2024.02.24
シーリング工事とは?施工の流れ・注意点・必要性・費用相場を徹底解説
シーリング工事とはどの場所にどのような工事を行うのか、という疑問を持っていませんか?
シーリング工事はマンションやビルなどの建物の寿命に大きな影響を与える工事の一つです。
しかし、工事内容や費用がわからないと、おいそれと工事に踏み切ることはできませんよね。
この記事では、シーリング工事の内容や手順、主な施工箇所を詳しく解説していきます。
シーリング工事とは防水工事の仕上げ作業
シーリング工事とは、建物の外壁や仕上げ材の隙間を接客性のあるシーリング材で埋める工事のことです。
シーリング工事を行うことで、雨水や外気の浸入を防ぎ、建物の劣化を抑えることができます。
シーリング工事の主な目的は防水ですが、建物の耐久性を高める効果もあります。
シーリング材には伸縮性もあり、地震による揺れや強風時に目地(維ぎ目部分のこと)の動きにあわせて伸縮し、建物の構造を守ってくれます。
シーリング工事はコーキング工事と呼ばれることがありますが、これらに大きな違いはありません。
強いて言うなら、
- コーキング…目地などの隙間に詰め物をすること
- シーリング…防水を目的とし、目地などの隙間に詰め物をすること
と区別することができます。
目地などの隙間を資材で埋める工事は、業者によって呼ばれ方は異なりますが、コーキングとシーリングの工事内容と費用は同じです。
シーリング材の種類
シーリング工事は防水性・気密性・耐震性など建物の性能を高める重要な工事の一つですが、使用するシーリング材は主成分によって特徴や用途が異なります。
シーリング材の種類と特徴について紹介していきます。
シーリング材は1成分形と2成分形の2つに大別されます。この2つの違いは硬化方法です。
- 1成分形(湿気・乾燥硬化型)…空気中の水分と反応して硬化するタイプと乾燥硬化するタイプがある。多くはカートリッジ式で専用ガンに装填して使用する
- 2成分形(反応硬化型)…基剤と硬化剤を反応させて硬化させる。使用する際は専用ガンに加え、攪拌機も必要
シリコン系シーリング材
シーリング材の中で最も使われているのがシリコン系のシーリング材です。
シリコン系は他の素材に比べて価格が安く、その上、耐候性・耐水性・耐熱性に優れているのが特徴です。
そのため、シリコン系は屋内外問わず、多くの場所で使用されています。
しかし、シリコン系のシーリング材は塗料が乗りづらいのが欠点です。シリコン系の上に塗料を塗ってしまうと塗料を弾いてしまうので、シーリング工事の完了後に塗装が必要になる箇所には、シリコン系以外のシーリング材を選ぶのがよいでしょう。
シリコン系シーリング材のメリット・デメリット・主な用途を以下にまとめました。
メリット: 耐熱性と耐候性が優れています。
デメリット: 目地周辺を撥水汚染する可能性があり、塗料がのらないことがあります。
主な用途: ガラス周りや浴室、キッチンなど
ウレタン系シーリング材
ウレタン系のシーリング材は耐久性と密着性が高く、硬化するとゴムのような弾力性を持つのが特徴です。
しかし、ウレタン系は紫外線に弱く、汚れやすいため、外壁や屋根への使用には適していません。外壁や屋根でウレタン系のシーリング材を使用する場合は、施工後に塗装でシーリング材を保護する必要があります。
ウレタン系シーリング材のメリット・デメリット・主な用途を以下にまとめました。
メリット:耐久性と密着性が高い
デメリット:紫外線に弱く、汚れやすい
主な用途:内外装の目地、窓周り、ひび割れ補修など
変成シリコン系シーリング材
変成シリコン系はウレタン樹脂が原材料のシーリング材です。紫外線に強く、汚れにくいのが特徴です。
また、変成シリコン系は通常のシリコン系とは異なり、塗料が乗りやすいため、硬化後に上から塗装することができます。
このように使い勝手がいいシーリング材なのであらゆる部位に使用され、マンションやビル、アパートの大規模修繕でも重宝されています。
ただ、変成シリコン系シーリング材は他の素材に比べ費用が高いのが難点です。施工費用が高くなることに注意しましょう。
変成シリコン系シーリング材のメリット・デメリット・主な用途を以下にまとめました。
メリット:耐候性・耐熱性・防汚性に優れ、塗料が乗りやすい
デメリット:費用が高く、薄層未硬化現象が生じる可能性がある
主な用途:サイディングやALCなどの外壁目地、窓周り、躯体など
アクリル系シーリング材
アクリル系シーリング材は水性なので施工の難易度が低く、他のシーリング材に比べて価格が安いのが特徴です。
アクリル系シーリング材の欠点は、耐候性と耐久性が低く、硬化後にひび割れなどの劣化が生じやすいことです。また、0℃以下での施工はできません。
アクリル系シーリング材は応急処置で使用するのがおすすめです。
変成シリコン系シーリング材のメリット・デメリット・主な用途を以下にまとめました。
