マンションの修繕積立金の相場を解説|管理費との違いは?必要な理由とは? | 株式会社新東亜工業  

    コラム    

マンションの修繕積立金の相場を解説|管理費との違いは?必要な理由とは?

マンションでは、管理費や修繕積立金を支払わなければなりません。

また、修繕積立金の額は1度決めたら終わりではなく、値上することもあります。

そこで今回は、修繕積立金が何に使われるのかや、修繕積立金の相場や値上がりする理由を紹介します。

修繕積立金とは

マンションの管理費とは、共用部分のメンテナンスのために、居住者やテナントが管理会社に毎月支払う費用です。

計画に合わせて定期的に実施する修繕工事、災害や天災が原因で起こる不具合の修繕などには多額の費用がかかります。

突然修繕費の徴収を行うと、支払えない居住者も出てくるでしょう。

修繕積立金は、突発的な修繕のほか、10年後・20年後のマンションの維持修繕に備え、入居者が管理組合を通じて費用を積み立てる必要があるのです。

マンションの管理費と修繕積立金の違い

マンション管理費と修繕積立金は、いずれも建物を管理、管理するための費用ですが、用途は若干異なります。

管理費は、日々の清掃や共用部分の水道光熱費、快適な生活を送るための小修繕など「日常管理業務」に使われる費用です。

日々の管理業務を管理会社に委託する費用も、管理費の大部分を占めています。

一方、修繕積立金は、安全な暮らしを維持するための外壁塗装や給排水管工事などの「計画的な大規模修繕工事」と、事故や災害による「想定外の大規模修繕工事」に使われます。

つまり、将来のための費用です。

大規模修繕工事は数年に1度行われますが、その際には多額の資金を準備しなければなりません。

資金不足を防ぐために、大規模修繕工事に備えて毎月少しずつ積み立てていきます。

修繕積立金の用途管理費の用途
・修繕計画に沿って行う工事
・災害や事故が原因の修繕
・共用部分グレードアップ工事
・建物調査 
・管理委託費
・火災保険料や損害保険料
・共用部分の水道光熱費
・軽微なメンテナンス費
・消耗品費
・共用部分の植物管理費
・管理組合の運営費

