作成のポイント・見直し時期・費用相場まで徹底解説!
マンションを健全に維持していくために欠かせない「長期修繕計画」。国土交通省も策定を推奨しており、多くのマンションで導入されていますが、実際にどのように立てるのか、どんな項目が含まれるのか、疑問を感じる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、長期修繕計画の基礎知識から、作成・見直しのタイミング、費用相場やポイントまで、管理組合やオーナー目線でわかりやすく解説します。
目次
長期修繕計画とは?基本的な役割と重要性
長期修繕計画とは、マンションの資産価値と快適な住環境を維持するために、将来実施すべき修繕工事の内容と時期、概算費用をあらかじめ見通して立てる計画のことです。
建物は年数とともに劣化し、外壁や屋上、防水設備、給排水管などに修繕が必要となります。計画がないと資金不足に陥り、必要な修繕が先送りになるリスクがあります。
国土交通省では「長期修繕計画標準様式」を策定しており、マンション管理の重要な指標として位置づけています。
長期修繕計画に含まれる主な工事項目
長期修繕計画には、マンションの構造や設備を安全かつ快適に維持していくための重要な工事項目が多数盛り込まれています。ここでは、代表的な修繕内容とその目的・周期について具体的にご紹介します。
外壁や屋上などの防水工事
建物の雨漏りを防ぐために、屋上・バルコニー・外壁などの防水層を定期的に補修・更新します。一般的には12〜15年周期での改修が目安です。
給排水設備の更新
老朽化した給水管や排水管は、漏水や衛生面でのリスクがあるため、30〜40年を目安に取り替えが必要です。共用部から専有部に影響する工事となることもあります。
エレベーター・共用設備の交換
エレベーターの制御盤やモーターの更新、照明やインターホンなどの共用部設備も定期的な更新が必要です。安全性と快適性の両立を図ります。
鉄部塗装・共用廊下・階段の修繕
階段手すりや廊下の床材、鉄扉などの劣化対策として、防錆塗装や張替えなどが含まれます。建物の見た目や安全性にも関わる工事項目です。
長期修繕計画の作成手順と関係者の役割を徹底解説
長期修繕計画の策定は、将来の修繕工事を効率的に実施し、資金計画を適切に管理するうえで欠かせません。この章では、計画の作成手順と、関与する関係者の役割について詳しく解説します。
長期修繕計画ステップ1:建物の現況調査・劣化診断
まずは、専門業者による建物全体の劣化診断が行われます。外壁・屋上・共用部・設備機器などの状態を把握し、どの工事がいつ必要かを見極めるための基礎資料となります。
長期修繕計画ステップ2:工事項目・修繕周期・概算費用の設定
調査結果をもとに、必要な修繕工事の種類や時期を割り出し、長期スパンでの修繕計画を構成します。同時に、各項目の概算費用も設定し、資金計画と連動させます。
長期修繕計画ステップ3:専門家の協力と計画書作成
計画の策定には、以下のような専門家が関与します。
- 管理会社:日常管理の知見を反映
- 建築士・設計事務所:技術的な見地から助言
- 修繕コンサルタント:コスト対効果の検証や優先順位の整理
これらの関係者が連携し、実現可能性の高い長期修繕計画書が作成されます。
長期修繕計画ステップ4:管理組合による承認と住民への説明
作成された計画案は、理事会・総会で審議され、合意形成を経て正式な計画となります。住民への説明資料や図表を用いた分かりやすい説明が不可欠です。
長期修繕計画は5年ごとの見直しが重要|改定のタイミングと注意点
計画は一度作成すれば終わりではなく、定期的な見直しが必要です。国土交通省の指針では、5年に1度の改定が推奨されています。
見直しの主なきっかけ
- 実施済み工事との整合性調整
- 資材費・人件費の高騰による費用の再算定
- 新たな劣化の発見や建物環境の変化
見直し時のチェックポイント
- 修繕履歴と今後の工事スケジュールの整合性
