【賃貸経営】賃貸経営をやめるときの税金対策|売却前に必ず押さえたい7つのポイント
2026/02/16
「そろそろアパート/マンションを手放そうかな」と思ったとき、最後に効いてくるのが税金です。
同じ価格で売っても、「売るタイミング」と「準備の有無」で手取りが数百万円単位で変わることもあります。
ここでは、賃貸経営をやめる前に知っておきたい税金の基本と、売却前に押さえたい7つのポイントを整理します。
目次
賃貸経営をやめるときに関わる税金の全体像
賃貸用のアパート・マンションを売却すると、主に次の税金が関わってきます。
- 不動産を売った利益にかかる税金(譲渡所得税:所得税+住民税+復興特別所得税)
- 売買契約書に貼る印紙税
- 抵当権抹消登記などに伴う登録免許税
このうち、オーナー側の工夫で大きく変わるのは「譲渡所得税」です。
譲渡所得は、ざっくり言うと次のように計算されます。
- 譲渡所得 = 売却価格 −(取得費+譲渡費用)
この「譲渡所得」に税率を掛けたものが、実際に払う税金です。
ポイントは、
- 売却価格を上げることだけでなく
- 取得費と譲渡費用(経費)をきちんと積み上げて、課税される“儲け”を小さくする
という視点を持つことです。
ポイント1:所有期間で税率が変わる「短期/長期」の違い
同じ価格で売っても、所有期間によって税率が変わります。
- 所有期間5年以下(短期譲渡)
→ 税率が高く、ざっくり約40%前後(所得税+住民税+復興税) - 所有期間5年超(長期譲渡)
→ 税率は約20%前後で、短期のほぼ半分程度
「いつ買った物件か」を登記簿で確認し、
- すでに5年超なのか
- もう少し待てば5年超になるのか
を必ずチェックしましょう。
もし売却を急いでいないのであれば、所有期間が5年を超えるタイミングまで待ってから売ることで、税率が半分近くに下がり、手取りが大きく変わるケースも少なくありません。
ポイント2:取得費をできるだけ積み上げて“儲け”を小さくする
譲渡所得は「売却価格 −(取得費+譲渡費用)」で計算されるため、取得費を適切に積み上げることが重要です。
取得費に含められるもののイメージは次のとおりです。
- 物件を買ったときの価格(土地+建物)
- 購入時の仲介手数料
- 登記費用・司法書士報酬
- 不動産取得税
- 売買契約書に貼った印紙税
- 過去に行った大規模修繕や増改築など、「資本的支出」にあたる工事費 など
特に見落とされがちなのが「資本的支出」です。
たとえば、
- エレベーターの入替
- 大規模なリノベーション
- 外壁の張り替えや屋上防水の全面更新
など、「価値や耐用年数を高める工事」は、取得費に足せるケースが多いです。
過去の工事の見積書・請求書・領収書をできるだけ集めておき、「どこまで取得費にできるか」を税理士などに一度チェックしてもらうだけでも、譲渡所得と税額が変わることがあります。
ポイント3:譲渡費用(売却時の経費)を漏れなく計上する
売却時にかかった費用(譲渡費用)も、「売却価格から差し引ける経費」です。
代表的なものは次のようなものです。
- 売却仲介の仲介手数料
- 測量費・境界確定費用
- 建物を壊して更地にして売る場合の解体費
- 広告・販売促進にかかった費用
- 売買契約書に貼る印紙税
- 入居者に退去してもらうために支払った立退料(条件を満たす場合) など
これらの領収書がなければ、税務上は「なかったもの」とみなされます。
売却を検討し始めたら、「売却関連の領収書や契約書はすべてファイルしておく」と決めておくと安心です。
ポイント4:複数物件があるなら「売却の順番」と「年」を分けて考える
複数の賃貸物件を持っている場合、どの物件を、どの年に売るかで税金が変わります。
イメージとしては:
- A物件:売却益+1,000万円
- B物件:売却損−400万円
