飲食店の防水工事費用はどれくらい?開業前に知っておきたい相場と工法別の違いを解説
2025/11/12
飲食店は水や油を多く使う業態のため、厨房やトイレなどの床から水漏れや湿気が発生しやすい環境にあります。こうしたトラブルを防ぐために欠かせないのが「防水工事」です。とはいえ、費用相場やどの工法を選べばいいのか分からず不安に思う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、飲食店における防水工事の費用相場や代表的な工法、厨房のタイプに応じた対策方法、開業前や居抜き物件での注意点まで、実践的な内容を分かりやすく解説します。
これから店舗開業を考えている方、改修を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
飲食店の防水工事における費用相場|㎡単価・施工箇所別と工法ごとの特徴
防水工事の費用は「工法の種類」と「施工面積」によって大きく異なります。
特に飲食店では厨房の形状や使用環境に合わせた工法を選ぶ必要があり、選択を誤ると耐久性が著しく低下することもあります。以下は施工箇所別の費用相場になります。
| 施工箇所 | 主な工法 | 費用相場(㎡単価) | 特徴・注意点 |
|---|---|---|---|
| 厨房 | FRP防水 / ウレタン防水 | 6,000〜12,000円 | 耐熱・耐油性が求められ、下地処理が重要 |
| トイレ | ウレタン防水 | 4,000〜7,000円 | 水はね対策中心、比較的コストを抑えやすい |
| ホール床(客席側) | ウレタン防水 / 塩ビシート防水 | 5,000〜9,000円 | 歩行頻度が高く、仕上げ材との相性に注意 |
| バックヤード / 倉庫 | ウレタン防水 | 4,000〜8,000円 | 軽作業が中心なら簡易防水でも可 |
| 屋上・バルコニー | 塩ビシート防水 / アスファルト防水 | 5,500〜10,000円 | 排水勾配とメンテナンス性を重視 |
また、飲食店でよく採用される代表的な防水工法と、その費用・耐用年数を一覧表にまとめました。
| 工法名 | 費用相場(㎡単価) | 耐用年数 | 特徴・用途 |
|---|---|---|---|
| FRP防水 | 約6,000〜12,000円 | 15〜20年 | ・強度、耐油性が高く厨房に最適 ・形状問わず施工可能 |
| ウレタン防水 | 約4,000〜6,000円 | 10〜15年 | ・安価で施工性が高いが、油や洗剤には弱め ・定期メンテが必要 |
| 塩ビシート防水 | 約4,000〜7,000円 | 15〜20年 | ・耐久性が高く広面積向け ・凹凸が多い厨房には不向きな場合も |
工法ごとの特徴と費用相場について詳しく解説していきます。
FRP防水|耐久性重視の飲食店に最適
FRP防水は、ガラス繊維で強化されたプラスチックを用いた高強度の防水工法です。
油や洗剤、熱や摩耗にも強く、厨房のような過酷な環境に非常に適しています。複雑な形状にも対応でき、つなぎ目のない美しい仕上がりが可能です。
費用は6,000〜12,000円/㎡と高めですが、耐用年数15〜20年と長く、メンテナンス頻度が少ないため、長期的に見ればコストパフォーマンスに優れています。
ウレタン防水|コスト重視なら選択肢に
ウレタン防水は、液状のウレタン樹脂を塗布して防水層を形成する工法です。
複雑な形状にも柔軟に対応でき、材料費・施工費が比較的安価(4,000〜6,000円/㎡)な点が魅力です。ただし耐久性はやや劣り、耐用年数は10〜15年、2〜5年ごとにトップコートの塗り直しが必要です。
油や洗剤に弱いため、定期的な点検と補修が前提となるものの、コストを抑えたい小規模店舗には適した選択肢です。
塩ビシート防水|広い厨房・バックヤードに
塩ビシート防水は、塩化ビニル製のシートを熱で圧着して施工する工法で、4,000〜7,000円/㎡と中程度の価格帯です。
耐候性・耐薬品性に優れ、耐用年数15〜20年と長く、広い厨房やバックヤードなどの大面積に向いています。ただし、床面が平坦であることが条件で、段差や複雑な形状が多い場所では施工に制限があります。
シートのつなぎ目処理を丁寧に行うことで、高い防水性能が維持できます。
飲食店の防水工事はなぜ必要?放置すると営業停止のリスクも!
