2024.02.16
屋上防水層の劣化現象とその原因は?耐用年数やメンテナンス方法などを解説
屋上は、雨風や紫外線など厳しい環境に常にさらされています。
そのため、防水層は経年劣化によって機能が低下し、雨漏りなどのトラブルが発生する可能性があります。
雨漏りは、天井や壁のシミやカビ、建物の腐食など、住環境の悪化や建物の構造的な損傷を引き起こす深刻な問題です。
この記事では、屋上防水層の劣化現象とその原因、耐用年数、そして適切なメンテナンス方法について解説します。
定期的な点検と適切なメンテナンスを行うことで、雨漏りなどのトラブルを防ぎ、快適な住環境を維持することができます。
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屋上防水の劣化症状
屋上防水層は、経年劣化によって機能が低下し、さまざまな劣化症状が現れます。
防水材料別の劣化症状については、以下のとおりです。
露出アスファルト防水の代表的な劣化症状
露出アスファルト防水は、長期の紫外線暴露により、保護塗料が消失したり、防水層に膨れや口開きが発生したりする傾向にあります。
国土交通省の調査によると、15年を経過した露出アスファルト防水の約6割に何らかの劣化が見られました(データは2015年)。
紫外線の影響で塗膜が劣化し、下層の防水層まで影響が及ぶためです。
保護塗料の消失
塗膜が剥がれ落ち、アスファルトが直接日光にさらされる。
防水層の膨れ
アスファルトの熱膨張により、防水層が膨らむ。
防水層の口開き
温度変化による伸縮で防水層にひび割れが入る。
アスファルト防水保護コンクリートの劣化現象
アスファルト防水上の保護コンクリートでは、ひび割れや伸縮目地の突出、防水層の押し出しなどの劣化が見られます。
コンクリートは硬く脆い素材のため、温度変化による伸縮や漏水の影響を受けやすく、下地の防水層の変形も招きます。
リフォームの際の調査で、このような劣化が6割以上の物件で確認されています(2018年データ)。
ひび割れ
温度変化によりコンクリートにひび割れが入る
伸縮目地の突出
伸縮目地部分のコンクリートが押し上げられる
防水層の押し出し
コンクリートの亀裂から防水層が押し出される
塩化ビニルシート防水の劣化現象
シート防水では、皺の発生やシートの破断、ディスクの浮きなどの劣化が起こります。
シートは熱膨張係数が高く、温度変化の影響を受けやすい素材です。
施工時の張り過ぎや漏水の浸入などが原因で、劣化が進行します。
全国の公共建築物の調査では、20年経過したシート防水の7割以上に何らかの劣化がみられました(2020年データ)。
皺の発生
温度変化による伸縮でシートに皺ができる
ディスクの浮き
固定ディスクの浮き上がり
シートの破断
皺からさらに劣化が進み、シートが裂ける
ゴムシート防水の劣化症状
ゴムシートではシートの劣化により、皺の発生やシート破断、シートの口開きなどの不具合が見られます。
ゴムシートは耐久性に優れた素材ですが、紫外線や温度変化の影響を完全には避けられません。
適切な施工と定期的な維持管理が重要です。
首都圏の実績から、15年経過したゴムシート防水の約3割に何らかの劣化が見られました(2021年データ)。
皺の発生
温度変化による伸縮で皺が生じる
シート破断
皺部分からさらに劣化が進み破断する
シートの口開き
伸縮で接合部分から口が開く
ウレタン塗膜防水の代表的な劣化症状
ウレタン塗膜防水では、チョーキング現象や塗膜の減耗、塗膜の破断などの劣化が見られます。
ウレタン塗膜は紫外線や水分の影響を受けやすい材料です。
10年を超えるとこうした劣化が顕在化してきます。
管理状況により劣化の進行度合いは異なりますが、首都圏の調査では15年を経たウレタン塗膜防水の7割以上に何らかの劣化がみられました(2019年データ)。
チョーキング現象
塗膜表面が白くくすむ
塗膜の減耗
塗膜が徐々に薄くなる
塗膜の破断
ひび割れが入り、最終的に塗膜が剥がれ落ちる
シングル葺きの劣化現象
シングル葺き屋根では、シングル材の砂落ちや破断、欠損などの劣化が確認されています。
