個人のマンションのベランダ防水工事は自分で業者依頼していい?費用負担や複数社に相談すべき理由を解説

マンションのベランダで色あせやひび割れが目につき、雨上がりに水が滞留するようになると、多くの居住者が「そろそろ防水工事会社へ相談すべきなのか?」「どの業者や会社に依頼すれば安心なのか?」と悩み始めます。

さらに、マンション特有のルールとして、ベランダは専用使用権はあっても共用部分に分類されるため、個人判断で工事を進めると管理規約違反になり、管理組合とのトラブルや思わぬ追加費用の発生につながる恐れがあります。
こうした背景から、信頼できる防水工事会社の選び方や、管理組合への申請手順を正しく理解することが重要になります。

本記事では、区分所有者がマンション防水工事を検討する際に知っておくべき基礎知識、費用負担の考え方、そして安心して任せられる業者・会社を選ぶポイントまで詳しく解説します。

これを読むことで、建物を守りながら安心して工事を進めるための判断軸を身につけることができます。

目次

マンションのベランダ防水工事とは?基礎知識を理解する

ベランダの防水工事を理解する第一歩は、ベランダがどのように建物を守っているかを知ることです。
マンションのベランダ床面には、防水層・トップコート・下地が重ねられた構造があり、雨水の浸入を防ぐ重要な役割を担います。

時間が経つと紫外線や風雨の影響で防水層は劣化し、ひび割れや剥がれが進むと雨漏りの原因になります。さらに劣化が放置されると階下への漏水や躯体の腐食につながるため、早めの対処が欠かせません。

ここで重要なのは、マンションのベランダは「共用部分」でありながら居住者が使える「専用使用権付き共用部」であるという点です。これが後述する「工事は勝手にしてはいけない」という規約と深く関わっています。

ベランダ防水層の一般的な構造

ベランダの防水層は、複数の層によって成り立っています。それぞれが役割を果たすことで雨水の侵入を防いでおり、どれが欠けても防水性能が維持できません。

  • トップコート(保護層)▶︎紫外線や摩耗から防水層を守る。
  • 防水層(ウレタン・FRPなど)▶︎防水機能の中核となる層。
  • 下地(コンクリート)▶︎ベースとなる構造体。
  • 立ち上がり部分(外壁接合部)▶︎漏水リスクが高いため丁寧な施工が必須。

自分判断で個人のマンションのベランダ防水工事を業者依頼していい?

「個人のマンション」とは、区分所有法にもとづき、個人が専有部分を所有しているマンション(区分所有建物)のことを指します。

ベランダ防水工事を検討する区分所有者が最初に理解すべきことは、「個人の判断では防水工事を依頼できない」という点です。

これはマンションが複数の住戸で構成される共同住宅であり、1住戸の工事が建物全体の防水性能に影響を与える可能性があるためです。

マンションは一棟全体が一つの建物ですが、その内部は以下のように分かれています。

区分内容具体例所有者 / 管理者修繕費用の負担
専有部分個人が所有する住戸内部のエリア玄関・リビング・キッチン・浴室・トイレ・室内壁・床など区分所有者(個人)原則として所有者本人が負担
共用部分建物全体で共有し管理する部分外壁・屋上・廊下・階段・配管・エレベーター・一部のベランダ管理組合管理組合が負担(修繕積立金など)

マンションのベランダは“共用部分”に該当するのが原則

ベランダは各住戸が日常的に使用するスペースであるものの、建物全体の構造に関わる「共用部分」として位置づけられています。

居住者には使用権が与えられていますが、防水工事など構造に関与する工事は専有部分の範囲を超えるため、勝手に工事をすることはできません。

工事は個人判断では不可|必ず管理組合の承認が必要

小規模な補修であっても、防水層に手を加える工事は建物全体へ影響する可能性があります。このため、多くのマンションでは管理規約により「工事前に管理組合の承認を必ず得ること」が明記されています。

無断工事は規約違反となり、工事のやり直しや損害賠償を求められるケースもあります。

なぜ個人工事が禁止されているのか

ベランダは建物全体の防水性能に直結するため、個人判断で工事を行うと漏水や構造不良など重大なトラブルを招く恐れがあります。

管理組合が統一管理することで、安全性と品質を確保しています。

禁止されている理由
  • 排水勾配が変わると漏水の原因になるため
  • 工法や材料が建物の方針と異なると不具合が発生しやすいため
  • 施工不良が階下漏水につながるリスクが高いため
  • 共用部の工事は管理組合が責任を負うべきため