飲食店の防水工事は、単なる床の保護ではありません。漏水や衛生トラブルを未然に防ぎ、店舗の安定運営を支える重要な工事です。
万が一のトラブルが起きると、営業の中断や顧客離れといった深刻なダメージに直結します。飲食店では以下のようなエリアで日常的に水が使用されます
- 厨房内(洗浄・調理作業)
- トイレ・洗面所
- バックヤードの清掃
- 床のモップがけや消毒作業
このように常に水と接する環境では、床面や壁の隙間から水が侵入するリスクが高く、防水施工がされていないと建物全体の劣化につながります。
飲食店の防水工事を怠った場合のリスクとは?
| リスク内容 | 説明 |
|---|---|
| 建物の劣化 | 水が床下に侵入し、基礎や構造部材が腐食する可能性がある |
| 害虫・カビ発生 | 湿気がこもることで不衛生な環境になり、衛生面での問題が発生 |
| 法令違反・指導 | 衛生基準に適合しない状態では保健所から是正指導を受ける恐れも |
| 営業停止 | 漏水が発生すると修繕工事のために営業を止める必要が出てくることも |
特にテナントビルの場合は、階下への漏水が他店舗への損害賠償に発展するリスクもあるため、早めの対策が重要です。
飲食店の厨房タイプ別に見る|必要な防水工事と注意点
飲食店の厨房は、主に「ドライキッチン」と「ウェットキッチン」に分類され、それぞれの厨房タイプによって最適な防水工事の仕様や施工方法が異なります。
防水仕様を誤ると、漏水や設備劣化、衛生管理の不備といった重大なトラブルを引き起こすリスクがあります。
適切な防水対策を施すためには、まず自店舗の厨房がどちらのタイプに該当するかをしっかり見極め、設計段階から防水仕様を検討することが重要です。
| 項目 | ドライキッチン | ウェットキッチン |
|---|---|---|
| 主な業態 | カフェ、洋食店、ベーカリーなど | 中華料理店、焼肉店、居酒屋など |
| 特徴 | 水を床に流さず作業を行う厨房 | 床に直接水を流して洗浄する厨房 |
| 清掃方法 | 拭き掃除やモップがけが中心 | 水洗い・ホースによる床洗浄が前提 |
| 防水の必要性 | 一見不要に見えるが、水はね・漏水対策として必要 | 全面防水が必須条件 |
| 防水で注意すべき箇所 | 排水口、壁際、配管まわり | 排水溝、床の隅、厨房機器の下部 |
| 推奨工法 | ウレタン防水(部分施工含む) | FRP防水または塩ビシート防水 |
| 耐薬品性の配慮 | 洗剤の影響を考慮し、耐薬品性のある材料を選定 | 油・洗剤・熱に耐える工法を選定 |
| 補足 | 最低限の防水でも初期トラブルの回避に効果的 | 滑り止め加工なども合わせて検討するのが理想 |
ドライキッチンとは|水を流さない厨房でも防水は必須
ドライキッチンは、床に水を流さず常に乾燥した状態を保つ厨房で、カフェや洋食店などで採用されています。
表面的には水を扱わないように見えても、清掃時の水はねや配管からの漏水など、予期せぬ水の侵入が起きるリスクは少なくありません。
特に排水口や壁際などの隙間から水が浸入すると、建物下層への浸水や構造部材の腐食に繋がる可能性があります。そのため、最低限のウレタン防水を全体に施工し、要所に部分的な補強を施すことが重要です。
また、使用する洗剤に含まれる薬品成分にも耐えられる防水材を選ぶことで、劣化の抑制や長期的な安全性の確保につながります。
ウェットキッチンとは|全面防水が基本
ウェットキッチンは、中華料理店や居酒屋など水・油を大量に扱う業態に多く見られる厨房スタイルです。
床に直接水を流して清掃を行うため、厨房全体に対する高度な防水性能と排水計画が求められます。排水溝の周囲や厨房機器の下部、床の四隅などは水が溜まりやすく、防水層が傷みやすい場所でもあるため、重点的な施工が必要です。
基本的にはFRP防水や塩ビシート防水といった、耐久性・耐薬品性に優れた工法が推奨されます。また、防水層の上には滑り止め処理を追加することで、作業中の転倒リスクも軽減可能です。
施工時には勾配をしっかりと確保し、水が滞留しない設計が重要です。
- 防水層の寿命を短くする原因となるのが、熱・油・洗剤です。施工後は定期的な点検と早期補修を心がける必要があります。
- 水や油の飛散が多い厨房では、壁面の立ち上がり部分も含めて防水施工するのが望ましいです。
- 床材の種類や傾斜角度も含めたトータル設計が、結果としてメンテナンス性・耐久性を高めます。
