エレベーターのリニューアル費用を抑える方法とは?工事方法別の相場と補助金を紹介
2025/11/14
マンションやビルのエレベーターは、築20年を超えると部品の劣化や故障リスクが高まり、リニューアル工事の検討が必要になります。
しかし「費用はいくらかかるのか」「どの工事方法を選べばいいのか」「業者選びで失敗しないためには」といった疑問を抱える管理組合やオーナーの方は少なくありません。
エレベーターリニューアル費用は、工事方法によって1基あたり400万円から1,500万円まで大きく変動します。
適切な工事方法を選ばないと、必要以上の費用負担が発生したり、逆に安全性が確保できなくなったりする可能性があります。
本記事では、エレベーターリニューアル費用の相場を工事方法別に詳しく解説し、費用を削減するための具体的な方法や業者選びのポイントまで網羅的にお伝えします。
- エレベーターリニューアル費用の相場と工事方法別の詳細
- 費用が変動する要因と適切な実施タイミング
- コストを削減するための具体的な方法
- 独立系業者とメーカー系業者の費用比較
- 補助金制度の活用方法とよくある質問への回答
目次
エレベーターのリニューアル工事とは?
エレベーターのリニューアル工事とは、経年劣化した制御盤や巻き上げ機、各種パーツを交換・改良する大規模な工事を指します。
エレベーターは機械設備であるため、長期間使用すれば必ず経年劣化が生じます。
定期点検や小規模な修繕だけでは対応しきれない状態になった場合、リニューアル工事が必要になります。
リニューアル工事と単なる修繕の違いは、その目的と範囲にあります。
修繕は不具合や老朽化した特定の部品を修理・交換するのに対し、リニューアル工事は不具合が出ていない部品も含めて交換・改良し、エレベーター全体の性能向上や安全性の確保を図ります。
エレベーターの法定耐用年数は17年ですが、適切なメンテナンスを行えば実質的には25~30年程度使用できます。
しかし、部品の供給終了や安全基準の改定などにより、20~25年を目安にリニューアル工事を検討する必要があります。
エレベーターのリニューアル費用の相場
エレベーターリニューアル費用は工事方法によって大きく異なります。
ここでは、制御リニューアル、準撤去リニューアル、全撤去リニューアルの3つの工事方法について、それぞれの費用相場と特徴を詳しく解説します。
自分の建物に最適な工事方法を選ぶことが、費用対効果を最大化する鍵となります。
エレベーターリニューアル費用の全体像
エレベーターリニューアル費用は、1基あたり400万円~1,500万円が一般的です。
この費用幅が大きい理由は、選択する工事方法によって作業範囲が大きく異なるためです。
マンション規模別の総費用目安としては、6階建て2基の場合で約1,000万円~3,000万円、15階建て3基の場合で約1,500万円~4,500万円程度を見込む必要があります。
長期修繕計画における位置づけとしては、一般的なマンションでは12年周期で大規模修繕を実施し、2回目にあたる24年目にエレベーターリニューアルを組み込むケースが多く見られます。
エレベーターリニューアルの費用相場|工事方法別
エレベーターのリニューアル費用は、工事方法によって大きく異なります。
以下の表では、代表的な3つの工法を費用・工期・内容の観点から分かりやすく比較しています。
| 工事方法 | 費用相場(1基) | 工期 | 工事内容(要点) | 適している建物 |
|---|---|---|---|---|
| 制御リニューアル | 約400〜700万円 | 3〜15日 | 制御盤・インバーターなど 制御系のみ更新 | 低コストで延命したい建物 |
| 準撤去リニューアル | 約700〜1,000万円 | 15〜25日 | 三方枠を残し、 カゴ・制御盤などを交換 | 全撤去ほどの予算がない場合 |
| 全撤去リニューアル | 約1,200〜1,500万円 | 25〜40日 | 全撤去して 新品エレベーターに更新 | 劣化が激しい 仕様変更したい建物 |
エレベーターの状態や予算、建物の将来計画によって最適な工事方法は異なります。制御系のみを交換する方法は費用を抑えたい場合に有効で、準撤去はコストと更新範囲のバランスが良い選択肢です。完全更新したい場合は全撤去が最適です。建物の状況に合わせて適切な工法を選ぶことが重要です。
エレベーターリニューアル費用が変動する要因
エレベーターのリニューアル費用は、機種や建物条件によって大きく変動します。
まず、エレベーターの種類では、一般的なロープ式は費用が比較的抑えやすく、一方で油圧式は部品が特殊なため交換費用が高くなる傾向があります。
さらに高速型やマシンルームレスなどの特殊仕様は、工事内容が複雑になるため費用が上乗せされます。
建物条件では階数が多いほど工事範囲が広くなり、昇降速度が速い機種は精密な調整が必要なため費用差が生じます。
また、耐震対策の追加が必要な場合は大幅なコスト増となることもあります。
エレベーターのリニューアルを実施すべきタイミング
エレベーターリニューアル工事は、適切なタイミングで実施することが重要です。
タイミングを誤ると緊急工事となり、費用が大幅に増加することもあります。
ここでは、最適な実施時期と費用計画について解説しますので、参考にしてみてください。