これらの理由から、必ず事前に管理会社や管理組合へ相談することが求められます。

個人マンションのベランダ防水工事における管理組合への届出・許可取得の手順

ベランダ防水工事をスムーズに進めるためには、区分所有者が正しい申請手順を理解しておくことが不可欠です。

適切な手続きを踏まないと、申請却下や工事中止を命じられる可能性もあります。

まず管理規約・使用細則の確認

最初にすべきことは、マンションの管理規約や使用細則を確認することです。
ベランダの扱いがどのように記載されているか、工事の申請方法はどうなっているかを把握します。多くの場合、専用使用権付き共用部分として詳細が記載されています。

理事会または管理会社へ相談する際に必要な情報

管理会社に相談する際には、以下の情報が必要になります。

  • 工事の内容・目的
  • 使用予定の材料(ウレタン防水、FRP防水など)
  • 工事期間の目安
  • 依頼予定の業者名・資格
  • 工事範囲(床面のみ、立ち上がりを含むなど)

これらを明確にすることで、管理組合も審査をスムーズに進めやすくなります。

提出が求められる書類一覧

管理組合から求められる書類はマンションにより異なりますが、一般的には以下のような書類が必要です。

  • 工事申請書
  • 工程表
  • 見積書
  • 施工仕様書
  • 施工業者の会社概要や資格証明

これらの書類は業者に依頼すれば用意してもらえることが多いため、書類作成に慣れている業者を選ぶことも重要です。

承認までの期間と注意点

承認には1週間から数週間かかる場合があり、マンションによっては理事会や総会の承認が必要になるケースもあります。特に大規模修繕時期と重なると審査が長引くことがあるため、工事を予定する場合は余裕を持ったスケジュールを組むようにしましょう。

マンションのベランダ防水の費用区分|個人の負担になるケースと管理組合が負担するケース

マンションベランダ防水工事では「どこまでが共用部分か」「どの損傷が誰の責任か」によって、費用負担が大きく変わります。
マンションは区分所有法にもとづき、構造や防水性能に関わる要素は原則として共用部分とされ、管理組合が維持管理を行う仕組みとなっています。
しかし、居住者の使用状況によって劣化が生じることもあり、その場合は個人負担となるケースがあります。

ここでは、判断の基準と代表例をより詳しく解説します。

個人の負担になるケース

個人の使用方法が原因で防水層に損傷が生じた場合は、”専用使用者の過失”として個人負担になります。共用部分であっても、使用状況が原因なら個人的責任と判断されます。

  • 植木鉢の水漏れによる局所劣化:鉢底からの水が同じ場所に落ち続けることで、防水層が局所的に腐食するケース。
  • 洗濯機排水の溢れ・ホースの外れによる損傷:排水の扱い方による明確な過失と判断されることが多い。
  • ペットの排泄・マーキングによる腐食:アンモニアで表面が化学的に劣化するケース。

これらは管理組合の維持管理義務の範囲外であり、修繕費用は個人で負担することになります。

管理組合が負担するケース

管理組合が費用を負担するのは、建物全体の維持管理に関わる”経年劣化”が原因のケースです。時間の経過によって自然に発生する劣化は、住戸の使い方とは関係がないため、共用部分の修繕として管理組合が責任を負います。

  • 防水層の全面改修:耐用年数が過ぎ、劣化が進行している場合。
  • 経年劣化によるひび割れ・剥がれ:使用状況ではなく、自然劣化による損傷。
  • 大規模修繕のタイミングでの統一工事:建物全体の品質維持のために実施される場合。

管理組合は、建物価値を維持するため定期的に防水改修を行います。この場合、個人が負担する必要はありません。

グレーケース(判断が分かれる例)

過失とも自然劣化とも言い切れないケースは、”グレーゾーン”としてマンションごとに判断が分かれます。管理規約・理事会の判断・管理会社の見解が分かれるため、事前相談が必須です。

  • 室外機の振動で床面にひび割れが生じた場合:振動が強い設置状況だと個人負担、経年による脆弱化なら管理組合負担と判断されることも。
  • ベランダのDIY補修による不具合:DIYの内容が軽微なら注意で済むこともありますが、防水層に影響を与えた場合は個人負担となる可能性が高い。
  • 入居前からあった劣化か判断できないケース:前所有者の使用状況が不明な場合、管理組合と折半という判断をする例もあります。

費用負担の線引きは難しいため、以下の観点を基準にすると判断しやすくなります。

判断に迷ったときのポイント
  • 自然劣化か?(管理組合負担)
  • 使用方法による損傷か?(個人負担)
  • 建物全体に関わる構造部分の損傷か?(管理組合負担)
  • 個人的な工作・設備が原因か?(個人負担)

不明確な場合は、管理会社・理事会・専門業者の三者の意見を照らし合わせることが最も確実です。

個人のマンションのベランダ防水工事が必要なサイン|居住者が判断できる劣化チェックとは?

