コラム    

アスベスト調査は必要?作業の流れ・費用相場・分析方法の種類などを解説

工事の際に基本的に必要となるアスベスト調査ですが、実は条件によってはアスベスト調査が不要なケースもあります。

今回は、アスベスト調査が必要なケースと不要なケース、実際にアスベスト調査を行う際の流れなど、気になるアスベスト調査についてを徹底解説しています。

工事を控えていてアスベスト調査が必要かどうか知りたい方や、アスベスト調査について詳しく知りたいという方は、ぜひ参考にしてみてください。

アスベスト調査の必要性

工事の際のアスベスト事前調査は、法律で定められた義務です。

アスベストの飛散リスクがない条件を満たす一部の事例以外を除き、基本的にすべての工事でアスベストの事前調査が必要となります。

アスベストは石綿とも呼ばれる、発がん性が認められ問題となった人体に有害な物質です。

日本では、2006年に重量の0.1%以上のアスベストを含む製品の製造・輸入・譲渡・提供・使用が禁止されています。

しかし2006年以前は、建築物をはじめとするさまざまなものにアスベストが使用されてきました。

事前調査をせずにアスベストを含む建物の工事を行うと、作業員はもちろん、近隣住民にも健康被害をもたらすリスクがあります。

アスベストによる健康被害を防ぐためにも、工事の前にはしっかりとアスベスト調査を行うことが重要です。

報告対象となる工事

アスベストの事前調査は、飛散リスクがない条件を満たす一部の例外を除いたすべての工事で実施することが義務付けられています。

しかし、事前調査結果の報告については、事前調査を行ったからといってすべての工事で必要なわけではありません。

アスベストの事前調査結果の報告対象となる工事は、以下の通りです。

  • 解体部分の 床面積の合計が80㎡以上の建築物 の解体工事
  • 請負金額が 税込100万円以上の建築物 の改修工事
  • 請負金額が 税込100万円以上の特定の工作物 の解体または改修工事
  • 総トン数が 20トン以上の船舶(鋼製のものに限る)の解体又は改修工事

以上に該当する工事の場合は、アスベストの事前調査が終了し結果が出たら、事前調査結果の報告書を作成します。

事前調査結果の報告は、石綿事前調査結果報告システムを利用すれば、労働基準監督署及び自治体に出向かずに提出することができます。

電子システムでの報告が難しい場合は、労働基準監督署及び自治体の窓口に書面で提出してください。

アスベストの事前調査が必要なケース

先ほども紹介したように、工事の際のアスベストの事前調査は、一部の例外を除いて基本的に必要となります。

工事の際といっても、どのような工事やどのタイミングで事前調査が必要になるの?と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。

