マンションのエレベーター工事で困ること|高齢者や車椅子・ベビーカー・騒音などの対策
2025/11/19
マンションでの生活に欠かせないエレベーター。
しかし、リニューアル工事の期間中は使用できなくなり、多くの住民が大きな不便を感じます。
特に高層階に住む高齢者や車椅子利用者、小さなお子さんを抱える子育て世帯にとって、エレベーターが使えないことは深刻な問題です。
階段での上り下りは体力的な負担が大きく、日常生活に支障をきたします。
この記事では、マンションのエレベーター工事でどのような困りごとが発生するのか、そしてその対処法や支援サービス、工事期間、費用、補助金制度まで、住民の皆さまが知っておくべき情報を網羅的に解説します。
工事を控えている管理組合の方や、これから工事を経験する住民の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
マンションのエレベーター工事で困ること
エレベーター工事期間中は、普段当たり前のように利用していた縦の移動手段が失われるため、さまざまな困りごとが発生します。
ここでは、実際に多くの住民が直面する具体的な問題点を5つに整理してご紹介します。
事前にどのような困難が待ち受けているかを知ることで、適切な準備と対策が可能になります。
高層階ほど階段の上り下りの負担が大きい
エレベーター工事で最も困るのが、高層階に住む方々の階段移動です。
5階以上の住戸では、毎日の外出や帰宅のたびに長い階段を上り下りしなければならず、体力的な負担が非常に大きくなります。
買い物帰りに重い荷物を持って10階まで階段を上るのは、若い方でも大変な重労働です。
高齢者の場合はさらに困難で、外出そのものを控えてしまうケースも少なくありません。
高齢者や車椅子利用者は移動が極めて困難になる
高齢者や車椅子を利用されている方にとって、エレベーターが使えないことは単なる不便ではなく、生活の質に直結する深刻な問題となります。
足腰が弱い高齢者は階段の上り下りに転倒リスクが伴い、安全面でも大きな不安を抱えることになります。
車椅子利用者の場合は、階段の利用が事実上不可能となるため、介助者のサポートがあっても外出が極めて難しくなります。
通院や日常的な買い物にも支障が出るため、工事前からの綿密な計画が必要です。
ベビーカーや買い物の荷物運びが一気に困難になる
小さなお子さんを抱える子育て世帯も、エレベーター工事期間中は大きな困難に直面します。
ベビーカーを抱えて階段を上り下りすることは、安全面でもリスクが高く、日々の外出が大きな負担となります。
また、日用品や食料品などの買い物帰りに重い荷物を持って階段を上るのは、体力的にも精神的にも消耗します。
宅配便の受け取りや大型家具の搬入なども困難になるため、工事期間中は計画的な生活が求められます。
工事の騒音や振動でストレスが増大する
エレベーター工事では、機械室やシャフト内での作業が中心となるため、金属音や振動が発生します。
特に高層階では振動を感じやすく、日中の作業音が気になって在宅での仕事や休息に支障が出ることもあります。
また、工事業者の出入りが頻繁になることで、マンション全体の雰囲気が落ち着かなくなり、精神的なストレスを感じる住民も少なくありません。
防音対策や作業時間の配慮が重要となります。
ゴミ出しや日常動線が大きく乱れる
エレベーターが使えない期間は、ゴミ出しなどの日常的な動作も大きな負担となります。
特に、粗大ゴミや資源ゴミなどかさばるものを1階のゴミ置き場まで運ぶのは、高層階の住民にとって非常に困難です。
その結果、ゴミを室内に溜め込んでしまったり、外出頻度が減って生活リズムが乱れたりするケースもあります。
工事期間中は、住民同士の助け合いや管理組合によるサポート体制が重要になります。
マンションのエレベーター工事で困ったときの対処法・支援サービス
エレベーター工事期間中の困りごとを軽減するために、さまざまな対処法や支援サービスが用意されています。
