屋上の防水改修工事の種類・選び方・施工の流れを解説 | 株式会社新東亜工業  

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屋上の防水改修工事の種類・選び方・施工の流れを解説

大切な建物を守るために、屋上の防水改修工事は欠かせません。

しかし、種類や選び方、施工の流れなど、意外と知らないことも多いのではないでしょうか?

この記事では、屋上の防水改修工事について、種類、選び方、施工の流れをわかりやすく解説します。

雨漏りでお困りの方、建物の劣化が気になる方はもちろん、これから防水改修工事を検討したい方にも役立つ情報が満載です。

屋上を安全・快適な空間に保ち、建物の寿命を延ばすために、ぜひ参考にしてください。

防水改修工事とは?

防水改修工事とは、経年劣化や災害などで傷んだ既存の防水層を新しく作り替える工事です。

雨漏りや建物の劣化を防ぎ、建物の寿命を延ばすために重要な工事となります。

防水改修工事は、単に雨漏りを防ぐだけでなく、建物の劣化を防ぎ、資産価値を維持し、暮らしの快適性を保つなど、多くのメリットがあります。

ただし、新築住宅とは異なり、既存の防水層の状態を調査・診断した上で、適切な工法を選択することが必要です。

屋上の既存防水層に応じた防水改修の選び方

既存の防水層の状態によって、適切な防水改修工法は異なります。

ここでは、代表的な既存防水層と、それぞれに適した改修工法について紹介します。

既存が露出アスファルト防水の場合

既存の防水層が露出アスファルト防水の場合、以下の工法が適しています。

湿気硬化型アスファルト防水工法

湿気硬化型アスファルト防水工法は、安全で環境に優しい、次世代の防水工法として期待されています。

工法の特徴は、以下の通りです。

  • 火を使わず、常温で施工できるため、安全性が高く、周辺環境への影響も少ない
  • 改質アスファルトルーフィングとの積層により、高い防水性を実現
  • 紫外線や風雨に強く、長期間にわたって性能を維持
  • 溶剤を使用しないため、環境負荷を低減
  • 従来のアスファルト防水工法に比べて軽量で、建物への負担が少ない
  • 施工が迅速で、工期を短縮できる
  • 屋上やバルコニー、地下など、様々な場所で使用可能

改質アスファルト防水トーチ工法

改質アスファルト防水トーチ工法は、熱で融着させた改質アスファルトルーフィングを重ね貼りすることで、防水層を形成する工法です。

改質アスファルト防水トーチ工法には、以下のような特徴があります。

  • 熱融着により、継ぎ目がない防水層を形成するため、高い防水性を誇る
  • 改質アスファルトルーフィングは、紫外線や風雨に強く、長期間にわたって性能を維持できる
  • 比較的簡単な施工方法で、複雑な形状にも対応可能
  • 初期費用は比較的安価だが、定期的なメンテナンスが必要
  • トーチバーナーを使用するため、CO2を排出する

改質アスファルト防水常温工法

改質アスファルト防水常温工法は、火を使わずに行う防水工法です。

工法の特徴は、以下のようなものがあります。

  • 火を使わないため、周辺環境への影響が少なく、安全性の高い工法
  • 溶剤を使用しないため、臭いやVOCの発生が少なく、環境負荷を抑えられる
  • 火を使う必要がないため、養生や乾燥にかかる時間が短く、工期を短縮できる
  • 従来のアスファルト防水よりも軽量なため、建物への負荷が少なく、耐震性が向上する
  • 表面にエンボス加工が施されているため、歩行にも耐えられる
  • 屋上、陸屋根、バルコニーなど、多くの場所に応用可能
  • 既存の防水層の上から施工できるため、改修工事に適している

既存が保護コンクリート仕上げ(シンダーコンクリート)の場合

既存の防水層が保護コンクリート仕上げ(シンダーコンクリート)の場合は、以下の工法が適しています。

ウレタン塗膜防水

ウレタン塗膜防水は、ウレタン樹脂を塗り重ねて防水層を作る工法です。

ウレタン塗膜防水には、以下のような特徴があります。

  • 塗り重ねる工法なので、継ぎ目がないシームレスな防水層を作ることができる
  • 他の防水層に比べて軽量で、建物への負荷が小さい
  • 弾性があり、建物の動きへの追従が可能
  • 耐水性と耐候性に優れている
  • 豊富な色や模様のトップコートが選べるため、美観性に優れた防水層が作れる
  • トップコートによっては歩行も可能
  • 比較的短期間で施工できる
  • 他の防水層に比べて比較的安価

