2024.02.13
改質アスファルトシート防水とは?劣化症状やトーチ工法・常温粘着工法の特徴と費用相場
改質アスファルトシート防水は、ゴムや樹脂などの改質剤を混ぜたアスファルトシートを貼り付ける防水工法です。
耐久性や施工性に優れた防水工法として、屋上や地下室などの防水に広く利用されています。
そこで今回は、改質アスファルトシート防水とは何か、メリット・デメリットについて解説します。
マンションやビルの防水工事を行う際の参考にしてください。
改質アスファルトシート防水とは?
改質アスファルトシート防水とは、アスファルトに高分子を添加して強化したシート状の防水材料を使用した防水工法です。アスファルト本来の防水性に加え、高分子添加による耐候性・耐久性の向上が特徴です。
改質アスファルトシート防水は、その施工方法によって、大きく「トーチ工法」と「常温粘着工法」に分類されます。トーチ工法はシート裏面にバーナーで熱を加えて溶融させ、下地と接着させる工法です。常温粘着工法はシート裏面の粘着剤で下地に接着させる工法で、火を使わないため安全性が高いのが特徴です。
改質アスファルトシート防水は、耐久性が高く、コストパフォーマンスにも優れています。また、施工方法の選択肢も豊富で、様々な屋根や屋上の形状に適応できる柔軟性があります。
トーチ工法は、バーナーでシートの下面を炙りながら、下地と密着させる工法です。火を使うため、防火対策が必要であり、熟練した技術が必要です。施工スピードが速く、コストを抑えることができます。
常温粘着工法は、特殊な接着剤を使用して、シートを下地に貼り付ける工法です。火を使わないため、安全で、作業環境にも配慮できます。トーチ工法に比べて、施工スピードが遅く、コストがやや高くなります。
トーチ工法
トーチ工法とは、ルーフィングの裏面をトーチバナーで加熱し、溶融したコンパウンドを接着剤として塗布する工法です。
施工上の人為的ミスが起こりにくく、表層の欠陥が直接漏水につながるなく性能面でも優れています。
トーチ工法の単価は素材や単層、複層で単価が変わりますが、7,000円〜25,000円ほどの単価となります。
常温粘着工法
ゴムアスファルト系接着剤層を塗布した改質アスファルトルーフィングシートを数枚交互に積み、貼り合わせます。
アスファルト系防水ですが、ほとんど火を使わずに施工できます。
材料を問わず、安定した接着強度が得られることもメリットです。
さらに、接着剤の流動性が高いため、下地が多少動いても防水層自体が破壊・破損することがありません。
また、粘着層がストライプ状で、脱気性能、断熱性能に優れています。
加えて、アスファルト系材料での被覆による改修も可能です。
トーチ工法の単価は素材や単層、複層で単価が変わりますが、8,000円〜30,000円ほどの単価となります。
ガムクール
ガムクールの大きな特長は、新築・改修を問わずカバーできる範囲の広さです。
ガムクールは、剥離フィルムを剥がしながら、裏面の粘着層を使って貼り付けていきます。
また、既存のアスファルト露出防水の改修に有効です。
既存の防水層の上にガムクールを塗布する「アスファルト・オン・アスファルト」は、屋上防水の耐久性を向上させます。
例えば、屋上緑化や太陽光発電など、屋上の有効活用をしたいときに最適です。
アスレイヤC
アスレイヤCは、改質アスファルトルーフィングを常温密着工法で貼り付けた後、常温塗材を貼り付ける複合積層工法です。
「塗る」と「貼る」を組み合わせることで、防水性、耐久性が高い防水層を作ります。
また、耐水性、耐アルカリ性に優れているため、コンクリートやモルタルとの仕上げ、屋内防水にも良いでしょう。
さらに、2液反応硬化型の塗材で温度の影響を受けにくく、夏でも冬でも確実に塗膜を形成します。
規模にもよりますが、1日で上塗り工程を完了することも可能です。
改質アスファルトシート防水の劣化症状
さまざまな要因によって、改質アスファルトシート防水は経年劣化します。劣化のサインには、表面のひび割れ、防水層の損傷、防水層の膨張、目地の凸凹、植物の侵入などがあります。
これらのサインを発見したら、早急に専門業者に相談することが重要です。放置すると、防水性能が低下し、雨漏りなどのトラブルが発生する可能性が高まります。
ここでは、改質アスファルトシート防水の主な劣化症状を紹介します。
表層の亀裂
表層の亀裂は、シートの収縮で発生します。
改質アスファルトシート防水は、耐久性が高い防水工法として知られていますが、経年劣化によって様々な症状が現れます。その中でも、初期段階で発見しやすいサインが「表面の亀裂」です。
表面の亀裂やひび割れは、紫外線や熱による材料の劣化、あるいは地震や歩行による振動などが原因で発生します。最初は小さなひび割れでも、放置すると徐々に広がり、防水層の機能低下を招く恐れがあります。
