ウレタンゴム系塗膜防水とは?費用やデメリット・工法を解説|FRP防水との違いも紹介

建物の屋上やベランダを長持ちさせたいと考えたとき、欠かせないのが防水工事です。なかでも「ウレタンゴム系塗膜防水」は、液体状のウレタンを現場で塗布し、ゴム状に硬化することで継ぎ目のない防水層を形成する工法です。柔軟性・追従性に優れ、複雑な形状や狭い箇所でも対応できるため、多くの現場で採用されています。

この防水工法は、一般住宅だけでなく、商業施設やマンション、工場などさまざまな建物にも適用されており、その汎用性の高さが特長です。また、施工の自由度が高く、改修工事でも撤去作業を最小限に抑えられるため、コスト面でも大きなメリットがあります。

本記事では、ウレタンゴム系塗膜防水の基本から、施工に使われる工法の違いや適材適所の選び方、実際にかかる費用の目安、メンテナンスの方法、さらにはよくある比較対象となるFRP防水との違いまで、幅広く解説していきます。防水対策に悩む方や、これから施工を検討している方にとって役立つ情報を網羅していますので、ぜひ参考にしてください。

ウレタンゴム系塗膜防水とは?

ウレタンゴム系塗膜防水とは、ウレタン樹脂を主成分とした液状の材料を塗布し、現場で化学反応によりゴム状に硬化させて防水層を形成する工法です。シート防水のように既製品のシートを貼り合わせる方法と異なり、液体を現場で直接塗布するため、継ぎ目のない一体的な防水膜を作ることが可能です。

この一体型の構造により、雨水や湿気が侵入するリスクが大幅に減少し、耐水性・防水性の高さが確保されます。また、建物の形状に柔軟に対応できるため、凹凸や段差のある場所にも問題なく施工できます。狭小部位や配管まわりなど、細部にまで対応できる柔軟性は他の防水工法にはない魅力です。

とくにベランダ、屋上、ルーフバルコニーといった露出部に多く利用されており、戸建住宅から集合住宅、さらには学校・工場・倉庫などの非住宅建築物まで、幅広い用途で活躍しています。さらに、既存の防水層の上から重ね塗りが可能なため、改修工事でも撤去作業を大きく減らせる点もメリットのひとつです。

ウレタンゴム系塗膜防水のメリット・デメリット

ウレタンゴム系塗膜防水には、優れた柔軟性や複雑形状への適応性など多くの利点があります。一方で、職人の技術や施工環境に左右される難しさもあるため、事前に特徴を理解しておくことが重要です。

メリット

  • 継ぎ目のない防水層が形成でき、漏水リスクが低い:液体を塗布して硬化させる工法のため、防水層が一体化し、シートのつなぎ目がありません。雨水が侵入しやすい接合部のリスクを低減します。
  • 高い柔軟性・弾性により建物の動きに追従可能:ゴム状の塗膜は建物の振動や地震、温度変化による膨張・収縮にも対応し、ひび割れしにくく長期的な耐久性があります。
  • 軽量で建物の負担が少ないため、改修工事に最適:防水層が軽いため、構造体への負荷が少なく、老朽化した建物への施工にも向いています。
  • 複雑形状にも対応できるため、多様な現場に適応可能:配管まわり、勾配のある屋上、出隅・入隅など形状が複雑な部分にも施工可能です。
  • 重ね塗りが可能で、既存層を撤去せず施工可能:古い防水層を剥がす必要がなく、工期短縮・コスト削減に寄与します。
  • 施工費が比較的安価で、コスパに優れる:材料費や人件費が抑えられるため、他の工法と比べてリーズナブルです。

