シーリング(コーキング)工事とは?修繕費用や手順・耐用年数から防水工事との違いまで解説
2025/07/31
建物の防水や耐久性を維持するうえで欠かせない工事のひとつが「シーリング工事」です。外壁の目地や窓枠まわりなど、雨水が入り込みやすい場所を専用のシーリング材で塞ぎ、漏水や劣化を防ぎます。
しかし「どのタイミングで必要なのか?」「どの種類の材料を使えばいいのか?」「費用はどれくらいかかるのか?」など、初めての方にとってはわかりにくい点も多いのが現実です。
この記事では、シーリング工事の基本から材料の種類、施工の流れ、費用相場、そして補助金活用の方法まで、2025年時点での最新情報を交えてわかりやすく解説します。これから修繕やメンテナンスを検討している方、戸建て・マンション・ビルを問わずあらゆる建物の管理者・オーナーの方にとって、実用的なガイドとなる内容です。
目次
シーリング(コーキング)工事とは?|防水・気密性を担う重要工事
シーリング工事とは、建物の隙間や目地部分にシーリング材を充填し、防水性・気密性・耐震性を高める施工です。屋外だけでなく、室内の水回りにも広く使われる汎用的な工事の一つです。
外壁材やサッシの継ぎ目、屋上の接合部、室内の洗面台やバスタブの隙間など、建物には多くの「隙間」が存在します。そこからの雨水侵入を防ぐために、柔軟性のある材料で密封するのがシーリング工事の役割です。
シーリング材は温度変化や揺れによって伸縮するため、建物の動きにも追従し、漏水を防ぐ防御壁として長期間にわたって機能します。また、防水性能だけでなく、室内の快適性や断熱性、さらにはエネルギー効率にも貢献します。
シーリング工事は「コーキング工事」と呼ばれることもありますが、基本的には同じ意味として扱われます。施工業者や地域によって呼称が異なるだけで、目的や材料に大きな違いはありません。
シーリング(コーキング)工事で使用されるシーリング材の種類と特徴
シーリング材は用途や環境によって適切な材料を選ぶ必要があります。気温・湿度・紫外線の影響、施工部位、さらには上塗りの有無などに応じて選定されます。以下に代表的なシーリング材とその特徴をまとめました。
| 種類 | 主な用途 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| シリコン系 | 浴室・ガラス周り | 耐水・耐熱性が高い、価格が安い | 塗料が乗らない、撥水汚染の可能性あり |
| ウレタン系 | 外壁・窓周り | 密着性・耐久性が高く施工性が良い | 紫外線に弱く変色・劣化しやすい |
| 変成シリコン系 | 外壁・ALC目地など | 塗装可・万能型・耐候性・防汚性に優れる | 費用が高く、未硬化リスクあり |
| アクリル系 | 応急処置・簡易施工 | 安価・水性で扱いやすく安全性が高い | 耐候性と耐久性が劣るため長期使用には不向き |
| ポリサルファイド系 | 金属・コンクリ接合 | 耐久性が高く仕上がりが美しい | 伸縮性が低く、塗料との相性が悪い |
これらの特性を理解し、適切なシーリング材を選ぶことが、長持ちする建物の維持には欠かせません。特に外壁や屋根まわりでは、塗料との相性も重視して選定することが重要です。
シーリング工事の種類|打ち替えと打ち増しの違い
シーリング工事には主に2種類の工法があります。建物の状態や目的に応じて適切な方法を選びます。
- 打ち替え工事:既存のシーリング材をすべて撤去し、新たに充填する方法。劣化が著しい場合に有効で、防水性や密着性を新たに再構築できます。手間と時間がかかりますが、確実な効果を得られます。
- 打ち増し工事:既存のシーリング材の上から新たな材料を充填する方法。劣化が軽度な場合に選ばれ、費用と手間を抑えることが可能ですが、下地の状態次第では密着力が十分に得られないこともあります。
多くのケースでは、打ち替え工事のほうが長期的に安心できる選択とされていますが、予算や工期、部位によっては打ち増し工事が選ばれることもあります。
どこに必要?シーリング工事の施工箇所
シーリング工事が必要となる場所は、建物のさまざまな部位に存在します。施工箇所は以下のように分類されます。
- 外壁の目地・継ぎ目:ALCやサイディングなどの外壁パネルのつなぎ目
- 窓枠・サッシ周り:雨風が侵入しやすく、断熱性・気密性にも関係
- 屋上や塔屋、笠木部:構造部材の接合部など、雨水がたまりやすい部分
- バスルームやキッチンなどの水回り:湿気や水濡れによるカビ・腐食防止
- 床と壁の接合部:隙間からのホコリや虫の侵入防止
- ガラス周り:ガラスとアルミ枠の間の防水処理
これらの施工箇所は、目立たないながらも建物全体の防水・気密性能に大きく関わっており、定期的な点検とメンテナンスが重要です。
シーリング(コーキング)工事が必要なタイミングとは
「どのタイミングでシーリング工事をすれば良いか」は多くの方が抱える疑問です。以下のような状況が代表的な施工時期の目安となります。
耐用年数が経過したとき
シーリング材の寿命は素材によって異なりますが、おおむね5〜10年が目安とされています。外壁や屋上まわりは紫外線や風雨の影響を受けやすいため、劣化が早まる傾向があります。特に新築から5年〜7年目は点検のタイミングです。
劣化症状が現れたとき
以下のような劣化症状が見られた場合は、早急な工事が必要です。
- シーリング材の硬化・縮み
- ひび割れ、剥がれ、痩せ
- 破断(中央から裂けている)
- 表面の変色や汚染
放置すると雨水の浸入リスクが高まり、結果的に修繕費が大きく膨らむ恐れがあります。
外壁塗装と同時に施工するとき
外壁塗装工事を計画している場合は、シーリング工事を同時に行うのが最も合理的です。足場を共用できるためコスト削減になり、仕上がりの統一感や長期的な耐久性も高まります。施工の順序としては「打ち替え→乾燥→塗装」が一般的です。
シーリング材の劣化放置で起きるトラブルとは?
