斜屋根(勾配屋根)の防水工事とは?工法の種類・費用相場・メンテナンス・注意点まで解説
2025/11/17
斜屋根(勾配屋根)や斜壁のある建物をお持ちの方にとって、防水工事は建物を長持ちさせるために欠かせないメンテナンスです。
勾配があるからといって防水対策を怠ると、思わぬ雨漏りトラブルに見舞われることがあります。
特に斜壁は垂直な外壁よりも雨水を受ける面積が広く、水の滞留リスクが高いため、適切な防水処理が必要です。
本記事では、斜屋根・勾配屋根の防水工事について、工法の種類から費用相場、メンテナンスのタイミング、業者選びのポイントまで分かりやすく解説します。
この記事を読めば、あなたの大切な建物を雨漏りから守るための正しい知識と対策方法が身につきます。
目次
斜屋根(勾配屋根)防水とは?
斜屋根防水とは、傾斜のある屋根や斜壁に対して行う防水処理のことを指します。
一般的な陸屋根と異なり、勾配があることで雨水が自然に流れ落ちる構造となっていますが、それでも適切な防水処理を施さなければ雨漏りのリスクは残ります。
斜屋根(勾配屋根)と斜壁の違い
斜屋根と斜壁は混同されやすいですが、建築上は異なる部位を指します。
斜屋根は建物上部の傾斜した屋根全体を指すのに対し、斜壁は外壁の一部が斜めに傾斜している部分を指します。
斜壁は日影規制や斜線制限などの法的規制によって設けられることが多く、垂直な外壁と比較して雨水の影響を受けやすい特徴があります。
| 項目 | 斜屋根(勾配屋根) | 斜壁 |
|---|---|---|
| 位置 | 建物上部の屋根全体 | 外壁の一部が斜めになった部分 |
| 設置理由 | 排水性能の確保、デザイン | 法的規制(斜線制限など) |
| 雨水の影響 | 勾配により自然排水 | 垂直壁より雨掛かりが多い |
| 防水処理 | 屋根材+ルーフィング | 屋根と同等の防水層が必要 |
このように、斜壁は構造上「壁」というよりも「屋根」として考える必要があり、外壁塗装だけでは不十分な防水対策となってしまいます。
斜屋根(勾配屋根)に防水処理が必要な理由
勾配屋根は傾斜によって雨水が流れ落ちるため、一見すると防水層が不要に思えるかもしれません。
しかし実際には、屋根材の隙間から浸入する雨水を防ぐため、屋根材の下に敷くルーフィング(防水シート)による二次防水が不可欠です。
特に台風や横殴りの雨、経年劣化による屋根材のズレや破損が発生した場合、防水層がなければ直接建物内部に水が浸入してしまいます。
また、谷部や軒先、棟部といった雨水が集中しやすい箇所では、雨仕舞(雨水をスムーズに排水する処理)の精度が防水性能を左右します。
適切な防水処理を施すことで、建物の寿命を大きく延ばし、快適な住環境を維持できるのです。
勾配屋根と陸屋根の違いとは?
屋根の形状は大きく分けて勾配屋根と陸屋根の2種類があり、それぞれ排水方法や防水処理の考え方が異なります。
自分の建物がどちらのタイプなのかを理解することで、適切なメンテナンス計画を立てることができます。
| 項目 | 勾配屋根 | 陸屋根 |
|---|---|---|
| 傾斜 | あり(3寸以上が一般的) | なし~ごくわずか |
| 排水性能 | 高い(重力による自然排水) | 低い(排水口に依存) |
| 防水方法 | 屋根材+ルーフィング | ウレタン・シート防水など |
| メンテナンス頻度 | 少なめ(15~20年) | 多め(5~10年) |
| 雨漏りリスク | 適切施工で抑制可能 | 継続的な防水管理が必要 |
| 屋上利用 | 困難 | 可能(防水層の強化が必要) |
勾配屋根は雨水が屋根の表面をスムーズに流れることで雨漏りを防ぎますが、陸屋根は四角い受け皿のような形状で降った雨を一旦受け止めた後、排水口から排水する構造です。
このため陸屋根は排水口の詰まりや防水層の劣化によって雨漏りが発生しやすく、より頻繁なメンテナンスが求められます。
一方、勾配屋根でも緩勾配(3寸以下)の場合は水捌けが悪くなるため、ルーフィングの重ね幅を広く取るなど、施工時の配慮が必要です。
また、急勾配(6寸以上)の屋根では風による屋根材の飛散やズレを防ぐため、固定方法に細心の注意を払う必要があります。
斜屋根(勾配屋根)防水工事の工法と種類
勾配屋根の防水工事には複数の工法があり、屋根の勾配や使用される屋根材、建物の構造によって最適な方法が異なります。
ここでは代表的な防水工法の特徴とメリット・デメリットを解説します。
ウレタン防水(密着工法・通気緩衝工法)
ウレタン防水は液状のウレタン樹脂を塗布して防水層を形成する工法で、主に陸屋根や緩勾配の屋根、斜壁に使用されます。
密着工法は下地に直接ウレタンを塗布する方法で、施工期間が短く費用も抑えられます。
一方、通気緩衝工法は通気緩衝シートを貼った上からウレタンを塗布する方法で、下地の湿気を逃がすことができるため耐久性に優れています。