デメリット

  • 施工の品質が職人の技術に左右されやすい:均一な膜厚や仕上がりを保つには熟練した技術が必要。施工不良があると早期劣化のリスクも。
  • 紫外線に弱く、トップコートの定期塗替えが必須:ウレタン自体は紫外線に弱いため、表面を保護するトップコートを5年ごとに再塗布する必要があります。
  • 施工時の気温や湿度に左右されやすい:低温・多湿環境下では硬化不良が起こりやすく、施工時期を選ぶ必要があります。
  • 硬化に時間がかかり、工期が長引くこともある:完全硬化までに24〜48時間以上かかることがあり、早期に歩行などができない制約もあります。

ウレタンゴム系塗膜防水の主要な工法と選び方【密着・通気緩衝・機械固定・密着メッシュ】

ウウレタンゴム系塗膜防水には複数の工法があり、建物の状態や用途に応じて最適な施工法を選ぶ必要があります。ここでは代表的な4つの工法とその特徴・適した現場を紹介します。

密着工法

下地にプライマーを塗布し、その上からウレタンを直接塗布する最もシンプルな工法です。施工手順が比較的簡易で費用も抑えやすく、乾いた下地に適しています。

向いている現場:水分を含まない乾燥した下地、狭小部の改修、予算が限られた場合

注意点:下地に含まれる水分が多いと、塗膜の膨れや浮きの原因になります。

通気緩衝工法

下地に通気性のあるシートを貼り、その上にウレタンを塗布する工法です。下地からの水蒸気を逃がすため、膨れが発生しにくい特長があります。

向いている現場:屋上や既存層の撤去が難しい改修工事、下地に湿気を含んでいる場所

注意点:シートの施工に手間がかかり、コストはやや高めです。

機械固定工法

接着剤を使用せず、防水層を固定金具で設置する方法です。通気性があり、下地に水分があっても施工可能です。

向いている現場:絶縁層が必要な建物、下地が脆弱または湿潤な場合

注意点:金具の設置には下地強度が必要。強風対策も重要です。

密着メッシュ工法

密着工法にメッシュ状の補強材を組み合わせて塗布する工法です。構造的に強度が増し、亀裂対策に有効です。

向いている現場:地震の多い地域やひび割れの可能性が高い構造物

注意点:材料費がやや上がりますが、信頼性の高い施工が可能です。

ウレタンゴム系塗膜防水とFRP防水との違いは?どちらを選ぶべき?

防水工事の選択肢としてよく比較されるのが、ウレタン塗膜防水とFRP防水です。それぞれの特性を理解し、施工環境や建物の用途に応じて適切な防水工法を選ぶことがポイントです。

比較項目ウレタン塗膜防水FRP防水
柔軟性非常に高い低い(硬質)
耐久性中〜高(10〜15年)高い(15年以上)
工期中(3〜5日)短い(1〜2日)
費用比較的安価やや高め
臭気少なめ特有の強い臭いあり
向いている場所複雑な形状・狭い場所平坦・小面積・高強度が必要な箇所

ウレタン防水は柔軟性と施工性の高さから、複雑な形状のベランダや屋上に適しています。流し込みで自由な成形ができ、さまざまな建物に対応しやすい工法です。

一方、FRP防水は高強度・高耐久が必要な現場に適しており、特に車両の乗り入れがあるようなバルコニーや、衝撃に強い床材としての使用が効果的です。ただし、施工には有機溶剤を多用するため、臭気や換気対策が必要です。

どちらを選ぶべきかは、施工箇所の構造や予算、耐久性に対するニーズに応じて決定するのが良いでしょう。

ウレタンゴム系塗膜防水の費用相場と価格の目安

ウレタンゴム系塗膜防水は、他の防水工法と比較して材料費や人件費の面でコストパフォーマンスに優れているとされています。しかし、実際の施工費用は建物の立地条件、施工範囲、下地の状態、使用する材料の種類や工法によって変動します。施工を検討する際には、事前に大まかな費用感を把握しておくことが予算計画に役立ちます。

