機械的固定工法とは?シート防水で用いる?メリット・デメリットを解説 | 株式会社新東亜工業  

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機械的固定工法とは?シート防水で用いる?メリット・デメリットを解説

雨漏りは、建物の老朽化や台風などの自然災害によって発生し、住まいの快適性を大きく損ないます。

防水対策は、建物の維持管理において最も重要な課題の一つです。

近年、従来のアスファルト防水やFRP防水に代わる新たな防水工法として注目を集めているのが「機械的固定工法」です。

本記事では、機械的固定工法の特徴、メリット、デメリットなどについて詳しく解説します。

機械的固定工法とは?

機械的固定工法とは、塩化ビニールやゴム製のシート防水材を専用の金具やアンカーを用いて下地に固定する防水工法です。

シートの固定に接着剤を使用しないため、下地の状態に左右されず、高い耐久性と施工の容易さを実現しています。

他にもシート防水材の固定方法には、接着工法や湿式工法がありますが、現在では機械的固定工法が最も広く使われています。

機械的固定工法のメリット

機械的固定工法には、以下のようなメリットがあります。

接着剤を使わないため、下地の状態に左右されない

機械的固定工法は下地に直接接着しないため、下地の状態に影響を受けることなく施工できます。

一方、接着工法の場合、下地の状態が良好でなければ、接着力が低下し、防水層の剥がれや浮きなどの原因となります。

具体的には、下地に亀裂やひび割れ、凹凸がある状態、シート内部に湿気が残っている、シートが汚れている状態であっても、機械的固定工法であれば施工可能です。

高い耐久性

機械的固定工法は、接着剤を使わずに金具やディスクなどで防水シートを固定するため、接着剤の劣化による剥がれの心配がなく、従来の防水工法に比べて高い耐久性を誇ります。