飲食店の開業時・居抜き物件での防水工事で注意すべき点
飲食店の開業準備や物件選びのタイミングで、防水工事の状態を見逃してしまうと、開業後のトラブルや想定外の出費につながります。
とくに居抜き物件を利用する場合、前の店舗で行われた防水施工の内容や施工年数、現在の劣化状況をしっかりと確認する必要があります。
工事内容を把握しないまま営業を始めると、漏水などで信用問題に発展するリスクもあります。
開業時の防水工事に関する注意点
飲食店を新規開業する際、防水工事はオープン2〜3週間前までに完了しておくのが理想です。
工事の完了後には防水材の硬化や臭気の拡散などの調整期間が必要となり、開業直前に施工すると準備に支障をきたす恐れがあります。さらに、防水工事は厨房やトイレなどの設備設置よりも先に行う必要があるため、工事スケジュールを正しく組むことが重要です。
営業開始後に工事を実施すると厨房設備の一時撤去が必要になるケースもあり、コスト増や営業損失につながります。開業前に確実に工事を終えることで、安心して店舗運営を始めることができます。
居抜き物件の防水工事に関する注意点
居抜き物件で開業する場合、前テナントの防水施工内容と経年劣化の状況を必ず確認する必要があります。
特にウレタン防水は10年ほどで劣化が進むため、施工から年数が経過している場合は再施工が必要になる可能性があります。保証書や工事記録が残っていれば、工法や保証期間を把握できますが、不明な場合は専門業者による点検を依頼しましょう。
内覧時には床のひび割れや水の染み込み、排水溝まわりの劣化などもチェックポイントです。防水性能に不安が残る場合は、開業前に再施工を行うことで、営業中のトラブルを未然に防ぐことができます。
- 床面に浮きやひび割れ、変色がないかを目視でチェック
- 排水溝まわりや機器下部の床が湿っていないか確認
- 内覧時にバケツで少量の水をまき、水の吸い込みや流れ方を観察
- 気になる点があれば、専門業者による調査依頼も検討
もし防水工事の履歴が不明、または劣化の兆候が見られる場合は、開業前に再施工を行うことで、安心して営業を開始できる環境を整えることができます。
飲食店の防水工事を依頼する際のポイントとチェックリスト
飲食店の防水工事を成功させるには、費用だけでなく「施工内容」「業者の信頼性」「保証体制」など、複数の観点から総合的に判断することが求められます。飲食店は水や油を多用するため、住宅とは異なる特殊な施工ノウハウが必要です。
ここでは、工事を依頼する前に確認しておくべきポイントや契約時の注意事項について詳しく解説します。
- 飲食店の施工実績が豊富
- 工法ごとの提案力
- 見積書の明確さ
- 保証制度とアフターサポート
それぞれ詳しくみていきましょう。
飲食店の防水工事の依頼ポイント1.飲食店の施工実績が豊富か
飲食店では、一般住宅とは異なり厨房やトイレなどの高温・多湿環境での施工経験が求められます。そのため、過去にどのような飲食店舗で施工を行ってきたか、施工写真や事例紹介があるかを事前に確認することが重要です。
特に、厨房機器が密集している環境や、水はけの悪い構造に対応した実績がある業者は、信頼度が高いといえます。現地調査の際に具体的な施工ノウハウを聞いてみるのも良いでしょう。
飲食店の防水工事の依頼ポイント2.工法ごとの提案力
防水工事は建物の形状や床材の種類、厨房の使用環境(油汚れ・水流の多さ)によって適した工法が変わります。FRP・ウレタン・塩ビシート防水など、複数の工法に対応し、メリット・デメリットを比較しながら提案できる業者を選ぶことがポイントです。
特定の工法しか扱っていない業者は、最適な選定ができないリスクもあるため、提案の柔軟性や施工後のメンテナンス体制も確認しておきましょう。
飲食店の防水工事の依頼ポイント3.見積書の明確さ
見積書の内容が詳細であるかも重要な確認ポイントです。単に「一式」や「防水工事」だけではなく、下地処理、養生、プライマー、防水材、トップコート、副資材、施工面積ごとの単価などが細かく記載されていると、コストの妥当性や工程の把握がしやすくなります。
また、追加費用の可能性や、その発生条件についても事前に明記されていると安心です。契約前には、書面の内容について口頭でも説明を求めましょう。
飲食店の防水工事の依頼ポイント4.保証制度とアフターサポート