塩ビシート防水

塩ビシート防水は、塩化ビニル樹脂製のシートを接着剤や機械的に固定することで防水層を形成する工法です。

塩ビシート防水には、以下のような特徴があります。

  • 耐候性、耐熱性、耐摩耗性に優れ、長持ちする
  • 広い面積の防水に適している
  • 他の防水工法に比べて軽量
  • 豊富な色や柄のシートがあるため、デザイン性に優れている
  • 他の防水工法に比べて比較的安価
  • 比較的短期間で施工できる
  • 表面の汚れを拭き取るだけで簡単にメンテナンスが可能

既存がシート防水の場合

既存の防水層がシート防水の場合は、既存のシート防水と新規防水層を接着する際に十分な強度を得るのが難しいため、機械的固定工法という選択肢があります。

機械的固定工法は、従来の接着剤による接着に加えて、専用の金物やビスを用いて固定することで、より確実な防水性を確保することが可能です。

機械的固定工法には、以下のような特徴があります。

  • 既存シート防水と新規防水層をしっかりと固定し、雨漏りのリスクが低減できる
  • 接着剤のみの場合よりも、長期間にわたって防水性能が維持できる
  • 接着剤での施工が難しい場所でも接着が可能
  • 接着剤のみの場合よりも、施工に時間がかかり、費用も高くなる
  • 金物やビスを使用するため、見た目が損なわれることがある

既存がウレタン防水の場合

既存の防水層がウレタン防水の場合、古い防水層を活かすかぶせ工法なら、立上りやドレン周りの防水層を撤去せずに蘇らせることが可能です。

かぶせ工法の特徴は、以下のようなものがあります。

  • 撤去工法に比べて費用を抑えられる
  • 撤去工法に比べて工期が短くなる
  • 施工中に出る廃材を減らせる
  • 既存防水層の良好な部分を残せる

既存がアスファルトシングル葺きの場合

既存の防水層がアスファルトシングル葺きの場合、以下の防水改修工法が適しています。

  • 勾配屋根用シングル防水
  • 改質アスファルト防水常温工法

改質アスファルト防水常温工法については、前述した内容を参照してください。

勾配屋根用シングル防水

勾配屋根用シングル防水は、アスファルトシングルと呼ばれるシート状の防水材を用いて施工する防水工法です。

勾配屋根用シングル防水には、以下のような特徴があります。

  • アスファルトシングルは非常に軽量な素材のため、建物の重量負担を軽減できる
  • 比較的簡単に施工できるため、工期が短くなる
  • アスファルトシングルは耐候性に優れており、長持ちする
  • 適切に施工すれば、高い防水性を発揮する
  • 色や柄が豊富にあるので、建物の外観に合わせて選択が可能
  • アスファルトシングルには遮音性があるため、雨音を軽減できる
  • 表面を定期的に清掃することで、長持ちさせられる

防水層ごとの改修工事実施の劣化サイン

屋上の防水層は、経年劣化によって機能が低下し、雨漏りなどの原因となります。

定期的な点検を行い、劣化サインを見つけたら早めの改修工事が必要です。

ここでは、代表的な防水層ごとの劣化サインと改修工事実施の目安をご紹介します。

アスファルト防水

アスファルト防水は、溶融アスファルトとアスファルト材を厚く重ねることで形成される、耐久性に優れた防水工法です。

標準工期は約3週間で、耐用年数は約15~25年と長く、屋上や外壁などの部位に広く採用されています。

アスファルト防水の改修時期は、以下のポイントをチェックすることで判断できます。

  • 防水改修を行わず15年以上経過している
  • 防水層の重ね合わせ部分に隙間が開いている
  • 床面や立面の防水層がふくらみ、水が入っている
  • 水切り部分の金物が硬化または破断している

近年では、熱や煙、においが少ない「常温工法」と「トーチ工法」が主流です。

アスファルト防水は、定期的な点検と適切な改修時期の判断によって、建物の長寿命化に貢献します。

雨漏りなどのトラブルを防ぐためにも、専門業者による点検を定期的に行いましょう。

シート防水

シート防水は、塩ビシートまたはゴムシートを接着剤で接着する、紫外線に強く、施工が容易な防水工法です。

標準工期は1〜5日と短く、耐用年数は10〜15年と比較的長持ちします。

シート防水の改修時期は、以下のポイントをチェックすることで判断が可能です。

  • 防水改修を行わず10年以上経過している
  • シート外周の上面に亀裂が見られる
  • シートのコーナー部分にシワが寄っている
  • 水切り部分の金物が硬化または破損している
  • シートの一部に虫食いのような穴が空いている

