マンションのドアクローザーは共用部?修繕費用は誰が負担するのかわかりやすく解説

マンションの玄関ドアに取り付けられているドアクローザーが故障した際「これは共用部分だから管理組合が直してくれるのでは?」と考える方も多いのではないでしょうか。

実は、ドアクローザーは法律上「共用部分」に分類されながらも、修繕費用は原則として各住戸の所有者が負担するという特殊な位置づけにあります。

この曖昧な区分が原因で、管理組合と住民の間でトラブルになるケースも少なくありません。

本記事では、マンション標準管理規約に基づくドアクローザーの正確な位置づけから、修繕費用の負担者、交換時期の判断基準、さらには費用相場まで徹底的に解説します。

「油漏れしているけど誰が直すの?」「調整は自分でできる?」といった実務的な疑問にもお答えしますので、マンション居住者の方はぜひ参考にしてください。

この記事で分かること
  • マンションのドアクローザーが共用部分とされる法的根拠
  • ドアクローザーの修繕費用を誰が負担するのか
  • 故障のサインと自分でできる調整方法
  • 交換が必要な時期と費用相場
  • トラブルを避けるための管理規約の確認ポイント

目次

マンションのドアクローザーは共用部分として扱われる

マンションの玄関ドアに設置されているドアクローザーは、一見すると住戸内側にあるため専有部分のように思えます。

しかし、法的には共用部分として扱われるのが一般的です。

ここでは、その法的根拠と理由について詳しく解説します。

マンション標準管理規約におけるドアクローザーの位置づけ

マンション標準管理規約第7条第2項では、玄関扉のうち「錠と内部塗装のみが専有部分」と明記されています。

つまり、ドアクローザーや蝶番、ドアスコープなどは専有部分ではなく共用部分として扱われます。

マンション管理業協会も「ドアクローザーは専有部分ではなく共用部分に該当する」と明確に示しており、多くのマンションがこの解釈を採用しています。

特別な管理規約がない限り、ドアクローザーは共用部分と判断されるのが一般的です。

参考元:国土交通省「マンション標準管理規約

マンションのドアクローザーが共用部分とされる理由

ドアクローザーが住戸内側に設置されていても共用部分とされるのは、玄関扉全体が 防火・防犯・外観統一など建物全体の機能に関わる重要設備だからです。

扉に付属するドアクローザーは、自動閉鎖機能を担う必須部品であり、勝手な交換や改造は防火扉としての性能低下を招く恐れがあります。

特に消防法では一定建物に「自動閉鎖装置付き防火戸」が求められ、ドアクローザーはその要件の一部を担う重要設備です。

そのため管理組合が管理すべき共用部分と位置づけられています。

専用使用部分とは何か?共用部分との違い

ドアクローザーは共用部分でありながら「専用使用部分」に分類されます。

これは法的には共用部分でも、特定住戸だけが専ら使用する部分を指し、ベランダや玄関扉、専用庭なども同じ扱いです。

標準管理規約第21条では、専用使用部分の維持管理は「使用者の責任と負担」と定められています。

つまり、所有権は管理組合にあるものの、日常の修理費用は住戸側が負担する仕組みです。

このため、ドアクローザーは共用部分でありながら、修繕費が個人負担となるケースが多く見られます。

マンションのドアクローザー修繕費用は誰が負担するのか

ドアクローザーが故障した際、誰が修繕費用を負担するのかは多くの方が気になるポイントです。

ここでは、費用負担の原則と例外、そして実際の費用相場について詳しく解説します。

マンションのドアクローザー修理・交換は原則個人負担

ドアクローザーは専用使用部分に該当するため、通常使用による劣化や故障は原則として住戸所有者の負担になります。

油漏れや速度調整不良、経年劣化による交換も個人負担となるのが基本です。

特に、強く閉める習慣や子どものいたずらによる破損など「使用者側に原因がある場合」は完全に個人負担です。

主な個人負担となるケースは以下の通りです。

  • 油漏れ・調整不良
  • 経年劣化による交換
  • 子どものぶら下がりなど故意・過失
  • 頻繁な開閉による損耗
  • 蝶番・ドアスコープなど同系設備の故障

なお、共用部分のため勝手に交換や改造は避け、まず管理組合へ報告してから業者選定を行うのが安全です。

マンションの管理組合が費用負担するケース

原則は個人負担ですが、管理組合が修繕積立金から費用を出すケースもあります。

代表例は大規模修繕で全住戸を一斉交換するケースで、建物全体の計画修繕に該当するため個別負担にはなりません。

また、構造的欠陥や施工不良が原因で故障した場合も組合負担になる可能性があります。

管理組合が負担する可能性がある例は次の通りです。

  • 大規模修繕で扉一式を交換
  • 扉枠の歪みなど構造不良による故障
  • 施工業者の不具合が原因
  • 管理規約で「一定年数経過後は組合負担」と定められている

