屋上防水の外断熱とは?内断熱との違いや工法・補助金まで徹底解説

日本の建物にとって、屋上の防水と断熱は建物寿命や快適性、省エネ性能に大きく関わる重要な工事です。
特に近年は、地球温暖化や光熱費の高騰といった背景もあり、「外断熱による屋上防水」への関心が高まっています。
しかし内断熱との違いや、外断熱の施工方法・費用、さらに使える補助金など、検討すべきポイントは多岐にわたります。

この記事では、断熱工法の基本から屋上における外断熱の施工方法、メリット・デメリット、使える補助金制度までをわかりやすく解説します。
建物の価値を高めたい管理者やオーナーの方はもちろん、外断熱の導入を検討している方にとって、実践的な知識が得られる内容となっていますので、ぜひ参考としてお役立てください。

目次

屋上防水における外断熱と内断熱の違いとは?

屋上の断熱工事には、大きく分けて2つの方法があります。
防水と断熱を同時に施工する場合、どちらを選ぶかによって工事内容や効果に大きな違いが出てきます。

屋上防水工事における外断熱とは?仕組みと効果

外断熱は、建物の構造全体を外側から包むように断熱材を配置する方法です。
屋上では、コンクリートスラブの上に断熱材を敷き、その上に防水層を施工します。
この手法は建物全体の温熱環境を安定させ、冷暖房効率を高める効果が期待されます。

また、コンクリートが外気温の影響を受けにくくなることで、膨張・収縮の繰り返しによるクラック(ひび割れ)の発生が抑えられます。
これにより、防水層や構造体そのものの耐久性が向上し、長期的なメンテナンスコストの削減にもつながるのです。

屋上防水工事における内断熱とは?特徴とリスク

内断熱は、建物の壁や屋根の内側に断熱材を施工する方法です。
主に鉄筋コンクリート造の建物で採用され、比較的施工が簡単でコストも抑えやすいのが特徴です。
しかし、内断熱は室内の温熱環境には効果がありますが、外気温による構造体への影響は抑えられません。

特に高気密化が進んだ現代の建物では、断熱層と外気の間で結露が発生しやすく、木材の腐食やカビ・シロアリの被害につながることもあります。
そのため、長寿命化や建物保護を重視する場合には、外断熱が優位とされています。

外断熱と内断熱の比較表と選び方まとめ

項目外断熱内断熱
断熱効果高い(構造体保護)中程度(室内限定)
結露リスク低い高い(内部結露)
工事費用やや高い低コスト
メンテナンス性高い(外から確認可能)低い(壁内確認困難)
適用建物マンション、ビルなど木造、RC造戸建てなど

選定のポイントとしては、建物の用途・築年数・構造・予算のバランスを踏まえた判断が必要です。
大規模修繕や屋上改修のタイミングであれば、外断熱と防水の同時施工が理想的です。

屋上防水に使われる主な断熱材の種類と特徴

屋上の外断熱防水において、断熱材の選定は性能に大きな影響を与えます。
断熱材には多様な種類があり、それぞれに特長と適性があります。
ここでは、代表的な断熱材とその性質について解説します。

屋上防水に使われる断熱材:発泡ウレタンフォーム(硬質)

発泡ウレタンフォームは、断熱材の中でも非常に高い断熱性を持ち、密閉性や耐水性にも優れています。
屋上の平面部に敷設することで隙間の少ない断熱層が作れるため、防水との相性も良好です。
軽量で扱いやすく、施工効率が高いのもメリットのひとつです。

ただし紫外線に弱く、露出状態では劣化が進みやすいため、上部に防水層や仕上げ材で保護する必要があります。
また、価格帯はやや高めとなる傾向がありますが、総合的なパフォーマンスでは非常に優れた選択肢です。

屋上防水に使われる断熱材:ポリスチレンフォーム(EPS・XPS)

ポリスチレンフォームは、軽量で吸水性が低く、耐久性に優れた断熱材です。
屋上外断熱においては、耐湿性や施工性の高さが評価されており、特にXPS(押出法ポリスチレン)は機械的強度も高いため、歩行屋根にも対応可能です。

EPS(ビーズ法)はコスト面で優れていますが、密度が低いため荷重がかかる場所には不向きです。
一方、XPSは高密度で長寿命、加えて熱伝導率も低いため、省エネ性能の向上に寄与します。

屋上防水に使われる断熱材:グラスウール・ロックウール

グラスウールやロックウールは、ガラスや岩石などを繊維状に加工した断熱材で、吸音性や耐火性に優れます。
特にグラスウールはコストパフォーマンスが高く、内断熱材として多く使用されています。

ただし、屋上防水の外断熱では吸水性や施工の難易度からあまり採用されない傾向があります。
ロックウールは高温部位や遮音が必要な場所に適していますが、屋上断熱としての採用には施工管理の注意が必要です。