ここでは、そんなアスベストの事前調査が必要なケースを紹介していきます。

建物の解体・改修工事

建物の解体や改修工事を行う場合は、アスベストの事前調査が必要です。

解体・改修工事の際に事前調査が必要となるのは、石綿障害予防規則や大気汚染防止法によって義務づけられています。

アスベストの事前調査は、建物の解体・改修工事を行う前に実施する必要があります。

そのため、工事を始める時期を逆算して、工事が始まる前に事前調査を終わらせておくことが重要なポイントです。

アスベストの有無を調査し安全に工事を行うためにも、工事前に必ずアスベストの事前調査を行ってください。

建物の売買・貸借をする場合

建物の売買・貸借をする場合は、工事を行うわけではありませんが、アスベストに関する情報を契約者に伝える必要があります。

売買や貸借の契約時にアスベストの事前調査が行われている場合は、調査結果を契約者に通知します。

契約時に建物の事前調査が行われていない場合では、記録がないという表記でも問題ありません。

安心して建物の売買・貸借を行うためにも、アスベストの事前調査を行い結果を通知することがおすすめです。

アスベストの事前調査が不要なケース

アスベストの事前調査は、工事を行う際にはほとんどの場合で必要です。

しかし、一部のケースでは例外となり、事前調査が不要になる場合があります。

ここでは、そんなアスベストの事前調査が不要となるケースを紹介するので、ぜひ確認してみてください。

素材にアスベストが含まれていない

建物の素材に明らかにアスベストが含まれていない場合は、事前調査が不要です。

木材・金属・石・ガラスなどの素材のみを使用した建物を対象とした工事の場合、アスベストが含まれていないことが明らかであるため、事前調査は必要ありません。

また、畳や電球などを除去する作業の場合も、素材にアスベストが含まれていないことが明白であるため事前調査は不要です。

しかし、このような除去作業の中で、アスベストを含む可能性のある周囲の素材に損傷を与える可能性がある場合では、ほかの工事と同様に事前調査が必要となります。

このように、素材にアスベストが含まれていないことが明らかである場合の工事については、アスベストの事前調査が不要なケースに該当します。

施工対象に軽微な損傷しか与えない工事

素材にアスベストが含まれていないことが明らかではない場合でも、施工対象に軽微な損傷しか与えない工事では、アスベストの事前調査は不要です。

施工対象に軽微な損傷しか与えない工事とは、釘抜きや釘打ちだけで完了する改修工事などが該当します。

このような工事では、作業中にアスベストが飛散するリスクがないため、事前調査が不要となります。

ただし、釘抜きや釘打ちだけで完了する工事であっても、工事の際に電動工具を用いて穴をあける場合は例外に該当せず、アスベストの事前調査が必要です。

塗装や材料の追加のみを行う工事

塗料や材料の追加のみを行う工事で既存の素材を損傷することのない場合では、アスベストの事前調査は不要です。

現在の塗装の上に塗料を重ね塗りする工事などが該当します。

材料の追加のみを行い既存の素材を損傷しない工事では、アスベストが飛散するリスクがありません。

そのため、建物の素材にかかわらず例外に該当し、事前調査が不要となるでしょう。

ただし、塗装工事のみを行う場合でも、既存の塗装を剥がす場合や外壁面にアンカーを打つ場合など、アスベストの飛散リスクを伴う工程を含む場合には、事前調査が必要です。

アスベスト調査の流れ

ほとんどの工事においてアスベストの事前調査が必要だとわかったところで、「アスベスト調査ってどんな調査?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。

厚生労働省の「石綿障害予防規則」では、第3条においてアスベスト調査における第一次スクリーニングと第二次スクリーニングの必要性を定義しています。

ここでは、そんな第一次スクリーニングと第二次スクリーニングを含むアスベスト調査の流れや内容について、詳しく紹介していきます。

専門家または有資格者に調査を依頼

アスベスト調査を行う際は、専門家はまたは有資格者に依頼する必要があります。

令和5年(2023年)からは、事前調査での信頼性を確保するため、専門知識を有する者によるアスベストの事前調査が義務化されました。

2023年10月以降に着工する工事では、以下のいずれかの資格を持った専門家によるアスベストの事前調査が必要です。

  • 石綿含有建材調査者
  • (一社)日本アスベスト調査診断協会に登録されている人

アスベストの事前調査を依頼する場合は、いずれかの資格を有する方に調査を依頼してください。

第一次スクリーニング(書面・図面調査)

アスベストの事前調査で最初に行われるのが、第一次スクリーニングです。

第一次スクリーニングでは、書面や図面を利用した調査を行います。

建設や改修が行われた際に使用された材料や工法などが記載されている設計図書や施工記録を見て、アスベストが含まれているかどうかを判断します。

とくに高度成長期に建設された建物は、アスベストが含まれる可能性が高いです。

そのため、登記簿謄本や重要事項説明書などの書面も参考にしながら、建物の建築時期を確認することも重要です。

第一次スクリーニングの段階でアスベストが含まれていることが明白な場合は、除去作業へと移行する場合もあります。

第二次スクリーニング(現地調査)

