コラム    

シート防水の機械固定工法とは?特徴・接着工法との違い・手順を解説

シート防水を検討している場合、どのような工事が行われるのか、工法の種類や違いを把握しておきたいと感じる方が多いのではないでしょうか。

シート防水には、機械的固定工法と接着工法があります。

それぞれの特徴や違い、施工手順を確認し、建物に最適な方法を選択しなければなりません。

そこで、シート防水の機械的固定工法に焦点を当て、特徴や施工手順、接着工法との違いを解説します。

シート防水機械的固定工法とは

機械的固定工法は、シート防水工事においてシートを固定する工法であり、絶縁工法とも呼ばれます。

シートの固定方法には接着工法もありますが、現在は機械的固定工法が広く用いられています。

機械的固定工法とは、入隅部や防水端末部に鋼板を固定し、そこにディスクプレートやビスなどで防水シートを固定する工法です。

防水シートは躯体に接着されていないため、躯体のひび割れや振動、接合部の挙動などの影響をほとんど受けません。

もちろん接着層も不要で、防水層を軽量化できる点も特徴です。

また、シートを使用する工法であるため、意匠性にも優れています。

機械的固定工法は、UD工法(固定ディスク先打ち)とUS工法(固定ディスク後打ち)に分かれます。

UD工法(固定ディスク先打ち)はディスクを先に固定してから防水シートに接合するため、意匠性に優れていることが特徴です。

US工法(固定ディスク後打ち)は耐風圧強度の信頼性が極めて高く、高層建築物や海岸建築物に適しています。

ただし、金具を使って固定するため、メリットだけではなくデメリットがあるといえます。

例えば、既存の防水層が良好な状態で漏水もなく、防水下地もほとんど劣化していないのであれば、下地に穴を開けるような機械的固定方法を選択する必要はありません。

機械的固定工法の施工手順

機械的固定工法はどのような手順で行われるのか、工事の内容を把握しておくと安心です。

ここでは、機械的固定工法の主な流れ、施工手順を紹介します。

下地の確認・清掃

まずは下地のチェックです。

現地調査を行いますが、コンクリートやALCなど、下地によってビスの種類や長さが異なるため、あらためて確認します。

例えば、新築時に断熱材が施工されていれば、ビスの長さも長くなります。

下地をチェックしてから、清掃です。

全体を清掃し、取り除ける障害物は取り除きます。

ドレン(排水口)の前は普段から汚れが特に目立つため、念入りに清掃をしなければなりません。

入隅シール充填

入隅部と天端部をビスで固定します。

固定した箇所に隙間ができるため、シリコンシール充填による防水処理を施します。

絶縁シート敷設

絶縁シートを張ります。

絶縁シートは湿気を逃がして、下地を滑らかにするために敷き詰めます。

エポキシ樹脂の注入

シートの溶着部にエポキシ樹脂を充填します。

切れ目ができないよう、丁寧に充填していきます。

銅板・固定ディスク・改修ドレンの取り付け

断熱シート、固定ディスク、周囲の銅板、補修したドレンなどの設置をします。

次は、シワのないように真っ直ぐに張り、メーカーの指示より少し多めに重ねて塩ビシートを敷きます。

塩ビシート敷設

塩ビシートの重なり部分を特殊な溶着液で溶かして圧着することで、完全に一体化させます。

従来のゴムシートに比べ、強度が高く、安定性に優れていることが特徴です。

専用のチェッカーで徹底的にチェックし、溶接が不十分な部分は熱風ブロワーで溶接します。

隙間がないことを確認して、次の工程です。

維ぎ目部分を溶着

シートの継ぎ目にシーリングを塗布します。

見た目をきれいにする硬化や、継ぎ目の保護するために重要です。

立ち上がり部に塩ビシートを貼り付け

立ち上がり部に塩ビシートを貼り、端部はプレートで固定します。

塩ビシートを密着固定させます。

加熱装置ディスク圧着

ディスク板と塩ビシートを加熱装置で圧着します。なお、加熱装置とは、各分野の製造工場で金属を熱して加工する際に使われる装置です。

端部のシーリング材充填

端部にシーリング材を充填し、建物への浸水を防ぎます。

端部のシーリング材重鎮は細かい工程であり、丁寧にヘラで平らに仕上げます。

脱気筒設置

脱気筒とは、マンションの屋上に設置されている金属製の出っ張りのことです。

屋上の中央から、一定の面積間隔で設置します。

脱気筒は屋上の防水層を保護する役割を担っており、必要不可欠なものです。

完成

各工程でチェックを行っているため、基本的に不備が見つかることはありません。

しかし、最後に全体を改めて確認して、完成です。

機械的固定工法のメリット

鋼ディスクなどを用いた機械的固定方法には、様々な特徴があります。

ここでは、機械的固定工法を選択することで得られるメリットをチェックしましょう。

天候に左右されにくい

機械的固定工法は、自己粘着層や接着剤を使用する工法とは異なります。

鋼板や鋼製ディスクでシートを機械的に固定するため、下地が乾燥していても吸湿することがありません。

例えば、雨が降った直後は接着層や接着剤を使う工法は選べませんが、機械的固定工法はある程度水が流せれば施工は可能です。

工期が短い

接着剤を使用する場合は、接着剤を塗布してから一定時間待ってから貼り付けなければなりません。

例えば、ウレタン防水も、各層が固まるまで時間がかかります。