シングルは樹脂やアスファルトが素材です。
太陽光や雨風、温度変化の影響を受けやすく、15年を超えると劣化が進行します。
全国の公共施設の調査から、築20年を超えるシングル葺きの約8割に何らかの劣化がみられました(2017年データ)。
シングル材の砂落ち
表面の塗装やパラフィンが剥がれ、粒子が落ちる
シングル材の破断
亀裂が広がり、シングル材が割れる
シングル材の欠損
シングル材が部分的に失われる
屋上防水に使う塗料別の劣化症状
ウレタン塗膜防水
ウレタン塗膜防水は、液体状のウレタン樹脂を塗布して形成する防水層です。
優れた防水性と弾力性を持ち、屋上やベランダなどの防水に使用されています。
しかし、ウレタン塗膜防水も経年劣化によって機能が低下し、さまざまな劣化症状が現れます。
- ひび割れ:塗膜が乾燥収縮によってひび割れ、雨水が浸入している
- 浮き:防水層の下地に水分が含まれ、塗膜が膨らみ浮いてきている
- 剥がれ:塗膜が下地から剥がれている
- 色褪せ:紫外線などの影響で、塗膜の色が褪せている
- チョーキング現象:表面が粉状になり、白い粉が付着している
これらの症状は、防水層の表面が劣化し、防水性が低下していると考えられます。
放置すると、雨漏りなどの深刻なトラブルが発生する可能性があり注意が必要です。
シート防水
シート防水は、塩化ビニールやゴム製のシートを専用の接着剤や機械で施工箇所に固定し、水の侵入を防ぐ防水工事です。
シート防水の劣化症状は、以下のようなものが挙げられます。
- 膨れ:シート防水の下地に水分が侵入し、水蒸気となってシートを押し上げることで発生
- 破れ:台風などの強風による飛来物や、歩行による摩擦などによって発生
- 剥がれ:シート防水と下地の接着力が低下することで発生
- シワ:シートの施工が不十分な場合、下地の動きや経年劣化によって発生
- ディスクの浮き:シート防水層に設けられた円形の固定ディスクが浮き上がってしまう現象
- シートの口開き:シート防水材同士の接合部や、シートと立ち上がり部分の接合部が剥がれ、隙間が生じる現象
- 水たまり:シートが破損していると、水が浸入して水たまりが発生する
シート防水の劣化の原因は、経年劣化や施工不良などが考えられます。
雨漏りになる前に、早急な対処が必要です。
アスファルト防水
アスファルト防水は、アスファルトを主材料とする防水工法です。
他の防水工法に比べて耐久性が高く、適切な施工とメンテナンスを行えば20年以上もつこともあります。
アスファルト防水の劣化症状は、以下のとおりです。
- ひび割れ:経年劣化や温度変化などで防水層が伸縮し発生する
- 色褪せ:紫外線や酸性雨の影響で引き起こされる
- 防水層の口開き:経年劣化によるアスファルトの硬化・収縮により、防水層が徐々に剥離する
- 膨れ:アスファルト防水の下地に水分が残っていると、水分が蒸発して水蒸気となり、アスファルト防水を押し上げる
- 押出し:建物の温度変化や沈下によってアスファルト防水層が膨張・収縮して発生する
- 伸縮目地の突出:アスファルト防水層が劣化すると、伸縮目地の動きを吸収できなくなり、突出が発生する
アスファルト防水は、防水層だけでなく、パラペットの天端及び立上りや、立上り押え金物シール、ドレン周りも劣化が進行しやすい箇所です。
定期的な点検で早期発見、早期補修を心がけましょう。
FRP防水
FRP防水とは、繊維強化プラスチック(FRP)を用いた防水工法です。
FRPは、ガラス繊維などの補強材とポリエステル樹脂などの樹脂を組み合わせた素材で、軽量で強靭、耐水性・耐食性・耐候性に優れているのが特徴です。
FRP防水の劣化症状は、以下のようなものが挙げられます。
- 膨れ:FRP防水の下地に水分が含まれている場合、水蒸気となってFRP防水層を押し上げ、膨れが発生する
- 剥がれ:紫外線や外部からの衝撃で防水層が剥がれやすくなります
- ひび割れ:経年劣化や下地の動きに追従できない場合、ひび割れが発生する
- 水たまり:排水勾配の不良や下地の不陸によって水たまりが発生する