第二次スクリーニングでは、現地調査を行います。

書面だけではアスベスト含有の判断ができない場合もあるので、調査員が現地に出向いて現地調査を行い、目視でアスベストの有無を確認を行います。

下地部分を含む全体を目視で確認していきますが、アスベストに似た素材が使用されていることもあり、目視だけで完全にアスベストの有無を判断することは難しいです。

そのため、第一次スクリーニングの情報をもとに、アスベストを使用している疑いの強い箇所を中心として現地調査を行っていきます。

第一次スクリーニングと第二次スクリーニングの両方を実施することで、確実にアスベスト使用の有無を判断していくことが基本です。

採取・分析

第二次スクリーニングで現地調査を行っても、アスベストの有無の判断が難しい場合もあります。

現地調査でアスベストが使用されている疑いの強い箇所がある場合は、その箇所の建材を一部持ち帰り、建材からとれたサンプルを採取して専門機関に分析を依頼します。

目視だけでは判断が難しい場合でも、採取・分析を行うことにより、アスベストの有無の確実な判断が可能です。

報告書作成・提出

分析結果が出て事前調査がすべて完了したら、報告書を作成して提出します。

報告書の作成は、アスベストの事前調査を実施した機関が行うことが一般的です。

アスベストが含まれているかどうかは、報告書に記載された内容が最終的な判断となっています。

依頼者は、報告書の内容を必ずしっかりと確認してください。

事前調査の報告対象となっている工事では、調査結果の内容(アスベストの有無)にかかわらず、工事が始まる前までに報告する必要があります。

事前調査結果の報告書は、厚生労働省の「石綿事前調査結果報告システム」を利用すると、窓口に出向くことなく提出できて便利です。

厚生労働省の「石綿事前調査結果報告システム」についての利用は義務ではなく、電子システムの利用が難しい場合は、労働基準監督署及び自治体の窓口に書面で提出し、事前調査結果を報告することもできます。

アスベスト分析方法の種類

アスベスト事前調査の中では、建材の一部を採取し分析を行うことがあります。

この際、アスベストの分析方法には以下の2種類があります。

  • 定性分析
  • 定量分析

ここでは、それぞれの分析方法について詳しく解説するので、参考にしてみてください。

定性分析

定性分析とは、アスベストの含有率が重量の0.1%を超えているかどうかを調べる分析方法です。

アスベスト調査において最初に行われるのが、定性分析です。

定性分析では、以下の2つの調査方法を用いて、アスベストの含有量を調査していきます。

  • 偏光顕微鏡法
  • 位相差分分散顕微鏡法・X線回折法

それぞれの調査内容について、さらに詳しく紹介します。

偏光顕微鏡法

偏光顕微鏡法は、偏光顕微鏡を使用して、アスベストの形態や光学的特性を観察して判断する分析方法です。

国際的に使用される「国際規格ISO 22262-1」を基準とします。

層ごとに分析を行えるので、どの層にアスベストが含有されているのかを特定することができます。

偏光顕微鏡法は、分析者の高い技術と知識を必要とする、難易度の高い分析方法です。

位相差分分散顕微鏡法・X線回折法

位相差分分散顕微鏡法・X線回折法は、位相差分散顕微鏡およびXRD(X線回折装置)を使用して行う、日本独自の分析方法です。

偏光顕微鏡法と比べて分析者の高い技術を必要としないことがメリットですが、サンプル全層を粉砕して分析を行うため、どの層にアスベストが含有されているのかを特定することは難しいです。

定量分析

定量分析とは、アスベストを何%含有しているのかを調査する分析方法です。

定量分析を行う際も、定性分析の実施が必要になります。

通常の工事では、アスベストが重量の0.1%を超えているかどうかがわかれば十分です。

そのため、定性分析でアスベストが0.1%を超えて含有されていると判断されれば、基本的に定量分析は必要ありません。

アスベスト調査の費用相場

ここでは、アスベスト調査にかかる費用の相場を解説します。

調査にかかる費用は依頼する業者によっても異なるため、費用の詳細はそれぞれの業者に見積もりを依頼することがおすすめです。

見積もりが適正価格であるか判断するためには、あらかじめ費用相場を知っておくことが重要なので、ぜひ事前に相場を確認しておきましょう。

事前調査費用

事前調査では、第一次スクリーニングと第二次スクリーニングでそれぞれ費用が発生します。

それぞれの費用相場は、以下の表を参考にしてください。

調査種別費用相場
第一次スクリーニング(図面調査)20,000〜30,000円/1現場
第二次スクリーニング(現場調査)21,000〜49,000円/1現場

第一次スクリーニングでは、2万円台で調査を行ってくれる業者が多いようです。

第二次スクリーニングは調査員が現場に出向くため、第一次スクリーニングよりも割高になる傾向があります。

紹介した費用相場は1現場あたりにかかる費用なので、現場数が増えれば当然必要となる費用も増えることになるでしょう。

分析費用

分析を行う場合は、事前調査とは別に費用がかかります。

分析にかかる費用は、分析方法によっても異なります。

分析種別の費用相場は、以下の表を参考にしてください。

分析種別費用相場(1検体)
定性分析30,000〜100,000円/1検体
定量分析(X線回析分析法)30,000〜100,000円/1検体
定性分析+定量分析40,000〜150,000円/1検体