- 修繕積立金とのバランス確認
- 住民からの意見・要望の反映
見直し作業も、初回策定と同様に専門家の協力を得ながら進めるのがベストです。
修繕積立金は長期修繕計画の柱|積立方式と資金不足リスク
長期修繕計画は、必要な修繕資金を準備するための基準となり、修繕積立金の根拠資料として機能します。
修繕積立金の2つの積立方式
- 均等積立方式:毎月の負担額が一定で、長期的な資金計画が立てやすい。
- 段階増額方式:当初は少額、年数に応じて徐々に積立額を上げていく方式。
特に築年数が浅いマンションでは段階増額方式が選ばれることもありますが、早期から安定した積立を行うことが将来的な安心につながります。
資金不足が招くリスク
- 一時金徴収による住民負担の増加
- 工事の延期による劣化の進行
- 管理組合の信用低下
将来の工事に備え、現実的な積立額の設定と定期的な見直しが不可欠です。
よくあるトラブルとその回避策|失敗しないためのチェックリスト
長期修繕計画は万全に見えても、実際の運用ではさまざまな課題が発生することがあります。ここでは、過去に起きやすいトラブルのパターンと、それを回避するための実践的な対策を紹介します。
想定以上の費用がかかる
物価高騰や工事内容の追加により、予算をオーバーするケースも。概算費用には余裕をもたせ、必要に応じて費用調整を行いましょう。
修繕内容に偏りが出る
給排水管やエレベーターなどの高額工事に偏りがあると、バランスを欠いた計画となる恐れがあります。全体の優先度とタイミングを整理することが重要です。
合意形成ができない
住民の理解を得るには、ビジュアル資料の活用や、第三者の意見を交えた丁寧な説明が効果的です。意見集約には時間がかかるため、早めの準備を心がけましょう。
長期修繕計画の策定・見直しをサポートしてくれる専門家とは?
専門家を活用することで、信頼性の高い長期修繕計画を立てることが可能です。代表的な相談先は以下のサポートがあります。
- 管理会社:日常管理と連動した視点で提案可能
- 建築士・設計事務所:劣化診断から中立的な視点での計画策定
- 修繕コンサルタント:費用対効果や優先度の整理などに強み
複数の専門家に相談し、見積もりや内容を比較検討することが成功のカギとなります。
よくある質問(FAQ)
Q
長期修繕計画がなくても修繕はできる?
A
可能ではありますが、計画がないと費用不足や手戻りが起こりやすく、非効率です。
Q
長期修繕計画の作成に補助金はある?
A
自治体によっては診断費用やコンサル費用の助成制度があります。地域の窓口で確認しましょう。
Q
費用を抑える工夫は?
A
優先順位をつけ、複数工事項目を同時に実施することでコストダウンが期待できます。
Q
管理会社任せでも問題ない?
A
任せきりにせず、専門家や第三者の意見も取り入れてバランスよく判断することが重要です。
まとめ|マンションの長期修繕計画は将来の安心のために不可欠
長期修繕計画は、単なるスケジュールではなく、住まいの安全性・快適性・資産価値を守るための指針です。計画的に修繕を行い、将来の大規模修繕にも備えることで、トラブルを未然に防ぐことができます。
管理組合や理事の方はもちろん、マンションに住むすべての人がこの計画の意義を理解し、積極的に関わっていくことが、安心できる住環境づくりにつながります。
おすすめサイト

大規模修繕工事・防水工事・外壁塗装・外壁補修参引用、参考サイト
国土交通省
特定非営利活動法人集合住宅管理組合センター
公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会
一般社団協会マンション管理業協会
一般社団法人日本防水協会
日本ペイント
独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)
一般社団法人 マンション大規模修繕協議会
日本ウレタン建材工業会
FRP防水材工業会
株式会社ダイフレックス(シーカ・ジャパン株式会社)