ウレタン塗膜防水断熱工法は、下地を整え、プライマーを塗り、通気緩衝シートを敷き、ウレタン防水材を2~3層塗り、最後にトップコートを塗って完了です。

しかし、機械的固定工法では待ち時間はありません。

機械的固定工法は、絶縁シートを敷設し、鋼板と鋼製円盤を取り付け、下地を整えることなく新しいシートを敷設して溶接するため、工程を短縮できます。

下地の調整が必要ない

機械的固定工法は防水層を下地に直接密着させることなく、新たに設置した金物のみで固定するため、再度下地を調整する必要がありません。

ただし、新しい防水層を壊すような突起があったり、既存の防水シートがゆがんでたりなど、下地が極端に悪い場合は多少の調整が必要になります。

プレスコンクリートの場合、成形型やエラスタイト製の伸縮目地は後から飛び出すことがあるため、撤去してバックアップ材やシーリング材を充填するなどの対策が必要です。

下地に水分が溜まりにくい

同じ断熱工法でも、機械的固定工法は金属で固定した部分以外に通気層があるため、下地の水分が非常に効率よく逃げます。

また、工期が短縮できるのも特筆すべきメリットです。

さらに、防水塗装に比べ、防水層(シート)の厚みが一定であり、仕上がりにムラがないこともメリットだといえます。

機械的固定工法のデメリット

シート防水の機械的固定工法は、あらかじめ下地を確認する必要があり、漏水時に対応できない可能性があるなどのデメリットもあります。

次に、機械的固定工法の主なデメリットを紹介します。

下地の強度試験を行う必要がある

コンクリートにアンカービスを打ち込む場合、強度試験を実施しなければなりません。

強度試験は、実際に建設が可能かどうか、またネジの長さを決めるものです。

ビスの長さや円盤の間隔を決めるのは、引き抜き試験だけではなく、立っている場所やビルの屋上の何階建てかを考慮して決めます。

強風が吹き荒れる地域では、ディスクとシートがしっかり溶接されていても破損の原因になるため注意が必要です。

例えば、アンカービスが短かったり、ディスクの間隔が広かったりすると、強風でビスが外れたり、シートとディスクが離れたりして、破損の原因になります。

また、アンカービスを押えコンクリートに打ち込む際にも注意が必要です。

伸縮目地は、通常3mごとに押えコンクリートに打設します。

伸縮目地の位置や近くにアンカービスを打っても強度が出ないため、削孔時にジョイントの位置をチェックし、強度が出るところにディスクとアンカービスを設置しなければなりません。

配管に注意が必要

まれに、アンカービスを打つ場所に電線専用の配管が通っている場合があります。

誤って配管内の電線を傷つけてしまうと、全住戸のインターホンやオートロック機能に影響が出たり、場合によっては火災報知器などの配線を傷つけてしまったりします。

完全に修理するまでの間、建物が危険にさらされる可能性があり危険です。

配管の種類は、鉄と樹脂製があります。

アンカー用の穴をあけるとき、配管が鉄製なら気づきやすいですが、樹脂製だと気づかないうちにドリルが貫通してしまいます。

図面通りに施工されていない可能性もありますが、竣工図を確認することは大切です。

漏水した際に原因特定が難しい

接着工法では、漏水事故が発生した場合、上部付近を確認することで解決できるケースが多いです。

しかし、床シートと下地が完全に分離している機械的固定工法では、上部付近を見ても漏水元を見つけるのが難しいことが多いです。

本来は接着剤や熱溶着でしっかり貼り付けるため、水漏れの可能性は低いものの、手作業や施工によるトラブルが発生するケースもあります。

また、防水施工の不具合ではなく、下地の突起物によって防水層が破損していることもあるでしょう。

チェック棒などシートの開口部を確認する道具を使用し、開口部を確認、表面に傷がないか、立ち上がり部に不具合がないかなどを入念に確認しなければなりません。

歩行時に注意が必要   

メンテナンスのために屋上に入る設備業者は、防水層のことまで意識をしていません。

機械的固定工法を理解している方は表面を見てディスクを確認できますが、理解していない方は防水層の上を歩きます。

メンテナンス作業中は非歩行の防水層の上を歩きますが、硬い靴でディスクを踏むと防水シートが傷みます。

口頭で全員に注意するのは難しいため、注意書きを用意したり、メンテナンス通路にディスクの位置を表示したり、防水シートでディスクを保護したりなどの対策が必要です。

施工時に振動と騒音が起こる   

機械的固定工法では、シートを接着する際に金具を固定します。

ドリルを使わなければならず、振動と騒音が起こる点がデメリットです。

周辺環境を考慮して工法を選ぶ必要があるうえ、機械的固定工法を選択する場合は近隣への説明や挨拶が必須だといえます。

シート防水機械的固定工法のまとめ

シート防水機械的固定工法について解説してきました。

まとめると、

  • 下地の状態に左右されにくい
  • 非常に信頼性の高い防水工法
  • 専門業者による強度試験が必要
  • 配管を傷つけるリスクや騒音のデメリットがある

シート防水の機械的固定工法は、実績と技術力がある業者に依頼しなければトラブルが起こる可能性があります。

機械的固定工法のメリットとデメリットを理解したうえで、防水工事の内容や工法を検討しましょう。

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