大規模修繕と大規模改修の違いは?定義や工事内容を解説
2024/05/04
築年数とともに気になるのが、マンションの大規模修繕・改修工事です。
どちらも建物の劣化を防ぎ、快適な居住環境を維持するために必要不可欠な工事ですが、実は「修繕」と「改修」には明確な違いがあります。
この違いを理解していないと、適切な工事内容の判断や、費用面でのトラブルに繋がる可能性もあるのです。
そこで今回は、大規模修繕と大規模改修の定義と、それぞれの特徴、具体的な工事内容などを分かりやすく解説します。
大規模修繕・改修をお考えの方は、参考にしてください。
目次
大規模修繕と大規模改修工事の違い
大規模修繕と大規模改修の違いとは、いったい何でしょうか。
結論から言えば、大規模修繕と大規模改修工事は、建物の劣化を回復させる「修繕」と、性能や機能を向上させる「改修」という、2つの目的の違いがポイントです。
以下では、それぞれの目的、工事内容、費用、工期、適切な工事の選び方などを表にまとめました。
| 大規模修繕 | 大規模改修 | |
| 目的 | 建物の劣化を回復し、当初の性能・機能を維持すること | 建物の性能や機能を向上させ、現代のニーズに合わせた快適な住環境を実現すること |
| 工事対象 | 外壁、屋上、バルコニー、共用部分の鉄筋コンクリート、給排水管、電気配線など | 耐震補強、バリアフリー化、省エネ対策、セキュリティ強化、デザイン改修など |
| 工事内容 | 劣化部分の補修・交換 | 新たな設備の設置・改修 |
| 費用 | 比較的低額 | 比較的高額 |
| 工期 | 数ヶ月 | 約半年〜1年 |
このように、大規模修繕と大規模改修工事は、それぞれ目的や工事内容が異なります。
建物の状況や将来性を総合的に判断し、適切な工事を選択することで、資産価値の向上と快適な住環境の維持を実現することが重要です。
大規模修繕・改修工事が必要な理由
マンションやビルなどの建物は、年月を重ねることで劣化現象が発生します。
大規模修繕・改修工事は、こうした建物の劣化を食い止め、安全で快適な住環境を維持するために必要不可欠です。
具体的な理由は、以下の通りです。
建物の劣化を防ぎ、資産価値を守る
築年数を重ねたマンションは、雨風や紫外線、地震などの影響で徐々に劣化していきます。
こうした劣化を放置すると、建物の安全性や耐久性が低下し、将来的に多額の修繕費用が必要になるだけでなく、資産価値の著しい下落にも繋がってしまいます。
そこで重要となるのが、大規模修繕・改修工事です。
これらの工事は、建物の劣化を補修・回復させ、資産価値を守るために欠かせません。
建物の状態や劣化状況を把握し、適切な工期に適切な工事を選択することが重要です。
快適な居住環境を維持する
大規模修繕・改修工事は、建物の劣化を防いで資産価値を守るだけではありません。
住む人の生活をより快適で安全なものにする効果があります。
具体的な対策は、以下の通りです。
- 給排水管の改修
- 電気配線の改修
- バリアフリー化
- 省エネ対策
大規模修繕・改修工事の費用は、決して安いものではありません。
しかし、将来を見据えた投資として捉え、工事を選択することが重要です。
建築基準法に基づく
建築基準法では、建物は人命や財産を保護するために必要な耐久力、防火性能、衛生性などを備えていることが求められています。
しかし、建物は経年劣化によってこれらの性能が低下していくものです。
大規模修繕・改修工事は、こうした劣化部分を補修・改修することで、建物の安全性を確保し、建築基準法の要求事項を満たすようにします。
具体的な工事は、以下の通りです。
- 外壁のひび割れや塗装劣化の補修
- 屋上やバルコニーの防水層の補修
- 鉄筋コンクリートのひび割れや中性化の補修
このように、大規模修繕・改修工事は、建物の安全性、居住性、資産価値を維持・向上させるために必要不可欠なものです。
建築基準法に基づいた、適切な工事を計画・実施しましょう。
大規模修繕・改修工事の周期とタイミング
大規模修繕・改修工事の周期は、一般的に12年~15年程度と言われています。
これは、建築基準法で定められている外壁の打診調査の時期とタイミングが関係しています。
また、以下のような場合においても、修繕や改修の検討が必要です。
築年数
大規模修繕・改修工事の周きやタイミングは、建物の築年数が関係してきます。
例えば、外壁の全面打診調査は、築10年を経過したタイル貼りのマンションなどを対象として、3年以内に実施することが義務付けられています。
この調査によって、外壁の劣化状況を把握し、修繕工事の必要性を判断するのです。
ただし、12年という周期はあくまでも目安であり、建物の状態や使用状況によって適切な周期は異なります。