管理費の相場

国土交通省の「マンション総合調査(平成30年度)」によると、管理費(駐車場使用料等からの充当額を除く)の平均は1戸あたり月額10,862円でした。

最も多い価格帯は「1万円以上1.5万円未満」で22.5%、次いで「7,500円以上10,000円未満」が17.2%です。

管理費の決め方

管理費はマンションによって大きく異なります。

マンションの管理費は、階数、戸数、グレードによって決まります。

高層マンション、戸数が多いマンションほど管理費は安いことが一般的です。

例えば、事業規模が大きくなったからといって、管理者の人件費が増えるわけではありません。

管理費は戸数が多ければ多いほど、1戸あたりの管理費は安くなります。

しかし、タワーマンションは例外です。

タワーマンションは戸数では賄いきれない多額の管理費が必要となるため、戸数が多くても管理費は削減できません。

管理費の負担を抑える条件

国土交通省の調査によると、31~50戸、101~150戸、6~10階建てであれば管理費の負担を軽減できるとしています。

各条件の平均管理費は、以下の通りです。

戸数平均管理費
31~50戸9,847円
101~150戸9,451円
6~10階建て10,392円

最も多い管理費は1万円以上10万円未満で、管理費は「1万円以上1万5,000円未満」が最も多く、相場より安いことがわかります。

管理費を抑えるために重要なことは、階数、戸数、グレードのバランスです。

コンシェルジュサービスや、豪華な付帯設備がない中規模マンションは管理費が安いといえるでしょう。

修繕積立金の相場

国土交通省の 「マンション総合調査(平成30年度)」 によると、修繕積立金(駐車場使用料等からの充当額を除く)の平均は1戸あたり12,268円でした。

管理費同様、マンションの種類によって修繕積立金の平均額も異なるため、詳しく確認しておきましょう。

修繕積立金の決め方

修繕積立金は、大規模修繕工事の費用によって異なります。

大規模修繕工事は、長期修繕計画によって工事の時期、内容、費用がある程度決まります。

修繕積立金の額を決める際は、工事着工までに工事費用が確保できるように逆算することが一般的です。

また、災害や事故などで予定外の大規模修繕が発生することもあります。

長期修繕計画に沿った最低限の修繕費しかなければ、想定外の工事に対応できません。

余裕のある額で、修繕積立金を設定しておくことが大切です。

修繕積立金の負担を抑える条件

国土交通省の調査によると、51~75戸、3階建て以下のマンションでは修繕積立金の負担を軽減できるとしています。

各修繕積立金の平均額は、51~75戸が9,850円、3階建て以下が9,745円です。

なお、「76戸以上300戸以下」と「11階以上19階以下」のマンション修繕積立金の平均値も11,243円と平均値を下回りました。

反対に、「20戸未満」「300~500戸」「20階以上」では平均値が高くなっています。

極端に小規模、大規模なマンションは修繕積立金が高くなります。

修繕積立金の使用用途

修繕積立金は、マンションの大規模修繕、部分補修などに使用します。

具体的にどのような工事に使用するのか、工事内容を確認しておきましょう。

大規模修繕工事

大規模修繕は、一般的に築後12~15年ごとに行われることが多いです。

費用が高額になるため、計画的に積み立てた資金を修繕工事に充てます。

大規模修繕工事のたびにマンション所有者から1度に費用を徴収しようとすると、大きな負担となり、支払えない所有者が出てくる可能性もあるでしょう。

修繕工事ができないという事態を避けるためにも、将来的に必要な工事費用を積み立てておく必要があります。

外壁補修工事

重要な塗装工事のひとつが、外壁塗装です。

外観の美観を保つためだけではなく、塗装前に汚れなどを落とし、外壁のコンクリートを汚れや雨、風などから守るために行う必要があります。

また、タイルの浮きがある場合は、外壁タイルの張り替えも行いましょう。

屋上防水工事

防水工事は主に、外階段や屋上、バルコニーなど、雨風にさらされやすい場所の床に行われます。

防水工事は、雨の当たる部分からコンクリート内部への水分の浸入を防ぐ効果があります。

特に屋上やバルコニーは、メンテナンスを怠ると屋内への水漏れにつながるため、定期的に点検することが重要です。

配管補修工事

配管は、生活に重要な設備のひとつです。

配管の劣化は、室内への漏水、水回りのトラブルや躯体の腐敗など大きなトラブルにつながることもあるため注意しましょう。

15~20年ごとに点検・交換することが理想であり、基本的に大規模修繕の際に実施されます。

鉄部塗装工事

バルコニーや外階段の手すり、メーターボックスなど、鉄扉の錆びやすい部分を塗り替えます。

最初に錆を落とし、下地処理も含めて数回塗り重ね、保護力を高めて錆の再発を防ぐことが重要です。

マンション廊下のシート交換

修繕積立金は、シート交換にも使用されます。

共用廊下のシートの張替えにより、静音性を高める効果が期待できます。

清掃しやすい素材や、雨でも滑りにくい素材に変更するなど、快適性向上のための修繕を実施することが多いです。

共用部分のグレードアップ工事

現在、居住者の高齢化に対応するため、バリアフリー工事を検討するマンションが増えています。