エレベーターの耐用年数とリニューアル費用の関係
エレベーターの適切なリニューアル計画には、耐用年数の正しい理解が欠かせません。法定耐用年数は17年ですが、これは減価償却上の基準で、実際の使用可能年数は20~25年程度が一般的とされています。
メーカーや保全団体の指針でも主要部品の寿命は20〜25年と示されており、マンションでは2回目の大規模修繕に合わせた24年前後で更新するケースが多いです。
下記の表の通り、各機関の耐用年数には差があるため、建物計画に合わせた判断が重要です。
| 機関名 | 耐用年数 | 備考 |
|---|---|---|
| 国税庁(法定耐用年数) | 17年 | 減価償却の基準 |
| 国土交通省(長期修繕計画ガイドライン) | 15年目で修繕、30年目で交換 | マンション向け指針 |
| エレベーターメーカー各社 | 20~25年 | 計画耐用年数 |
| 建築・設備維持保全推進協会 | 20~25年 | ライフサイクル指針 |
寿命を超えて使い続けると故障リスクが高まり、結果的に修繕費が増えるため、計画的なリニューアルがコスト削減につながります。
部品供給終了時のエレベーターリニューアル費用
エレベーターは生産終了後、メーカーが20年間の部品供給義務を負いますが、設置時期によっては耐用年数前に供給期間が終了するケースがあります。
供給終了の通知を受けた場合、故障時に部品が確保できないため、リニューアル工事の前倒し検討が必要です。
予定より早い更新では修繕積立金が不足し、一時金徴収や借入が必要になることもあります。
また、部品供給終了後に重大故障が起きると緊急工事となり、通常より20~30%費用が高騰するリスクがあります。
計画的に実施することで、費用増を避けることができます。
不具合頻発時のエレベーターリニューアル費用
故障が増えている場合、修繕を繰り返すよりリニューアルした方が長期的に費用を抑えられるケースがあります。
築20年を超えると故障頻度が増し、数十万円規模の修繕が年に数回発生することも珍しくありません。
トラブル回避のための判断基準としては、以下の3点が挙げられます。
- 年間の修繕費用が新規工事費用の10%を超える
- 同一箇所の故障が年に3回以上発生する
- 安全装置の作動による停止が月1回以上発生する
油圧式からロープ式への切り替えは700万〜1,500万円ほどかかりますが、省エネ性や昇降性能が向上しランニングコストを削減できます。
緊急対応は費用が20~30%高くなるため、計画的な実施が最も経済的です。
エレベーターのリニューアル費用を削減する方法
エレベーターリニューアル費用は高額ですが、適切な工事方法の選択、独立系業者の活用、複数社からの相見積もり取得により、大幅なコスト削減が可能です。
ここでは、費用を削減するための具体的な方法を3つの観点から解説します。
適切な工事方法の選択でエレベーター費用を抑える
エレベーターリニューアル費用を抑えるためには、建物の状態に合った工事方法を選ぶことが最重要です。
制御リニューアルは費用400~700万円と最も経済的で、全撤去に比べて500~800万円の削減が可能です。
ただし、既存不適格(現行法規に未適合)を解消できない点は理解しておく必要があります。法規適合が必須の場合は準撤去や全撤去を選択します。
また、費用判断は初期費用だけでなく、次回更新までの期間やメンテナンス契約の内容も含めた「20年間の総コスト」で比較することが重要です。
見積取得時には、フルメンテ契約・POG契約の費用も必ずセットで確認し、ムダのない選択を行いましょう。
独立系業者でエレベーターリニューアル費用を削減
独立系業者の活用は、リニューアル費用を大幅に抑えられる有効な方法です。
メーカー系に比べて20~40%安くなることが多く、同じ内容でも1,000万円→600~800万円に下がる例もあります。
近年は技術力が向上し、対応できる機種も増えており、シェアも拡大しています。選定ポイントとしては以下の3つが重要です。
- 施工実績が豊富
- 長期フォローが可能な経営基盤
- 工事仕様が適正で品質が確保されている
ただし部品交換などの小規模改修は既存業者に依頼した方がトラブル防止になります。
大規模工事は独立系、小規模改修は既存業者という使い分けが最適です。
相見積もりでエレベーターリニューアル費用を適正化
相見積もりは、リニューアル費用を適正化するための最重要プロセスです。
最低3社、可能なら4~5社から見積を取ることで、正しい相場と交渉材料が得られます。
比較時は以下の3つをチェックします。
- 工事仕様の詳細:同じ工法でも交換箇所が違うことがあるため要確認
- 使用部品のグレード:純正か汎用品か、中古再生品かで大きく差が出る
- 保証・アフターサービス:保証期間や緊急対応体制を確認
また、相場より30%以上安い見積は要注意で、部品品質の低下や工事範囲の省略につながる可能性があります。
比較しながら、交換部品の内容や保証内容なども詳しく確認しておきましょう。
エレベーターのリニューアル費用に関するよくある質問【FAQ】
エレベーターリニューアル費用に関して、多くの管理組合やオーナーの方から寄せられる質問にお答えします。
費用の平均、支払い方法、補助金制度など、実務で役立つ情報をまとめました。
Q
エレベーター1基のリニューアル費用の平均は?