放置すると、下地の劣化にとどまらず、建物の構造部分にまで影響が出てしまいます。
上記の劣化症状を確認したら、早急に業者へ連絡しましょう。
屋上の防水層が劣化する原因
屋上の防水層は、雨水などの侵入を防ぎ、建物を保護するために重要な役割を担っています。
しかし、経年劣化やさまざまな要因によって防水層は劣化し、雨漏りなどのトラブルが発生する可能性があります。
屋上の防水層が劣化する主な原因は以下のとおりです。
紫外線の影響
太陽光に含まれる紫外線は、防水層を構成する材料を劣化させます。
特に、アスファルト防水やシート防水は紫外線に弱いため、定期的なメンテナンスが必要です。
排水溝の詰まり
排水溝の詰まりは、屋上の防水層の劣化に大きく影響する要因の一つです。
排水溝が詰まると、雨水が屋上に溜まり、防水層に負荷がかかります。
強風や台風などで飛ばされた落ち葉やゴミが排水溝に溜まり、詰まりの原因となります。
メンテナンス不足
屋上の防水層は、メンテナンス不足によって防水性能が低下し、雨漏りなどのトラブルが発生する可能性があります。
定期的な点検・清掃を行わないと、防水層にゴミやコケなどが蓄積し、排水不良や防水層の劣化を招きます。
また、小さなひび割れや剥がれなどの初期症状を放置すると、症状が進行し、大きな修繕が必要になる可能性が高いです。
パラペット・笠木の劣化
パラペットや笠木は、屋上の防水層を守るために重要な役割を果たしています。
しかし、パラペットや笠木自身が劣化すると、防水層に悪影響を及ぼし、雨漏りの原因となることがあります。
特に、パラペットや笠木の接合部の隙間が最も劣化しやすい箇所です。
屋上防水の劣化によるリスク
屋上防水の劣化によって、以下のようなリスクが考えられます。
小さな劣化だと放置していると、後になって大規模な補修が必要になる可能性が高いので注意しましょう。
屋上防水の劣化によるリスク|雨漏り
屋上の防水層が経年劣化によって性能が低下し、雨漏りが発生すると以下のようなリスクがあります。
- 建物の構造体の腐食
- カビやコケの発生
- 室内設備の故障
また、雨漏りが発生した建物は、資産価値が低下します。
屋上防水は、定期的に点検を行い、劣化の兆候がないか確認することが重要です。
屋上防水の劣化によるリスク|美観の低下
防水層が劣化すると、表面にひび割れや剥がれなどが発生し、建物の美観が低下します。
美観が低下した建物は、売却や賃貸に出す際に、資産価値が低下する可能性があります。
屋上防水の劣化によるリスク|建物の寿命の短縮
屋上防水の劣化は、建物の構造体や設備を腐食させ、建物の寿命を短縮する原因となります。
また、建物の寿命を短縮するだけでなく、健康被害や資産価値の減少などのリスクも伴います。
定期的な点検とメンテナンスを行い、屋上防水を良好な状態に保つことが重要です。
屋上防水の効果的な劣化対策
屋上防水は、建物を雨漏りから守るために重要な役割を果たします。
しかし、屋上防水は経年劣化によって性能が低下し、雨漏りなどのトラブルが発生する可能性があります。
屋上防水の劣化を防ぐためには、以下の対策が有効です。
屋上防水の劣化対策|定期的な点検
屋上防水の劣化を防ぐためには、定期的な点検が重要です。
以下の箇所を重点的に点検しましょう。
- 防水層表面にひび割れ、剥がれ、膨れなどがないか
- 排水口周辺に水たまりがないか
- パラペットや笠木にひび割れ、剥がれ、隙間などがないか
点検は、年に2回程度行うことで、小さな劣化症状を見逃さずに済みます。
屋上防水の劣化対策|定期的なメンテナンス
屋上防水の劣化を防ぐためには、定期的なメンテナンスが重要です。
特にトップコートの塗り替えや、ひび割れの補修が有効です。
トップコートは、防水層表面を保護する役割があり、5~10年程度を目安に塗り替える必要があります。
また、ひび割れを発見したら、早めに補修する必要があります。
屋上防水の劣化対策|適切な材料の選択
屋上防水に使用される主な材料は、ウレタン塗膜防水、シート防水、アスファルト防水、FRP防水があります。
材料を選ぶ際には、予算、防水性、耐久性、施工性、メンテナンス性、屋上の形状や環境なども考慮する必要があります。
