2025.07.04
屋上のコンクリートをやり直したいときに知っておくべきことを紹介
「屋上のコンクリートがボロボロになってきた」「ひび割れから雨水が入ってきそう」「そろそろ全面的にやり直したほうがいいのでは?」そんな悩みを抱えている方に向けて、本記事では屋上のコンクリートやり直し工事について徹底的に解説します。
コンクリートの劣化は見た目だけでなく、建物の防水性や耐久性にも大きく影響します。放置すれば雨漏りや資産価値の低下にもつながるため、適切なタイミングでの補修・再施工が重要です。この記事を読むことで、自宅や所有物件の屋上がどの段階にあるのか、どんな対策が必要かを具体的に判断する手がかりが得られるでしょう。
目次
屋上コンクリートのやり直しが必要なサインとは?
屋上のコンクリートが再施工を必要とするのは、以下のような劣化サインが見られるときです。これらの兆候を見逃さず、早めに対処することが重要です。
- ひび割れ(クラック)の発生:ヘアクラックから構造クラックまで、雨水の侵入リスクが高まります。特に幅0.3mm以上のひび割れは放置すべきではなく、内部鉄筋への腐食を招く恐れがあります。
- 表面の浮き・剥がれ・白華現象:コンクリート表面が風化・中性化してきている証拠です。白華(エフロレッセンス)は美観を損なうだけでなく、防水性の低下も示しています。
- 雨漏りの発生:すでに防水層やコンクリートに問題がある状態です。天井にシミができている、室内が湿っぽいなどの症状があれば要注意です。
- 雑草や苔の発生:水分が滞留しているサインで、防水性が失われている可能性があります。表面に常に湿気がある状態は、カビの発生や害虫の温床にもなります。
これらの症状が見られた場合、部分的な補修では追いつかないこともあるため、「やり直し」の検討が必要になります。また、見た目ではわからない劣化もあるため、専門業者による点検を受けることが望ましいです。
屋上コンクリートのやり直し工事にはどんな方法がある?
屋上コンクリートの補修・再施工といっても、状態や目的によって工事の内容は異なります。ここでは、代表的な工法を紹介します。
表面補修(クラック補修・カチオン塗りなど)
細かいひび割れや表層の劣化には、部分的な補修で対応可能です。主に以下のような方法があります。
- カチオン系樹脂モルタルによる補修:速乾性があり、接着力の高い材料で局所補修に適しています。
- 樹脂注入工法(エポキシ樹脂など):構造クラックに対して用いられ、内部から補強を行います。
- ポリマーセメントモルタルでの上塗り処理:薄塗りで表面を均し、美観と防水性を改善します。
表面処理だけで済む場合は比較的低コストかつ短工期で済みますが、構造的なダメージがある場合は不十分です。施工箇所が限定的であれば有効ですが、全体の劣化が進んでいる場合には他の工法を検討すべきです。
上塗り防水のみの再施工(塗膜防水)
劣化が軽度で、下地のコンクリートに大きな問題がない場合、防水層の再施工だけで済むこともあります。ウレタン塗膜防水やFRP防水が主流です。
- ウレタン塗膜防水:柔軟性があり、複雑な形状の屋上にも対応しやすい。
- FRP防水:硬化が早く耐久性が高いが、下地の処理精度が求められます。
下地処理をしっかり行うことが、塗膜の密着性と防水性を左右します。
コンクリート打ち直し(スラブ再施工)
劣化が激しい場合や、構造的な強度に問題がある場合は、コンクリートスラブそのものを打ち直す必要があります。全面撤去から再施工まで含むため、費用・工期ともに大きくなります。
- 既存コンクリートの撤去:斫り作業で粉塵や騒音が発生することも。
- 型枠の設置と新規打設:鉄筋の補強や勾配の調整も同時に行う場合が多いです。
この工法は10年単位の耐久性が期待される本格的な再生手段として選ばれます。
ウレタンやシート防水とセットで施工する場合
再施工のタイミングで、防水処理もあわせて行うのが一般的です。以下のようなセット施工が推奨されます。
- ウレタン塗膜防水+補修モルタル:美観と防水性を両立できる人気の組み合わせ。
- シート防水+下地調整:安定性が高く、経年劣化が予測しやすいのが特徴です。
やり直し工事をするなら、防水性能も同時に確保しておくことで、トータルのコストパフォーマンスが向上します。屋上は風雨にさらされやすい環境であるため、防水性の確保は最優先事項と言えるでしょう。