この2つを同じ年に売ると、
- 1,000万円 − 400万円 = 600万円がその年の譲渡所得
として計算されます。
逆に、
- 利益が出る物件ばかりを同じ年に売る
- 損が出る物件は別の年に売る
という動きをすると、その年ごとの譲渡所得が大きくなり、税金も一気に増えます。
「複数物件持ち」の方は、
- どの物件は利益が出そうか
- どの物件は損が出そうか
をざっくり把握し、「どの年にどの物件を売るか」の組み合わせを考えることが税金対策になります。
ポイント5:使える特例・控除がないかだけは必ず確認する
賃貸専用物件の場合、自宅ほど大きな控除は使えないことも多いですが、条件によっては特例が使えるケースもあります。
例えば、
- 自宅兼賃貸だった期間がある場合
- 相続で取得した空き家を売却する場合
などは、「居住用財産」や「空き家の特例」といった特別控除が使える場合があります。
賃貸専用の1棟アパート・マンションでも、
- 一部に自宅を兼ねていた
- 相続で引き継いだ後、状況が変わった
といったケースでは判断が分かれることもあるため、「うちは対象になる可能性があるか」だけは、事前に専門家に確認しておくと安心です。
ポイント6:売却前に「税金前」と「税金後」の手取りを必ず見る
売却を検討するとき、つい「いくらで売れるか(売却価格)」に目が行きがちです。
しかし、オーナーにとって本当に大事なのは、税金を払ったあと、実際に手元にいくら残るかです。
簡単でも良いので、次の2つを比較してみてください。
- パターン1:今の価格・今年売った場合の手取り
- パターン2:所有期間が5年超になるまで待って売った場合の手取り
また、場合によっては、
- もう少し空室・修繕・賃料を改善してから売ったほうが、手取りが増える
- 逆に、これ以上持つと修繕・空室リスクが増え、トータルで手取りが減る
というケースもあります。
「査定価格 × 0.8くらいが手元に残るだろう」という感覚ではなく、
- 売却価格
- ローン残高
- 税金(ざっくりの譲渡所得税)
を一度数字で並べて見ることをおすすめします。
ポイント7:売る前に一度だけ“税金シミュレーション”をしてもらう
税金対策の肝は、「売却後」ではなく「売却前」に動くことです。
具体的には、売却の前段階で、
- 所有期間(短期/長期)の確認
- 取得費・譲渡費用になりそうな項目の洗い出し
- 売却価格・ローン残高を前提にした、ざっくりした譲渡所得税の試算
を一度、税理士や不動産に詳しい専門家に見てもらうのが理想です。
その結果を踏まえて、
- いつ売るか(今年or来年以降)
- どの物件から売るか(複数ある場合)
- どのくらいの売却価格を目指すか
を決めれば、「売ってみたら思ったより税金が多くてがっかりした」という事態を減らせます。
まとめ:撤退は「税金を見てから決める」と失敗しにくい
賃貸経営の撤退は、感情だけで決めると後悔が残りやすいテーマです。
「もう疲れたからすぐ売りたい」という気持ちも分かりますが、売却前に次の7つだけでも整理しておくと、手取りと納得感が大きく変わります。
- 所有期間(5年以下か5年超か)を確認する
- 取得費にできるものをできるだけ集めておく
- 譲渡費用(売却時の経費)を漏れなく計上できるようにする
- 複数物件がある場合は、売却の順番と年を考える
- 使える特例・控除がないかだけは専門家に確認する
- 「税金前」と「税金後」の手取りを比較してから決める
- 売却前に一度だけ、税金の簡易シミュレーションをしてもらう
このステップを踏んだうえで、「続ける・見直す・やめる」のどれを選ぶかを決めると、撤退後の後悔はぐっと少なくなります。
なお、「売却か相続か」「建替えか現金化か」など、どの出口を選ぶべきかについては、次の記事で「撤退の進め方・パターン」として整理していきます。