【アパート経営】空室対策リフォームを「やるか・やらないか」と「売却」をセットで考えるべき理由
2026/01/23
一棟アパートを持っているオーナーで、ここ数年「空室が前よりも埋まりにくくなってきた」と感じている方は多いはずです。
・以前は退去後すぐに次の入居が決まっていたのに、空室期間が長くなっている
・周辺に新築アパートや築浅マンションが増え、競争が激しくなっている
・管理会社から「空室対策としてリフォームをしませんか」と提案されている
このような状況で、「どこまで空室対策リフォームにお金をかけるべきか」「いっそ一棟売却も視野に入れるべきか」で迷うのは、ごく自然なことです。
この記事では、一棟アパート(主に木造・軽量鉄骨・築20~30年前後)を所有している個人オーナーが、「空室対策リフォーム」と「売却」を別々に考えるのではなく、なぜセットで考えるべきなのかを、3つの視点から整理します。
目次
なぜ空室対策リフォームは「単発の工事」として考えると危険なのか
空室が続くと、オーナーとしては「とにかく早く埋めたい」という気持ちが強くなります。
・クロスを少しオシャレなものに変える
・床材をきれいに張り替える
・設備を1つ2つグレードアップする
こうしたリフォームは、確かに一定の効果があります。実際、ターゲットとニーズに合ったリフォームは、空室改善だけでなく賃料アップや物件の価値維持にもつながると指摘されています。
しかし、「空室が埋まるかどうか」だけを基準にしてリフォームを繰り返していると、気づいたときには、
・ここ数年のリフォーム費を合計すると、かなりの金額になっていた
・その割には、手元に残っているお金が多くない
・アパート自体の老朽化は進んでいて、結局大きな修繕も必要になりそうだ
という状況に陥りがちです。
本来、空室対策リフォームは「単発の工事」ではなく、
・このアパートをあと何年持つ前提で投資するのか
・その期間で、リフォーム費用を回収できるのか
・回収したうえで、どれだけ収益をプラスにできるのか
という視点で考える必要があります。
同時に、「今のアパートにリフォームで投資するのか」「一棟売却して別の資産に切り替えるのか」という選択肢も、同じテーブルに載せて比較しておくべきテーマです。
① リフォームの投資回収期間を見ずに判断していないか
最初のポイントは、「リフォーム費をどれくらいの期間で回収できるのか」という視点です。
空室対策リフォームの効果として期待できるのは、主に次の2つです。
・賃料アップによる収入増
・空室期間の短縮による機会損失の減少
例えば、
・1戸あたり50万円のリフォームをして、家賃を月5,000円アップできた場合
→ 年間の増収は約6万円となり、単純計算では約8年で回収となります。
・1戸あたり80万円のリフォームで、家賃が月1万円アップし、空室期間も短縮できた場合
→ 増収と空室減少の効果を合わせれば、5〜8年程度で回収できるケースもあります。
一般的に、リフォーム費用の回収期間の目安としては、
・3〜5年で回収できるなら、積極的に検討する価値が高い
・5〜8年なら、物件の将来性や自分の保有期間を踏まえて慎重に判断
・それ以上かかる場合は、リフォーム内容の見直しや、売却も含めた検討が必要
といった基準が語られています。
ここで重要なのは、「回収期間」と「自分がそのアパートを持ち続ける予定の期間」を照らし合わせることです。
・あと10年以上アパート経営を続けたいなら、5〜8年かけて回収するリフォームも選択肢になり得る
・逆に、あと5年程度で売却や引退を考えているなら、10年かかるようなリフォームはリスクが高い
ということです。
この視点がないまま、
・リフォーム費だけを見て「高い・安い」で判断する
・「空室が埋まりそう」という期待感だけで決めてしまう
と、投資と回収のバランスが崩れやすくなります。
② 「売却するならリフォーム不要」と決めつけていないか
二つ目のポイントは、「どうせ売却するならリフォームはいらない」と決めつけてしまうことへの注意です。
確かに、売却前に高額なリフォームをしても、その費用がそのまま売却価格に反映されるとは限りません。
しかし、だからといって、「何もしない状態のまま売却する」のがベストとは限りません。
売却前に考えるべきなのは、
・売却価格にあまり影響しないリフォーム
・売却価格や成約スピードに大きく影響するリフォーム
を見極めることです。
例えば、
・内装のデザイン性を高めるための凝ったリノベーション
・高額な設備グレードアップ(ハイグレードキッチンや高機能ユニットバス)
などは、賃貸として運営を続ける前提なら意味がありますが、売却前の短期間で回収するのは難しいことが多いです。
一方で、
・明らかな雨漏りや設備不良の補修
・重大な瑕疵や安全性に関わる部分の是正
・最低限の原状回復や、著しく印象を損なう部分の補修
などは、売却においても評価されやすく、放置していると
・価格交渉で大きく値引きを要求される