メリット:安全な水性で安価
デメリット:耐候性と耐久性が低く、硬化後に劣化が生じやすい
主な用途:ALC板の目地、間切りなど
ポリサルファイド系シーリング材
ポリサルファイド系のシーリング材は耐久性が高く、仕上がりがきれいなのが特徴です。
ただ、ポリサルファイド系シーリング材は伸縮性が乏しいので、地震や台風のダメージを受けると、ひび割れが起こる恐れがあります。そのため、動きが大きい金属類や伸縮を繰り返す木材への施工は不向きです。
また、塗料を塗ると変色や軟化を起こす恐れもあります。施工後に塗装が必要になる箇所にポリサルファイド系シーリング材を使用する際は、汚染防止処理を行う必要があります。
メリット:耐久性が高く、仕上がりがきれい
デメリット:伸縮性が低く、硬化後に劣化が生じやすい
主な用途:コンクリートや金属の接合部など
シーリング工事の種類
工事の種類を考えると、シーリング工事には2つの主要な方法があります。
- 打ち替え工事…既存のシーリングを完全に取り除いた後に、新しいシーリングを充填する工法
- 打ち増し工事…既存のシーリング材の上に、新しいシーリング材を足して補修する工法
シーリング材の劣化が激しい場合は打ち替え工事で行います。
シーリング材の劣化がそれほど激しくない場合は打ち増し工事で対処しますが、シーリング材の傷みが軽度でも、打ち替え工事で防水処置を施すのがほとんどです。
シーリング工事が必要な施工箇所
建物でシーリング工事が必要になる場所はいくつかあります。必要になる主な場所は次のとおりです。
- 外壁の目地…建物の外壁にはさまざまな目地があります。窓枠やドア枠、壁と床の接合部などです。これらの目地をシーリング材で埋めることで、雨水や風が侵入しないようにします。
- 外壁のひび割れ…クラックとも呼ばれる外壁のひび割れはシーリング材の充填で補修します。
- 屋上や屋根…パラペットや笠木、塔屋などの目地と接合部、そして下地補修でシーリング材を使用します。
- ガラス回り…ガラスと枠の間の目地はシーリング材で密封し、雨漏りとガラスの劣化を防止します。
- バスルーム…バスタブやシャワーの周囲、洗面台の目地にもシーリング工事を施します。湿気や水の浸入を防ぎ、カビや腐食を防止します。
- キッチン…キッチンのシンク周りやコンロの目地にもシーリング工事を行います。ここでも湿気や水の浸入を防ぎます。
- 床と壁の接合部…床と壁の接合部にシーリング工事を施すことで、隙間からの雨水や風の侵入を防ぎます。
シーリング工事を行うタイミング
シーリング工事はいつ行えばいいのか気になりますよね。
シーリング工事は以下のタイミングで行うのがよいと言われています。
- 耐用年数が経過したとき
- 劣化症状が現れたとき
- 外壁塗装をするとき
下記ではシーリング工事のタイミングについてさらに詳しく紹介していきます。
耐用年数が経過したとき
シーリング材の耐用年数は素材によって異なりますが、おおむね5〜10年だと言われています。
そのため、シーリング工事は前回の工事から5〜10年経過を目安に行うのがよいでしょう。
ただ、シーリング材は5年経つと劣化症状が現れ始めます。また、環境によって劣化の進行具合は異なり、場所によっては5年未満で工事が必要になることもあるので、5年ごとに専門業者に点検・調査をしてもらうのがおすすめです。
劣化症状が現れたとき
耐用年数が過ぎていなくとも、紫外線や雨風などの外部要因によって、シーリング材に劣化が生じることがあります。
以下はシーリング材に現れる主な劣化症状です。
- 表面のひび割れ
- 中央からの破断
- 接着面の剥がれ
上記のような劣化症状がシーリング材に表れたら、早めにシーリング工事を行う必要があります。
これらの症状は、専門知識がなくても一目でわかるものなので、発見した際は速やかに専門業者に相談しましょう。
外壁塗装をするとき
外壁の塗装工事を行う際、シーリング工事も同時に行うとお得です。
外壁の塗装工事とシーリング工事はどちらも足場が必要になります。
分けて工事をするとそれぞれに足場代がかかってしまいますが、工事を同時に行うことで、足場の組立と解体が1回で済むので費用を抑えることができます。
劣化したシーリング材を放置した場合の被害
シーリング材は窓枠やドア枠、壁と床の接合部など様々な場所に充填され、雨水の侵入を防いでいます。
このシーリング材が劣化し、補修を後回しにした場合、どのような被害が起こるのでしょう。
劣化したシーリング材を放置すると以下のような被害が起こります。
- 雨漏り
- シロアリの発生・繁殖
- カビの発生による健康被害
- 躯体の腐食
- 耐久性・耐震性の低下
- 建物の資産価値を下げる
雨漏りは屋上や屋根の劣化で起こると思われがちですが、実はシーリング材の劣化や外壁のひび割れが原因で起こることもあります。
