2024.02.27
塩ビシート防水とは?工法やメリット・デメリット|おすすめの施工箇所
防水工法のひとつに「塩ビシート防水」があります。塩ビシート防水とは、シートを貼り付けて防水層を形成する防水工法です。
そこで今回は、塩ビシート防水とは何かや、メリット・デメリットを詳しく解説します。
塩ビシート防水が適している施工箇所も解説するため、工事を検討している方は参考にしてみてください。
塩ビシート防水とは
塩ビシート防水とは、塩化ビニル樹脂製のシートを専用の機械や接着剤で貼り合わせ、防水層を形成します。
塩ビ樹脂はプラスチックの一種であり、配管パイプに使用されることが多い素材です。
シート防水材には、塩ビ樹脂のほかにゴムもあります。ゴムは塩ビ樹脂より単価が低いですが、衝撃で割れやすいという欠点があります。
塩ビ樹脂はゴムよりも耐久性があり、耐用年数も長いため、現在は塩ビ樹脂を使ったシート防水が主流です。
塩ビシート防水の耐用年数
塩ビシート防水の耐用年数は比較的長く、10~15年程度です。
そのため、塩ビシート防水は、頻繁なメンテナンスを行えないマンションやオフィスビルの屋上に採用されています。
塩ビシート防水の工法
塩ビシート防水には密着工法と機械固定工法があり、下地の種類や状態によって選択されます。
ここでは、2種類の工法の特徴を解説します。
密着工法
密着工法は、塩ビシートを接着剤で直接下地に貼り付ける工法です。
下地に直接接着するため、耐風圧性に優れています。
しかし、下地が十分に乾いていないと、シートの膨張などの問題が起こりやすい点に注意が必要です。
また、下地の影響を受けるため、下地が劣化している場合には適していません。
機械固定工法
機械的固定工法は、鋼板やビスで塩ビシートを固定する工法で、接着工法よりも塩ビシート施工の主流となっています。
下地と塩ビシートが直接接触しないため地震に強く、下地の補修や調整も最小限で済むことが特徴です。
そのため、リフォームといった改修工事で選択されています。
ただし、下地との接着にはある程度の強度が必要であり、下地の強度を確認しなければなりません。
塩ビシート防水の施工単価
塩ビシート防水の施工単価は、工法によって異なります。
工法 | 施工単価 | 耐用年数 |
密着工法 | 約4,000~5,000円/㎡ | 10年~15年程度 |
機械的固定工法 | 約5,500~7,500円/㎡ | 15年~20年程度 |
塩ビシート防水機械的固定工法の工事単価は5,500円~7,500円/㎡程度で、密着工法よりも高いです。
しかし、耐用年数が長く、コストパフォーマンスはよいといえるでしょう。
塩ビシート防水のメリット
塩ビシート防水はマンションやオフィスビルの防水工事に重宝されていますが、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、塩ビシートのメリットを解説します。
耐久性・耐熱性が高い
塩ビシートは耐久性に優れ、使用条件にもよるが15年から20年の耐用年数があるといわれています。
また、熱や紫外線、オゾンに強い素材であるため、他の素材よりも劣化が遅いです。
塩ビシート自体も強度を保っていますが、その上に保護コーティングを施すことで、さらに耐久性を高めることができます。
工期が短い
塗料を使用する防水工事では、塗料を乾燥させなければなりません。
しかし、塩ビシート防水の場合はシート状であり乾燥の必要がなく、工期を短縮できます。
仕上がりが均一
塩ビシート防水は、工場で生産された塩ビシートを現場に搬入して施工します。
職人がその場で塗膜を作る防水工事と異なり、厚みが均一で品質にばらつきのない仕上がりが可能です。
メンテナンスの手間がかからない
塩ビシート防水は基本的にメンテナンスが不要です。
ただし、塩ビシート表面に以下のような症状が見られた場合は、防水専門業者に点検を依頼してください。
- 膨らんでいる
- 剥がれている
- 破れている
- 水が溜まる
- めくれている
上記の症状に応じて、補修工事が必要です。
塩ビシート防水のデメリット
塩ビシート防水は、仕上がりがきれいなこと、基本的にメンテナンス不要であるなどのメリットがあります。