耐用年数は密着工法で約10年、通気緩衝工法で13~15年程度です。
シート防水(塩ビシート・ゴムシート)
シート防水は、塩化ビニール製やゴム製のシートを貼り付ける工法です。
塩ビシートは耐久性に優れ、耐用年数は10~20年と長く、紫外線にも強い特徴があります。
ゴムシートは伸縮性に優れ複雑な形状にも対応できますが、耐用年数は10~15年程度です。
勾配屋根専用のシート防水も開発されており、粘着層やタッカーで固定する工法が一般的です。
施工が比較的早く、継ぎ目の処理が適切であれば高い防水性能を発揮します。
ルーフィング(シングル材など)
斜壁の防水改修では、アスファルトシングルと呼ばれる屋根材で被覆する方法があります。
下葺き材と上葺き材の2層構造となっており、メーカーによって斜壁改修工法が確立されています。
シングル材は柔軟性があり、複雑な形状の斜壁にも施工しやすく、見た目も屋根らしい仕上がりとなります。
耐用年数は、約20~30年と長く、カラーバリエーションも豊富です。
塗膜防水(アクリル・ポリウレタン系)
塗膜防水は液状の防水材を塗り重ねて防水層を形成する工法です。
ウレタン防水も塗膜防水の一種ですが、他にもアクリルゴム系やポリマーセメント系などがあります。
斜壁に使用される透明塗膜防水は、既存のタイル面の意匠を残しながら防水性能を付加できる特徴があります。
複雑な形状にも対応でき、継ぎ目のないシームレスな仕上がりとなります。
斜屋根(勾配屋根)防水工事の費用相場
防水工事の費用は使用する工法、施工面積、屋根の勾配、既存屋根の状態などによって大きく変動します。
ここでは一般的な費用相場と、見積もりを取る際のポイントを解説します。
工法別の費用目安
各防水工法の1㎡あたりの施工費用は以下の通りです。
ただし、これらは材料費と施工費を含んだ目安であり、実際には建物の立地条件や施工の難易度によって変動します。
| 防水工法 | 費用相場(1㎡あたり) | 耐用年数 |
|---|---|---|
| ウレタン防水(密着工法) | 4,000~6,000円 | 約10年 |
| ウレタン防水(通気緩衝工法) | 6,500~7,500円 | 13~15年 |
| 塩ビシート防水 | 6,000~9,000円 | 10~20年 |
| ゴムシート防水 | 5,000~7,000円 | 10~15年 |
| アスファルトシングル | 5,000~8,000円 | 20~30年 |
| 改質アスファルトルーフィング | 5,000~7,000円 | 約20年 |
耐用年数が長い工法ほど初期費用は高くなりますが、長期的に見ればメンテナンス回数が減り、トータルコストが抑えられる場合もあります。
建物の用途や予算に応じて最適な工法を選択することが重要です。
付帯工事と総額の考え方
防水工事の総額には、防水層の施工費用だけでなく以下のような付帯工事費用も含まれます。
- 足場設置費用:800~1,200円/㎡(建物周囲の状況により変動)
- 既存防水層の撤去・処分費:10,000~30,000円
- 下地補修費:状態により大きく変動
- 雨仕舞部の板金施工:10,000~50,000円(谷部・棟部など)
- 高所作業加算:勾配が6寸以上の場合、10~20%の加算
一般的な戸建て住宅の勾配屋根防水工事の総額は、30万円~80万円程度が相場です。
ただし、既存屋根の全面張り替えや下地の補修が必要な場合は100万円~150万円になるケースもあります。
特に築年数が古い建物では野地板や垂木の交換が必要になることがあるため、現地調査による正確な見積もりが不可欠です。
斜屋根(勾配屋根)防水工事の流れ
防水工事は複数の工程を経て行われます。
各工程での品質管理が仕上がりの耐久性を大きく左右するため、施工業者の技術力と丁寧さが重要です。
- STEP
現地調査と診断
専門業者が現地を訪問し、屋根の勾配、面積、既存防水層の状態を詳しく調査します。
雨漏り箇所の特定や下地材の劣化診断も同時に実施し、最適な防水工法を提案します。
ドローンやサーモグラフィーを使用した調査を行う業者もあります。
- STEP
見積もりと工法の決定
調査結果を基に詳細な見積もりが提示されます。
工事内容、使用材料、工期、保証内容などを確認し、納得できる内容であれば契約を結びます。
複数の業者から相見積もりを取ることをおすすめします。
- STEP
足場の設置と養生
安全に作業を行うため、建物周囲に足場を組み立てます。
高所作業となるため、しっかりとした足場の設置が作業品質と安全性を確保する上で欠かせません。
また、周辺への塗料飛散を防ぐため養生シートで保護します。
- STEP
既存屋根材の撤去または清掃
既存の屋根材や防水層を撤去する場合と、上から重ね張りする場合があります。
撤去する場合は廃材を適切に処分し、下地を露出させます。
清掃作業では高圧洗浄などを行い、ゴミやホコリを除去して密着性を高めます。
- STEP
下地補修