屋上コンクリートのやり直し工事にかかる費用相場
実際に屋上コンクリートをやり直す場合、気になるのはその費用です。工事内容や施工面積、劣化の程度によって金額は大きく変動します。加えて、足場の設置や搬入経路の条件など、現場の状況によっても費用は上下します。
工事内容 | 単価目安(円/㎡) | 備考 |
---|---|---|
クラック補修・表面処理 | 5,000〜15,000 | 小規模な補修 |
防水塗膜のみの再施工 | 7,000〜20,000 | ウレタンやFRPなど工法で変動 |
コンクリート打ち直し(全面) | 20,000〜40,000 | スラブの撤去・新設を含む |
防水+補修セット | 25,000〜50,000 | 防水層との一体施工 |
これらはあくまで目安であり、工事規模が大きいほど㎡単価は下がる傾向があります。また、管理組合を通じて行う場合や、補助金制度を活用する場合は実質負担が軽減されることもあります。
※工事費用は足場代・養生費・施工条件などによっても変動します。複数業者からの相見積もりが推奨されます。最低でも2〜3社からの見積もりを比較し、内容や保証の範囲をしっかり確認しましょう。
DIYで屋上コンクリートはやり直せる?
ホームセンターやネット通販で手軽に補修材が購入できる時代、「DIYで屋上を補修できるのでは?」と考える方も多いでしょう。しかし実際には、DIYには明確な限界があります。
DIYのメリット
- 材料費を安く抑えられる
- 好きなタイミングで作業できる
- 外注せずに済む安心感
- 小規模補修なら技術習得の機会にも
DIYのリスク・注意点
- 下地補修が不十分だと、密着不良や剥離の原因に
- 塗膜の厚さにムラが出やすく、防水性能にばらつきが生じる
- 施工不良による雨漏りなどはすべて自己責任
- 高所作業での安全確保が難しい
結論としては、「軽微なクラック補修」程度であればDIYも可能ですが、全面的な再施工や防水処理が必要な場合は、専門業者への依頼が安全で確実です。特に、建物全体の資産価値や長期的な防水性能を考えると、プロの手による適切な施工が望ましいでしょう。
屋上コンクリートやり直し時の注意点と失敗例
屋上コンクリートの再施工は、見た目の改善だけでなく、防水性や建物全体の耐久性に関わる重要な工事です。しかし、進め方を誤ると再びトラブルが発生し、再工事が必要になってしまうケースも少なくありません。ここでは、ありがちな失敗事例とその回避方法を解説します。
よくある失敗例
以下は実際に多く見られる施工失敗の例です。これらのポイントを事前に把握しておくことで、同じ失敗を避けることができます。
- 下地処理が不十分で施工不良:クラックや浮きなどの下地劣化をきちんと補修せずに上塗りしてしまうと、数年で再び不具合が起こります。
- 安すぎる見積もりで品質不足:極端に安価な業者は、材料のグレードや施工人数を抑えている可能性があります。
- 防水処理を後回しにしたため雨漏りが再発:見た目重視でコンクリートひび割れ補修だけを行った結果、防水性能が回復せず再施工が必要になるケースも。
注意すべきポイント
事前準備や業者選定段階で意識しておきたいチェックポイントを以下にまとめます。
- 劣化状況の把握:事前調査で劣化状況を細かく把握する(できれば写真付き報告書)
- 工法と材料の確認:使用材料や工法を必ず明示してもらう
- 保証の有無:工事後の保証制度(防水10年保証など)を確認する
- 工期と気象条件:天候・気温を考慮した施工スケジュールを立てる
屋上コンクリートのやり直しで信頼できる業者の選び方
業者選びは屋上コンクリートのやり直し成功を左右する最重要項目です。信頼できる施工会社を見極めるためには、いくつかのチェックポイントを押さえておく必要があります。
資格・実績のある専門業者を選ぶ
施工の質を左右するのは、やはり職人の技術と実績です。以下のような点を確認しましょう。
- 一級建築士や建築施工管理技士などの有資格者が在籍しているか
- 防水施工技能士の資格保持者が工事責任者であるか
- 類似物件での施工事例や写真が豊富にあるかどうか
見積書と説明内容の透明性
契約前に提出される見積書の記載内容や説明の丁寧さも、信頼性を測るポイントです。
- 材料名、施工範囲、工程内容が明記されているか
