【話します②】マンション大規模修繕工事に潜む“見えない談合”構造
2025/10/31
知らないうちに、理事会はコントロールされている——。
マンションに住む多くの人にとって、大規模修繕工事は人生の中で数回しか経験しない特別な出来事です。
専門的な知識もなければ、工事内容や見積の妥当性を判断できるわけでもない。
だからこそ、理事会は管理会社やコンサルに依存しがちになります。
しかしその依存こそが、談合が成立するための入口になっています。
ここからは、現場で“実際に起きていること”をもとに、談合の仕組み・心理構造・背景を紐解いていきます。
こちらの記事もご参照ください。
【話します①】マンション大規模修繕工事の裏側ー誰も知らない「談合の現場」

目次
■ なぜ談合が“バレない”のか
談合というと、多くの人は次のようなイメージを持っています。
- 密室での打ち合わせ
- 封筒の授受
- いかにも悪そうな人物
しかし実際は、もっと静かで、もっと日常的で、もっと自然です。
むしろ、悪意のある「仕組み」が住民の目に触れない形で成立しているのです。
たとえば、
- 理事会資料は管理会社が作成する
- 業者選定会議は管理会社が司会する
- 複数業者を呼ぶと言っても呼ぶ候補自体が管理会社の“囲い込みリスト”
- 理事長は議事進行の負担から管理会社に「任せる」姿勢をとりやすい
つまり、議論が起きる前に選択肢が制限されているのです。
これが、談合が疑われにくい最大の理由です。
① 「今回は辞退して、次回の工事を」
――“順番に仕事を回す”出来レースの交換条件
あるマンションで、施工業者が5,000万円の見積を提出したところ、
数日後に管理会社の担当者から電話がありました。
「今回は弊社が施工させてもらいたいので、辞退してもらえませんでしょうか?
ただ、今度、5,000万円分の仕事をお約束しますので、、、」
一見、“次回保証”という誠意ある取引に見えますが、
実際にはこれは**明確な談合行為(見返り約束)**に該当します。
見積参加の段階で「順番に仕事を回す」という申し合わせを行うことは、
公正取引委員会の定義する**「入札談合」**に当たり、
施工会社・管理会社ともに処罰対象となり得ます。
施工会社はこの申し出を断りましたが、
結果として理事長からも「今回は見送らせてください」との連絡があり、
本命業者(管理会社の下請)が受注。
つまり、断った時点で“排除”される構造がすでに出来上がっていたのです。
今回のケースは独立系の施工業者で管理会社と関係性があったわけではありませんが、もしかしたら、今後もそのような美味しい話があるのではと思い、辞退してこの管理会社からの依頼を受けるようになってしまう独立系施工業者も少なくありません。もし仮にこの業者の協力会社になってしまうと抜け出すことはできません。
管理会社は複数のマンションを管理しているため、
- 今回はAマンションで工事
- 次回はBマンションで工事
- 次々回はCマンション…
というように、継続して案件が発生します。
つまり、管理会社は施工会社に対して、「継続保証」を暗に示すことができます。
施工会社にとっては、管理会社を敵に回すことはビジネス上の致命傷。
だから、「次回約束」を断ると 次の仕事が永遠に来なくなるのです。
これは、**競争ではなく“序列”**です。
入札ではなく、配分調整です。
そして、その“序列の頂点”にいるのが管理会社です。

② 「個人的にキックバックを」
――営業担当者レベルでの日常的な裏取引
別の案件では、大手管理会社の営業担当から、
見積提出後に次のような話が持ちかけられました。
「今回、御社を推したいのですが、
個人的に少し謝礼をいただけないでしょうか?」
つまり、個人レベルでのキックバック要求です。
このような営業担当は、複数の物件を担当しているため、
謝礼をもらえるようであれば、次回にも同じようなことが可能です。
営業個人の判断でこういったことが行われています。
表面上は会社単位の見積比較ですが、
実態は**担当者個人による“裏の営業ルート”**であり、
管理会社組織全体の腐敗を象徴する行為です。
本来、管理会社は「中立な立場での発注支援者」であるべきなのに、
このようなやり取りが日常化していることで、
業界全体の透明性が損なわれています。
ここで重要なのは、これは会社の公式ルールではないという点です。
しかし、現場レベルでは当たり前のように行われている。
ではそれはなぜそのような行為が行われるのか?
それは、営業担当者には 工事の決定権に近い影響力があるからです。
- 理事長と最も密にコミュニケーションするのは担当者
- 理事会の空気を作るのも担当者
- パンフレット・資料・比較表を作るのも担当者
つまり、理事会は担当者の言葉に影響されやすい構造になっている。
担当者が
「この業者は安心です」
と言えば通りやすく、
「この業者は少し心配です」
と言えば候補から外れます。
その影響力を利用すれば、
個人の利益のために工事を動かすことすら可能になるのです。
つまり、これが業界の構造的な脆弱性です。
③ 「理事長を仕込む」
――理事会の中から支配する“最も静かな談合”
さらに悪質なのが、管理会社自らが“理事長を仕込む”ケースです。
ある大手管理会社では、担当者が
大学時代の知人や友人に声をかけ、
「今のマンションで理事長を引き受けてくれないか」と依頼。
理事長就任後、修繕工事の発注が始まるタイミングで
その人物に**キックバック(数十万円〜数百万円)**を支払い、
自社または提携業者での施工を通す――という構図です。
この手法の恐ろしい点は、
「理事長がもともと管理会社と繋がっているため、誰も不自然に感じない」こと。
つまり、談合が“制度の中に隠れている”状態です。
管理組合内では、理事長が「信頼できる業者です」と推薦するため、
他の理事や修繕委員も反対できず、
結果として完全な出来レースが成立します。
この方法が成立するのには、理事会制度の弱点があります。
多くのマンションでは、理事長は住民が順番に担当する仕組みです。
つまり、たまたま選ばれた人が理事長になることが多い。
- 理事長になる意志がない
- 工事について詳しくない
- トラブルを避けたい
- とにかく早く終わらせたい
そんな中、管理会社が近づき、
「大丈夫です、こちらで進めますから」
と言えば、理事長は安心して依存します。
そこに“管理会社と事前に繋がっている人物”が理事長として入り込めば、
完全にコントロールされた議会が誕生します。
こうして談合は、
反対意見が生まれない状態の中で自動的に成立します。