ベランダの防水機能が弱まってくると、日常生活のなかでさまざまな変化として表れます。
初期の段階では見逃しがちな症状もありますが、劣化が進行すると雨漏りや階下住戸の浸水といった深刻なトラブルにつながるため、日頃から状態を把握しておくことが非常に重要です。

特にマンションでは、ひとつの住戸の問題が建物全体へ影響を及ぼす可能性があるため、些細な異変でも早めに管理会社へ相談することが求められます。

ここでは、居住者自身が確認できる劣化サインをより詳しく解説し、早期発見のポイントを押さえていきます。

ベランダの防水工事が必要な劣化サイン|床面の色あせや変色

ベランダの床表面が白っぽくなったり、以前より明らかに色が薄く見える状態は、トップコートが劣化し始めている典型的なサインです。トップコートは防水層を保護する最上層の仕上げ材であり、これが弱くなると紫外線を直接受けるようになり、防水層そのものの寿命を早めます。

また、色あせの進行具合によっては、近い将来トップコートの塗り替えが必要となるため、経年劣化の判断材料としても役立ちます。

ベランダの防水工事が必要な劣化サイン|ひび割れや床材の剥がれ

小さなひび割れでも放置すると、雨水がその隙間から浸入し、下地コンクリートや防水層の損傷につながる危険性があります。特にベランダの端部や排水口周辺は劣化しやすく、ひび割れが進むと剥がれや浮きが発生しやすくなります。

防水層の破損は雨漏りの直接的な原因となり、階下住戸への浸水トラブルへ発展する可能性もあるため、少しでも異常を感じたら早めの対応が必要です。

ベランダの防水工事が必要な劣化サイン|水たまりができやすくなった

雨の後に水がなかなか排水されず、同じ場所に水たまりが残り続ける場合は、防水層の劣化、排水口の詰まり、もしくは排水勾配の不良が疑われます。水が長時間滞留するとカビや藻が発生しやすく、ベランダの美観が損なわれるだけでなく、防水層への負担が増えて劣化を加速させます。

慢性的な水たまりは、ベランダ全体の構造的な見直しが必要となるケースもあるため、注意が必要です。

ベランダの防水工事が必要な劣化サイン|階下の天井や壁にシミや雨漏り

ベランダの劣化が進み最も深刻な段階に達すると、階下住戸の天井や壁に雨漏りが発生することがあります。これは防水層が完全に機能を失っている状態であり、緊急の対応が必要です。

階下漏水は原状回復費用やトラブル対応など大きな負担を招くため、兆候が見られた時点で管理会社への報告と専門業者の調査依頼が必須となります。

ベランダの防水工事を個人で進める場合の依頼フロー|区分所有者版

区分所有者がベランダ防水工事を行う際には、管理組合の承認を得ることが必須であり、その手順を誤ると規約違反や近隣トラブルにつながることがあります。

以下では、初期対応から工事完了後の報告までの流れをより詳しく解説します。正しい手順を理解しておくことで、スムーズかつ安心して工事を進めることができます。

  1. STEP

    劣化を発見 → 写真を残す

    ひび割れ・剥がれ・水たまり・変色など、気になる異常が見つかったら、まずスマートフォンで状態を撮影して記録します。
    これらの記録は管理会社への説明資料として役立ち、工事の必要性を判断する重要な根拠にもなります。複数の角度から撮影するとより効果的です。

  2. STEP

    管理会社へ連絡し、規約を確認

    劣化状況を確認したら、管理会社へ連絡し、ベランダの防水工事を検討している旨を伝えます。
    管理規約や使用細則に基づき、個人で工事できる範囲や申請手続きが説明されます。
    マンションによってルールが異なるため、自己判断で進めず必ず確認しましょう。

  3. STEP

    管理会社または業者による現地調査

    現地調査では、防水層の状態、排水機能、下地の劣化状況、既存工法などを細かく確認します。
    専門業者が調査する場合、管理組合に提出するための調査報告書を作成してくれるかどうかも選定のポイントです。
    適切な調査が行われることで、必要な工事内容が明確になります。