- 不明点への説明が丁寧で質問にすぐ対応してくれるか
- “一式”表記ではなく、数量と単価で構成されているかどうか
保証内容・アフターフォローの有無
施工後のフォロー体制が整っているかも確認しておきましょう。
- 施工後に定期点検があるか
- 保証書が書面で発行されるか
- トラブル発生時の対応スピードや受付体制
屋上コンクリート再施工の流れ
実際に屋上のコンクリートをやり直す際には、以下のようなステップで進行します。全体の工程を把握しておくことで、工事の内容やスケジュールに納得感を持って臨むことができます。
- 劣化診断と調査報告
ひび割れ、浮き、漏水の有無をチェックし、写真付き報告書をもとに必要な補修内容を確認します。 - 見積もりと施工内容の提案
工法ごとの比較や補助金適用の有無も含めて、最適なプランを提案してもらいましょう。 - 工事日程の決定と養生準備
天候や住民の生活に配慮し、スケジュールと足場・養生などの準備を整えます。 - 施工(下地処理〜再施工)
クラック補修、モルタル施工、防水処理など、計画に基づいて丁寧に施工が行われます。 - 完了検査と保証書の発行
最終確認として立ち会い検査を行い、施工後の保証内容が書かれた保証書を受け取ります。
防水工事と一緒にやると効果的な理由
屋上のコンクリートやり直しと同時に防水工事も行うことで、長期的な安心を得ることができます。以下はその主な理由です。
- 工事費の一括管理ができる:足場や作業費を一度にまとめることで、無駄なコストを削減できます。
- 仕上がりの整合性が高い:補修と防水の境目が整い、美観も耐久性も向上します。
- 防水保証が延長される場合も:一体施工であれば、保証期間が10年以上になることも。
さらに、雨漏りの主な原因はコンクリートの劣化と防水層の老朽化が重なっていることが多いため、同時に対応することで再発リスクを大幅に減らすことが可能です。
補助金・助成金制度の活用について
2025年現在、自治体によっては屋上改修や防水工事に関して助成金制度を設けている場合があります。以下は一例です。
- 東京都(省エネ住宅助成):遮熱・断熱防水工事に最大30万円の補助
- 横浜市:マンション共用部分の改修工事に対し補助率1/3(上限あり)
- 大阪市:雨漏り防止や屋根改修に関する補助制度あり
※各制度には受付期間や対象条件があります。申請前には必ず自治体窓口や専門業者に相談しましょう。
よくある質問(FAQ)
ここでは、屋上コンクリートやり直し工事について寄せられることの多い疑問に回答します。
Q
屋上のひび割れがあるけど、すぐ工事が必要?
A
小さなクラックでも内部鉄筋に影響を与える可能性があります。早めに専門業者の診断を受けてください。
Q
防水だけやればコンクリートはそのままで大丈夫?
A
下地の劣化がある状態では、防水だけではすぐに効果が薄れる場合があります。補修と防水はセットで考えるのが理想です。
Q
工事期間はどれくらいかかる?
A
一般的には5〜10日が目安ですが、施工規模や天候により前後します。
Q
工事中は屋上に立ち入りできる?
A
原則として立ち入りは制限されます。管理組合や居住者との調整が必要です。
まとめ|屋上コンクリートをやり直すなら早めの診断と信頼できる施工が鍵
屋上コンクリートのやり直しは、建物の資産価値を維持し、快適な住環境を守るうえで欠かせない工事です。劣化を放置すれば、雨漏りや大規模な補修が必要となり、費用や時間も大きくかかってしまいます。
まずは劣化診断を依頼し、状況にあった工法や業者を慎重に選びましょう。そして、防水工事との同時施工や助成金制度の活用も視野に入れて、無理のない計画で安心できる屋上環境を整えていくことが大切です。
大規模修繕工事・防水工事・外壁塗装・外壁補修参引用、参考サイト
国土交通省
特定非営利活動法人集合住宅管理組合センター
公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会
一般社団協会マンション管理業協会
一般社団法人日本防水協会
日本ペイント
独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)
一般社団法人 マンション大規模修繕協議会
日本ウレタン建材工業会
FRP防水材工業会
株式会社ダイフレックス(シーカ・ジャパン株式会社)