ここでは、実際に多くのマンションで導入されている効果的な支援策を4つご紹介します。
事前に活用できるサービスを知っておくことで、工事期間を少しでも快適に過ごすことができます。
階段昇降機(可搬型)のレンタルで移動をサポート
可搬型階段昇降機は、階段の上り下りが困難な方のための移動支援機器です。
椅子型の装置に座り、介助者が操作することで、安全に階段を昇降できます。
高齢者や身体が不自由な方にとって、工事期間中の強い味方となります。
ただし、移動速度はゆっくりで、階数が多い場合は時間がかかることや、介助者が2名必要になる点には注意が必要です。
管理組合が業者と契約し、予約制で利用できる体制を整えるケースが増えています。
ポーターサービスで荷物運びやゴミ出しを代行
ポーターサービスとは、エレベーター工事期間中に専門スタッフが1階エントランスに常駐し、荷物の運搬やゴミ出しの代行、階段の昇降介助などを行うサービスです。
特に高層マンションでの導入が進んでおり、住民の負担を大幅に軽減できます。
以下のような支援が受けられます。
- 買い物袋や宅配便の荷物を各戸まで運搬
- ゴミ出しの代行
- 高齢者の階段昇降時の介助
- ベビーカーの運搬サポート
費用は工事費に含まれる場合と別途負担となる場合がありますが、住民の生活の質を保つために有効な選択肢です。
住民ボランティア体制で助け合いを促進
マンション内で住民同士が助け合うボランティア体制を構築することも効果的です。
比較的若い世代や体力に自信のある住民が、高齢者や子育て世帯の荷物運びをサポートする仕組みです。
朝夕の時間帯を中心に当番制でサポート要員を配置することで、コストをかけずに困りごとを解決できます。
また、この取り組みを通じて住民同士のコミュニケーションが深まり、マンション全体の結束力が高まる効果も期待できます。
一時的な転居やホテル利用も選択肢の一つ
工事期間中の不便を避けるため、一時的に親族の家に滞在したり、近隣のホテルやウィークリーマンションを利用したりする方法もあります。
特に高齢者や身体が不自由な方、小さな乳幼児がいる家庭では、こうした選択が現実的な解決策となる場合があります。
費用はかかりますが、体力的・精神的な負担を大幅に軽減できるため、健康面や安全面を優先する場合には検討する価値があります。
また、工事期間を利用して旅行を計画するなど、前向きに捉えることも一つの方法です。
マンションのエレベーター工事期間はどのくらい?
エレベーター工事の期間は、工事の規模や内容によって大きく異なります。
一般的には、全面改修か部分改修かによって工期が変わり、それに伴って住民が受ける影響の大きさも変わってきます。
ここでは、代表的な2つの工事方法について、それぞれの期間と特徴を詳しく解説します。
全面改修(フルリニューアル)の場合は1〜2ヶ月
全面改修は、エレベーターの機械設備を丸ごと新しいものに交換する大規模な工事です。
工事期間は約1〜2ヶ月が目安となり、その間エレベーターは完全に使用できなくなります。
費用は1基あたり1,200万円〜1,500万円と高額になりますが、最新の安全基準に適合し、省エネ性能や快適性が大幅に向上します。
築25年以上経過したマンションや、大規模修繕のタイミングで実施されることが多い工事方法です。
部分改修(制御リニューアル)なら2〜4週間程度
部分改修は、制御盤やモーター、ドア装置などの主要部品を交換する工事で、全面改修に比べて工期が短く、費用も抑えられます。
工事期間は約2〜4週間が目安で、住民への影響を最小限に抑えることができます。
費用は1基あたり400万円〜700万円程度で、比較的短期間で安全性と機能性を向上させられるメリットがあります。
ただし、機械室や昇降路などの構造部分は既存のものを使い続けるため、将来的に再度改修が必要になる可能性があります。
賃貸マンションでエレベーター工事中の家賃減額は可能?