工事後のトラブル対応やメンテナンス体制も、業者選びで見落とせない要素です。保証期間が長いだけでなく、「防水層の剥がれ」「水漏れ」「施工不良による床材の劣化」など、具体的な保証範囲や補償内容が契約書や保証書に明記されているかを確認しましょう。
また、連絡体制(担当者の直通連絡先、休日対応の有無など)や、アフター点検の有無についてもあらかじめ確認しておくことで、万一のトラブルにも安心して対応できます。
契約前にチェックしたいこと
- 見積金額の内訳が明記されているか(施工単価・諸経費・材料費・養生費・消費税など)
- 保証書が発行されるか、またその内容(工法・材料名・保証期間・対象範囲)が明確かどうか
- 使用される防水材の種類・性能・製造メーカーの情報が開示されているか
- 工事期間の目安(日数・施工時間帯)と、営業への影響(休業の要否・作業騒音など)が共有されているか
- 契約前に現場調査を実施し、図面や口頭説明だけでなく「現状に即した工事計画」が立てられているか
小さな飲食店であっても、防水工事は建物の寿命や営業継続に直結する大切な工事です。信頼できる業者を慎重に選び、十分な説明と書面の確認を行った上で契約することが大切です。
飲食店の防水工事の費用に関するよくある質問(FAQ)
飲食店で防水工事を検討する際には、多くの疑問や不安がつきものです。費用相場や施工時期、工法の選び方、保証制度の有無など、開業前後に知っておくべき情報は意外と多岐にわたります。
ここでは、現場でよく聞かれる質問をQ&A形式でまとめました。
Q
飲食店の防水工事費用はどのくらいかかりますか?
A
一般的な相場は、工法や施工面積によって異なりますが4,000〜12,000円/㎡程度です。ウレタン防水は比較的安価(4,000〜6,000円/㎡)で施工しやすく、FRP防水はやや高め(6,000〜12,000円/㎡)ですが耐久性に優れています。
厨房のレイアウトや劣化状況に応じて追加工事が発生することもあるため、現地調査による正確な見積もりが必須です。
Q
防水工事は開業前に済ませたほうがいいですか?
A
はい、可能な限り開業2〜3週間前までに施工完了しておくことが望ましいです。営業開始後に工事を行うと、厨房設備の一時撤去や作業騒音、臭気などが発生し、営業に支障が出る可能性があります。
また、工事完了後には防水材の硬化期間が必要な場合もあるため、余裕をもったスケジュールを立てることが大切です。
Q
見積もり費用に含まれるものは?
A
基本的には防水材、下地処理、養生、施工費、清掃費、廃材処分費などが含まれます。ただし、副資材や追加補修が別途費用になることもあるため、詳細な内訳付きの見積書を確認しましょう。
Q
費用を抑える方法はありますか?
A
一括施工による複数箇所まとめての依頼や、閑散期(夏・冬)を狙った工事依頼、現場調査時にしっかり希望を伝えることなどでコスト調整が可能です。また、助成金や補助制度の有無もチェックしましょう。
Q
工事後に保証はつきますか?
A
はい、多くの業者では保証書を発行しており、保証期間は3〜10年程度が一般的です。
保証の内容には「防水層の剥離」「水漏れ」「施工不良による不具合」などが含まれることが多いですが、工法や使用材料によって異なるため、契約前に保証範囲と対応条件をしっかり確認しましょう。
保証書は施工後に必ず書面で受け取り、保管しておくことが大切です。
飲食店の防水工事は費用と用途に合った工法と信頼業者で選ぶ|まとめ
飲食店の防水工事は、ただ床を濡れないようにするだけではなく、衛生管理、建物の耐久性、近隣店舗への配慮など、多面的な価値を持つ工事です。特に厨房やトイレ、バックヤードといった水を多く使う場所では、防水処理が不十分だと漏水や腐食が起こり、最悪の場合営業停止につながる恐れもあります。
重要なのは「安さ」だけにとらわれず、店舗の業態や構造、将来のメンテナンス計画まで見据えたうえで、最適な工法を選ぶことです。FRP、ウレタン、塩ビシートなど、どの工法にも長所と短所があるため、比較検討が欠かせません。また、工法の選定には知識が必要なため、専門業者の提案力や説明力も選定基準として重視すべきです。
さらに、防水層は完成後に見えなくなる部分だからこそ、保証制度や施工記録が整っているかどうかも信頼性の判断材料になります。
長く安全に店舗を運営していくためにも、事前調査から契約、施工後のメンテナンスまでを見据えた対応ができる業者を選びましょう。