劣化したシーリング材を放置すると、建物に深刻な被害をもたらす可能性があります。
- 雨漏り・漏水:目地から雨水が浸入し、内壁や天井の腐食、シミの原因に
- 躯体の腐食・カビ発生:構造材が水分を含むことで腐朽菌やカビが発生
- シロアリ被害:湿った木材はシロアリにとって格好の住処に
- 資産価値の低下:建物の外観や機能低下が査定にも影響
- 耐震性の低下:外壁や構造の劣化により建物強度が損なわれる
被害が進行すると部分補修では対応できず、大規模な改修や内部補修が必要となる場合もあります。建物の健全性を保つためにも、シーリングの劣化症状を見逃さず、早めに専門業者へ相談することが重要です。
シーリング(コーキング)工事の費用相場と内訳
シーリング工事にかかる費用は、工法の種類や使用する材料、施工する部位の面積、足場の有無、建物の立地条件などによって大きく変動します。また、一般住宅とマンション・ビルでは費用体系も異なるため、ケースバイケースでの見積もりが重要です。ここでは目安となる単価相場と、主な費用構成要素について詳しく解説します。
| 工事内容 | 単価相場(1mあたり) | 備考 |
|---|---|---|
| 打ち替え工事 | 約900〜1,200円 | 既存材撤去あり、長寿命型 |
| 打ち増し工事 | 約500〜900円 | 簡易補修、短期間対応向き |
【費用構成の内訳例】
- 材料費(シーリング材、プライマー、養生材など)
- 職人の人件費(1人工あたり1.5〜3万円程度)
- 足場代(高所作業の場合に必須)
- 運搬費・諸経費(車両、工具、廃材処理費など)
- 管理費(工程管理、事務費用など)
なお、建物全体のシーリング工事費用としては、戸建ての場合で15万〜50万円、マンションでは規模に応じて数十万円〜数百万円に及ぶこともあります。必ず複数社から相見積もりをとって比較・検討しましょう。
シーリング(コーキング)工事の施工手順を詳しく解説
シーリング工事は、正しい工程で丁寧に行うことで防水効果や耐久性が大きく変わってきます。
ここでは代表的な「打ち替え工事」「打ち増し工事」の流れを、それぞれの特徴を交えてご紹介します。
打ち替え工事の流れ
- STEP
既存シーリング材の撤去
カッターやヘラを使って既存のシーリング材を完全に除去。劣化が激しい場合は丁寧な下地処理が重要。
- STEP
目地内部の清掃と下地調整
ホコリ、カビ、油分などを取り除き、密着性を高める下地処理を行います。
- STEP
バックアップ材の挿入(必要時)
深い目地の場合、目地底にバックアップ材を入れて厚みを調整。シーリングの三面接着を防止します。
- STEP
プライマー塗布
シーリング材の密着性を高めるため、接着面に刷毛でプライマーを塗布。
- STEP
シーリング材の充填
専用のコーキングガンで材料を空気が入らないよう注入。目地底から均等に充填します。
- STEP
ヘラ仕上げ・表面成形
ヘラを使って表面を押さえながら整え、気泡やムラをなくします。
- STEP
養生撤去・硬化時間確保
養生テープを外し、気温条件に応じて24〜48時間の硬化時間を設けます。
打ち増し工事の流れ
基本的な流れは打ち替え工事と変わりませんが、以下のようなは打ち増し工事ならではです。
- 既存シーリング材の上に直接施工するため、撤去工程は省略可能。
- プライマーをしっかり塗布し、上から新しいシーリング材を充填。
硬化や表面仕上げは打ち替え工事と同様ですが、下地にカビ・劣化がある場合は打ち替えが推奨されます。
シーリング(コーキング)工事の工期と施工時の注意点
シーリング工事の期間は、対象面積や建物の構造、天候条件などによって前後します。標準的な戸建て住宅では、おおよそ2日〜5日程度が目安です。
【工期目安一覧】
- 一部外壁補修(20〜50m程度):1〜2日
- 戸建て全体(外壁+窓回り):3〜5日
- 中規模マンション(共用部含む):1週間〜10日
【施工時の注意点】
- 天候の影響:湿度80%以上や雨天の場合、施工が延期される可能性あり
- 外壁塗装との兼ね合い:同時施工の場合は、工程管理をしっかりと
- 騒音・振動対策:住人や近隣への配慮が必要
また、気温5℃未満では施工できないことが多いため、春・秋の気候安定期がベストシーズンとされています。
シーリング(コーキング)工事を含む外装リフォームなど補助金・助成金でお得に施工する方法【2025年版】