2020年4月の民法改正により、賃借物の一部が使用できなくなった場合の賃料減額に関するルールが明確化されました。
改正民法611条では、賃借物の一部が滅失その他の事由により使用できなくなった場合、賃借人の過失がない限り、使用できない部分の割合に応じて賃料が当然に減額されると定められています。
エレベーターが数日から数週間にわたって使用できない場合、この規定が適用される可能性があります。
実際の判例では、エレベーターが2日以上使用できない場合に家賃の約20%の減額が目安とされるケースもあります。
ただし、減額の割合は物件の階数、エレベーターの重要性、停止期間などによって個別に判断されます。
家賃減額を求める場合は、まず管理会社や大家さんに工事の詳細(期間、影響範囲など)を確認し、書面で減額の相談をすることをおすすめします。
工事が計画的なメンテナンスである場合でも、使用できない期間に応じた減額請求は正当な権利です。
なお、分譲マンションの場合は管理費や修繕積立金からの減額はありませんが、賃貸借契約を結んでいる賃借人は、上記の民法規定に基づいて交渉する権利があります。
マンションのエレベーターリニューアル費用と補助金制度
エレベーターのリニューアル工事には多額の費用がかかりますが、国や自治体の補助金制度を活用することで、負担を軽減できる可能性があります。
ここでは、工事費用の相場と利用できる補助金制度について詳しく解説します。
管理組合として工事を検討する際は、これらの情報を参考に資金計画を立てましょう。
エレベーター工事費用の相場は1基あたり400万〜1,500万円
エレベーターのリニューアル工事費用は、工事の規模や内容によって大きく異なります。
一般的な費用相場は以下の通りです。
| 工事の種類 | 費用相場(1基あたり) | 工事期間 |
|---|---|---|
| 制御リニューアル(部分改修) | 400万円〜700万円 | 2〜4週間 |
| 準撤去新設(中規模改修) | 700万円〜1,000万円 | 3〜6週間 |
| 全撤去新設(全面改修) | 1,200万円〜1,500万円 | 1〜2ヶ月 |
これらの費用は、マンションの規模、エレベーターの機種、工事内容、建物の構造などによって変動します。
複数の業者から相見積もりを取り、工事内容と費用のバランスを比較検討することが重要です。
国土交通省が推進する主な補助金制度
国土交通省が推進する主な補助金制度は以下の通りです。
| 制度名 | 補助対象工事 | 補助限度額 | 補助率 |
|---|---|---|---|
| エレベーターの防災対策改修事業 | ・地震時管制運転装置 ・戸開走行保護装置 ・停電時自動着床装置 ・予備電源(リスタート機能) ・浸水対策など | 950万円/台 | 国11.5% 地方公共団体11.5% (合計23%) |
| 長期優良住宅化リフォーム推進事業 | ・耐震改修 ・省エネ改修 ・劣化対策 などを含む総合的なリフォーム | 250万円/戸 | 工事費の1/3 |
| 住宅省エネ2025キャンペーン | ・省エネ性能向上を伴うリフォーム工事 | 200万円/戸 | 工事費の一部 |
これらの国の制度は、地方公共団体を通じて申請するケースが多く、自治体によって上乗せ補助が行われる場合もあります。
国土交通省は、既設エレベーターの安全性向上を目的とした「エレベーターの防災対策改修事業」を推進しています。
この制度では、地方公共団体や民間事業者が実施するエレベーターの防災対策改修工事に対し、補助金が交付されます。
補助対象となる主な工事内容は以下の通りです。
- 地震時管制運転装置の設置
- 戸開走行保護装置の設置
- 停電時自動着床装置の設置
- 予備電源(リスタート運転機能)の設置
- 浸水対策工事
補助金の限度額は1台あたり950万円で、工事費用の一部を国と自治体が負担する仕組みとなっています。
ただし、実際の補助率や限度額は自治体によって異なるため、お住まいの地域の制度を確認することが重要です。
自治体独自の補助金・助成金制度を活用する
国の制度に加えて、多くの自治体が独自のエレベーター改修補助金制度を設けています。
例えば、東京都や横浜市、大阪市などの大都市圏では、防災対策やバリアフリー化を目的とした補助制度があります。
自治体の補助金を利用する際のポイントは以下の通りです。
- 工事着工前に申請が必要なケースが多い
- 補助対象となる工事内容や建物の要件を事前に確認する
- 申請書類の準備に時間がかかる場合があるため、早めに動く
- 予算枠が限られているため、年度初めの申請が有利
管理組合は、工事計画の初期段階から自治体の担当窓口や専門コンサルタントに相談し、利用できる補助金制度を漏れなく活用することで、住民の負担を大幅に軽減できます。
承知いたしました。「H2: マンションのエレベーターリニューアル費用と補助金制度」のセクション全体を、表を含めて書き直します。