玄関ドアを自動ドアに変更したり、エントランスホールの改修工事が加わることも多いです。

その他、エレベーターのカゴ内部のリニューアルや制御盤・ボタンの交換などが挙げられます。

災害の修繕

修繕積立金の具体的な使途としては、地震や台風などの自然災害による損傷の修繕費などがあります。

毎月積み立てた修繕積立金は、災害による不測の修繕費用に役立つでしょう。

受水槽の取り替え工事

受水槽は、水道管から届いた水を一時的に貯めてマンション内に給水する仕組みです。

ブースターポンプを使って重力で各階に給水する方法と、高架水槽を設置して給水する方法があり、水槽の寿命は材質によって異なります。

FRP製(強化プラスチック)は15~25年、鉄筋コンクリート製(地下式)30~50年が取り替えの目安です。

機種や材質によって差はありますが、こまめな点検や清掃などのメンテナンスを行うことで、1.5~2倍寿命が延びるという調査結果もあるほどです。

貯水槽の交換費用にも、修繕積立金が充てられます。

しかし、近年は水道管のメンテナンス性が向上したこともあり、受水槽を使わない「直結給水タイプ」を推奨する自治体も多いです。

また、受水槽式から直結給水式に変更する場合にも修繕積立金を使用することがあります。

マンション管理費の使用用途

修繕積立金だけではなく、管理費の使用用途についても理解しておく必要があります。

次に、マンション管理費の主な使用用途を紹介します。

共用部分の水道光熱費

管理費は、マンションの共用部分で使用する光熱費に充当されます。

例えば、エントランスや共用廊下の照明、エレベーターや給水ポンプの使用料、宅配ボックスの使用料などに電気料金などです。

また、マンションの清掃に使用する水道料金も管理費に含まれています。

その他、管理人室に設置されている電話やファックスなどの通信費、機械警備の回線使用料、郵便料金なども挙げられます。

管理会社の委託

マンションの主な管理業務としては、清掃、事務作業、設備管理が挙げられます。

マンションの管理は、管理会社に委託することが一般的です。

委託内容は管理組合によって異なりますが、管理会社に管理業務を委託する際の費用は管理費から支払われます。

管理委託契約書で、管理費と委託業務を確認することが可能です。

エレベーターや消防設備の点検

エレベーター点検、消防設備点検、建物設備定期点検など、定期的に行われる法定点検の費用を管理費でまかないます。

エレベーターは年に1回の定期検査が義務付けられており、消防設備も動作点検や消火器、非常ベルの機能点検、外観点検などを実施しなければなりません。

マンション修繕費が値上がりする理由

マンションの修繕費は、初期設定から値上げするケースがあります。

住民の負担となるため、なぜ値上がりするのか理解しておく必要があるでしょう。

ここでは、修繕費を値上げする主な理由を紹介します。

修繕費の相場が上がる

修繕積立金は、円安や社会情勢の変化などにより、近年増加傾向にあります。

海外から住宅設備を輸送する物流コストも上昇しており、建設現場で作業員が不足すれば人件費も上がります。

同じ修繕工事であっても、コストが上がる可能性が高いことを念頭に置いておきましょう。

計画にない修繕が必要になる

多くの物件では、30年以上の長期修繕計画が立てられます。

そのため、交換用の材料や部品を入手できないこともあります。

結果、計画を検討し直さなければならなくなったり、15年は維持できるはずの外壁が気候の影響で早く劣化したりと、計画外の修繕が発生する可能性は高いです。

また、人件費も増えるかもしれません。

想定外の事態により、修繕積立金だけでは賄えない場合、修繕積立金が増える可能性があります。

初期設定額が低い

家を買いたい方が気にすることのひとつに、ランニングコストがあります。

ランニングコストを抑えて物件を購入してもらうために、初期の修繕積立金を安くしている物件も少なくありません。

また、長く住んで管理費や修繕積立金の値上げを何度も経験する方もいます。

区分所有者が値上げを拒否しても、マンションに住む方の大多数が値上げはやむを得ないと判断すれば、値上げを拒否できません。

値上げがなければ、いずれ修繕積立金が不足し、必要な工事ができなくなる可能性があります。

どちらのケースも、居住者にとってはプラスにならないでしょう。

段階増額積立方式を採用している

修繕積立金には、「均等積立方式」と「段階増額積立方式」があります。

均等積立方式は、計画期間中に均等に積み立てる方法です。

長い期間で金額が変わらないため、将来いくら支払うのかがわかりやすいでしょう。

築年数が浅い場合は、段階的に増やすよりも割高になります。

段階増額積立方式は、10年などの単位で集めた修繕積立金を増やしていく方法です。

新築時は修繕積立金の額が少なく、築年数が古くなるほど修繕積立金の負担が重くなります。

国土交通省では「均等負担方式」を推奨していますが、多くのマンションでは「段階負担方式」が採用されているのが実情です。

築年数が経ち修繕費が不足

修繕積立金は、建物の老朽化とともに増加する傾向にあります。

例えば、大規模修繕工事を行う前に積み立てていた修繕積立金が足りなくなり、修繕費が高騰することも考えられるでしょう。

