【賃貸経営】「ローン完済まで待てば安心」と決めつけると判断を誤りやすい理由
2026/01/27
賃貸経営をしていると、「とりあえずローンが終わるまでは売らずに持っておこう」「完済してから売るかどうか考えればいい」という発想になりがちです。
ローンがなくなれば毎月の返済負担がゼロになり、家賃が「ほぼ丸ごと手残りになる」というイメージも手伝って、「完済=ゴール」「完済=安心」という感覚を持ちやすいのは自然なことかもしれません。
ただ、「ローン完済まで待てば安心」という考え方をそのまま信じ込んでしまうと、かえって判断のタイミングを誤ってしまうケースがあります。
築年数・修繕リスク・エリアや市況の変化など、物件側の条件はローンの残り年数とは別に進んでいくため、「完済まで待つこと」自体がリスクになる場合もあるのです。
この記事では、「ローン完済まで待てば安心」と考えたくなる心理と、その裏に潜む落とし穴を整理します。
そのうえで、「完済前に考えておいた方が良いこと」「完済をどんな“通過点”として位置付けるか」のヒントをお伝えします。
目次
なぜ「ローン完済=ゴール」と思い込みやすいのか
ローンを組んで賃貸物件を購入したオーナーにとって、「完済」という言葉は強い安心感を伴います。
- 毎月の返済がなくなり、家賃がほとんどそのまま残るイメージ。
- 銀行からの借入がなくなり、“負債ゼロ”という心理的な軽さ。
- 「ローンを完済した」という達成感や、自分なりの区切り。
こうしたプラスのイメージがあるため、「完済までは売らない」「完済してから次を考える」という前提で動いてしまいやすくなります。
また、「売るなら、ローンが残っているうちより、完済してからの方がスッキリしていて分かりやすい」と感じる方も多いでしょう。
実際には、ローン残債があっても売却は可能であり、売却代金で一括完済して抵当権を抹消する形が一般的ですが、「ローンありの売却」はイメージしづらい、という心理的ハードルがあります。
問題は、この「心理的なスッキリ感」が、「経済的にも完済まで待つのが有利」という印象を生みやすいことです。
その結果、築年数や修繕リスク、市場環境の変化といった“物件側の時間”を見落とし、「完済時期」を中心に判断してしまうリスクが出てきます。
完済を待つあいだに、物件側の条件は進んでいく
ローンの返済スケジュールは、「借りた時点」である程度固定されています。
一方で、物件そのものの状態や周囲の環境は、ローンとは関係なく変化していきます。
- 築年数は毎年1年ずつ増えていく。
- 外壁や屋上防水、設備・配管などの劣化は、待ってくれない。
- 近隣の新築供給やリノベ物件の増加で、競争環境が変わる。
- 金利や融資姿勢、税制など、外部の条件も動いていく。
たとえば、
- 今が築22年で、ローン完済は10年後(築32年)という物件。
を考えてみます。
「完済まで待てば、ローンなしの物件として家賃が丸々入ってくる」という見え方をしがちですが、その10年の間に、
- 大規模修繕(外壁・防水・共用部など)の必要性が高くなる。
- 設備の入れ替えや内装の入れ替えに、まとまった費用がかかる。
- 周辺に新しい物件が増え、今と同じ家賃を維持するのが難しくなる。
といった変化が起きる可能性があります。
つまり、「完済時点の家賃収入-諸経費」が、今の感覚と同じとは限らない、ということです。
完済を待つあいだに、物件側の“消耗”が進んでいくため、「ローンは終わったが、修繕や空室リスクの負担が重くなっている」という状態になりかねません。
場合によっては、
- ローンが残っていても、まだ築浅〜築中期のうちに売却した方が、トータルの手残りが良かった。
というケースもあります。
完済のタイミングだけに意識を集中してしまうと、こうした「途中で選べたはずの出口」を見逃してしまうリスクがあるのです。
「完済前」「完済後」で何が変わるのかを整理しておく
ローン完済を「ゴール」ではなく、「条件が変わる節目」として捉えると、見える景色が変わります。
【完済前の特徴】
- ローン返済があるため、毎月のキャッシュフローにはプレッシャーがある。
- その分、「利息+元本返済」で借入を強制的に減らしている状態。
- 売却する場合は、売却代金からローン残債・諸費用を差し引いた「手取り」を見る必要がある。
【完済後の特徴】
- ローン返済がないため、毎月のキャッシュフローは一気に楽になる。
- その一方で、「金融機関から見たレバレッジを使った投資」という意味合いは薄くなる。
- 売却したときは、売却代金の大部分が「そのまま手取り」になるが、築年や状態次第では価格は下がっている可能性がある。
ここで大事なのは、
- 完済前に売るメリット・デメリット。
- 完済後に売るメリット・デメリット。
を、ざっくりでも言語化しておくことです。
たとえば、
- 「完済前だけれど、築年や修繕リスクを考えると、今の方が高く売れる。ローンを整理して次の投資に回した方が、自分には合っている」
- 「完済まであと数年で、築年もまだそこまで古くない。完済後も一定期間は家賃を得ながら保有し、そのうえで出口を考えたい」
といったように、「自分がどちらのパターンに近いのか」を意識しておくだけでも、完済を待つ/待たないの判断が“自動操縦”にならずに済みます。
また、完済後に「売るかどうか」を考え始めるのではなく、
- 完済前に一度査定を取り、「今売った場合の手取り」を把握しておく。
- 自分のライフプランや他の資産状況を踏まえ、「完済後も持ち続けるかどうか」の仮の方針を持っておく。
といった準備をしておくことで、「完済したけれど、どうするか決めていない」という宙ぶらりんの状態を避けやすくなります。
まとめ|「完済すれば安心」ではなく、「完済をどう位置づけるか」を決めておく
「ローン完済まで待てば安心」という考え方は、心理的にはとても自然ですが、賃貸経営の現実を踏まえると、それだけで判断するのは危うい面があります。
- 物件側の時間(築年数・修繕リスク・競合環境)は、ローンとは関係なく進んでいく。
- 完済前にも、条件次第では「今動いた方がいい」局面があり得る。
- 完済後も、築年や状態によっては「思ったほど楽ではない」可能性がある。
こうした前提を踏まえたうえで、
- 自分は完済を「ゴール」ではなく、「一つの節目」としてどう位置づけるのか。
- 完済前・完済後で、物件と自分の条件がどう変わるのか。
を、一度整理してみることが大切です。
「完済するまで何も考えない」ではなく、「完済を見据えながら、その前後で取りうる選択肢をイメージしておく」。
その一歩が、「ローン完済」という言葉に振り回されず、賃貸経営の出口を主体的に選ぶための土台になっていきます。