マンションのエレベーターリニューアル費用と補助金制度
エレベーターのリニューアル工事には多額の費用がかかりますが、国や自治体の補助金制度を活用することで、負担を軽減できる可能性があります。
ここでは、工事費用の相場と利用できる補助金制度について詳しく解説します。
管理組合として工事を検討する際は、これらの情報を参考に資金計画を立てましょう。
エレベーター工事費用の相場は1基あたり400万〜1,500万円
エレベーターのリニューアル工事費用は、工事の規模や内容によって大きく異なります。
一般的な費用相場は以下の通りです。
| 工事の種類 | 費用相場(1基あたり) | 工事期間 |
|---|---|---|
| 制御リニューアル(部分改修) | 400万円〜700万円 | 2〜4週間 |
| 準撤去新設(中規模改修) | 700万円〜1,000万円 | 3〜6週間 |
| 全撤去新設(全面改修) | 1,200万円〜1,500万円 | 1〜2ヶ月 |
これらの費用は、マンションの規模、エレベーターの機種、工事内容、建物の構造などによって変動します。
複数の業者から相見積もりを取り、工事内容と費用のバランスを比較検討することが重要です。
また、高速エレベーターや特殊仕様の場合は、さらに費用が高くなる可能性があります。
国土交通省の防災対策改修補助金制度
国土交通省は、既設エレベーターの安全性向上を目的とした補助制度を推進しています。
主な国の補助金制度は以下の通りです。
| 制度名 | 補助対象工事 | 補助限度額 | 補助率 |
|---|---|---|---|
| エレベーターの防災対策改修事業 | ・地震時管制運転装置 ・戸開走行保護装置 ・停電時自動着床装置 ・予備電源(リスタート機能) ・浸水対策など | 950万円/台 | 国11.5% 地方公共団体11.5% (合計23%) |
| 長期優良住宅化リフォーム推進事業 | ・耐震改修 ・省エネ改修 ・劣化対策 などを含む総合的なリフォーム | 250万円/戸 | 工事費の1/3 |
| 住宅省エネ2025キャンペーン | ・省エネ性能向上を伴うリフォーム工事 | 200万円/戸 | 工事費の一部 |
特に「エレベーターの防災対策改修事業」は、地震対策や安全装置の設置に対して1台あたり最大950万円の補助が受けられる制度です。
令和6年度からは、リスタート運転機能や自動診断・仮復旧運転機能の追加に対する補助も拡充されました。
これらの国の制度は、地方公共団体を通じて申請するケースが多く、自治体によって上乗せ補助が行われる場合もあります。
自治体独自の補助金・助成金制度を活用する
国の制度に加えて、多くの自治体が独自のエレベーター改修補助金制度を設けています。
主要自治体の補助金制度の例は以下の通りです。
| 自治体名 | 制度名 | 補助対象 | 補助限度額 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 東京都 | エレベーター安全装置等設置助成 | ・地震時管制運転装置 ・戸開走行保護装置 ・浸水対策など | 950万円/台 | 耐震対策は50%助成 |
| 横浜市 | エレベーター防災対策改修補助 | ・地震対策 ・戸開走行保護装置の設置 | 218.5万円/台 | 対象工事費の23% |
| 大阪市 | 既設エレベーター安全装置設置補助 | ・戸開走行保護装置 ・地震時管制運転装置 | 300万円/台 | 工事費の一部を補助 |
| 名古屋市 | エレベーター防災対策改修費補助 | ・地震時管制運転装置 ・停電時対策など | 対象工事費の23% | 上限額は要確認 |
| 神戸市 | エレベーター防災対策改修補助事業 | ・地震対策 ・戸開走行保護装置 | 対象工事費の23% | 特定建築物が対象 |
各自治体の補助金制度は、予算枠や申請期限、対象要件などが異なります。
必ずお住まいの自治体の建築指導課や住宅課に事前に問い合わせ、最新の情報を確認してください。
補助金を申請する際は、以下の点に注意が必要です。
- ほとんどの制度で工事開始前の申請が条件となっています
- 先着順や抽選制の場合があるため、早めの申請が有利です
- 国の制度と自治体の制度を組み合わせられる場合があります
- 見積書、図面、建物登記など多くの書類が必要です
- 管理会社やコンサルタントに相談すると手続きがスムーズです
管理組合は、工事計画の初期段階から自治体の担当窓口や専門コンサルタントに相談し、利用できる補助金制度を漏れなく活用することで、住民の負担を大幅に軽減できます。
複数の業者から見積もりを取得する際は、補助金申請のサポートが可能かどうかも確認しておくと安心です。
マンションのエレベーター交換時期と長持ちさせるコツ
エレベーターの適切な交換時期を見極め、日常的なメンテナンスを行うことで、設備の寿命を延ばし、安全性を保つことができます。
ここでは、エレベーターの耐用年数や交換のサイン、長持ちさせるためのポイントを解説します。