シート防水の工法には、接着剤で固定する「接着工法」と、ビスや金物で固定する「機械的固定工法」があります。

近年では、接着剤の進歩により、接着工法が主流です。

シート防水は、施工の確実性が特に重要で、シート同士の接合部分は、隙間なくしっかりと接着する必要があります。

接着剤の塗布量や乾燥時間、ローラー圧着など、細部に注意しながら施工することで、高い防水性を発揮することが可能です。

ウレタン防水

ウレタン防水は、液体状のウレタン樹脂を塗り重ねて防水層を形成する、施工性が高く、コストを抑えたい場合に適した防水工法です。

標準工期は1〜5日と短く、耐用年数は10〜12年と比較的長持ちします。

ウレタン防水の改修時期は、以下のポイントをチェックすることで判断が可能です。

  • 防水改修を行わず10年以上経過している
  • 全体的に白っぽく粉を吹いている(チョーキング現象)
  • 防水層が削れて下地が出ている
  • 下地がひび割れ、塗膜も一緒に切れている
  • 防水層の一部が破れている

ウレタン防水の工法には、下地に密着させる「密着工法」と、空気層を設ける「通気緩衝工法」があります。

床の形状や材質に関わらず施工が可能であるため、屋上やバルコニーなど、複雑な形状の場所にも適しています。

ウレタン防水は、比較的安価で施工が容易ですが、紫外線に弱く、定期的なメンテナンスが必要です。

トップコートの塗り替えを定期的に行うことで、防水性を維持することができます。

アスファルトシングル

アスファルトシングルは、歴史が長く、軽量で施工性に優れていることから、屋根などに広く採用されている防水工法です。

標準工期は5日〜2週間と比較的長く、耐用年数は15〜30年とかなり長持ちします。

アスファルトシングルの改修時期は、以下のような劣化症状が現れた場合に検討が必要です。

  • アスファルトシングルが剥がれたり浮いている
  • 屋根材が剥がれて飛散している
  • 表面がボロボロになっている
  • カビやコケが発生している
  • 下地の木質パネルが腐食している

アスファルトシングルは、ガラス繊維基盤にアスファルトを浸透・コーティングし、表面に砂粒を吹き付けられています。

北米では100年以上前から屋根材で使われており、日本でも2007年の建築基準法を機に戸建てやマンションで使われるようになりました。

ただし、紫外線に弱く、経年劣化によって色が薄くなる点がデメリットです。

また、施工業者によって施工の仕上がりに差が出るため、信頼できる業者を選びましょう。

屋上防水改修の施工の流れ

屋上防水改修工事は、適切な時期に適切な工法で施工することが重要です。

ここでは、一般的な屋上防水改修工事の流れを紹介します。

現地調査

まず、専門業者が現地調査を行い、既存の防水層の状態を調査します。

調査内容は以下の通りです。

  • 目視による調査:既存の防水層に亀裂や破れ、膨れなどの劣化がないかを確認する
  • 打診調査:ハンマーで防水層を叩き、内部の状態を確認する
  • 漏水調査:必要に応じて、漏水箇所を特定する

調査結果に基づき、改修に必要な工法や材料を決定します。

足場の設置

必要に応じて、足場を設置します。

足場の設置は、高所での作業を行う際に必要です。

既存防水層の撤去

既存の防水層を撤去し、下地を清掃します。

撤去方法は、既存の防水層の種類や状態によって異なるため、適切な方法で行うことが重要です。

  • アスファルト防水:アスファルトカッターなどで切り取り、撤去する
  • 塩ビシート防水:接着剤を剥がして撤去する
  • ウレタン防水:専用の剥離剤を使用して撤去する

清掃は、高圧洗浄機やブラシを使用して、下地をきれいに清掃します。

下地処理

下地に亀裂やひび割れなどの欠損がある場合は、補修材で補修します。

下地の状態は、防水層の施工において重要な要素です。

下地を補修した後、プライマーを塗布して、防水層の接着性を向上させます。

防水層の施工

選択した防水工法に従って、防水層を施工します。

主な防水工法は以下の通りです。

  • アスファルト防水:アスファルトルーフィングと呼ばれるシートを接着剤で貼り付け、その上からアスファルトルーフィング用の塗料を塗布する
  • 塩ビシート防水:塩ビシートと呼ばれるシートを接着剤で貼り付け、その上からシート専用の塗料を塗布する
  • ウレタン防水:ウレタン塗料と呼ばれる塗料を複数回塗り重ねて、防水層を形成する

防水層が完全に乾燥したら、トップコートを塗布して仕上げます。

トップコートは、紫外線や風雨から防水層を守る役割があります。

水漏れ検査

防水層の施工完了後、検査を行います。

検査方法は、工法によって異なりますが、一般的には以下の方法で行われます。

  • 目視検査:防水層に亀裂や破れなどの欠損がないかを確認する
  • 通水検査:防水層に水を張って、漏水がないかを確認する
  • 電気抵抗測定:防水層に電流を流して、漏電がないかを確認する