以下は、面積別および工法別におけるウレタン防水工事の参考価格帯です。

面積(㎡)密着工法(円/㎡)通気緩衝工法(円/㎡)
30㎡以下約6,000〜8,000約8,000〜11,000
30〜100㎡約5,500〜7,500約7,000〜10,000
100㎡以上約4,500〜6,500約6,500〜9,000

費用に影響する要素

  • 下地の状態:既存防水層の劣化状況や、下地にひび割れ・膨れなどがある場合は補修費が加算されます。
  • 形状・勾配の複雑さ:排水勾配が不十分な屋上や、立ち上がりが多いベランダなどでは手間がかかり、工賃が上がります。
  • 足場の必要性:2階以上の高所施工では足場が必須となり、その設置・解体費用も加算されます。
  • 施工場所の交通事情:車両の進入難易度や駐車スペースの有無などによってもコストが変わることがあります。

なお、正確な見積もり金額を把握するには、現地調査を通じて劣化状態・寸法・使用材料の確認が必要不可欠です。

ウレタンゴム系塗膜防水の耐用年数|耐久性を保つためのメンテナンス方法も

ウレタンゴム系塗膜防水の耐用年数は、通常10年から15年程度とされていますが、適切なメンテナンスを行うことで、さらに長期間の防水性能を保つことが可能です。定期的な点検と早めの補修を意識することで、雨漏りの予防と工事費用の削減にもつながります。

トップコートの再塗布(目安:5年ごと)

トップコートは防水層の表面を保護する役割を果たしており、紫外線や風雨による劣化を抑制します。劣化が進むと、防水層本体が直接ダメージを受けることになるため、トップコートは5年を目安に定期的に塗り替えることが推奨されます。

排水口やドレンの清掃(年1〜2回)

屋上やベランダなどの防水面では、枯れ葉や土埃が溜まって排水機能が低下することがあります。これにより水たまりが発生し、防水層への負担が増加します。定期的に排水口やドレンを清掃することで、劣化のリスクを抑えられます。

専門業者による定期点検(2〜3年ごと)

施工後1年目以降は、2〜3年に1度の頻度で専門業者による点検を依頼するのが理想です。目視では気づかない劣化や、トップコート下の浮き・剥がれを早期に発見し、小規模な補修で大規模な修繕を防ぐことができます。

ウレタンゴム系塗膜防水の劣化サインと補修タイミング

防水層が劣化すると、建物内部への雨水侵入による構造材の腐食や、居住環境の悪化を引き起こす恐れがあります。症状が軽いうちに対処することで、補修範囲を限定しコストを抑えることが可能です。

代表的な劣化の兆候

  • ヘアークラック:防水層の表面にできる細かいひび割れ。早期のトップコート再塗布で対処可能です。
  • 浮き・剥がれ:密着不良や紫外線劣化が原因。放置すると水が入りやすくなります。
  • チョーキング(白化現象):塗膜の粉化現象。塗膜の寿命が近いサインです。
  • 水たまりの慢性化:排水勾配の変化や劣化が原因。防水層の局所的な補修が必要な場合があります。

これらの兆候が見られたら、なるべく早く専門業者に相談し、点検・部分補修の対応を取りましょう。

ウレタン塗膜防水工事の施工手順(改修工事の場合)

ウレタン防水の改修工事では、既存の防水層の状態に応じた施工準備が求められます。以下に一般的な手順を示します。

  1. 高圧洗浄:汚れ、苔、カビ、既存の劣化膜を落とし、下地を清潔な状態にします。
  2. 下地処理・補修:凹凸やひび割れを補修し、全体を平滑化します。モルタル補修などを含みます。
  3. プライマー塗布:下地と防水材の密着力を高める下塗り剤を全体に塗布。
  4. 補強メッシュの設置(必要に応じて):亀裂防止のため、メッシュクロスを敷設。
  5. ウレタン樹脂塗布(2〜3層):中塗り・上塗りで所定の厚さ(1.5〜2.0mm)を確保。
  6. トップコート塗布:仕上げとして防水層を保護する塗膜を施工。
  7. 養生・硬化期間の確保:完全硬化まで2〜3日程度。気温・湿度によって調整。