計画的な維持管理が、将来的なコスト削減と住民の安全につながります。
耐用年数は25〜30年が目安(法定耐用年数は17年)
エレベーターの法定耐用年数は、税法上の減価償却期間として17年と定められていますが、これは会計上の数字であり、実際の使用可能年数とは異なります。
適切なメンテナンスを行っていれば、エレベーターの実質的な寿命は25〜30年程度とされています。
多くのマンションでは、2回目の大規模修繕工事のタイミング(築24〜30年頃)に合わせてエレベーターのリニューアルを計画します。
このタイミングで実施することで、足場や仮設設備を共用でき、全体的な工事費用を抑えられるメリットがあります。
故障頻度の増加や部品供給終了が交換のサイン
エレベーターの交換時期を判断する具体的なサインとして、以下のような症状が挙げられます。
- 故障や緊急停止の頻度が明らかに増えている
- ドアの開閉に時間がかかる、動作が不安定
- 走行時に異音や振動が発生する
- 停止位置がずれることが多くなった
- メーカーから部品供給終了の通知を受けた
- 定期点検で「要注意」「要経過観察」の指摘が増えた
特に注意すべきは、メーカーによる部品供給終了の通知です。
生産終了から15年程度で交換部品の供給が停止されることが多く、その後は故障時の修理が困難になります。
このタイミングでリニューアルを検討することが推奨されます。
定期点検とメンテナンス契約の重要性
エレベーターを長持ちさせるためには、法定点検に加えて、きめ細かな保守メンテナンスが不可欠です。
メンテナンス契約には主に2つの種類があります。
| 契約形態 | 特徴 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| フルメンテナンス契約 | 点検・修理・部品交換を全て含む包括契約 | 月額3万円〜5万円 |
| POG契約 | 点検と消耗品交換のみ。大規模修理は別途 | 月額1.5万円〜3万円 |
フルメンテナンス契約は費用が高めですが、突発的な修理費用が発生しないため、長期的には安心です。
一方、POG契約は月額費用を抑えられますが、大規模な修理が必要になった際に高額な費用が発生するリスクがあります。
マンションの築年数や予算、エレベーターの状態を考慮して、最適な契約形態を選ぶことが重要です。
また、定期的な点検報告書を管理組合で保管し、エレベーターの状態を継続的に把握することで、適切なタイミングでリニューアルを計画できます。
マンションのエレベーター工事で失敗しないための注意点
エレベーター工事を成功させるためには、事前の準備と計画的な進行が欠かせません。
ここでは、工事でよくある失敗を避け、住民の理解と協力を得ながらスムーズに工事を進めるための重要な注意点を3つご紹介します。
工事の3ヶ月前から住民への丁寧な説明会を開催する
エレベーター工事を円滑に進める最大のポイントは、住民への早めの情報提供と丁寧な説明です。
工事開始の3ヶ月前には説明会を開催し、工事の目的、期間、影響範囲、騒音対策、サポート体制などを詳しく伝えましょう。
説明会では質疑応答の時間を十分に設け、住民の不安や疑問に真摯に答えることが重要です。
また、高齢者や外国人住民にも配慮し、図解資料や多言語対応を行うことで、全員が内容を理解できるよう工夫しましょう。
掲示板やメール、回覧板など複数の手段で情報を共有することも効果的です。
高齢者や身体が不自由な住民を事前に把握しサポート計画を立てる
高齢者、車椅子利用者、妊婦、乳幼児を抱える世帯など、特に配慮が必要な住民の情報を管理組合で整理し、個別の支援計画を立てましょう。
具体的には、階段昇降機の予約優先枠を設けたり、ポーターサービスの利用を優先的に案内したり、必要に応じて一時的な転居支援を行うなどの対策が考えられます。
プライバシーに配慮しつつ、事前にニーズを把握し、きめ細かなサポート体制を整えることで、工事期間中のトラブルを未然に防げます。
工事業者との綿密な打ち合わせで騒音・振動対策を徹底する
エレベーター工事では金属音や振動が発生するため、住民からの苦情が出やすい工事でもあります。
工事業者との事前打ち合わせで、作業時間帯の設定、防音・防振対策、養生の方法などを細かく確認し、住民への影響を最小限に抑える工夫が必要です。
作業時間は平日の午前9時から午後5時までとし、早朝や夜間、休日の作業は原則避けるなど、明確なルールを設けましょう。
また、特に音が大きくなる作業については、事前に掲示で告知し、住民の理解を得ることが大切です。
マンションのエレベーター工事に関するよくある質問【FAQ】
エレベーター工事について、住民の方から寄せられる代表的な質問をまとめました。
工事前の不安解消や、工事中のトラブル対応の参考にしてください。
ここでは、特に多く寄せられる5つの質問にお答えします。
Q
エレベーターが完全に使えなくなる期間はどれくらいですか?