検査に合格すれば工事完了です。

足場撤去

設置していた足場を撤去します。

最上段から順番に、部材を丁寧に解体していきます。

解体した部材は、落下防止ネットなどで安全に地上に降ろし、工具は使用後すぐに所定の場所に収納しましょう。

最終的な確認によって、紛失や落下による事故を防ぎます。

アフターサービス

多くの防水業者では、保証期間内に無償で補修を行うアフターサービスを提供しています。

定期的な点検サービスを提供している業者もあります。

屋上防水改修を検討している場合は、複数の業者から見積もりを取り、内容を比較検討することが重要です。

また、アフターサービスの内容も確認しましょう。

屋上防水改修の失敗例と対策

屋上防水改修は、適切な施工を行わないと、雨漏りなどのトラブルを引き起こす可能性があります。

以下では、よくある失敗例と対策を紹介します。

適切な工法を選ばなかった

既存の防水層の状態を調査せずに、新しい防水層を施工してしまうと、既存の防水層と新しい防水層の間に隙間が生じ、雨漏りにつながる可能性があります。

既存の防水層の状態を調査し、必要に応じて撤去してから新しい防水層を施工することが重要です。

また、防水層を施工する前に、下地の清掃や乾燥を怠ると、防水層の接着力が低下し、剥がれやすくなる可能性があります。

下地をしっかりと清掃・乾燥してから、防水層を施工することが重要です。

業者選びを誤った

屋上防水改修は、専門的な知識と技術が必要な工事です。

悪徳業者に依頼してしまうと、誤った材料を使用されたり、施工方法が間違っているなどのトラブルが発生する可能性があります。

業者選びの際は、複数の業者から見積もりを取り、内容を比較検討しましょう。

契約前に、具体的な施工内容や保証内容を文書で確認することも重要です。

悪徳業者に依頼してトラブルに巻き込まれないよう、慎重に業者を選びましょう。

施工不良が起きた

屋上防水改修における施工不良の失敗例は、以下のようなものがあります。

  • 既存防水層の処理不備
  • 防水層の厚塗りが不十分
  • 養生・通気対策の不備

施工不良を防ぐためには、信頼できる業者を選ぶことが重要です。

業者選びの際には、実績や資格、保証内容などを確認しましょう。

また、施工中もこまめに現場をチェックし、疑問点があれば遠慮なく業者に質問しましょう。

定期的なメンテナンスを怠った

屋上防水改修は、定期的なメンテナンスを怠ると、以下のような問題が発生する可能性があります。

  • 経年劣化による防水層の破損
  • 紫外線による防水層の劣化
  • 風雨による防水層の劣化
  • 凍害による防水層の劣化
  • コケやカビの発生による防水層の劣化

対策としては、定期的な点検・メンテナンスを行うのを前提として、トップコートの塗り替え、防水層の補修を行います。

見積書に記載されている保証内容や、アフターサービスの内容を確認することが重要です。

また、保証期間内に不具合が発生したら、すぐに業者に連絡しましょう。

無理に費用を抑えようとした

費用を抑えようと無理な施工を行うと、後々大きなトラブルに繋がる可能性があります。

特に、安価な見積もりを提示してくる業者には注意が必要です。

また、建物の状況や予算に合っていない防水工法を選ぶと、十分な防水性が得られなかったり、早期に劣化してしまう可能性があります。

さらに、既存防水層の撤去や下地の補修などの必要な工事を省略すると、新しい防水層が剥がれたり、雨漏りに繋がる可能性が高いです。

見積もり内容をよく確認し、必要な工事が全て含まれていることを確認しましょう。

屋上防水改修は、建物の寿命に大きく影響する重要な工事です。 

失敗を防ぐためには、信頼できる業者を選び、適切な防水工法で施工すること、そして定期的な点検を行うことが重要です。

まとめ

ここまで、屋上防水改修について解説してきました。

この記事の要点は、以下の通りです。

  • 屋上防水改修工事とは、経年劣化や災害などで傷んだ既存の防水層を新しく作り替える工事
  • 屋上防水改修工事の種類:アスファルト防水、シート防水、ウレタン防水、FRP防水
  • 屋上防水改修工事の選び方:既存の防水層の状態、建物の用途、予算、保証内容
  • 屋上防水改修工事は、専門業者に依頼することが重要
  • 複数の業者から見積もりを取り、比較検討が必要
  • 契約前に、具体的な施工内容や保証内容を文書で確認する
  • 定期的な点検・メンテナンスを行う

屋上防水改修工事は、建物の安全と快適性を守るために欠かせません。

これまでの記事を参考に適切な業者を選び、適切な工法で施工してもらいましょう。

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