マンションごとに負担区分は異なるため、必ず管理規約・使用細則を確認することが重要です。

マンションのドアクローザー交換費用の相場

ドアクローザー交換費用は「部品代+作業費+出張費」の合計で決まります。

一般的な相場は下記のとおりです。

項目料金目安
部品代約11,000~27,500円
交換工賃約11,000~16,500円
出張費約~8,800円

総額は 20,000~35,000円前後 が平均的です。

扉が大型の場合や強化型のクローザーが必要な場合は追加費用が発生します。

また、軽微な調整のみの場合は 5,500~8,800円程度 で収まることもあります。

複数業者の見積もり比較により適正価格を把握できます。管理組合の指定業者がいる場合は、割引が適用されるケースもあります。

マンションのドアクローザー交換が必要なサインと対処法

ドアクローザーには寿命があり、適切なタイミングで交換や調整を行う必要があります。

ここでは、故障のサインと具体的な対処方法について解説します。

マンションのドアクローザー故障の主な症状

ドアクローザーの不具合で最も多いのが油漏れです。

本体から油がにじむ・床に油が垂れる場合は、内部シールが劣化しており交換が必要です。

また、「勢いよく閉まる」「閉まりが遅い」といった速度異常も典型的なサインで、油量不足や調整機構の故障が原因です。

さらに「ドアが重い」「異音がする」「アームが曲がっている」などの症状も危険信号です。

特にアームの変形は過度な力が加わった証拠で、安全のため早急な交換が推奨されます。

マンションのドアクローザー調整は自分でできる

軽度な不具合であれば、ドアクローザーの速度調整は自分で実施可能です。

本体側面の調整弁をドライバーで回すことで閉まる速度を調整できます。

時計回りで遅く、反時計回りで速くなり、一般的に1〜3個の弁が段階ごとの速度を制御しています。

ただし、一度に大きく回すのは禁物で、1/8回転ずつ微調整することが重要です。

調整弁を緩めすぎると油漏れの原因となるため注意が必要です。

なお、油漏れ・変形・破損はDIY不可のため、業者依頼が必須です。

マンションのドアクローザー交換を業者に依頼すべきケース

次の症状がある場合は、DIY調整ではなくプロへの交換依頼が必須です。特に「油漏れ」がある場合は修理不可で完全交換となります。

また、「本体・アームの大きな変形」や「調整弁で改善しない状態」も内部機構が劣化しており交換が必要です。

さらに使用15年以上のドアクローザーは寿命を迎えているため交換が推奨されます。

取り付け位置の変更や新たな穴あけ工事が必要な場合は、共用部分のため管理組合の承認が必要です。

マンション施工実績のある業者に依頼すると安心です。

マンションのドアクローザー寿命と交換時期の目安

ドアクローザーには明確な寿命があります。

適切なタイミングで交換することで、安全性と快適性を維持できます。

マンションのドアクローザーの一般的な寿命

ドアクローザーの寿命は7~10年が一般的ですが、以下のような要因によって大きく変わります。

  • 開閉頻度(多いほど寿命短)
  • 設置環境(屋外・湿気・温度差)
  • メーカーの品質
  • メンテナンスの有無

このように、開閉回数の多い共有部では5~7年で寿命を迎えることもあり、逆に使用頻度が低くメンテナンスされている住戸では15~20年使用できる例もあります。

特に半屋外や外気に触れる場所は劣化が早いため注意が必要です。

メーカーによる耐久性の差もあり、国内大手製品は比較的長寿命です。築古マンションで交換歴がない場合は、予防交換を検討しましょう。

マンションのドアクローザー交換時期を判断するポイント

交換の判断は見た目だけでは不十分で、複数の劣化サインを確認することが重要です。

まず、設置から10年以上経過している場合は内部劣化が進んでいる可能性があります。

また、速度調整をしても数日で元に戻る場合は内部バルブの摩耗が疑われます。

さらに、季節で閉まり方が大きく変わる・本体やアームに錆が出ている・家族から動作異常を指摘されたなども交換の目安です。

マンションのドアクローザー油漏れは交換の合図

油漏れは最も明確な交換サインです。

ドアクローザー内部の油圧オイルが漏れると、閉まる速度を制御できなくなり、扉が勢いよく閉まる危険な状態になります。

初期は本体に軽く油がにじむ程度ですが、進行すると床に油が垂れるようになります。

主な原因は内部シール(Oリング)の経年劣化で、一度漏れ始めたドアクローザーは構造上オイル補充ができません。

放置すると事故や枠の破損につながるため、早期交換が必要です。

油漏れは、以下のような段階で進行していきます。

  1. 本体表面にうっすら油が付着
  2. アーム周辺が湿る
  3. 床に油が垂れる(重度)