A
工事の種類によって異なりますが、全面改修の場合は1〜2ヶ月、部分改修の場合は2〜4週間が目安です。
マンションに複数のエレベーターがある場合は、1基ずつ順番に工事を行うことで、常にどちらかのエレベーターが使える状態を維持できる場合もあります。
工事スケジュールは事前の説明会で詳しく案内されますので、必ず確認しましょう。
Q
工事費用はどれくらいかかりますか?突然高額になることはありますか?
A
エレベーターの更新費用は、一般的に1台あたり1,000万円〜3,000万円程度と言われています。
しかし、築年数やメーカー・仕様・耐震性の有無によって大きく変動します。
見積提出後に想定外の劣化が発覚して 追加費用が発生するケース もあるため、事前に以下の点を確認しておきましょう。
- 現地調査の範囲
- 追加費用が発生する条件
- 保証範囲と期間
Q
エレベーター工事中の騒音はどの程度ですか?一日中続きますか?
A
工事では金属音や振動が発生しますが、通常は平日の日中(午前9時〜午後5時頃)に限定されます。
特に音が大きい作業は時間を区切って行われることが多く、一日中騒音が続くわけではありません。
ただし、高層階では振動を感じやすいこともあります。
気になる場合は、工事業者や管理組合に相談し、可能な範囲での配慮を求めることができます。
Q
車椅子を使用している場合、工事期間中はどうすればいいですか?
A
車椅子利用者にとって、エレベーターが使えない期間は深刻な問題です。
管理組合に早めに相談し、階段昇降機の優先利用や、介助体制の整備を依頼しましょう。
場合によっては、一時的に1階の部屋に転居したり、福祉施設のショートステイを利用したりする方法もあります。
自治体の福祉課に相談すれば、利用できる支援制度を案内してもらえることもあります。
Q
工事後に不具合が見つかった場合はどうすればいいですか?
A
工事完了後に不具合を発見した場合は、速やかに管理組合または工事業者に連絡してください。
保証期間内であれば無償で修理が受けられます。
一般的に、エレベーター工事には1〜2年の保証期間が設定されています。
不具合の内容、発生日時、状況などを記録しておくとスムーズです。
重大な不具合の場合は、住民の安全を最優先し、使用を控えて専門家の点検を受けましょう。
まとめ
マンションのエレベーター工事は、住民の日常生活に大きな影響を与える大規模な工事です。
しかし、事前の準備と適切な対策、そして住民同士の協力があれば、不便を最小限に抑えながら乗り切ることができます。
ここでは、この記事の重要なポイントを振り返ります。
- エレベーター工事期間は全面改修で1〜2ヶ月、部分改修で2〜4週間が目安
- 高齢者や車椅子・ベビーカー利用者は階段昇降機やポーターサービスで支援を受けられる
- 賃貸マンションでは民法611条に基づき家賃減額請求が可能な場合がある
- 工事費用は1基400万〜1,500万円で、国や自治体の補助金(最大950万円)が活用できる
- エレベーターの実質的な耐用年数は25〜30年で、計画的なリニューアルが重要
- 工事の3ヶ月前から丁寧な説明会を開催し、住民の理解と協力を得ることが成功の鍵
- 高齢者や身体が不自由な住民を事前に把握し、個別のサポート計画を立てる
- 工事業者との綿密な打ち合わせで騒音・振動対策を徹底する
エレベーター工事は、マンションの安全性と快適性を維持するために必要不可欠な投資です。
工事期間中は確かに不便を感じますが、その期間を乗り越えることで、より安全で快適なエレベーターを長期間利用できるようになります。
管理組合の方は、この記事でご紹介した対策や支援サービスを参考に、住民全員が安心して工事期間を過ごせる環境づくりを進めてください。
また、住民の皆さまも工事の必要性を理解し、お互いに助け合いながら前向きにこの期間を乗り切りましょう。
事前の準備と計画的な対応が、エレベーター工事を成功に導く最大のポイントです。