施工面積30〜50㎡程度であれば、通常3〜6日間の工期が見込まれます。

ウレタンゴム系塗膜防水業者選びと見積もりチェックのポイント

ウレタン防水の性能を最大限に引き出すためには、信頼できる専門業者への依頼が不可欠です。施工品質の高さだけでなく、保証体制やアフターサービスにも注目すべきです。

業者選びで確認すべき項目

  • 防水工事専門業者であるか:塗装業者ではなく、専業の技術者がいる会社を選びましょう。
  • 資格者の在籍状況:防水施工技能士、建築施工管理技士などの有資格者が在籍しているか確認。
  • 施工実績の明示:過去の工事写真やレビューが豊富な業者は信頼性が高いです。
  • 保証内容の明確さ:防水層に対して5〜10年の保証があるか、保証書の発行有無を確認しましょう。

見積もりで注視すべきポイント

  • 使用材料と工法の明記:曖昧な表現ではなく、具体的な製品名・仕様が記載されているか。
  • 工期や工程の記載:施工期間・工程数が明示されていることで、工事の透明性が高まります。
  • 一式表記の有無:詳細な内訳がなく「一式」のみ記載されている場合は注意が必要です。
  • 追加費用の記載:不測の事態が発生した場合の追加費用について事前に明記されているかを確認しましょう。

複数業者から相見積もりを取得し、価格と内容のバランスを比較することで、適正価格での高品質な施工が可能になります。

ウレタンゴム系塗膜防水でよくある質問(FAQ)

ウレタン塗膜防水に関する施工やメンテナンスについて、初めての方はさまざまな疑問を抱えることが多いものです。ここでは、実際に寄せられる質問をもとに、特に多いご相談内容とその回答をまとめました。施工前の不安解消や、信頼できる業者選びの参考にしてください。

Q. ウレタン防水はDIYで可能ですか?
A. 市販のキットなどでDIYも可能ですが、プロが施工する場合に比べて膜厚のムラや密着不良が起こりやすく、防水性の信頼性が低くなります。特にベランダ・屋上などの主要部位では業者施工を推奨します。

Q. 工事中に室内への影響はありますか?
A. 基本的に屋外作業のため、室内の生活には大きな支障はありません。ただし、ベランダや屋上の立ち入りが制限され、臭気や振動を感じることもあるため、事前に工事期間を把握しておくと安心です。

Q. どの季節が施工に適していますか?
A. 晴天が続く春や秋が最も適しています。ウレタン材は湿度や温度に影響を受けやすいため、梅雨や冬場の施工は慎重に判断する必要があります。

Q. 施工後はすぐに歩けますか?
A. 塗布直後は歩行厳禁です。完全硬化までに24〜72時間かかるため、施工後の立ち入り制限は必ず守るようにしましょう。


まとめ|ウレタンゴム系塗膜防水は信頼できる業者と定期管理が鍵

ウレタンゴム系塗膜防水は、柔軟性・シームレス構造・施工の自由度など多くの魅力を持つ防水工法です。屋上・バルコニー・ベランダなど、様々な場所で採用されており、改修にも新築にも適応可能です。

ただし、工事品質は施工者の技術に左右されやすく、施工後のメンテナンスを怠れば、せっかくの防水性能も短命に終わってしまいます。そのため、技術力のある業者選びと、トップコートの定期再塗布・排水口清掃・定期点検といった継続的なケアが極めて重要です。

「まだ雨漏りしていないから大丈夫」と思っていても、防水層の劣化は目に見えないところから進行しています。築10年を過ぎた建物では、早めの調査・診断を行い、必要に応じて改修工事や補修を検討しましょう。

まずは無料の現地調査や見積もりを活用し、安心して任せられるパートナーを見つけることが成功の第一歩です。