【賃貸経営】“時期”より“症状”で見る修繕 ― 相続しても後悔しない建物との向き合い方
2025/11/05
目次
はじめに
ふと建物を見上げたとき、外壁の色が思っていたよりもくすんで見えた――。
「そういえば、最後に塗り替えたのはいつだっただろう?」
そんな小さな違和感が、建物の“声”に気づくきっかけになることがあります。
とくに親から受け継いだ建物や、長く所有している物件ほど、「まだ大丈夫だろう」「昔はしっかりした造りだから」と考えがちです。
けれど、年月とともに建物は少しずつ確実に変化していきます。その変化を見逃してしまうと、次の世代へ受け継ぐときに、“想定外の修繕費”という負担を残してしまうこともあります。
修繕の判断で本当に大切なのは、「築年数」ではなく「症状」です。
建物が出している“サイン”をどう受け取るかで、将来の安心が大きく変わります。

建物も人と同じ。「年齢」より「症状」で見る
築20年、30年という数字は、あくまで目安です。
同じ築年数でも、日当たり・風通し・周囲の環境で老化のスピードはまったく異なります。
たとえば、南側の壁は強い日差しで色あせが早く、北側は湿気でカビが生えやすい。
屋上では、ほんの小さなふくらみやシミが、のちの雨漏りにつながることもあります。
人の体と同じように、「異変に気づき、小さく治す」ことが大切です。
軽い段階で手を打てば、大きな工事にならずに済みます。
その積み重ねが、建物の寿命を延ばすいちばんの近道です。
相続のタイミングこそ、建物を“見直すチャンス”
相続というと、まず思い浮かぶのは名義変更や税金のこと。
でも、その建物が“今どんな状態か”を確認せずに引き継ぐと、数年後に修繕費が大きく膨らむケースも少なくありません。
外壁のひびや、雨が入り込んだ跡。
屋上の床のふくらみや、サビが出始めた手すり。
そうした小さな症状は、時間とともに内部にまで進行します。
「親の代ではまだきれいだったのに」と後悔しないためには、相続のときこそ“建物の健康診断”をすることが大切です。
その結果をもとに、「今すぐ直すところ」と「将来に備えておくところ」を整理すれば、無駄なく安心して資産を受け継ぐことができます。

早めに気づきたい3つの“老化のサイン”
① 外壁を触ると粉がつく・色がくすんで見える
これは、建物を守っている塗装の力が弱まっているサイン。
雨や日差しで少しずつ表面が削れ、壁がむき出しの状態になっています。
放っておくと、内部に水が入り込み、修繕費が大きくなってしまいます。
② 窓まわりや壁のつなぎ目にスキマができている
雨が入りやすい場所の代表です。
ほんのわずかなスキマからでも水が入り、中で木が腐ったり、カビが発生することもあります。
③ ベランダや屋上の床に水が溜まりやすい
雨のあとに乾きにくい、いつも同じ場所に水たまりができる――
それは防水が弱くなっているサインです。
小さなうちに直せば数万円で済むものが、放っておくと数十万円規模になることもあります。
管理会社に任せきりでは見えてこない“本当の状態”
多くの管理会社は、入居者対応や清掃・点検などの「日常管理」が中心です。
しかし、建物の劣化を専門的に見る立場ではありません。
「担当者が何も言わない=問題がない」と思っていても、実際には小さな劣化が進んでいるケースもあります。
特に、長く所有している賃貸物件では、担当者が変わるたびに情報が引き継がれず、修繕履歴が曖昧になることもあります。
大切なのは、“任せっぱなしにしない意識”。
オーナー自身が現場を見に行き、「前より色が変わった」「この部分にヒビが出ている」など、小さな違和感に気づくことが、トラブルを防ぐ第一歩です。
新東亜工業の想い ― “現場の声を、オーナー様の目線で”
私たち新東亜工業は、工事をする前に“話すこと”を何より大切にしています。
建物の状態を説明するだけでなく、「今後どう管理していきたいか」「将来どんな使い方を考えているか」――
そんなお話を伺いながら、最適な方法を一緒に考えます。
「どこに頼めばいいかわからない」「いくらかかるのか不安」「どこまで手を入れるべきか判断できない」
そうした迷いに対して、現場での写真や具体的な説明をもとに、“必要なこと”と“今はまだ様子を見ていいこと”を明確にお伝えします。
私たちは、オーナー様と同じ目線で建物を見つめ、現場の隣で一緒に考える存在でありたいと考えています。
修繕は、建物の価値を守るだけでなく、入居者の安心、そして次の世代への信頼にもつながります。
私たちは、その思いを共有しながら、誠実に、そして長くお付き合いできるパートナーであり続けます。

まとめ
修繕は「年数」ではなく「症状」で判断する時代です。
そして、相続は“建物を見直すチャンス”でもあります。
小さな変化に早く気づくことで、無駄な出費を防ぎ、次の世代へ安心して引き継ぐことができます。
建物の変化に気づく目を持ち、迷った時は一人で抱え込まず、現場を知るパートナーに相談してほしい――。
その一歩が、未来の建物を守る大きな力になります。
監修:石川繫雄(一級建築士・一級建築施工管理技士)