A
エレベーター1基の平均的なリニューアル費用は600万~900万円です。
最も一般的な準撤去リニューアルを基準とした場合の目安で、工法により金額は大きく変わります。
制御リニューアルなら400万~700万円、全撤去リニューアルなら1,200万~1,500万円が相場です。
マンションの規模や築年数、仕様によっても変動するため、複数業者からの見積取得が不可欠です。
Q
マンション全体のエレベーターリニューアル費用相場は?
A
マンション全体のリニューアル費用は、設置台数によって決まります。
例えば6階建て2基なら1,400万~2,000万円、15階建て3基なら2,100万~3,000万円が目安です。
複数基工事では2基目以降が割安になることもありますが、利便性の確保のため通常は1基ずつ順次工事します。
規模が大きいほど総額も増えるため、事前計画と見積比較が重要です。
Q
エレベーターリニューアル費用は一括払いが必要?
A
支払い方法は業者により異なりますが、一般的には着手金30~40%+完了時残金の支払い形式です。
マンションでは修繕積立金から支払うことが多く、不足する場合はリース・ローンの利用や一時金徴収が必要になることもあります。
管理組合向けの修繕ローンを提供する金融機関もあるため、資金計画の選択肢は幅広く用意されています。
Q
油圧式からロープ式への切り替え費用の目安は?
A
油圧式からロープ式への切り替えには700万~1,500万円が必要です。
多くの油圧式エレベーターは部品供給が終了しており、制御リニューアルでは対応できないケースが増えています。
ロープ式は省エネ性向上(30~50%削減)、昇降速度の改善、メンテナンス費用の低下など多くのメリットがあり、初期費用は5~10年で回収できることが多いのが特徴です。
Q
エレベーターリニューアルで使える補助金はある?
A
エレベーター改修では、国・自治体の補助金を活用できる場合があります。
「エレベーター防災対策改修事業」では1台あたり最大950万円の補助を受けられ、耐震補強や安全装置の設置が対象です。
自治体独自の制度(例:新宿区など)もあり、工事前の申請が必須です。
基本的に事後申請は認められないため、早めに窓口へ相談することが重要です。
参考元:国土交通省「エレベーターの防災対策改修事業」
まとめ
エレベーターリニューアル費用は、適切な工事方法の選択と業者選定により、大幅なコスト削減が可能です。
- 1基あたり400万円~1,500万円が相場、工事方法で大きく変動する
- 制御リニューアルは最も経済的、費用対効果に優れる選択肢
- 独立系業者の活用で20~40%のコスト削減が可能になる
- 相見積もりは最低3社から取得、適正価格の把握に必須
- 補助金制度を活用すれば費用の削減につながる
エレベーターの耐用年数は20~25年が目安であり、2回目の大規模修繕時期である築24年前後がリニューアル工事の適切なタイミングです。
部品供給終了や不具合の頻発がある場合は、前倒しでの実施も検討しましょう。
費用を削減するためには、建物の状況に応じた適切な工事方法を選び、独立系業者を含めた複数社から相見積もりを取得することが重要です。
また、国や自治体の補助金制度を積極的に活用することで、さらなるコスト削減が可能です。
計画的なリニューアル実施により、安全性を確保しながらトータルコストを抑えることができます。