外断熱は後付けできる?屋上断熱改修の方法

「既存の建物にも外断熱は導入できるのか?」という疑問を持つ方も少なくありません。
結論としては、屋上防水改修のタイミングで後付けによる外断熱工法を選択することは可能です。

塗布型断熱と断熱材設置型の違い

屋上の後付け外断熱には、主に2つの方法があります。
1つ目は遮熱・断熱効果のある塗料を防水層の上から塗布する”塗布型断熱”。
2つ目は、既存防水層の上に断熱材を敷設し、さらに新しい防水層で保護する”断熱材設置型”です。

塗布型はコストが安く、短工期で済むものの、断熱性能は限定的です。
一方、断熱材設置型は初期費用は高めですが、長期的な断熱効果や躯体保護の観点から有利です。

省エネや長寿命化を重視するなら、断熱材を使った改修が推奨されます。

屋上断熱が建物と室内環境に与える効果

屋上の外断熱がもたらす効果は、単に室内の温度変化を抑えるだけではありません。
建物の構造保護や省エネ効果、さらには資産価値の維持にも寄与する多面的なメリットがあります。
ここでは、室内と構造体に与える主な影響を整理して解説します。

屋上断熱が与える効果:室内温度の安定と冷暖房効率の向上

屋上断熱によって、夏は屋根からの直射日光による熱の侵入を抑え、冬は暖気が屋上から逃げるのを防ぐことができます。
そのため、室内温度が季節に応じて安定し、冷暖房機器の稼働を抑制することで、エネルギー効率が向上します。

とくに、屋上に面する最上階の住戸や部屋ではその効果が顕著で、熱ごもりの軽減や冷暖房費の削減を実感しやすくなります。
屋上断熱は快適性の向上に直結し、居住満足度を高めるためにも有効です。

屋上断熱が与える効果:コンクリート躯体の劣化抑制と建物寿命の延伸

屋上に断熱層を設けることで、コンクリートが外気温の変化によって繰り返す膨張・収縮の動きを抑制でき、これによりひび割れ(クラック)や剥離などの構造劣化を未然に防ぐことができます。

断熱材の下に防水層を設ける工法では、防水層自体も熱や紫外線の直接的な影響から守られるため、劣化スピードが遅くなり、防水の改修周期も延ばすことが可能です。
これは、建物の長寿命化に直結する大きな利点と言えます。

屋上防水と断熱を同時に施工する方法と工法別特徴

屋上防水と外断熱を同時に施工する場合は、屋上の用途や構造に応じて工法を選定することが重要です。
ここでは、非歩行・軽歩行それぞれの用途に適した代表的な防水断熱工法を解説します。

非歩行屋上に用いる外断熱防水工法

改質アスファルト断熱常温工法

火気を使わず施工できるため安全性が高く、下地への密着性も良好な工法です。
改質アスファルトシートの裏面にゴムアスファルト系の接着剤があり、さまざまな下地に対応できます。
常温で施工できるため、使用できる建物の範囲も広いです。

塩ビシート断熱機械固定工法

下地にアンカーを打ち、塩ビシートを機械的に固定する工法です。
塩ビ樹脂の熱融着特性を活かし、継ぎ目のない一体化した防水層を形成できます。
水密性に優れ、シートの下に断熱材を挟むことも可能で、断熱・防水を同時に施工できます。

サーモコントロール断熱工法

高反射塗料と断熱材を組み合わせた、複合工法です。
日射熱を反射する塗料を最上層に用いることで、断熱材単体よりも高い遮熱性能が期待できます。
防水機能のある断熱材と組み合わせることで、建物の冷房負荷を大幅に軽減できます。

軽歩行仕様の屋上に用いる外断熱防水工法

ウレタン塗膜防水複合工法

通気緩衝シートの上に断熱材と特殊樹脂ボードを組み合わせ、液状ウレタンを塗布して防水層を形成する工法です。
平面・立上り部にも継ぎ目のない防水層を作れるため、形状の複雑な屋上にも対応できます。
歩行も可能で、断熱と防水を両立できます。

塩ビシート密着+断熱ボード工法

硬質ウレタン断熱材の上に特殊ボードを配置し、その上に塩ビシートを密着させる工法です。
断熱効果を持ちながら歩行も可能な仕様であり、軽度の歩行用途(点検・メンテナンスなど)に向いています。
耐久性も高く、メンテナンス性にも優れています。

屋上防水・外断熱に使える補助金・助成金(2025年最新)

防水と断熱を同時に施工する際、費用の負担が大きくなることがあります。
しかし、2025年現在では省エネや住宅性能向上を目的とした国や自治体の補助金制度が充実しており、賢く活用することで費用を大幅に抑えることが可能です。