表面の亀裂を発見したら、早急に対処することが重要です。放置すると、亀裂から雨水が侵入し、防水層の内部を腐食させたり、建物内部に雨漏りを発生させたりする可能性があります。
防水層の破れ
防水層の破れは深刻な問題です。防水層が損傷すると、雨水が建物内部に浸入し、雨漏りや腐食などを引き起こす可能性があります。
飛来物による破損のほか、鳥がくちばしで突くなどで破損することもあります。
また、防水層の内部に入った雨水が気化し、亀裂や膨れを放置した結果破れるケースも少なくありません。
割れた部分から雨水が入り、雨漏りを引き起こすこともあるため注意が必要です。
防水層の膨れ
改質アスファルトシート防水は、熱や紫外線による影響を受けると、膨張する性質があります。膨張すると防水層が浮き上がったり、ひび割れたりして、防水機能が低下してしまいます。
長期間の使用で防水層が徐々に浸水し、下地と防水面の間に水が入り込む膨れが発生します。
膨れは、雨水が太陽の熱によって内部の水分が蒸発し、湿気となって防水層内で膨張するために起こる劣化です。
小さな膨れが大きくなり、亀裂や破れなど大きな劣化症状を引き起こします。
目地が突出
改質アスファルトシート防水は、経年劣化によってさまざまな症状が現れます。その中でも、目地の凸凹は比較的よく見られる症状の一つです。
目地の凸凹は、シート同士のつなぎ目部分に隙間が生じることで起こります。隙間が生じると、そこから雨水などが浸入し、防水層を傷めてしまう可能性があります。また、目地の凸凹は、見た目が悪くなるだけでなく、歩行の際に足を取られて転倒する危険性も高まります。
植物が生えている
種が飛んできたり、アスファルトの下に隠れていた植物の種が発芽したりといったことがあります。
植物の侵入は、防水層をさらに劣化させる原因となります。 植物の根は防水層に浸透し、防水層の剥離や破損を引き起こします。 また、植物の葉や枝は防水層を覆い、防水層の通気性を低下させます。 これにより、防水層内部に湿気がこもり、防水層の腐食やカビの発生を促進します。
改質アスファルトシート防水が適しているケース
改質アスファルトシート防水は、さまざまなケースで適しており、特に以下の場合に最適です。
- 既存の露出アスファルト防水がある場合:改質アスファルトシート防水は、既存のアスファルト防水の上に重ねて施工することができるため、施工期間を短縮することができます。
- コストを抑えたい場合:改質アスファルトシート防水は、他の防水工法と比べて比較的安価です。
- 防水層の選択肢を広げたい場合:改質アスファルトシート防水は、さまざまな種類があり、用途に合わせて選ぶことができます。
改質アスファルトシート防水は耐久性にも優れており、適切なメンテナンスを行えば、長期間使用することができます。
既存が露出アスファルト防水
改質アスファルトシートは、カバー工法を選択することで、耐久性を高める効果が期待できます。
既存の防水層がほとんど傷んでいなければ、傷んだ部分を補修し、上から新しい防水層を塗る改質アスファルトシートカバー工法が良いでしょう。
施工費用を抑えたい場合
改質アスファルトシートのトーチ工法は、ほとんど補助資材を必要としません。
例えば、単層仕様(1層防水)の場合、使用する材料は主にプライマーや下地処理材、砂入りルーフィング、トップコートです。
アスファルト系防水工法を選択したいものの、可能な限りコストを抑えたいというケースでは改質アスファルトシートのトーチ法が採用される場合があります。
防水層の種類を選びたい
改質アスファルトシート防水工法には、1層のみの単層仕様と2層防水の複層仕様があります。
多くのシート系防水材は単層仕様ですが、既存防水層の状態によっては新設防水層のグレードを選定することが可能です。
そのため、防水層の種類を選びたいケースでは、改質アスファルトシートを検討すると良いでしょう。
防水工事での助成金や補助金について【屋根防水や屋上防水】
大規模修繕に関わらず屋根防水、屋上防水などは場合によって多くの資金が必要になります。
そんな時に活用できるのが助成金や補助金です。各地方自治体では修繕工事や外壁塗装などにおいて補助金などを用意している場合があります。
防水工事の場合リフォーム補助金や住宅改修工事における助成金などがあり、該当する場合には防水工事の補助金を受けることが可能です。
以下の内容が基本的な補助金申請時の条件です。
- 補助金申請できる地域に住んでいる
- 以前同じ補助金や助成金を受け取っていない
- 税金を滞納していない
- 省エネに関するものや耐震補強など、その地方自治体の目的にあった工事であること
詳しくはお住まいの各自治体のホームページ、または問い合わせをして確認してみましょう。
防水工事に関してのよくある質問を紹介
ここでは防水工事に関してよくある質問を紹介していきます。
Q
防水工事前に何か準備は必要ですか?