また、機械的固定工法の高い耐久性によって、メンテナンスコストの削減や建物の資産価値向上などのメリットをもたらしてくれます。

したがって、機械的固定工法は、屋上やバルコニーなど、高い耐久性を求める場所への施工におすすめです。

軽量で施工が容易

機械的固定工法は接着剤を使用しないため、従来の防水工法に比べて軽量化できる点もメリットの1つです。

軽量化は、建物の構造体への負荷軽減、地震時の安全性向上、施工時の負担軽減などに繋がります。

また、下地調整が少なく、天候に左右されにくいので、工期短縮が可能です。

さらに、接着剤の乾燥時間を待つ必要がなく、作業効率が向上します。

デザイン性が高い

機械的固定工法は、接着剤を使わずに防水シートを固定するため、デザイン性の高い防水工法として注目されています。

シートの素材、色の種類が豊富で、多彩なデザインを実現することが可能です。

また、金具やディスクを目立たないよう工夫することで、より洗練されたデザインを実現できます。

機械的固定工法は、複雑な形状にも対応できるため、曲線や斜めの形状、ロゴや模様など自由なデザインの防水が可能になります。

環境への負荷が少ない

機械的固定工法は、従来の防水工法に比べ、環境への負荷が少ない工法です。

従来の防水工法では、シートを下地に接着するために、アスファルトや溶剤系接着剤を使用していました。

これらの材料は、揮発性有機化合物(VOC)を多く含んでおり、大気中に放出されると、環境汚染や人体への悪影響を懸念されています。

しかし、機械的固定工法は接着剤を使用しないため、VOCを排出することがないです。

また、従来の防水工法に比べて、撤去作業時に発生する廃棄物が少ないのもメリットとして挙げられます。

さらに、機械的固定工法で使用される防水シートや金具は、リサイクル可能な材料が多く使用されています。

環境への負荷を減らすことは、持続可能な社会の実現にとって重要です。

機械的固定工法は、環境に配慮した防水工法として、今後ますます注目されるでしょう。

機械的固定工法のデメリット

機械的固定工法は、高い耐久性や施工の容易さなどのメリットがある一方で、以下のデメリットも存在します。

費用が比較的高い

機械的固定工法は、費用が比較的高いというデメリットがあります。

シート防水材を固定する際、接着剤を使用しない代わりに、金具やディスクなどの材料を使用します。

これらの材料は、接着剤に比べて高価なものが多いです。

また、機械的固定工法は、接着工法に比べて施工に手間がかかるため、施工費も高くなります。

費用を抑えるためには、複数の業者から見積もりを取る、補助金制度を利用する、改修工事の場合は既存の防水層を活かすなどの方法があります。

施工業者数が少ない

機械的固定工法には、使用する材料や施工方法に関する専門的な知識が必要で、対応できる施工業者はまだ少ないようです。

施工業者数が少ないため、競争が少なく、施工費用が高くなる場合があるというデメリットもあります。

しかし、近年では機械的固定工法の需要が高まっており、対応できる施工業者も徐々に増えてきています。

機械的固定工法のメリットを活かすためには、施工業者選びが重要です。

機械的固定工法の経験や施工実績が豊富で、施工費用が明確であることが施工業者選びのポイントとなります。

さらに、アフターサービスが充実している業者なら安心して依頼できるでしょう。

施工業者を選ぶ前に、複数の業者から見積もりを取り、比較検討することをおすすめします。

下地によっては施工できない

機械的固定工法は、金具やディスクなどを用いて防水シートを固定するため、下地に穴を開けて施工します。

下地に穴を開けるため、十分な強度を持つ下地でなければ、施工できません。

コンクリートにアンカービスを打ち込む前に、必ず強度試験を行いましょう。

試験結果に基づき、施工が可能かどうか、適切なビス長を判断します。

また、ビス長やディスク間隔は、設置場所、建物規模、下地などを考慮して決定します。

特に、強風の恐れがある地域では、ビス長とディスク間隔に注意が必要です。

機械的固定工法の施工手順

ここでは、機械的固定工法の施工手順について紹介します。

  1. STEP

    下地調整

    • 丁寧な研磨やモルタル補修で、平滑な下地を実現します。
    • 下地の塵芥や油分を徹底的に除去し、接着性を向上させます。
    • 必要に応じて、下地とシートの接着力を強化します。
    • 水溜りが発生しないよう、適切な勾配を設けます。
  2. STEP

    シート敷設

    • シートのシワやたるみをなくし、下地に密着させます。
    • シートの接合にはテープを用いて、隙間なく防水性を確保します。
  3. STEP

    固定金具取り付け

    • ディスク・ビスを仕様書に基づき、適切な間隔で固定します。
    • 下地の種類や形状に合わせて、最適な方法を選択します。

  4. STEP

    シート接合

    • 熱融着または溶剤など、確実な接合方法で水漏れを防ぎます。
    • 丁寧に検査を行い、完璧な防水性を確保します。

  5. STEP

    役物処理

    • ルーフドレン、出・入り隅角などに成型役物を張り付けます。
    • 役物は隙間なくシールし、水漏れを防ぎます。
  6. STEP

    シーリング

    • 途切れのないよう、すべての接合部に丁寧に施工します。
    • すべての工程が終わったら検査を行い、長持ちする防水性を確保します。

機械的固定工法は、具体的な状況に合わせて、最適な防水工法を選択することが重要です。

詳しくは、防水工事専門業者に相談することをおすすめします。

機械的固定工法の費用相場

機械的固定工法の費用相場は、5,000~7,000円/㎡です。

例えば、屋上防水を100㎡施工する場合、費用相場は50万〜70万円になります。

バルコニー防水を20㎡施工する場合の費用相場は、10万〜14万円です

また、以下のような要素が費用に影響を与えます。

  • 施工面積
  • 下地の状態
  • シートの種類や厚み
  • 固定金具の種類や数量
  • 施工業者

費用を抑えるポイントは、複数の業者から見積もりを取って相場を把握し、比較検討することが重要です。

また、自治体によっては、防水工事に関する補助金・助成金制度があるので活用をおすすめします。

まとめ

ここまで、シート防水の機械的固定工法について解説してきました。

この記事の要点は、以下のとおりです。

  • 機械的固定工法とは、従来の接着工法とは異なり、金具やディスクを用いて防水シートを下地に固定する工法
  • 機械的固定工法のメリットは、高い耐久性、軽量で施工が容易、デザイン性が高い、環境への負荷が少ない
  • 機械的固定工法のデメリットは、費用が比較的高い、施工業者数が少ない、下地によっては施工できない
  • 機械的固定工法の費用相場は5,000~7,000円/㎡
  • 費用を抑えるポイントは、複数の業者から見積もりを取る、自治体の補助金・助成金制度を利用する

機械的固定工法の施工手順

  1. 下地調整
  2. シート敷設
  3. 固定金具取り付け
  4. シート接合
  5. 役物処理
  6. シーリング

機械的固定工法は、下地の種類や状態によって、適切な施工方法が異なる場合があります。

特に、施工業者選びは慎重に行いましょう。

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