野地板の腐食や変形がある場合は交換します。
クラックや凹凸がある場合は補修材で平滑に仕上げます。
この工程が不十分だと防水層の性能が十分に発揮されないため、非常に重要です。
- STEP
防水層の施工
選択した工法に応じて防水層を施工します。
ルーフィングの場合は軒先から棟方向に向かって張り、シート同士の重ね代を十分に確保します。
ウレタン防水の場合は均一な厚みで塗布し、気泡やムラがないよう丁寧に仕上げます。
- STEP
雨仕舞部の処理
谷部、棟部、軒先など雨水が集中する箇所には、二重三重の防水処理を施します。
水切り金具の設置や防水テープの使用により、確実に雨水の浸入を防ぎます。
- STEP
屋根材の施工(必要な場合)
防水層の上に瓦、スレート、金属板などの屋根材を施工します。
固定金具を適切に取り付け、強風でも飛散しないようしっかりと固定します。
- STEP
最終点検と清掃
すべての施工が規定通りに行われているかを最終確認します。
防水処理の漏れがないか、仕上がりに問題がないかをチェックし、必要に応じて散水試験を実施します。
足場を解体し、周辺を清掃して工事完了です。
斜屋根(勾配屋根)防水工事のタイミングと劣化サイン
防水層は時間とともに劣化していきます。
劣化サインを見逃さず、適切なタイミングでメンテナンスを行うことで、大規模な雨漏り被害を未然に防ぐことができます。
点検すべき劣化症状
以下のような症状が見られる場合は、防水性能が低下しているサインです。
早めに専門業者に点検を依頼しましょう。
- 屋根材のズレ、ヒビ、破損が見られる
- 棟板金が浮いている、ビスが緩んでいる
- 天井や壁に黄ばみ、水染みが現れている
- 軒裏部分に黒カビや腐食の跡がある
- 雨音が以前より大きく響くようになった
- 屋根の上にコケや雑草が生えている
- 斜壁部分の塗装が著しく劣化している
これらの症状が複数見られる場合は、防水層だけでなく下地にまでダメージが及んでいる可能性があります。
放置すると内部構造や断熱材にまで浸水が及び、改修費用が高額になるため、早期の対応が重要です。
適切なメンテナンス周期
防水工事のメンテナンス周期は使用している工法や材料によって異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。
- 新築から10年目以降:初回の点検と軽微な補修
- 15~20年:防水層の全面改修を検討
- 大型台風・積雪・地震後:臨時点検を実施
- 外壁塗装時:足場があるタイミングで同時点検
- トップコート:5~10年ごとに再塗布
定期的な点検により、小さな劣化のうちに対処することで補修費用を抑えられます。
屋根の点検は高所作業となるため、必ず専門業者に依頼し、安易に自分で屋根に上ることは避けましょう。
ドローンを活用した点検サービスを提供している業者もあり、安全かつ詳細な診断が可能です。
斜屋根(勾配屋根)防水工事業者の選び方
防水工事は施工後の品質が見えにくく、業者の技術力によって仕上がりが大きく左右されます。
信頼できる業者を選ぶことが、長持ちする防水工事の第一歩です。
信頼できる業者を見極めるポイント
以下のポイントを確認することで、信頼できる防水業者かどうかを判断できます。
- 施工実績が豊富で、ホームページやSNSで事例を確認できる
- 建築板金技能士、防水施工技能士などの専門資格を保有している
- 現地調査が丁寧で、ドローンやサーモグラフィーなどの機器を活用している
- 見積もりが詳細で、材料費・施工費・諸経費が明確に分かれている
- 自社施工体制があり、下請け任せではない
- 5年~10年などの明記された防水保証書を発行している
- アフターフォロー体制が整っている
これらのポイントを満たす業者であれば、安心して工事を任せることができます。
また、地域密着型の業者は万が一のトラブル時にも迅速に対応してもらえるメリットがあります。
悪徳業者を見分けるポイント
残念ながら防水工事業界には悪徳業者も存在します。
以下のような特徴がある業者には注意が必要です。
- 突然訪問してきて「今すぐ工事しないと危険」と不安を煽る
- 極端に安い見積もりを提示する
- 「一式」表記ばかりで詳細が不明な見積もり
- 契約を急かす、クーリングオフの説明がない
- 保証内容やアフター体制が曖昧
- 施工前後の写真を提供しない
- 会社の所在地や連絡先が不明確
防水工事では相見積もりを取ることが一般的です。
価格だけでなく、提案内容や施工方法の違いを比較し、納得できる説明をしてくれる業者を選びましょう。
不明点があれば遠慮なく質問し、誠実に答えてくれるかどうかも重要な判断材料となります。
斜屋根(勾配屋根)防水工事に関するよくある質問(FAQ)
斜屋根の防水工事について、お客様からよくいただく質問とその回答をまとめました。
疑問や不安の解消にお役立てください。
Q
勾配屋根にウレタン防水は使えますか?