住宅省エネ2025キャンペーン(国交省ほか)

全国対象の補助制度で、登録業者による断熱・防水工事を対象に最大120万円の補助が受けられます(戸建ての場合)。
集合住宅では15万円までの補助が可能で、遮熱・断熱性能の向上を目的とした改修が条件となります。
事前申請が必須で、施工前に手続きを行う必要があります。

東京都足立区・福岡市などの自治体独自制度

例えば東京都足立区では、住宅リフォーム助成事業として最大5万円、福岡市では10%・上限20万円の助成金制度が用意されています。
いずれも断熱・防水・外壁工事などが対象ですが、施工前の申請が必須であり、登録業者による施工が条件となる点に注意しましょう。

補助金を利用する際の注意点

補助金を利用する際には、申請時期・提出書類・施工業者の登録有無などの条件を必ず確認しておく必要があります。
多くの補助制度は「着工前の申請」が必要であり、申請漏れがあると受給できないケースもあります。

また見積書や仕様書、施工前後の写真も必要になるため、計画段階から業者と綿密に打ち合わせておくことが重要です。

防水・断熱工事を成功させるための注意点と業者選びのポイント

屋上防水と外断熱工事は、高額な投資となるため、失敗やトラブルを防ぐための事前準備が欠かせません。
ここでは、断熱材と防水層の選定・施工時期・保証内容、そして業者選びまで、成功のカギを握るポイントについて解説します。

断熱材と防水層の相性を見極める

使用する断熱材によっては、防水層との相性が悪くなるケースがあります。
たとえば、柔軟性の高いウレタン防水と硬質な断熱材を組み合わせる際には、浮きや剥がれのリスクがあるため、仕様の調整が必要です。
専門業者と連携し、事前に詳細な構造設計と材料の確認を行うことが重要です。

季節と天候を考慮した施工スケジュール

防水材の多くは乾燥・硬化に時間がかかるため、梅雨や湿度が高い時期は施工が遅れたり、次の工程に影響が出たりするケースもあります。
ベストシーズンは春や秋ですが、繁忙期に重なるため、早めのスケジュール調整が大切です。
天候リスクを避けるため、あらかじめ予備日を設けておくと安心です。

保証内容とアフターサービスの確認

防水や断熱工事には、施工後の保証制度がある業者を選びましょう。
一般的には5~10年の保証が付くことが多いですが、対応範囲(防水層のみか断熱材含むかなど)や補修条件を契約前に確認することが肝心です。
また、定期点検やアフターケア体制の有無も要チェックです。

屋上防水・外断熱に関するよくある質問

ここでは、屋上の外断熱と防水に関して、実際によく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。
初めての方にもわかりやすく、具体的な判断に役立つ情報をお届けします。

Q1. 外断熱防水工事の費用相場は?

A. 建物規模にもよりますが、100㎡あたり30~50万円が目安です。防水材や断熱材の種類、施工方法によって上下します。

Q2. 外断熱の耐用年数はどれくらい?

A. 一般的な硬質ウレタンフォームやXPS断熱材は20~30年の耐久性があり、適切に保護されていればそれ以上使用できることもあります。

Q3. 工期はどのくらいかかる?

A. 屋上防水+断熱の改修工事は、天候条件を除いて平均5~10日程度です。平米数や工法によって前後します。

Q4. 雨の日でも工事できますか?

A. 防水材は基本的に乾燥が必要なため、雨天時の施工は行いません。天候が安定した期間を選ぶことが大切です。

Q5. においや騒音はありますか?

A. ウレタンやアスファルト系防水材では、施工中に臭気や多少の騒音が発生する場合があります。気になる場合は水性材料やシート防水の検討もおすすめです。

Q6. 業者選びのポイントは?

A. 一級防水施工技能士の在籍、断熱と防水の両方に対応できる実績、明瞭な見積書、保証体制が整っているかを確認しましょう。

まとめ:屋上防水×外断熱は建物の価値を守る賢い選択

外断熱と屋上防水を同時に行う工事は、室内の快適性や冷暖房効率を向上させるだけでなく、コンクリート構造の劣化を防ぎ、建物全体の寿命を延ばすという観点からも、極めて合理的な選択肢です。
初期費用はやや高めでも、長期的な視点で見ればコストパフォーマンスに優れており、さらに国や自治体の補助制度を活用すれば負担を大幅に軽減できます。

防水改修のタイミングで外断熱も合わせて行うことで、工期や足場設置のコストもまとめられ、効率的なメンテナンス計画を立てられます。

屋上の劣化や室内環境の悩みを感じている方は、まず専門業者による点検・診断を受け、建物に適した外断熱防水プランを検討するところから始めてみてはいかがでしょうか。