  4. STEP

    見積書・工法説明書を管理組合に提出

    工事の承認を得るためには、見積書だけでなく、工法・材料・工期・騒音の有無などを記載した施工計画書を提出する必要があります。
    管理組合は、建物全体に影響がないか、騒音や臭気のトラブルが予想されないかといった点を審査するため、資料を整えて提出することが承認への近道です。

  5. STEP

    管理組合の承認後に工事開始

    承認が下りる前に工事を開始してしまうと規約違反となり、やり直しや罰則が課されるケースもあります。
    承認後は、工事中の騒音・臭気が近隣へ与える影響を理解し、工事前の挨拶回りなど配慮を忘れないようにしましょう。

  6. STEP

    完了報告書を管理会社へ提出

    工事が完了したら、施工前後の写真付きの完了報告書を管理会社へ提出します。
    これにより、管理組合は工事内容が適切に実施されたかどうかを確認できます。
    報告を怠ると後々のトラブルにつながる可能性があるため、忘れずに提出します。

以下、深掘り版に全面リライトしました。
見出し・構成はそのまま使えて、本文だけ差し替えればOKな形にしてあります。

個人マンションのベランダ防水工事の主な工法と費用相場|区分所有者向け

個人のマンション(区分所有)のベランダ防水工事には、いくつかの代表的な工法があります。それぞれに特徴や得意な場面、費用相場があり、「どの工法が向いているか」はベランダの広さ・下地の状態・既存の防水仕様によって変わります。

実際の工法選定は防水工事会社や管理組合が行うことが多いですが、区分所有者として基本的な違いを押さえておくことで、見積書の内容が理解しやすくなり、防水工事業者や施工会社との打ち合わせもスムーズになります。

代表的な防水工法と費用相場|比較表

マンションのベランダ防水工事でよく使われるのは、主に「ウレタン防水」「FRP防水」「シート防水」の3種類です。それぞれの工法の特徴・耐用年数・10㎡あたりの費用相場のイメージは次の通りです。

防水工法特徴(端的)耐用年数費用相場(10㎡)
ウレタン防水液体樹脂を塗って仕上げる。形状を問わず施工しやすい。約10〜13年約18万〜25万円
FRP防水硬くて強い仕上がり。小規模ベランダ向き。約10〜12年約20万〜30万円
シート防水シートを貼る工法。耐久性が高く広い面積向き。約12〜20年約20万〜28万円

※実際の費用は、ベランダの形状・下地の傷み具合・既存防水の撤去有無・防水工事会社ごとの積算方法により変動します。

ウレタン防水|コスパと汎用性に優れた“万能型”

ウレタン防水は、液体状のウレタン樹脂をローラーやコテで塗り重ねていく工法です。
複雑な形状や段差が多いマンションのベランダでも施工しやすく、「既存防水層の上から重ね塗り」できるケースも多いため、マンション防水工事会社が最初に提案しやすい工法です。

メリット
  • 形状を問わず施工しやすい
  • 比較的安価で、個人マンションのベランダ防水工事と相性が良い
  • 既存防水の上から施工できる場合は、工期・コストを抑えられる
デメリット
  • 職人の技量や塗布量によって仕上がり品質に差が出やすい
  • 乾燥時間が必要なため、天候の影響を受けやすい

区分所有者としては、見積書に「塗り回数」「膜厚」「トップコートの有無」などが明記されているかを確認すると、ウレタン防水がきちんと設計されているか判断しやすくなります。

FRP防水|小規模ベランダ向きの“ハードタイプ”

FRP防水は、浴槽や船舶にも使われるFRP(繊維強化プラスチック)素材を利用した工法で、非常に硬く強い防水層をつくれるのが特徴です。人の出入りが多く、物を置くことも多いベランダには向いていますが、収縮や振動に対しては割れやすい一面もあります。

メリット
  • 高い強度と耐摩耗性
  • 短工期で仕上がる(硬化が早い)
  • 掃除や荷物の移動が多いベランダでも傷みにくい
デメリット
  • 下地の動き(たわみ・ひび割れ)に弱く、建物の揺れが大きいとひび割れしやすい
  • 施工時の臭いが強めで、近隣への配慮が必要
  • 他工法よりやや高めになることが多い