具体的には、以下のような建物は、工事のタイミングが早まる可能性があります。
- 海沿いに立地しているマンション
- 雨が多い地域に立地しているマンション
- 共用部分を頻繁に利用するマンション
修繕積立金の状況
大規模修繕・改修工事のタイミングは、修繕積立金の状況を踏まえて判断する必要があります。
修繕積立金とは、将来必要となる大規模修繕・改修工事の費用に備えるために、毎月一定額を積み立てるものです。
管理組合は、長期修繕計画に基づいて、修繕積立金の額を定めます。
一般的に、大規模修繕・改修工事の費用は、修繕積立金の総額の70%程度とされています。
つまり、修繕積立金の残高がおよそ70%に達したタイミングが、大規模修繕・改修工事の開始時期となるのです。
ただし、修繕積立金の額はあくまでも目安であり、実際の工事費用は、建物の状況や工事内容によって大きく異なる場合があります。
そのため、修繕積立金の残高だけでなく、建物の劣化状況や専門家の意見なども参考に、総合的に判断することが重要です。
建物の状態
大規模修繕・改修工事の適切な周期とタイミングを判断するためには、まず建物の状態を把握することが重要です。
具体的には、以下の点を確認する必要があります。
- 外壁:ひび割れ、塗装劣化、色あせなど
- 屋上・バルコニー:防水層の劣化、ひび割れ、水たまりなど
- 鉄筋コンクリート:ひび割れ、中性化、錆びなど
- 給排水管:漏水、サビ、水垢など
- 電気配線:老朽化、発熱、感電リスクなど
- バリアフリー設備:段差、滑りやすい床、手すり不足など
これらの状態を専門家に調査してもらい、劣化状況を把握しましょう。
大規模修繕・改修工事は、多額の費用がかかるため、慎重に判断する必要があります。
建物の状態や長期修繕計画を踏まえ、専門家の意見を取り入れることが重要です。
大規模修繕・改修工事の費用相場
国土交通省から公表されている資料「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、1戸あたりの大規模修繕・改修工事の平均費用は、約81万〜100万円です。
ただし、建物の規模や、工事内容によって費用は増減します。
ここでは、規模別、工事別の費用相場について解説します。
規模別の費用相場
建物の戸数ごとの費用相場は、以下の通りです。
| 戸数 | 費用相場 |
| 20戸 | 約1,500万〜2,000万円 |
| 40戸 | 約3,200万〜4,800万円 |
| 100戸 | 約1億〜1億5,000万円 |
| 200戸 | 約2億4,000万〜3億6,000万円 |
上記の金額はあくまで目安です。
また、設計監理費、仮説工事費が工事費用の約5~10%かかります。
さらに、各種申請手数料、廃棄物処理費用も加算されます。
施工業者によって金額は変動するため、見積もりを取って確認しましょう。
工事別の費用相場
工事別の費用相場は、以下の通りです。
| 工事の種類 | 単価 | 概算費用 |
| 外壁塗装 | 約3,000〜7,000円/㎡ | 約100万〜300万円 |
| 防水工事 | 約4,000〜8,000円/㎡ | 約200万〜400万円 |
| 躯体補修 | 約1万〜3万円 | 約500万〜1,500万円 |
| 給排水管改修 | 約5,000〜1万円/m | 約250万〜500万円 |
| 電気配線改修 | 約6,000〜1万円/m | 約300万〜500万円 |
こちらも、上記の費用に設計管理費、仮説工事費、各種申請手数料、廃棄物処理費用が加算されます。
大規模修繕・改修工事の流れ
大規模修繕・改修工事は、一般的に以下のような流れで行われます。
準備段階
準備段階の進め方としては、以下の手順が一般的です。
- 修繕委員会の設置
- 建物の調査診断
- 長期修繕計画の作成
- 情報公開・住民説明会の開催
- 施工業者の選定
- 資金調達
- 工事スケジュール策定
準備段階においては、しっかりと計画を立てることで、円滑な工事の実施と、その後の快適な住環境の実現に繋がります。
工事段階
工事請負契約を締結した施工業者が、以下の工事を行います。
仮設工事
仮設工事は、工事現場の安全確保や作業スペース確保のために行う工事です。
主な仮設工事には、足場設置、仮設通路設置、養生などがあります。
近隣住民への配慮を忘れずに、丁寧な施工を行います。
下地補修工事
下地補修の工程は、一般的には以下の手順で行われます。
- 高圧洗浄
- 劣化状況の調査
- 欠損部の補修
- ひび割れの補修
- 表面処理
- 乾燥
下地補修は必要に応じて行われるものです。
ただし、建物の状態や劣化状況によって異なります。