・買主の不安要素となり、成約まで時間がかかる
・そもそも購入検討の土俵に乗りにくくなる
といったマイナス要因になります。
つまり、
・「売却するからリフォームは一切しない」
・「持ち続けるからフルリフォームする」
という極端な二択ではなく、
・売却前でも最低限やっておいた方が良い工事
・持ち続けるなら投資回収が見込める工事
・どちらのケースでも今は見送って良い工事
を切り分けることが重要です。
この切り分けができれば、
・「売るか、リフォームするか」で悩む
のではなく、
・「売るにしても、ここまでは整える」
・「持つにしても、ここから先は慎重に投資判断する」
という整理がしやすくなります。
③ 「空室対策」と「出口戦略」を別々に考えていないか
三つ目のポイントは、「空室対策」と「出口戦略(売却・相続・保有期間)」を別々のテーマとして考えてしまうことです。
本来、空室対策リフォームの投資判断は、
・このアパートをいつまで持ち続ける前提なのか
・売却や相続のタイミングをどう想定しているのか
・その出口までに、どれくらいの収益を積み上げたいのか
という「出口戦略」と一体で考えるべきものです。
例えば、
・あと15年はアパート経営を続けるつもりで、相続も視野に入れている
→ 5〜8年で回収できるリフォームなら、検討に値する
・あと5〜7年の間に売却か、他の資産への入れ替えを考えている
→ 回収期間が10年以上かかるリフォームは、投資の優先度を下げるべき
・空室が多く、このままだとキャッシュフローが厳しい
→ 小額で効果の高いポイント(設備の一部更新や募集条件の見直し)から優先する
といったように、出口時期と収支バランスで判断が変わります。
出口戦略をまったく決めないまま、
・空室が出るたびに、その場しのぎのリフォームを繰り返す
・何となく続けているうちに築年数だけが進む
・気づけば大規模修繕も必要なタイミングを迎えている
という状態になると、「もっと早く整理しておけばよかった」と感じやすくなります。
アパートオーナーが取るべき実務ステップ
ここまでの3つの視点を踏まえて、一棟アパートのオーナーが「空室対策リフォーム」と「売却」をセットで考えるためのステップを整理します。
ステップ1:現在の空室と収支の現状を見える化する
・全体の戸数と、現在の空室戸数・空室率を書く。
・過去1〜2年の退去数と、1戸あたりの平均空室期間を整理する。
・現在の年間家賃収入(満室ベースと実績ベース)と、年間の経費(ローン・税金・管理費など)をまとめる。
ステップ2:空室の原因とターゲットを整理する
・競合物件(近隣の新築・築浅・同グレード)の家賃や設備をリストアップする。
・入居者のターゲット(単身・ファミリー・学生・高齢者など)を明確にする。
・「家賃設定」「設備」「間取り」「立地」「管理対応」のどこに弱点がありそうかを考える。
ステップ3:リフォーム案ごとに投資回収期間をざっくり計算する
・1戸あたりのリフォーム費用、見込める家賃アップ額を整理する。
・「リフォーム費用 ÷ 年間の収益増加額」で回収期間をざっくり出す。
・3〜5年で回収できる案、5〜8年かかる案、10年以上かかりそうな案に分けてみる。
ステップ4:自分の保有期間と出口イメージを言葉にする
・自分はあと何年くらいアパート経営を続けるつもりかを書き出す。
・家族と、「このアパートを引き継ぎたいか、売却して資金に変えたいか」を話し合う。
・「あと5年」「あと10年」「相続まで持つ」など、複数のパターンを考えてみる。
ステップ5:リフォームと売却のシナリオを比較する
・シナリオA:リフォームを行い、○年かけて回収しつつアパート経営を続ける。
・シナリオB:最低限の改善だけ行い、数年以内の売却を目指す。
・シナリオC:大きなリフォームはせず、今の状態に近い形で早めに売却する。
それぞれのシナリオについて、
・10年スパンで見たときのキャッシュフローのイメージ
・必要なリフォームコストと、その回収可能性
・自分と家族のライフプランとの相性
をざっくり比較してみると、「空室対策リフォームをどこまでやるべきか」「売却はいつ検討すべきか」が具体的に見えてきます。
まとめ|空室対策リフォームは「出口戦略」とセットで考える
一棟アパートの空室対策リフォームは、決して「今この部屋を埋めるための工事」だけで完結する話ではありません。
・リフォーム費の回収期間と、自分の保有期間
・売却前でも最低限やっておくべき改善と、やる必要のない改善
・空室対策と出口戦略(売却・相続・長期保有)
これらをセットで整理することで、
・無駄なリフォーム投資を避ける
・売却のタイミングを逃さない
・自分と家族にとって納得感の高いアパート経営を続ける
ことができるようになります。
「空室が増えてきたから、とりあえずリフォーム」という発想ではなく、「このアパートをどう終わらせるか、どう活かしきるか」という視点から逆算して、空室対策リフォームと売却のバランスを考えてみてください。