賃貸物件を相続したらどうする?最初にやるべきことと3つの選択肢
2026/01/30
目次
はじめに:相続した賃貸物件、「どうすればいい?」という不安
「親が持っていた賃貸アパートを相続することになった」「突然オーナーになったが、何から手をつければいいかわからない」──そんな状況に戸惑う方は少なくありません。
賃貸物件の相続は、一般的な不動産(自宅など)の相続と比べて、入居者対応・家賃管理・修繕判断など「経営」の要素が加わるため、やるべきことが多く、判断も複雑になります。
この記事では、賃貸物件を相続した方が「最初に確認すべきこと」と「3つの選択肢(経営継続・売却・相続放棄)」を整理し、後悔しない判断ができるようにサポートします。
賃貸物件を相続したら、最初に確認すべき5つのこと
相続が発生したら、まずは以下の5点を早めに確認・整理しましょう。
1. 遺言書の有無を確認する
遺言書があるかどうかで、相続の進め方が大きく変わります。
自宅の金庫、貸金庫、公証役場(公正証書遺言の場合)などを確認し、遺言書の有無を早めに把握しておきましょう。
2. 相続人を確定する
誰が相続人になるのかを、戸籍謄本などで正式に確認します。
相続人が複数いる場合は、後で「遺産分割協議」が必要になります。
3. 物件の状況を把握する
- 所在地・築年数・構造・戸数
- 現在の入居状況(満室か、空室があるか)
- 家賃収入と管理費・修繕費などの支出
- 管理会社の有無と契約内容
「その物件が今どういう状態か」を数字で把握することが、経営継続か売却かの判断材料になります。
4. ローン残高と債務を確認する
賃貸物件にローンが残っている場合、そのローンも相続の対象になります。
ローン残高、金利、残期間、団体信用生命保険(団信)の有無を確認し、返済を継続できるかどうかを見極めましょう。
5. 相続税の概算を把握する
賃貸物件は「貸家建付地」として評価減が適用されるケースが多いですが、それでも相続税がかかる可能性があります。
相続税の申告・納付期限は相続開始から10ヶ月以内なので、早めに税理士へ相談しておくと安心です。
賃貸物件を相続したときの3つの選択肢
相続後の選択肢は、大きく分けて次の3つです。
選択肢1:賃貸経営を引き継ぐ
親が行っていた賃貸経営を、そのまま自分が引き継ぐパターンです。
向いているケース
- 物件の収益性が安定している(入居率が高い、賃料が相場並み)
- ローン残高より物件価値が高く、売却するより保有した方がトータルリターンが大きい
- 家賃収入を生活費や老後資金に充てたい
- 将来、子どもや孫に資産として引き継がせたい
メリット
- 毎月の家賃収入が得られる
- 相続税評価額が低く抑えられるケースがある(貸家建付地の評価減)
- インフレに強い実物資産として保有できる
デメリット
- 空室リスク、修繕費、管理の手間がかかる
- 築年数が進むと収益性が悪化する可能性がある
- 経営経験がないと判断に迷いやすい
選択肢2:売却して現金化する
物件を売却し、現金として相続するパターンです。
向いているケース
- 自分で賃貸経営をする意思がない、または本業との両立が難しい
- 物件の収益性が低い(空室が多い、築古で修繕費がかさむ)
- 相続人が複数いて、現金で分けた方が公平になる
- 相続税の納税資金を確保したい
メリット
- まとまった現金が手に入る
- 管理・修繕・空室対応などの手間から解放される
- 相続人間で公平に分割しやすい
デメリット
- 売却益が出ると譲渡所得税がかかる(所有期間5年超で約20%)
- 家賃収入という継続的なキャッシュフローがなくなる
- 売却までに時間がかかる場合がある
選択肢3:相続放棄する
借金(ローン残高など)が資産価値を上回る場合や、物件を引き継ぐメリットがない場合に選ばれる選択肢です。
向いているケース
- ローン残高が物件価値を大きく上回っている
- 物件の老朽化が激しく、修繕・解体に多額の費用がかかる
- 他の相続財産も含めて、債務超過の状態にある
注意点
- 相続放棄は相続開始から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述する必要がある
- 相続放棄をすると、賃貸物件だけでなくすべての相続財産を放棄することになる
- 一度放棄すると撤回できないため、慎重な判断が必要
経営継続か売却か、判断に迷ったときの考え方
「どちらが正解かわからない」という方は、次の3つの視点で整理してみてください。
視点1:収益性(キャッシュフロー)
- 年間の家賃収入はいくらか
- 管理費・修繕費・固定資産税・ローン返済を差し引いて、手元にいくら残るか
- 今後も同じ水準の収益が見込めるか(空室率・賃料相場の推移)
手元に残るお金がほとんどない、またはマイナスになる場合は、売却を優先的に検討する価値があります。
視点2:物件の将来性
- 立地は賃貸需要が見込めるエリアか
- 築年数は何年で、今後どの程度の修繕が必要か
- 競合物件と比べて、見劣りしていないか
将来的に収益が悪化する見込みが高い場合は、早めに売却して資金を他に振り向ける方が合理的なこともあります。
視点3:自分のライフプラン
- 自分で経営に関わる時間・意欲があるか
- 将来、子どもや家族に引き継がせたいか
- 家賃収入がなくても生活に困らないか
**「手間をかけたくない」「不動産経営に興味がない」**という場合は、無理に経営を続けるよりも、売却して現金化した方がストレスが少ないケースも多いです。
相続手続きの大まかな流れ
賃貸物件を相続する場合、以下のような流れで手続きが進みます。
| 手続き | 場所 | 期限の目安 |
| 遺言書の有無を確認 | 自宅・公証役場など | なるべく早く |
| 相続人の確定 | 市区町村役場(戸籍取得) | なるべく早く |
| 遺産・債務の確認 | 金融機関・法務局など | 2ヶ月以内目安 |
| 相続放棄の判断 | 家庭裁判所 | 3ヶ月以内 |
| 遺産分割協議 | 相続人間 | 3ヶ月以内目安 |
| 準確定申告(被相続人の所得税) | 税務署 | 4ヶ月以内 |
| 相続登記(名義変更) | 法務局 | 3年以内(義務化) |
| 相続税の申告・納付 | 税務署 | 10ヶ月以内 |
| 入居者への通知 | 入居者宛て | 相続確定後速やかに |
特に、相続放棄は3ヶ月、相続税申告は10ヶ月という期限があるため、早めの対応が重要です。
相続後、入居者への対応はどうする?
賃貸物件を相続した場合、入居者への対応も必要になります。
家賃の振込先変更
相続が確定したら、家賃の振込先(オーナーの口座)を変更する必要があります。
管理会社が入っている場合は、管理会社を通じて入居者へ通知してもらうのが一般的です。
オーナー変更の通知
入居者に対して、「オーナーが変わった」旨を書面で通知します。
賃貸借契約自体はそのまま引き継がれるため、入居者が退去する必要はありません。
管理会社との契約確認
親が契約していた管理会社との契約内容を確認し、継続するか変更するかを判断します。
管理会社を変更する場合は、引き継ぎ手続きが必要になります。
まとめ:まずは「現状把握」から始めよう
賃貸物件を相続したとき、「経営を続けるか」「売却するか」「放棄するか」という判断は、すぐに出せるものではありません。
大切なのは、感情や思い入れだけで決めず、物件の収益性・将来性・自分のライフプランを数字で整理することです。
まずは、物件の状況、ローン残高、相続税の概算を把握し、「この物件を持ち続けるとどうなるか」「売却するとどうなるか」をシミュレーションしてみてください。