談合を物理的に不可能にする「ファシリテーション方式」
新東亜工業におけるファシリテーション
では、どうすればこの不正を断ち切れるのか?
答えは、「現役の工事会社で、なおかつ施工を請けない第三者」による精査です。
利益を受け取らない立場が、見積書の妥当性を検証する仕組み――それが新東亜工業のファシリテーション方式です。
この方式はどの業者に見積依頼をし、どの業者を選定したのかが把握できないため
「絶対に」談合ができません。
見積書はすべて匿名化され、社名やロゴ、連絡先をマスキングしてもらいます。
弊社は、「A社・B社・C社」として精査します。
会社のブランド・関係性・先入観を完全に排除し、談合の余地を、構造的に消すのです。
報酬は固定5%のみ。
前受2.5%・選定後2.5%の二分割制で、追加報酬は一切ございません。
「後から増える」ことが物理的に不可能な仕組みです。
また、プレゼン当日は弊社は出席しません。
事前に質問リストを理事会へ配布し、プレゼン終了後5日以内に別日で内容を「業者名を伏せたまま」共有してもらい、見積の精査結果を報告させていただきます。
見積の精査内容ですが、その建物に対して「どのくらいの人工がかかるか」、「どのくらいの材料の原価か」、「諸経費はどのくらいか」を算出します。これを行うことによりその会社が暴利な見積を出していないかなどの判断ができます。原価を算出してどのくらいの利益であれば会社が存続するかなどもお伝えしますのでどの業者が正当かの判断材料になるかと思います。その後はどの施工業者を選定したかは我々どもも確認することはありません。
皆様は見積の整合性が分からないと思います。そこを弊社が精査することにより、修繕積立金の過払いを死守致します。

実際の効果と理事会(管理組合)の変化
この方式を導入したマンションでは、平均で1,000万円以上のコスト削減が実現しています。修繕費が1億円以上のマンションであれば5000-6000万円の差があることもあります。
不要項目の削除や単価の適正化により、理事会(管理組合)が納得して契約を締結して頂いております。
工期の短縮、追加費用の抑制、内部対立の解消など、効果は多方面に及びます。
「理事会(管理組合)が主体で動く」ことにより、組合員の信頼度も上がり、
最終承認はほぼ全会一致で通るようになった事例もあります。
もはや“管理会社・コンサル任せ”ではなく、“理事会(管理組合)が主役”の修繕が現実化しているのです。
理事会(管理組合)がまるで知識を持ったかのように公正に業者選定を進められるのが最大のメリットです。

理念――「構造的正義」を仕組みで実現する
私たちは、正義を理念ではなく構造で実現しました。
正直な会社が報われ、理事会(管理組合)が納得して意思決定できる環境作りをしました。
談合の余地をなくし、透明性を制度として確立してきました。
それが、新東亜工業のファシリテーションの本質です。
私たちはもうただの施工会社という訳ではありません。現役の工事会社が「誠実な判断の伴走者」となり、「談合を封じる構造改革の担い手」となります。
誰が得をするかではなく、誰が損をしないかで設計された仕組み。
その結果、理事会(管理組合)も施工会社も、真の意味で公平な関係を築けるようになりました。
結論:あなたのマンションは、誰のための修繕か?
理事会(管理組合)は建物を守るために存在します。
しかし現実には、“管理会社にすべてを投げつけ、談合を成立させるための承認機関”となっているケースが少なくありません。
あなたのマンションが――
・管理会社・コンサルが主導で進めている
・新しい施工業者に見積依頼をしようとする際、排除するような動きをしている
・一社以外工事を受注したいという熱量を感じない
このどれかに当てはまるなら、それは出来レースのサインです。
今こそ理事会(管理組合)が主体となり、工事を請けない第三者が精査する“透明な仕組み”を導入する時です。
談合を暴き、構造で封じる。
それが新時代の修繕の在り方であり、
「管理会社でもコンサルでもない第三の選択肢」――新東亜工業のファシリテーションです。
監修:石川繁雄(一級建築士・一級建築施工管理技士)
■ では、住民はどうすればいいのか?
ここまでの話を聞くと、
「結局、住民は勝てないのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、 勝つ方法はあります。
それは、
“判断する力” を理事会側に取り戻すこと。
- 見積を比較するための基準をつくる
- 原価を可視化する
- 議論の土台を整える
- 利害関係の影響を排除する
これは施工会社でも、管理会社でもできません。
だからこそ、第三者の中立者=ファシリテーターの役割が必要になるのです。