マンションの区分所有者としては、「もともとFRP防水が施工されているベランダの更新」として選ばれるケースが多い工法と理解しておくとよいです。既存と異なる工法へ変更する場合は、管理組合や設計事務所の方針も絡むため、自己判断ではなく必ず事前確認が必要です。

シート防水|耐久性重視・広い面積向きの“ロングライフ型”

シート防水は、塩ビ系やゴム系のシートを貼り付けて防水層をつくる工法です。工場で規格生産されたシートを使用するため、品質が安定しており、耐久年数が長いのが大きなメリットです。屋上全体やルーフバルコニーなど、広い面積のマンション防水工事でよく選ばれます。

メリット
  • 耐久性が高く、長期的なメンテナンスサイクルを延ばしやすい
  • 厚みが一定で、仕上がり品質が安定しやすい
  • 工場製品のため、材料品質にばらつきが少ない
デメリット
  • 複雑な形状のベランダには不向きな場合がある
  • シートの継ぎ目や立ち上がり部の納まりに注意が必要
  • 施工できる防水工事会社が限られることがあり、業者選びの自由度がやや下がる

区分所有者としては、「自分の住戸単体のベランダ」というより、屋上や共用廊下を含めた全体改修(大規模修繕)で採用されやすい工法と捉えておくとイメージしやすいです。

工法選びのポイント|区分所有者が押さえておきたい視点

防水工事の工法は、基本的に管理組合と施工会社が、建物全体の方針に合わせて決めるものです。

区分所有者が好きな工法を自由に選べるケースは多くありませんが、次のポイントを知っておくと、見積書の内容理解や質問がしやすくなります。

工法選びのポイント
  • マンションの既存防水仕様と整合性が取れているかが最優先
    → 既存がウレタン防水なら、更新もウレタンで行うケースが多いです。
  • 耐用年数だけでなく、メンテナンスサイクルとトータルコストで考える
    → 初期費用が少し高くても、長く使える工法の方が結果的にお得な場合もあります。
  • 区分所有者の判断ではなく、必ず管理組合・管理会社・専門業者の提案に基づいて決める
    → 共用部分であるベランダ防水は、独断で仕様変更するとトラブルのもとになります。
  • 見積書では「工法名」「層構成」「使用材料のメーカー・品番」を確認する
    → 防水工事会社ごとの仕様差を見極める手がかりになります。

個人マンションのベランダ防水工事業者の選び方|区分所有者が失敗しないためには?

ベランダ防水工事を成功させるために最も重要なのが、信頼できる業者を選ぶことです。

マンションのベランダは共用部分に該当するため、一般的な戸建て向けリフォーム業者よりも「マンション特有のルールに詳しい業者」を選ぶ必要があります。

ここでは、区分所有者が安心して依頼できる防水工事業者の選び方を詳しく解説します。

防水工事業者の失敗しない選び方1.マンションの防水工事経験が豊富な業者を選ぶ

マンションのベランダ防水には、管理規約・共用部の扱い・近隣との関係など独自のルールが存在します。経験豊富な業者ほど管理組合への書類提出や注意点に精通しており、スムーズに工事を進めてくれます。

  • 管理組合への申請書類を代行してくれるか
  • マンションでの施工実績が豊富か
  • 過去の施工写真や事例が公開されているか

防水工事業者の失敗しない選び方2.防水施工技能士・建設業許可の有無を確認

技術力を見極める最も確実な方法が資格確認です。

  • 防水施工技能士(1級・2級)の職人が在籍しているか
  • 建設業許可(防水工事業)を取得しているか

資格がある=一定以上の技術力・経営基盤がある証拠となり、施工品質への安心感が高まります。

防水工事業者の失敗しない選び方3.見積内容が明確で、工程が丁寧に説明されているか

優良業者は見積の内訳が詳細で、素人でも理解しやすい説明を行います。

  • 材料名・メーカー名が記載されている
  • 下地補修、洗浄、養生、トップコートなど工程が分かれている
  • 追加費用が発生する条件が明確

逆に「一式」とだけ書かれた見積は避けるべきです。工事後に追加請求される可能性があるため要注意です。

防水工事業者の失敗しない選び方4.近隣住戸への配慮ができる業者か

ベランダ防水工事では、騒音・臭気・養生シートによる影響がどうしても発生します。近隣トラブルを避けるためには、挨拶回りや事前説明を丁寧に行う業者を選ぶことが重要です。

