【マンション経営】一棟マンションの「管理コストと修繕費」と「売却タイミング」をどう見極めるか

一棟マンションを持っているオーナーであれば、年数が経つほど気になってくるのが「管理コスト」と「修繕費」の負担です。

・管理会社への委託料
・共用部の清掃・点検・設備保守
・エレベーターや消防設備などの法定点検
・共用部の電気代や水道代
・そして、外壁や屋上防水、配管などの中長期的な修繕費

これらが少しずつ増えていく中で、

「このまま管理コストと修繕費を払いつつマンション経営を続けるべきか」
「ある程度のところで一棟売却して、資産を入れ替えた方が良いのではないか」

という迷いが生まれてきます。

この記事では、一棟マンション(主に鉄筋コンクリート造・築20~30年前後)を所有している個人オーナーが、「管理コストと修繕費」と「売却タイミング」をどう見極めるかという視点で、最初に整理しておきたいポイントを具体的にお伝えします。

なぜ一棟マンションの「続けるか売るか」は判断が難しくなるのか

一棟マンションの経営は、賃貸アパートなどと比べると規模が大きく、関わる金額も大きくなりがちです。

・戸数が多くなる分、修繕の規模も大きくなる
・エレベーターや受水槽など、維持していくべき設備も増える
・共用部の面積が広いため、清掃や照明などのランニングコストもかかる

その結果、

・「このまま持ち続ければ、それなりに家賃収入は入る」
・「一方で、修繕費や管理コストが将来どれくらい膨らむのかが見えづらい」
・「売却すればスッキリするが、本当に今が売り時なのかは分からない」

という状態になりやすくなります。

さらに、

・管理会社は「運営を続ける前提」で話をする
・不動産会社は「売却を前提」とした話を持ってくる
・施工会社は「修繕を前提」とした提案をしてくる

といったように、相談する相手によって前提が変わってしまうため、「自分自身の視点」が見えにくくなります。

大切なのは、

・管理コストと修繕費が、将来どのように掛かりそうなのか
・それに対して、このマンションがどれくらいの収益を生み続けられそうか
・そのうえで、自分と家族がこのマンションをいつまで持つつもりなのか

を整理したうえで、「続けるか売るか」の判断をすることです。

そのために、最初に確認しておきたいポイントは次の3つです。

① 現在の管理コストと修繕費が、家賃収入に対してどれくらいの重さか
② 今後10年前後で必要になりそうな大規模修繕と、その総額イメージ
③ 自分と家族のライフプランと出口(売却・相続)のイメージ

順番に見ていきます。

① 現在の管理コストと修繕費が、家賃収入に対してどれくらいの重さか

まず押さえておきたいのは、「今、どれくらい管理コストと修繕費にお金を使っているのか」を、ざっくりでも把握することです。

一棟マンションの経営では、

・管理会社への委託料
・清掃費(共用部)
・設備保守点検費(エレベーター、消防設備、受水槽など)
・共用部の光熱費
・日常的な小修繕(電球交換、ドアクローザー調整など)

といった「毎年かかるコスト」と、

・外壁塗装・タイル補修
・屋上防水のやり直し
・共用廊下や手すりの補修・塗装
・給排水管の更新
・エレベーターのリニューアル

といった「数年〜十数年に一度の大きな修繕」が混在しています。

ここで、まず整理したいのは、

・年間の家賃収入(満室ベースと実績ベース)
・年間の管理コスト(上記のランニングコスト合計)

この二つの比率です。

例えば、

・年間家賃収入:2,000万円
・年間管理コスト:400万円(管理委託料・清掃・保守点検・光熱費など)

であれば、「家賃収入の2割」が管理コストに使われていることになります。これが、

・家賃収入の3割を超えている
・年々、管理コストの割合が増えてきている

という状況であれば、「このままのやり方を続けるべきか?」という視点が重要になってきます。

また、年間の管理コストだけでなく、

・過去5〜10年で、どのような大きな修繕をしてきたか
・それにいくらかかったか
・次の10年で、同じような規模の修繕が発生しそうか

を一度振り返ってみることも大切です。

ここでのポイントは、

・「今の負担感」ではなく、「数字としてどれくらいの割合になっているのか」を見ること
・「ランニングコスト」と「中長期の修繕費」を分けて整理すること

です。

これだけでも、

・今の管理コストは適正か
・改善できる余地はどこにあるのか
・今後の修繕費を踏まえても、まだ十分に回るのか

といったイメージが見えやすくなります。

② 今後10年前後で必要になりそうな大規模修繕と、その総額イメージ

二つ目のポイントは、「この先10年前後で発生しそうな大規模修繕」と、そのおおよその総額をイメージしておくことです。

一棟マンションの大規模修繕で主なものを挙げると、

・外壁塗装・タイル補修
・屋上・バルコニー・廊下などの防水
・共用部床・手すり・階段の補修・塗装
・エントランスや共用灯のリニューアル
・給排水管の更新(縦管・横管)
・エレベーターのリニューアル
・機械式駐車場があれば、その更新や撤去

などがあります。

すべてを一度に完璧に把握する必要はありませんが、

・次の10年で、「確実に手を付ける必要がありそうなもの」は何か
・「そろそろ限界が見え始めている設備」は何か
・「見た目の問題だけでなく、安全性や法令面に関わる部分」はどこか