しかし、デメリットや注意点もあるため、確認したうえで施工をするかどうかを決めましょう。
形状によっては施工できない
塩ビシート防水を施工する場合は、施工する場所に合わせてシートをカットして貼り付ける必要があります。
凹凸がない場所ではシートを広げて貼るだけでよいですが、複雑な形状のベランダや階段では難しいでしょう。
すべてのエッジが形状に沿ってしっかりとフィットしていることを確認できないと、水漏れの原因になる可能性があります。
施工中に振動・騒音が発生する
機械的固定工法で塩ビシート防水を施工する場合、ドリルで金具を固定します。
そのため、下の階や建物周辺に騒音や振動が発生する可能性が高いです。
塩ビシート防水を施工する場合は、事前に近隣への挨拶や案内をしなければなりません。
維ぎ目が発生する
塩ビシート防水は、シートを貼り合わせて防水層を形成するため、シートとシートの間に継ぎ目ができてしまいます。
シートとシートの継ぎ目は雨漏りしやすいため、接着剤や熱風で溶かしてしっかり密着させることが大切です。
シートの継ぎ目の処理は、職人の技術力に左右されます。
施工経験が少ない業者や手抜き工事をする悪質業者では、目地の処理が適切でない場合もあるため、業者選びは慎重に行いましょう。
破れる可能性がある
塩ビシートは厚みが2mm~3mm程度と、非常に薄い素材です。
そのため、飛来物による衝撃や鳥に突かれるなどして、塩ビシートが破れることがあります。
塩ビシートの破れを発見した場合、破れた部分から雨水が浸入する可能性があるため、放置せずに専門の防水業者に補修を依頼しましょう。
塩ビシート防水と他の防水工事との違い
塩ビシート防水以外にも、いくつかの防水工事があります。
どの防水工事が適しているのかを知るためにも塩ビシート防水と他の防水工事との違いを把握しておきましょう。
塩ビシート防水 | ウレタン防水 | FRP防水 | |
---|---|---|---|
工期 | 1日〜5日程度 | 1日〜5日程度 | 1日〜2日程度 |
施工費用 | 約4,000〜7,000円/㎡ | 約4,000~7,000円/㎡ | 約6,000~8,000円/㎡ |
仕上がり | 均一 | 職人の技術による | 職人の技術による |
メンテナンス | 不要 | 必要 | 必要 |
維ぎ目の発生する可能性 | あり | なし | なし |
振動・騒音 | 工法による | なし | なし |
破れる可能性 | なし | なし | なし |
塗料を使用する防水工事では、塗布した塗料を乾燥させる必要があります。
しかし、塩ビシート防水はシート状になっているため、乾燥させる必要がなく、工期を短縮することができます。
また、FRP防水やウレタン防水は、職人の技術力によって仕上がりに差が出ますが、塩ビシート防水は仕上がりに差が出にくく、均一に仕上がることも特徴です。
塩ビシート防水をおすすめできる場所
塩ビシート防水を選択すべきかどうかは、施工面積や施工場所の形状によります。
ここでは、塩ビシート防水をおすすめできる場所を2つ紹介します。
施工面積が広い場所
塩ビシート防水はシートを敷き詰める工法であり、1度に50~300㎡と広範囲に施工ができます。
広い屋上に施工する場合、費用対効果の高い工法です。
反面、一般住宅など施工面積が50㎡未満のバルコニーには不向きです。
凹凸が少ない場所
塩ビシート防水は、シートを貼る方法であり、複雑な形状の場所には適していません。
更地の平坦な場所に適しています。
水槽があったり、突起物などの障害物が多い場所では、ウレタン防水といった塗膜防水の方がよい場合があります。
塩ビシート防水まとめ
塩ビシート防水とは何か、費用や施工方法について解説しました。
まとめると、
- 塩ビシートは耐用年数が長い
- メンテナンス費用をかけずに長期間使用できる
- 耐摩耗性、耐衝撃性、耐紫外線性に優れている
- 平らな場所に適している
塩ビシート防水は、作業工程が専門性の高いものが多く、施工が難しい防水工法です。
そのため、塗装業者やリフォーム業者のなかにはシート防水の施工経験が少ないところもあります。
塩ビシート防水を検討している方は、豊富な知識と施工経験を持つ防水専門業者に相談しましょう。