A
防水工事前には、施工箇所の周りを整理し、私物や家具などは移動が必要になります。また、工事中の騒音や振動について、事前に確認しておきその時間帯の過ごし方などを決めておくとスムーズに対応できます。
Q
防水工事を行う周期はどのくらいですか?
A
一般的に、防水工事は10年から15年ごとに行うのが目安です。定期的な点検を行い、劣化が見られる場合は早めに工事を実施すると、建物の寿命を延ばすことができます。
Q
雨天時も防水工事は行いますか?
A
防水工事は晴天時に行うのが基本です。雨天時に施工すると、乾燥が不十分になり、防水効果が落ちることがあります。そのため、天気を見ながらスケジュールを調整し、品質を確保します。
Q
防水工事中に臭いがすることはありますか?
A
防水工事では、使用する材料によって臭いが発生することがあります。特に溶剤系の材料を使うと匂いが強くなることがあります。臭いについて気になる場合はご相談の上、水性材料を選べば臭いは抑えられます。工事中は換気をしっかり行い、匂いがこもらないようにしましょう。
普段からのマンション・アパートの雨漏り対策
自分でできる普段からのマンション・アパートの雨漏り対策として、以下の方法があります。
- 窓周りの点検とシーリング補修: 窓枠やサッシ周りに隙間があると雨水が侵入しやすいので、コーキング材を使って隙間を埋めましょう。
- ベランダの排水口の清掃: ベランダの排水口が詰まると、雨水が溜まり雨漏りの原因になります。定期的にゴミを取り除き、排水を確保します。
- 雨樋のチェック: 詰まった雨樋は排水が悪くなり、雨漏りを引き起こすことがあります。雨樋の詰まりを防ぐために、落ち葉やゴミを取り除きましょう。
- 防水シートやテープの活用: 応急処置として、雨漏り箇所に防水シートや防水テープを貼ることで、一時的に雨水の侵入を防ぐことが可能です。
ただし、雨漏りの原因が建物全体に及ぶ場合や、素人では対処しきれない場合は、早めに防水工事の専門業者に相談することをおすすめします。
改質アスファルトシート防水のまとめ
改質アスファルトシート防水について解説してきました。
改質アスファルトシート防水は、耐久性が高く、施工がしやすいことから、広く採用されている防水工法です。しかし、経年劣化によって様々な症状が現れるため、定期的な点検と補修が必要です。
改質アスファルトシート防水は、様々なケースで採用され、以下の場合にはおすすめの防水工事です
- 既存の露出アスファルト防水がある場合
- コストを抑えたい場合
- 選択肢の多様性
また、改質アスファルトシート防水も経年劣化によって、様々な症状が現れます。
- 表面のひび割れ
- 防水層の損傷
- 防水層の膨張
- 目地の凸凹
- 植物の侵入
これらの症状が見られた場合は、早急な補修が必要です。
防水工事を行う際には、助成金や補助金の活用を検討することができます。国や自治体によって様々な制度が設けられているため、事前に確認することをおすすめします。