【アパート経営】一棟アパートを「売却するか大規模修繕するか」で迷ったときに見落としがちな3つの落とし穴

一棟アパートを持っているオーナーであれば、築20年前後から必ず気になり始めるのが、「そろそろ外壁や屋根、防水を直した方がいいのではないか」という大規模修繕の問題です。

同時に、「このタイミングで一棟売却してしまった方が良いのではないか」「次の修繕を乗り越えるだけの価値がこのアパートにあるのか」という考えも浮かんできます。まさに、「売却するか、大規模修繕するか」で頭が止まる瞬間です。

この記事では、一棟アパート(主に木造・軽量鉄骨・築20~30年前後)を所有している個人オーナーが、「売却するか、大規模修繕をしてアパート経営を続けるか」で迷ったときに、見落としがちな3つの落とし穴を整理します。

なぜ一棟アパートで「売却か大規模修繕か」が難しくなるのか

一棟アパートのオーナーが「売却か大規模修繕か」で悩み始めるとき、多くの場合、頭の中には次のような思いが混ざっています。

・今のところ家賃収入は入ってきているから、急いで売らなくてもいいのではないか。
・でも、次の外壁塗装や屋根、防水まで考えると、かなり大きな修繕費になりそうだ。
・かといって、この状態のまま売却してしまって良いのかどうか分からない。

アパート経営は、自分一人で決められる分、かえって「何となくの感覚」で判断しやすい環境でもあります。「まだ大きなトラブルも出ていないし」「入居もそこそこ付いているし」という理由で、決断を先延ばしにしてしまいやすいのです。

問題は、「売るか修繕するか」という結論そのものよりも、その前の整理ができていないことにあります。建物の状態、収支のバランス、そして自分のライフプランが整理されていないまま、感覚で判断しようとするため、考えれば考えるほど決められなくなってしまいます。

落とし穴①:「修繕費だけ」で判断してしまう

一つ目の落とし穴は、「修繕費の大きさだけ」で判断してしまうことです。

外壁塗装にいくら、屋根や防水にいくら、共用部にいくら、という見積りを見た瞬間、多くのオーナーはその金額の大きさに驚きます。「こんなにかかるなら、売ってしまった方が良いのではないか」という気持ちになるのは自然なことです。

しかし、本来見るべきなのは修繕費そのものではなく、「修繕費と、このアパートから今後どれだけの収益が期待できるかのバランス」です。

例えば、次のような視点で整理してみる必要があります。

・このアパートの現在の年間家賃収入はどれくらいか。
・空室率や家賃下落の傾向を踏まえると、今後5~10年間でどのくらいの収益になると見込めるか。
・その収益と、今回の大規模修繕費を比べたとき、何年で回収できそうか。

修繕費だけを見れば「高い」と感じるのは当然です。しかし、「アパートが今後生み出す収益」と比較してみると、意外とバランスが取れていることもあれば、逆に「そこまでして持ち続ける意味は薄い」とはっきり見えてくることもあります。

修繕費そのものの金額ではなく、「修繕費と将来の収益のバランス」を見ずに判断してしまうことが、最初の落とし穴です。

落とし穴②:「エリアと入居者ニーズの変化」を無視してしまう

二つ目の落とし穴は、「アパートの建物そのもの」だけを見て判断してしまい、エリア環境や入居者ニーズの変化を十分に考慮していないことです。

アパート経営は、建物の状態だけで決まるものではありません。

・そのエリアに住みたい人がどれくらいいるのか。
・競合物件(新築・築浅・設備の整ったアパートやマンション)がどれくらい増えているのか。
・今の入居者層と、今後取り込みたい入居者層にズレはないか。

例えば、以前は「単身者向けアパート」がよく決まっていたエリアでも、新築の1Kマンションや、設備の整った物件が増えている場合、古い一棟アパートは家賃を下げても決まりにくくなります。

そのような状況で、「とりあえず外壁と共用部をきれいにする」だけの修繕に数百万円、数千万円を投じても、思ったほど入居が改善しない可能性があります。逆に、エリアとしてはまだまだ需要があり、近隣の競合もそこまで強くないのであれば、しっかり修繕して競争力を維持する意味は十分にあります。