油漏れを確認したら、管理組合へ報告し、速やかに交換手配を行いましょう。

マンションのドアクローザートラブルを避けるための注意点

ドアクローザーに関するトラブルを未然に防ぐためには、いくつかの重要なポイントがあります。

具体的な内容を把握しておき、不要なトラブルを回避しましょう。

マンションのドアクローザーに関する管理規約の確認方法

ドアクローザーの扱いはマンションごとに異なるため、必ず自分のマンションの管理規約を確認することが最重要です。

標準管理規約はあくまで参考で、実際に適用されるルールは各管理組合が独自に定めています。

管理規約書を紛失している場合は、管理会社や理事会に再発行を依頼しましょう。

確認すべき項目は、専有部分の範囲・専用使用部分の管理使用細則の特別規定などです。

マンションによっては「築○年以上は管理組合負担」など独自ルールがある場合もあります。

さらに、長期修繕計画で玄関扉交換予定があるか確認しておくと、個別交換すべきか判断しやすくなります。

マンションのドアクローザー費用負担でトラブルにならないために

トラブルを避けるために、不具合を発見したらすぐ管理組合へ報告することが鉄則です。

共用部分に関わる設備のため、自分の判断だけで工事を進めると後々のトラブルにつながります。

症状はなるべく具体的に伝え、写真を添付するとスムーズです。

見積もりは複数業者から取り、管理組合の承認を得てから工事することが必須

費用負担が不明確な場合は、理事会に議題として提出し、書面で決定を残すと安心です。

口頭の合意は誤解が生まれやすく、書面で記録しておくことがトラブル防止の最大のポイントです。

マンションの大規模修繕時のドアクローザー交換について

大規模修繕で玄関扉やドアクローザーを全戸一斉に交換する場合は、原則として修繕積立金で実施されます。

費用相場は、玄関扉の交換で20万~40万円、ドアクローザーのみなら2万~3万円が一般的です。

一括発注により単価が下がるメリットがあり、統一感の維持や計画的な交換ができる点も重要です。

不具合が軽微で、近い将来に大規模修繕が予定されている場合は、個別交換せず待つという選択肢もあります。

ただし、油漏れや安全性に関わる故障は早急に交換が必要です。

長期修繕計画書を確認し、不明点は理事会や修繕委員会に問い合わせましょう。

マンションのドアクローザーに関するよくある質問

ここでは、マンションのドアクローザーに関するよくある質問について紹介します。

わかりやすく簡潔に解答しておりますので、ぜひご覧ください。

Q

賃貸マンションのドアクローザー修理は誰が負担しますか?

A

賃貸マンションでは、ドアクローザーの修理費用は原則オーナー負担です。

油漏れや経年劣化など通常使用による故障は、建物設備の維持管理として大家側が対応します。

ただし、無理な開閉やぶら下がりなど入居者の過失による破損は入居者負担となる場合があります。

まず賃貸借契約書を確認し、不具合を発見したら速やかに管理会社や大家へ連絡しましょう。

Q

ドアクローザーは自分で取り付けられますか?

A

DIYに慣れていれば取り付け自体は可能で、必要工具も多くありません。

ただしマンションの玄関扉は共用部分に該当するため、勝手な交換は管理規約違反になる可能性があります。

また、新旧で取り付け穴が合わない場合は穴開けが必要で、これは専門作業です。

安全性・仕上がりを考えると、基本は業者依頼がおすすめです。

Q

ドアクローザーの調整は何年に一度すべきですか?

A

ドアクローザーの調整は3年に一度を目安に行うと良いとされています。

季節により閉まり方が変わるため、気になるタイミングで微調整をすると快適さが保てます。

点検時は閉まり速度だけでなく、油漏れ・アームの変形・本体の錆も確認しましょう。

早期発見が故障防止の鍵となり、定期的なメンテナンスで寿命を延ばすことができます。

Q

古いマンションでドアクローザーの型番が分からない場合は?

A

古いマンションでは型番が消えていることも多く、まず本体の刻印を確認します。

情報が見つからない場合は、業者に写真を送ると特定してもらえることがほとんどです。

多くの製品は互換性が高く、既存の取付穴をそのまま利用できます。

管理組合や管理会社が過去の修繕記録を保管している場合もあるため、併せて確認すると確実です。

Q

ドアクローザーにドアストッパーを使うのは違法ですか?

A

マンション玄関ドアの長時間開放は消防法の防火扉規定に抵触する可能性があり、基本的には推奨されません。

特に共用廊下に面した玄関扉は、自動閉鎖により煙や炎の拡散を防ぐ必要があります。

ただし、荷物搬入などの短時間利用は実務上黙認される場合もあります。

管理規約で明確に禁止されているケースもあるため事前確認が必須です。

まとめ

マンションのドアクローザーは法的には共用部分でありながら、修繕責任は住戸所有者が負うという特殊な位置づけの設備です。

本記事で消化して、重要なポイントを振り返りましょう。

  • ドアクローザーは共用部分の専用使用部分として扱われる
  • 修繕費用は原則個人負担だが大規模修繕時は管理組合負担
  • 交換費用の相場は作業費込みで2万円~3万5千円程度
  • 油漏れは交換の明確なサインで自分で修理はできない
  • トラブル防止には管理規約の確認と事前報告が重要

まずはご自宅のマンションの管理規約を確認し、費用負担のルールを把握しておくことをお勧めします。

定期的な点検と適切なメンテナンスで、安全で快適なマンション生活を実現できるでしょう。