専門業者に相談して、最適な材料を選ぶのがおすすめです。
屋上防水の劣化対策|施工業者の選定
施工業者の選定は、屋上防水の仕上がりに大きく影響します。
施工業者を選ぶ際のポイントは、以下のとおりです。
- 実績と経験
- 技術力
- 資格
- 保証
- 複数業者から見積もりを取り、比較する
- 担当者の対応が丁寧か
- 質問にきちんと答えられるか
- 口コミ・評判
以上のポイントを参考に、複数の業者を比較検討し、信頼できる業者を選ぶことが大切です。
屋上防水の種類と耐用年数
屋上防水には、主に以下の4種類です。
防水材料 | 耐用年数 |
ウレタン塗膜防水 | 8〜10年 |
シート防水 | 10〜15年 |
アスファルト防水 | 15〜25年 |
FRP防水 | 10〜12年 |
上記はあくまでも目安であり、実際の耐用年数は、施工方法や下地の状態、環境条件などによって異なります。
耐用年数を過ぎた防水層は、風雨や紫外線などの自然的な要因によって劣化しやすくなります。
防水工事での助成金や補助金について【屋根防水や屋上防水】
大規模修繕に関わらず屋根防水、屋上防水などは場合によって多くの資金が必要になります。
そんな時に活用できるのが助成金や補助金です。各地方自治体では修繕工事や外壁塗装などにおいて補助金などを用意している場合があります。
防水工事の場合リフォーム補助金や住宅改修工事における助成金などがあり、該当する場合には防水工事の補助金を受けることが可能です。
以下の内容が基本的な補助金申請時の条件です。
- 補助金申請できる地域に住んでいる
- 以前同じ補助金や助成金を受け取っていない
- 税金を滞納していない
- 省エネに関するものや耐震補強など、その地方自治体の目的にあった工事であること
詳しくはお住まいの各自治体のホームページ、または問い合わせをして確認してみましょう。
防水工事に関してのよくある質問を紹介
ここでは防水工事に関してよくある質問を紹介していきます。
Q
防水工事前に何か準備は必要ですか?
A
防水工事前には、施工箇所の周りを整理し、私物や家具などは移動が必要になります。また、工事中の騒音や振動について、事前に確認しておきその時間帯の過ごし方などを決めておくとスムーズに対応できます。
Q
防水工事を行う周期はどのくらいですか?
A
一般的に、防水工事は10年から15年ごとに行うのが目安です。定期的な点検を行い、劣化が見られる場合は早めに工事を実施すると、建物の寿命を延ばすことができます。
Q
雨天時も防水工事は行いますか?
A
防水工事は晴天時に行うのが基本です。雨天時に施工すると、乾燥が不十分になり、防水効果が落ちることがあります。そのため、天気を見ながらスケジュールを調整し、品質を確保します。
Q
防水工事中に臭いがすることはありますか?
A
防水工事では、使用する材料によって臭いが発生することがあります。特に溶剤系の材料を使うと匂いが強くなることがあります。臭いについて気になる場合はご相談の上、水性材料を選べば臭いは抑えられます。工事中は換気をしっかり行い、匂いがこもらないようにしましょう。
屋上防水の劣化症状とメンテナンス方法についてまとめ
ここまで、屋上防水の劣化症状とメンテナンス方法について解説してきました。
この記事の要点は、以下のとおりです。
- 屋上防水の種類は、ウレタン塗膜防水、シート防水、アスファルト防水、FRP防水の4種類
- 各防水材料の劣化症状を紹介
- 屋上の防水層が劣化する要因は、紫外線の影響、排水溝の詰まり、メンテナンス不足、パラペット・笠木の劣化
- 屋上防水の劣化によるリスクは、雨漏り、美観の低下、建物の寿命の短縮
- 屋上防水の劣化対策は、定期的な点検・メンテナンス、適切な材料の選択、施工業者の選定
屋上防水は、建物の重要な機能の一つです。
劣化を放置すると、雨漏りなどの重大な問題を引き起こす可能性があります。
定期的な点検と適切な対策を行うことで、建物を長持ちさせることができます。
この記事を参考に、屋上防水を検討してみてはいかがでしょうか。