分析にかかる費用は、分析期間によって異なることはもちろん、納期や検査項目などによっても変わってきます。

納期を急がない場合は、費用を抑えられることが多いようです。

上記の費用相場は1検体あたりにかかる費用の目安なので、検体数が増えるほど費用も高くなっていきます。

アスベスト調査機関の選び方

「アスベストの事前調査を行いたいけど、どこに依頼すればいいかわからない」「調査を行っている会社がたくさんあって、どこが良いかわからない」などとお悩みの方も多いのではないでしょうか。

多くの調査機関がある中で、少しでも満足度の高い調査機関に依頼したいですよね。

ここでは、アスベストの事前調査を依頼する際の調査機関の選び方を、3つのポイントから紹介します。

調査機関選びにお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。

有資格者の確認

アスベストの事前調査は、信頼性を確保するために、専門知識を有する者による調査が義務付けられています。

そのため、有資格者が在籍している機関に依頼することが必須です。

  • 石綿含有建材調査者
  • (一社)日本アスベスト調査診断協会に登録されている人

アスベストの事前調査を行うために必要な、上記の資格を持っている調査員がいる調査機関を選んで依頼するようにしましょう。

適切な料金提示

調査を依頼する際は、見積もり金額が適切であるかどうかも重要なポイントです。

場合によっては追加料金がかかる場合もあるので、そのような際には「どんな作業が追加された場合にどのくらい費用がかかるのか」を明確に提示してくれる調査機関に依頼しましょう。

事前に料金についての説明が詳しく受けられない場合、調査後に高額な追加費用を請求される場合もあります。

  • 基本料金を明確に提示してくれる
  • 相場から大きく外れない金額である
  • 追加料金がかかる項目や金額についても明確な説明がある

以上のようなポイントを意識して、予算と相談しながら調査機関を選びましょう。

報告書の作成実績

工事を行うにあたっては、ほとんどの場合でアスベストの事前調査報告書を提出する必要があります。

事前調査を依頼する方も、報告書を提出する目的であることがほとんどです。

そのため、報告書の作成実績を調査機関選びの材料にすることもおすすめです。

報告書の作成実績を見ると、アスベストの事前調査の実績や経験がどれくらいあるのかがわかります。

報告書の作成実績は、ホームページに掲載されている場合も多いです。

まずはホームページを確認し、掲載されていない場合は問い合わせしてみるといいでしょう。

実績を確認する中で、経済産業省からの支援を受けているなど、公的機関とのつながりがある調査機関はより信頼度が高いといえます。

調査結果の見方

アスベストの事前調査の結果が出たら、調査結果報告書は必ずよく確認するようにしましょう。

ただ、調査結果の見方がわからないという方も多いですよね。

ここでは、アスベスト事前調査における調査結果の見方を解説していきます。

実はアスベストには、いくつかの種類があるのです。

アスベスト分析では、6種類のアスベストが建材の中に重量の0.1%以上を超えて含まれているかどうかを調べています。

アスベストの種類にかかわらず、規制基準は0.1重量%以下です。

アスベスト分析で調査するアスベストは、以下の表に記載された6種類です。

アスベストの種類
  • クリソタイル
  • アモサイト
  • クロシドライト
  • アンソフィライト
  • トレモライト
  • アクチノライト

調査結果を見る際は、6種類すべてのアスベストが0.1重量%以下であれば、建材にはアスベストが含まれていないということになります。

反対に、ひとつでも0.1重量%を超えるものがあれば、建材にアスベストが含まれているということです。

含有量は6種類全体で0.1重量%以下ではなく、それぞれの種類の含有量がすべて0.1重量%以下であることが、建材にアスベストが含まれていないと認められる条件となります。

まとめ

アスベストは、発がん性のある人体に有害な物質です。

健康被害を防ぐため、厳しい規制が定められています。

  • 建物の解体・改修工事を行う際は、基本的にアスベストの事前調査が義務付けられている
  • アスベストの事前調査は、有資格者が行うことが義務付けられている
  • アスベストの規制基準は、0.1重量%以下

アスベストは健康被害のリスクがある有害な物質なので、さまざまな規制が定められています。

「義務付けられているから」ということはもちろん、安全な工事を行うためにも工事の際には必ずアスベストの事前調査を行ってくださいね。

今回の記事が、アスベストの事前調査についてお悩みの方の参考となれば幸いです。

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