シーリング工事を含む外装リフォームや防水改修は、補助金や助成金の対象となるケースが増えています。特に省エネ性能向上、防災強化、長寿命化を目的とした改修では活用可能です。
以下に代表的な支援制度を一覧で紹介します。
| 制度名 | 対象 | 補助額 | 条件 |
|---|---|---|---|
| 住宅省エネ2025キャンペーン | 外壁・屋上防水など | 最大15万円 | 遮熱・断熱目的、事前申請制 |
| 東京都足立区リフォーム助成 | 足立区内居住者 | 最大5万円 | 工事費の1/3まで、登録業者施工必須 |
| 福岡市住宅リフォーム支援 | 市内持家所有者 | 工事費の10%(上限20万円) | 登録業者、工事費30万円以上 |
| その他地方自治体補助金 | 市区町村により異なる | 上限5〜30万円程度 | 条件多様。各自治体要確認 |
【申請の流れと注意点】
- 工事前に補助制度の内容を確認
- 見積書や工事内容、施工前写真を準備
- 自治体または国の窓口に事前申請
- 承認後に工事着手(着工後の申請は原則NG)
補助金は年度予算の都合で予告なく終了することもあるため、早めの行動が大切です。
シーリング工事料金における会計処理のポイント
シーリング工事を実施する際、経理担当者が押さえておくべきなのが会計処理の方法です。工事費用を修繕費として損金計上できるのか、それとも資本的支出として扱うべきなのか。適切な判断を行わなければ、税務上の問題につながる可能性があります。
ここでは、シーリング工事料金の会計処理における重要なポイントを解説します。
シーリング工事は「修繕費」として処理できる
シーリング工事は建物の原状回復を目的とした工事であるため、一般的には固定資産の維持管理や原状回復のための「修繕費」として会計処理されます。
これにより、企業は工事費用を当期の損金に計上することが可能です。建物を長持ちさせるための工事ですが、資本的支出には該当しないとされているため、税務上のメリットを享受できます。
資本的支出との違いに注意
シーリング工事費用は修繕費として扱われますが、工事内容によっては資本的支出と判断されるケースもあります。資本的支出とは、固定資産の価値を高めたり、耐久性を大幅に増加させるための支出を指します。
修繕費として損金計上できるかどうかは、国税庁が示す判定基準に従って判断する必要があります。
国税庁の判定基準を確認する
修繕費か資本的支出かの判断に迷った場合は、国税庁の「修繕費とならないものの判定」を参照することが重要です。
金額や工事の性質、建物への影響度などによって判定が異なるため、事前に税理士や会計士に相談し、適切な会計処理を行うことをおすすめします。正しい処理を行うことで、税務調査でのトラブルを避けることができます。
参考元:国税庁「修繕費とならないものの判定」
シーリング(コーキング)工事に関するよくある質問(FAQ)
Q
DIYで外壁のシーリング工事はできますか?
A
屋内の水まわり程度であれば可能ですが、外壁や高所での作業は安全性・施工精度の面から専門業者に依頼するのが賢明です。
Q
どれくらいの頻度で工事が必要ですか?
A
一般的には5〜10年ごとが目安です。直射日光・風雨の影響を受ける部位は劣化が早まるため、定期点検をおすすめします。
Q
工事中、住人の生活に支障はありますか?
A
外壁や屋上施工では騒音・振動が発生する場合がありますが、室内作業が少ないため基本的には通常生活可能です。
Q
見積もり依頼時に確認すべきポイントは?
A
材料の種類、施工範囲、保証期間、足場の有無、補助金対応の可否などをチェックしましょう。
Q
外壁塗装とセットでやるメリットは?
A
足場費用が1回分で済むほか、工事期間の短縮、仕上がりの一体感が得られるため非常に合理的です
シーリング(コーキング)工事で建物の長寿命化を図ろう!まとめ
シーリング工事は、目地や隙間からの雨水侵入を防ぐだけでなく、断熱性や気密性にも関わる重要なメンテナンス工事です。施工のタイミングを逃すと、建物内部の腐食やカビ、雨漏り、資産価値の低下といった深刻なトラブルを招くおそれがあります。
適切な材料の選定と信頼できる業者による確実な施工、そして補助金制度の賢い活用によって、費用を抑えながら高品質な改修が可能になります。まずは建物の状態を把握し、専門業者による無料点検や見積もりを依頼することから始めましょう。
住まいの寿命を延ばすための第一歩は、劣化の“見逃し”を防ぐ意識と、早めのメンテナンス行動です。