を洗い出してみると、

・「最低限やるべき」修繕
・「できればやった方が良い」修繕
・「今はまだ様子見でも良い」修繕

に分けられるようになってきます。

ここで一度、施工会社や管理会社から概算の費用感を聞き、

・「最低限やるべき」修繕を10年以内に行う場合の合計額
・「できればやった方が良い」まで含めた場合の合計額

をざっくりで良いのでイメージしておくと、

・このマンションを10年持ち続けた場合、累計でどれくらいの修繕費を見込むべきか
・それに対して、10年間でどれくらいの家賃収入が期待できるのか

という比較がしやすくなります。

この比較をすることで、

・「修繕費をかけても十分に回収できる」ケース
・「修繕費をかけても、家賃水準や空室リスクを考えると厳しい」ケース

が見えてきます。

大事なのは、「修繕費が高いか安いか」ではなく、

・今後の家賃収入と修繕費のバランス
・マンションの築年数と、エリアの競争力
・自分がこのマンションをいつまで持つつもりなのか

をセットで考えることです。

③ 自分と家族のライフプランと出口(売却・相続)のイメージ

三つ目のポイントは、「この一棟マンションと、自分・家族のライフプランをどう結びつけるか」という視点です。

どれだけ収支や修繕費を数字として整理しても、最後にものを言うのは、

・自分がこのマンションを、あと何年持ちたいのか
・老後や事業の方向性を考えたときに、このマンションがどんな役割を果たすのか
・家族はこのマンションを引き継ぎたいと考えているのか、それとも現金に換えておきたいと考えているのか

といった、人間側の事情です。

例えば、

・自分が60代前半で、あと10〜15年は現役でマンション経営に関わるつもりなのか
・70歳前後を一区切りにして、賃貸経営からは徐々に引退したいのか
・子どもが不動産に関わる意思があるのか、まったく関わりたくないのか

によって、「続けるか売るか」の答えは変わってきます。

もし、

・自分の代でマンション経営を終えたい
・家族には現金や他の形で資産を残したい

というイメージが強いのであれば、

・大きな修繕が重なる前のタイミング
・エリアや市場の状況がまだ悪くないタイミング

で一棟売却を検討することは、十分に合理的な選択肢です。

逆に、

・子どもがマンション経営に興味を持っていて、将来引き継ぎたいと言っている
・家族にとって、このマンションが長期的な収入源として機能する

という状況であれば、

・長期的な視点で修繕計画を立てる
・管理コストの見直しや、設備更新による競争力強化

にしっかりお金をかける意味があります。

重要なのは、「数字だけ」でも「感情だけ」でもなく、

・収支と修繕費のバランス
・マンションのポテンシャル(立地・競争力)
・自分と家族のライフプラン

の3つを合わせて見たときに、「どの選択が一番納得感があるか」です。

一棟マンションの「続ける・見直す・売る」を比較するためのステップ

ここまでの3つのポイントを踏まえて、一棟マンションオーナーが「管理コストと修繕費」と「売却タイミング」を整理するためのステップをまとめます。

ステップ1:現在の収支と管理コストを整理する
・年間家賃収入(満室ベースと実績ベース)を書き出す。
・年間の管理コスト(管理委託料・清掃・保守点検・共用部光熱費・小修繕等)を一覧にする。
・「家賃収入に対して管理コストがどれくらいの割合か」を計算する。

ステップ2:過去と今後の修繕を整理する
・過去10年で実施した大きめの修繕(内容・年・金額)を書き出す。
・今後10年で必要になりそうな大規模修繕と、その概算費用を管理会社や施工会社に確認する。
・「最低限やるべき修繕」と「できればやりたい修繕」を分けて整理する。

ステップ3:売却した場合のイメージを持つ
・不動産会社などから一棟売却の価格感を聞き、「今売った場合の手取り」を概算する。
・「今のまま売る場合」と「最低限の整備をしてから売る場合」で、どれくらい条件が変わりそうかを確認する。

ステップ4:自分と家族のライフプランを言葉にする
・自分が何歳くらいまでマンション経営の判断に関わるつもりかを書き出す。
・家族と、「この一棟マンションをどうしたいか」を話してみる(引き継ぐのか、売るのか)。
・「あとどれくらいの期間を、このマンションと付き合う前提にするか」を仮決めする。

ステップ5:3つのシナリオをざっくり比較する
・シナリオA:今後も持ち続ける前提で、必要な修繕を行いながら運営する。
・シナリオB:最低限の整備だけして、数年以内の売却を目標にする。
・シナリオC:条件が整っているうちに、できるだけ早い段階で売却する。

それぞれのシナリオについて、

・10年スパンで見たときの収支イメージ
・必要な修繕費の合計イメージ
・自分と家族のライフプランとの相性

をざっくりでも比較してみると、「何となく続けている」状態から、「いつでも決められる」状態に近づいていきます。

まとめ|管理コストと修繕費だけでなく、「自分のタイミング」も含めて決める

一棟マンションのオーナーにとって、「管理コストと修繕費」と「売却タイミング」の問題は、避けて通れないテーマです。

ただし、

・今の管理コストの負担感だけ
・修繕費の大きさだけ
・売却価格だけ

を単独で見ても、答えはなかなか出ません。

・管理コストと修繕費が、家賃収入に対してどのくらいの重さになっているのか
・今後10年前後で必要になりそうな大規模修繕と、その総額イメージ
・自分と家族のライフプランと出口(売却・相続)のイメージ

この3つを一度整理してみることで、「この一棟マンションを続けるべきか、見直すべきか、それとも売却という選択肢を検討すべきか」が、ぐっと見えやすくなります。

「管理コストと修繕費が重く感じてきた」と思ったときこそ、感覚だけで結論を出すのではなく、一度立ち止まって数字と将来像を棚卸ししてみてください。それが、後悔の少ないマンション経営と、納得のいく売却タイミングにつながっていきます。