外壁補修工事
外壁補修は、建物の外観を美しく保ち、雨水の侵入を防ぐ重要な役割を担っています。
外壁補修の種類は以下の通りです。
- 外壁塗装
- タイル張り替え
- コンクリートの劣化補修(ひび割れ・浮き)
- 外壁の洗浄
外壁の材質によって、補修の種類は異なります。
外壁補修工事が完了したら、専門業者によって塗装の仕上がりや補修状況などの最終検査が行われます。
シーリング工事
シーリング工事は、大規模修繕・改修工事の中でも重要な工事の1つです。
シーリング材と呼ばれるゴム状の材料を、外壁やサッシなどの隙間などに充填することで、雨水の侵入や空気の出入りを防ぎ、建物の劣化を抑制します。
シーリング工事の手順は、以下の通りです。
- 既存シーリング材の撤去
- 撤去した箇所の清掃
- プライマーの塗布
- シーリング材の充填、均等化
- 養生
- 仕上げ
場合によって、バックアップ材と呼ばれる発泡材を、シーリング材の充填箇所に設置します。
バックアップ材は、シーリング材の形状を保持し、沈下を防ぐ効果があります。
塗装工事
塗装作業は、一般的に下塗り、中塗り、上塗りの3回に分けて行います。
塗料を塗り重ねることで、厚みのある膜を作り、耐久性を向上させます。
塗装工事は、天候や気温に左右されるため、スケジュール通りに進まない場合もあるので注意が必要です。
防水工事
防水工事は建物の劣化を防ぎ、資産価値を維持するために欠かせない重要な工事です。
選定した防水材を、所定の方法で施工します。
防水層の種類によって、施工方法は異なります。
外壁やバルコニーなどの立ち上がり部分には、シート防水や金物防水などの方法による施工が必要です。
また、排水口やドレン廻りには、水漏れを防ぐための処理を行います。
その他(バルコニー、廊下、エレベーターなど)
上記以外では、バルコニー、廊下、エレベーターなどの工事が行われます。
工事中は、騒音や振動など、住民生活に影響を与える可能性があります。
事前に住民への説明を徹底し、可能な限り迷惑をかけないよう配慮が必要です。
完了段階
工事が完了したら、検査を行い、問題がないことを確認します。
その後、住民に完了報告を行い、引き渡しとなります。
工事完了後も、定期的な点検やメンテナンスを行い、建物の状態を維持することが重要です。
また、保証期間中は、不具合が発生した場合に備えて、工事業者に連絡できる体制を整えておく必要があります。
大規模修繕・改修工事の成功のコツ
大規模修繕・改修工事は多額の費用がかかるため、慎重な計画・実施が重要です。
ここでは、大規模修繕・改修工事の成功のコツについて解説します。
長期的な視点で計画を立てる
大規模修繕・改修工事の成功には、長期的な視点に立った計画が不可欠です。
長期修繕計画とは、建物の劣化状況に基づいて、将来必要となる修繕工事の内容、費用、時期などを計画的に定めたものです。
具体的には、以下の項目を盛り込む必要があります。
- 修繕すべき部位:外壁、屋上、バルコニー、鉄筋コンクリート、給排水管、電気配線など
- 修繕内容:補修、改修、取替など
- 修繕時期:築後〇年頃、築後〇年頃など
- 修繕費用:概算費用
長期修繕計画は、あくまでも目安であり、建物の状態や社会情勢の変化によって変更されることもあります。
長期修繕計画は、管理組合が主体となって策定され、専門家や修繕積立金コンサルタントなどの協力を得ながら、建物の状況や住民の意見を踏まえ、慎重に検討を進めることが重要です。
住民の合意形成を図る
大規模修繕・改修工事はできるだけ早い段階で住民に情報公開し、計画や工事に必要な理由、費用などを説明することが重要です。
具体的には、以下のような方法で情報公開を行います。
- 定期的な住民説明会を開催する
- パンフレットや資料を作成し、配布する
- ウェブサイトや掲示板を活用する
情報公開は、定期的に行うことが重要です。
住民が工事について理解し、意見を述べられる機会を設けることで、合意形成をスムーズに進められます。
また、事前に住民の意見を積極的に聞くことも重要です。
住民の意見を聞くことで、住民のニーズや不安が把握できます。
これらの意見を踏まえて計画や工事を検討することで、住民の合意を得やすくなります。
信頼できる専門業者を選ぶ
大規模修繕・改修工事は多額の費用がかかるため、成功させるためには慎重な業者選びが重要です。
具体的には、以下のポイントを押さえておくと良いでしょう。
- 業者の施工実績
- 資格・免許の有無
- 業者の対応力
- 業者の評判口コミ
上記のポイントを参考に、慎重に業者選びを進めることで、安心安全な工事を進めることができます。