また、築40年を超えると、経年劣化した共用部分の修繕が必要になり、修繕費が不足するケースも出てきます。

修繕費が不足する場合は、次の大規模修繕工事の費用に必要な額を補うため、修繕積立金の増額が必要です。

マンションの修繕費不足を回避する方法

マンションの修繕費が不足し、必要な工事ができないと建物の価値が下がります。

また、劣化による事故が起こるリスクもあるため、修繕費不足は回避しなければなりません。

ここでは、修繕費不足を回避する方法を紹介します。

相見積もりを取る

施工業者に依頼する場合は、必ず複数の会社から見積もりを取り、工事価格を比較しましょう。

複数社の工事価格を比較することで、予算に合った金額で工事を依頼できます。

ただし、工事価格が安すぎる工事会社の場合、手抜き工事をされる可能性があります。

すぐに再工事が必要になると、追加費用が発生し、修繕積立金が不足するリスクが高いです。

高額な工事代金を請求する施工業者は避けたいものですが、安すぎる施工業者にも注意しましょう。

中間マージンをなくす

大規模修繕工事の費用を抑えるためには、「中間マージン」をできるだけ少なくすることが大切です。

中間マージンとは、大規模修繕の際に管理会社が業者を選定する際に、優先業者に依頼することで得られる仲介手数料から得られる利益を指します。

余計な中間マージンを払わないためにも、業者選定は管理会社任せにせず、自分達の意見を伝えるようにしましょう。

工事内容を再検討

大規模修繕工事の内容を見直すことで、コストを抑えることができます。

例えば、防水工事に使用する材料を変更する、塗料のグレードを下げるなどです。

また、外壁塗装の場合、足場を組まない工法があります。

塗装する場所にもよりますが、足場の設置費用が抑えられるため工事費の節約が可能です。

ただし、建物の構造によっては工法を変更することができないため、検討する際は施工業者に相談しましょう。

定期的にメンテナンスを実施

定期的な建物のメンテナンスは、劣化を遅らせ、破損を防ぎます。

劣化や損傷が少なければ、大規模修繕の際の手間も省けるでしょう。

一方、定期的なメンテナンスを行っていないマンションの場合、大規模修繕の際に工事量や工期が大幅に増える可能性が高いです。

工事量が増え、工期が長くなれば、それだけ修繕費も高くなります。

定期的にメンテナンスをして、大規模修繕工事箇所と工期を短くしましょう。

専門業者に工事を依頼

マンションの大規模修繕の実績が豊富な専門業者に工事を委託することで、施工不良を防ぎ、コストを抑えられます。

施工実績が豊富な業者であれば、ノウハウや技術力があるため適切な工事を行うことができ、失敗のリスクも低いです。

工事の失敗がなければ、追加の修繕費を支払う必要もありません。

施工業者を選定する際には、マンション修繕工事の実例を必ず開示してもらいましょう。

修繕積立金の注意点

修繕積立金は、金額の変動、支払い催促を受ける可能性がある点に注意が必要です。

ここでは、修繕積立金についての注意点、把握しておくべきことを解説します。

修繕積立金の金額は毎年同じではない

修繕積立金は、毎年同額とは限りません。

大規模修繕工事は10~15年ごとに実施されることが多いですが、工事前の見積もりが出た段階で、次の大規模修繕計画が見直される傾向があります。

材料費や人件費の高騰など将来の物価上昇の影響を考慮すると、当初の修繕費見積もりでは将来の修繕積立金が不足する可能性があるからです。

一般的に、修繕積立金は築年数が経過するほど増加する傾向にあります。

そのため、修繕積立金額は毎年同じではないと考えた方が良いでしょう。

マンションを所有している限り支払いは続く

マンション購入を検討する際、物件価格や住宅ローンの金額ばかりに目が行きがちです。

しかし、修繕積立金や管理費は、その物件に住み続ける限り、毎月支払い続ける費用です。

新築物件を安く買うだけではなく、後から値上がりしても負担にならないよう、ローンの返済計画を立てる必要があります。

修繕費の見積もり額と実際に支払う金額の差額を節約できれば、値上げに対応しやすくなるでしょう。

滞納した場合は法的手段が取られる

マンション購入後は、修繕積立金を滞納しないよう、毎月期限を守って支払うことが大切です。

滞納が発生すると督促状が発行され、それでも支払いがない場合は差し押さえや競売などの法的措置が取られることもあります。

売却時に修繕積立金は返金されない

マンションを売却しても、過去に支払った修繕積立金は戻ってきません。

修繕積立金は、1度徴収すると管理組合のものになるという考え方が一般的であるためです。

管理規約にその旨が定められている場合が多く、裁判で請求しても返還されない可能性が高いでしょう。

また、マンションを所有している間は、修繕積立金を支払わなければなりません。

将来、マンションの売却を考えている場合でも、修繕積立金は滞りなく支払えるように資金準備をしておきましょう。

マンションの修繕費に関するトラブルを防ごう

マンションの大規模修繕工事にかかる費用は規模によりますが、数千万円かかり、場合によっては1億円を超えることもあります。

大規模修繕は約12年ごとに行われるため、費用をまかなえるだけの修繕積立金が必要です。

必要な工事や施工の周期を見極め、適切な方法で修繕積立金を活用しましょう。

関連記事
LINE TEL MAIL