A
原則としてウレタン防水は陸屋根や緩勾配の屋根向けに開発されていますが、斜壁や軽度の勾配がある場合には使用されることがあります。
一般的な勾配屋根では瓦・スレート・金属などの屋根材とルーフィングによる防水構成が主流です。
斜壁の防水改修では、立上り用のウレタン防水材を使用して施工することで、屋根と同等の防水性能を確保できます。
Q
防水シートの耐用年数はどのくらいですか?
A
一般的なアスファルトルーフィングで10~15年程度、改質アスファルトルーフィングでは20年以上持つこともあります。
透湿防水シートや高性能ルーフィングは30年近く耐用する製品もあります。
耐久年数は使用環境や紫外線、風雨の影響によって変化するため、定期的な点検により状態を確認することが重要です。
Q
勾配屋根なのに雨漏りするのはなぜですか?
A
勾配があっても、ルーフィングの劣化、屋根材のズレや割れ、谷板金の不具合、棟板金の浮きなどが原因で雨漏りは発生します。
特に雨仕舞部の施工不良があると、雨水が排水されずに屋根内部へ侵入することがあります。
また、斜壁がある場合は垂直な外壁よりも雨水の影響を受けやすく、適切な防水処理がされていないと雨漏りリスクが高まります。
Q
防水工事の最適な時期はいつですか?
A
防水工事は晴天が続く時期に行うのが理想的です。
春(3~5月)や秋(9~11月)が気候も安定しており、施工に適しています。
梅雨時期や冬季は湿度が高く気温も低いため、防水材の乾燥や硬化に時間がかかります。
ただし、雨漏りが発生している場合は季節を問わず早急な対応が必要です。
Q
火災保険で防水工事はカバーされますか?
A
台風、落雷、積雪などの自然災害によって屋根が破損し雨漏りした場合、火災保険で修繕費用が補償されることがあります。
ただし、経年劣化や施工不良が原因の雨漏りは対象外となります。
保険会社や契約内容によって補償範囲が異なるため、雨漏りが発生した際は速やかに保険会社と施工業者の両方に相談することをおすすめします。
まとめ
斜屋根(勾配屋根)や斜壁の防水工事は、建物を雨漏りから守り、長く快適に暮らすために欠かせないメンテナンスです。
適切な工法選びと定期的な点検により、大切な建物の寿命を大きく延ばすことができます。
- 斜屋根には屋根材とルーフィングによる二重の防水構成が重要
- 斜壁は垂直壁より雨水の影響を受けやすく、屋根と同等の防水処理が必要
- 工法別の耐用年数と費用を比較し、建物に最適な方法を選択する
- 10年ごとの定期点検と15~20年での全面改修を計画的に行う
- 信頼できる業者選びが長持ちする防水工事の鍵となる
防水工事は一度施工すれば終わりではなく、建物の状態を継続的に管理していくことが大切です。
劣化サインを見逃さず、早めに対処することで補修費用を抑えられます。
分からないことや不安なことがあれば、遠慮なく専門業者に相談しましょう。
経験豊富な専門家があなたの建物に最適な防水プランを提案してくれるはずです。
定期的なメンテナンスにより、安心して長く暮らせる住まいを維持していきましょう。
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| FRP防水 | ・ガラス繊維強化プラスチックを使用した工法 ・軽量で耐久性に優れている ・乾くのが早いため施工日数が短くて済む |
| アスファルト防水 | ・合成繊維不織布にアスファルトを含ませたシートを貼り重ねる工法 ・アスファルトを染みこませているため、高い耐久性を誇ります |
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