なお、トラブルを避けるためには、契約内容をしっかりと確認し、書面で取り交わしておくことも忘れないことです。
複数の業者から見積もりを取る
信頼できる専門業者を選ぶためには、複数の業者から見積もりを取ることも重要です。
見積もりを取る際には、以下の点に注意する必要があります。
- 見積もりの内容(工事内容、費用、スケジュールなど)を比較する
- 工事内容や費用について疑問点があれば、遠慮なく質問する
- 保証やアフターフォローの内容を確認する
複数の業者から見積もりを取ることで、相場を知ることが可能です。
また、各業者の強みや弱みを比較検討できます。
工事内容を明確にする
大規模修繕・改修工事の成功には、長期的な視点に立った計画に基づいた、具体的な工事内容を明確にすることが不可欠です。
具体的には、以下の工事内容を明確にしておきましょう。
- 修繕すべき部位の特定
- 修繕内容の検討
- 具体的な仕様の決定
必要な工事が明確になったら、工事内容を詳細に定めた仕様書を作成します。
仕様書には、修繕・改修する部位、修繕・改修内容、具体的な品質基準、施工完了後の検査方法などの記載が必要です。
仕様書は、複数の業者から見積もりを取る際に必要となるだけでなく、工事の品質管理やトラブル防止にも役立ちます。
スケジュールを管理する
大規模修繕・改修工事は多額の費用がかかり、長期にわたるため、スケジュール管理が重要となります。
また、大規模修繕・改修工事の円滑な進捗には、詳細な工程表を作成することが不可欠です。
工程表には、以下の項目を盛り込む必要があります。
- 各工程の工事内容
- 各工程の開始・終了予定日
- 各工程を担当する業者
- 検査や住民説明会などの重要な節目
工程表は、工事全体の進捗状況を把握し、関係者間で共有するために重要です。
工程表に基づくことによって、必要な資材や人員を確保し、工事をスムーズに進められます。
工程表は、工事計画の初期段階で作成し、必要に応じて随時更新する必要があります。
住民への情報提供を徹底する
工事の円滑な進捗と成功のためには、住民への情報提供を徹底することが重要です。
大規模修繕・改修工事は、住民にとって大きな負担となる可能性があります。
工事の内容やスケジュール、費用などを事前に十分に理解しておくことは、住民の不安を解消し、円滑な工事進行に不可欠です。
具体的な情報提供の方法は、説明会の開催やパンフレット、冊子、ニュースレターの配布などがあります。
また、工事に関する情報をまとめたウェブサイトを作成することで、住民はいつでも必要な情報の確認が可能になります。
トラブルに備える
多額の費用がかかる大規模修繕・改修工事は、トラブルが発生しやすい側面も持ち合わせています。
トラブルを未然に防ぎ、スムーズな工事進行を実現するためには、事前の準備と対策が不可欠です。
一般的なトラブルには、以下のようなものがあります。
- 当初の見積もりよりも費用が膨らんでしまった
- 悪天候や資材不足による工事の遅延
- 施工業者のミスや手抜き工事による品質問題
これらのトラブルに備えるために、契約書には、工事の遅延や費用の増加が発生した場合のペナルティ規定を盛り込んでおきましょう。
また、工事監理を徹底し、問題が発生した場合は迅速に対応することも重要です。
大規模修繕・改修工事は、建物の寿命を延ばし、住環境を向上させるための重要な取り組みです。
事前にしっかりと準備し、トラブルに備えることで、工事を成功させられます。
まとめ
ここまで、大規模修繕と大規模改修の違いについて解説してきました。
この記事の要点は、以下の通りです。
- 大規模修繕・改修工事は、建物の劣化を回復させる「修繕」と、性能や機能を向上させる「改修」という、2つの目的がある
- 修繕の工事内容:外壁、屋上、バルコニー、共用部分の鉄筋コンクリート、給排水管、電気配線など
- 改修の工事内容:耐震補強、バリアフリー化、省エネ対策、セキュリティ強化、デザイン改修など
- 修繕費用は比較的低額で、改修費用は比較的高額になる
- 工期は、修繕で数ヶ月、改修は約半年から1年
- 適切な工事の選び方は、建物の状態、修繕積立金の状況、長期修繕計画、信頼できる専門業者などをふまえることが重要
- 大規模修繕・改修工事成功のコツ:長期的な視点で計画を立てる、住民の合意形成を図る、信頼できる専門業者を選ぶ、工事内容を明確にする、スケジュールを管理する、住民への情報提供を徹底する、トラブルに備える
大規模修繕・改修工事は、建物の寿命を延ばし、住環境を向上させるための重要な取り組みです。
事前にしっかりと準備し、トラブルに備えることで、工事を成功させ、建物の資産価値を守れるでしょう。
ぜひ、この記事を参考に大規模修繕・改修工事を成功させてください。