大事なのは、「このアパートをこの場所で、この先何年運営していくつもりなのか」という時間軸とセットで考えることです。エリアの将来性や入居者ニーズの変化を見ずに、「建物がまだ使えるから」「見積りが思ったより高いから」といった理由だけで判断してしまう。これが、二つ目の大きな落とし穴です。

落とし穴③:「自分の出口と耐用年数」を決めないまま考えてしまう

三つ目の落とし穴は、「このアパートをいつまで持つつもりなのか」「どのタイミングで出口(売却や相続)を迎えたいのか」という自分自身の出口イメージを決めないまま、大規模修繕の判断をしようとしていることです。

同じ一棟アパートでも、

・あと5年持てれば良いのか、
・あと15年は賃貸経営を続けたいのか、

によって、必要な修繕の内容も、かけるべき費用もまったく変わります。

例えば、

・あと5年ほどで売却して別の投資やライフプランに切り替えたい場合:
 → 外壁と屋根の見た目・防水など、売却時に買主から指摘されやすい部分を中心に、必要最低限の修繕に絞る。

・あと15年は、このアパートをメインの収入源として持ち続けたい場合:
 → 外壁や屋根だけでなく、給排水・共用照明・インターホン・ポスト・駐輪場なども含め、長期的な視点で修繕計画を立てる。

というように、出口のイメージによって「正解の修繕」は変わってきます。

自分の年齢、健康状態、家族の状況、相続や承継の方針などを考えたときに、

・このアパートをいつまで持ちたいのか
・どのタイミングで現金化しておきたいのか
・家族はこのアパートを引き継ぎたいのか、そうではないのか

といったことを一度整理しておく必要があります。

出口のイメージが決まっていない状態で、「高い修繕をやるべきか、売るべきか」を考え続けても、いつまでも答えは出ません。これが三つ目の落とし穴です。

アパートオーナーが取るべき実務ステップ

ここまでの3つの落とし穴を踏まえたうえで、一棟アパートのオーナーが実際に動くときのステップを整理します。

ステップ1:アパートの状態をラフに棚卸しする

・自分の目で、外壁・屋根・バルコニー・共用廊下・階段・手すり・駐輪場・ゴミ置き場などを一通り見て、気になる箇所をメモする。
・過去の修繕履歴(いつ・どこを・いくらで工事したか)を一覧にする。
・「このまま売るときに、説明が必要になりそうだな」と感じる箇所に印をつけておく。

ステップ2:収支と修繕・売却の数字をざっくり並べる

・年間の収支(家賃 − 経費 − ローン返済)をA4一枚でまとめる。
・今後5~10年のあいだに想定される大きめの修繕項目と、その概算費用を書き出す。
・想定売却価格とローン残債から、「今売ったら手元にどのくらい残りそうか」のざっくり数字を出す。

ステップ3:自分の出口イメージを言葉にする

・「何歳くらいまで自分でアパート経営の判断を続けるか」の目安を書いてみる。
・家族と「この一棟アパートをどうしたいか」を一度話してみる(引き継ぐのか、売って資金に変えたいのか)。
・「いつでも売れる状態をキープしながら当面は保有」「○年後を目安に売却も視野に入れる」など、ざっくりした出口方針を言葉にしておく。

ここまで整理できていれば、

・今は大規模修繕を優先しながらアパート経営を続ける
・最低限の整備だけして、数年以内の売却を軸に考える
・市場が良いうちに売却し、別の投資やライフプランに切り替える

といった選択肢を、「感情」ではなく「材料」をもとに比較できるようになります。

まとめ|「売却か大規模修繕か」で迷う前に、3つの落とし穴を避ける

一棟アパートのオーナーが、「売却するか、大規模修繕をしてアパート経営を続けるか」で迷うのはごく自然なことです。

ただし、

・修繕費だけを見て判断してしまうこと
・建物だけを見て、エリアや入居者ニーズの変化を無視してしまうこと
・自分の出口イメージを決めないまま考え続けてしまうこと

この3つの落とし穴には注意が必要です。

まずは、アパートの状態と数字、そして自分と家族のライフプランを一度整理してみること。それが、「売却するか大規模修繕するか」で迷い続ける状態から、「いつでも決められる状態」に変えていく第一歩になります。