また、建物内部に侵入した雨水は、雨漏り以外にも上記のような問題も引き起こします。
シーリング材の劣化や外壁のひび割れは放置せず、早めに工事を行うのが重要です。
シーリング工事の費用相場
シーリング工事の価格の相場は以下のとおりです。
工事の種類 | 単価相場(1平方メートルあたり) |
---|---|
打ち替え工事 | 900~1,200円 |
打ち増し工事 | 500~900円 |
上記の価格はあくまでも相場です。
シーリング工事にかかる費用は工法や使用するシーリング材の種類・量によって変わります。
また、施工場所が2階などで足場を組む必要がある場合は、別途足場代がかかります。
シーリング工事の施工手順
打ち替え工事と打ち増し工事、それぞれの施工手順を紹介していきます。
打ち替え工事の場合
シーリング打ち替え工事の手順は以下のとおりです。
- STEP
既存シーリング材の撤去
最初に、劣化した既存のシーリング材を丁寧に取り除きます。カッターなどを使用して隙間からシーリングを切り取ります。
- STEP
目地状態の確認と清掃
シーリングを取り除いた箇所の目地状態を確認します。寸法や隙間の広さをチェックします。
目地を清掃して汚れやサビを取り除きます。 - STEP
バックアップ材の取り付け
シーリングを施工する箇所にバックアップ材を取り付けます。バックアップ材はシーリング材の充填をサポートします。
- STEP
プライマーの塗布
シーリング材専用のプライマーを刷毛で塗布します。プライマーはシーリング材の接着力を高める役割を果たします。
- STEP
シーリング材の充填
シーリングガンを使って新しいシーリング材を充填します。目地底からゆっくりとシーリング材を注入していきます。
- STEP
ヘラでならし
シーリング材を均一に伸ばし、表面を平滑にします。
- STEP
養生はがし
シーリング材が硬化する前に、養生テープをはがします。
打ち増し工事の場合
打ち増し工事の場合は既存シーリング材の撤去は行わないので、打ち替え工事のstep1を省いて進めます。
場合によっては、取り除ける範囲で既存のシーリング材を撤去し、打ち増し工事を行うこともあります。
シーリング工事の工期と注意点
シーリング工事にかかる工期は2〜5日程度です。
シーリング工事の注意点は以下のとおりです。
- 雨天時や気温が低い日は工事を延期する必要がある
- 業者の実績や口コミ評判を確認する
シーリング工事は気温15~25℃、湿度80%未満で曇天・無風の日に行うのがベストだと言われています。雨天時や気温が低い日に強行するとシーリング材が充分に硬化せず、施工不良が起こる可能性が高くなります。
また、シーリング工事は技術を要する作業なので、業者選びは慎重に行いましょう。
シーリング工事の会計処理方法|オーナー・経営者様向け
通常、シーリング工事は建物の本来の状態に戻すために行われます。
そのため、これにかかる費用は固定資産の管理や修繕に充てられることが一般的です。
したがって、企業はこれを当期の費用として計上できます。
シーリング工事は建物の耐用年数を延ばすためのものであり、資本支出と混同されやすいですが、それは違います。
ただし、修繕費用であっても、特定の条件に当てはまる場合は資本支出と見なされ、費用を損金に計上できません。
修繕費が資本支出かどうかの判定基準は、国税庁によって示されているので、必ず確認してください。
防水工事での助成金や補助金について【屋根防水や屋上防水】
大規模修繕に関わらず屋根防水、屋上防水などは場合によって多くの資金が必要になります。
そんな時に活用できるのが助成金や補助金です。各地方自治体では修繕工事や外壁塗装などにおいて補助金などを用意している場合があります。
防水工事の場合リフォーム補助金や住宅改修工事における助成金などがあり、該当する場合には防水工事の補助金を受けることが可能です。
以下の内容が基本的な補助金申請時の条件です。
- 補助金申請できる地域に住んでいる
- 以前同じ補助金や助成金を受け取っていない
- 税金を滞納していない
- 省エネに関するものや耐震補強など、その地方自治体の目的にあった工事であること
詳しくはお住まいの各自治体のホームページ、または問い合わせをして確認してみましょう。
シーリング工事のまとめ
本記事ではシーリング工事がどのようなものなのかについて解説してきました。
- 外壁ボード同士の接合部や外壁とサッシの接続部など、動きがある箇所において高い防水性や気密性を確保することを目的とする工事
- シーリング材の種類にはシリコン系、ウレタン系、変成シリコン系、アクリル系がある
- シーリング工事の種類には打ち増し工事と打ち替え工事がある
- シーリング工事が必要な施工箇所は外壁やサッシまわり、室内水まわり、屋上や屋根と多岐にわたる
こちらの記事をご一読いただき、シーリング工事をご検討中の方にとって有益であれば幸いです。