  • 工事前に近隣へ挨拶してくれるか
  • 臭気が出にくい材料の使用を提案してくれるか
  • 住民への説明書配布を行ってくれるか

防水工事業者の失敗しない選び方5.施工後の保証とアフターサービスがあるか

防水工事は仕上がり直後の見た目だけでは品質を判断できません。数年後の雨漏りや膨れなどの不具合に対応できるよう、保証内容は必ず確認しましょう。

  • 保証期間(一般的に5〜10年)
  • 保証書の有無
  • 定期点検サービスの有無

個人のマンションのベランダ防水工事でよくあるトラブルと回避方法

個人のマンション(区分所有)のベランダ防水工事では、共用部分の扱いや施工品質、管理組合との協議不足などにより、思わぬトラブルが起きやすくなります。

特に「専用使用権付き共用部分」というマンション特有のルールを十分理解していないまま工事を進めると、追加費用や再工事、近隣との関係悪化など大きなトラブルへ発展することもあります。

区分所有者が安心して工事を進めるために、どのようなトラブルが起きやすいのか、防水工事業者(施工会社)を選ぶ際に注意すべき点とともに整理します。

トラブル1.未承認のまま工事を行い、管理組合と揉める

最も多いトラブルが「管理組合の承認前に工事を始めてしまう」ケースです。ベランダ防水は共用部分に該当するため、区分所有者が個人的に工事を依頼することはできません。

無断で工事を進めると、規約違反として工事停止命令・原状回復・罰則の対象になる可能性があります。

よくある背景
  • 個人の判断で工事できると誤解している
  • 防水工事業者が共用部分の扱いを十分説明していない
  • 管理組合の工事申請フローを知らない
回避方法
  • 必ず管理会社・管理組合へ事前相談し、承認書を取得してから着工すること
  • 承認に必要な書類(仕様書・工程表・見積書・会社概要)は、防水工事業者に作成を依頼
  • 申請から承認まで数週間かかることもあるため、スケジュールは余裕を持つ

トラブル2.排水不良・立ち上がり不良などの施工不良 → 階下漏水

技術力が低い業者へ依頼すると、表面は綺麗でも見えない部分で重大な施工不良が起こることがあります。特にベランダは排水・立ち上がり・端部処理が複雑で、施工ミスがそのまま階下漏水に直結します。

起きやすい施工不良
  • 排水勾配が確保されておらず、水たまりが残る
  • 立ち上がりの防水層が規定高さまで施工されていない
  • サッシ周りのシーリング処理が不十分
  • 膜厚不足による早期劣化・膨れ・剥がれ
回避方法
  • 防水施工技能士(1級・2級)が在籍する防水工事業者へ依頼する
  • 工程写真を必ず提出してもらい全工程を可視化
  • 見積書で「膜厚」「塗り回数」が明記されているか確認
  • 下地補修が“一式”でなく、項目ごとに明記されているかチェック

安さだけで選ぶと、再工事費用が高額になるケースが非常に多いので注意が必要です。

トラブル3.臭気・騒音・資材搬入トラブルによる近隣クレーム

ウレタン防水の溶剤臭、研磨作業の騒音、養生による日照遮断など、工事中は周囲への影響が大きい工事です。事前説明不足だとクレームが管理組合に寄せられ、工事中断につながることもあります。

起こりやすいクレーム
  • 溶剤臭が強く換気ができない
  • 在宅勤務に影響する騒音
  • 資材搬入時のストレス
  • 養生シートによる日照遮断
回避方法
  • 上下左右の住戸への挨拶・説明書の配布を実施する業者を選ぶ
  • 臭いが苦手な場合は水性ウレタンなど低臭材料を提案できる業者を選択
  • 工事範囲・騒音作業の時間帯を管理組合と事前調整
  • 住民の生活動線に配慮した資材搬入を行える業者を選ぶ

近隣配慮ができる業者は、施工品質も高い傾向があります。

トラブル4.工事後の不具合に対し保証がなく自己負担に

工事後1〜3年で膨れや剥がれが発生することも珍しくありません。
保証がない場合、すべて区分所有者の自己負担になります。

よくある失敗
  • 「工事保証書」が発行されていない
  • 保証の対象範囲が曖昧
  • 下請け専門業者で保証窓口が存在しない
回避方法
  • 保証期間(一般的に5〜10年)を必ず契約前に確認
  • 「保証対象」「免責事項」が文書化されているか確認
  • 会社の所在地・連絡先・施工実績を確認し、トラブル時に連絡できる体制かを確認
  • アフター点検の有無も重要

保証がしっかりしている防水工事業者ほど施工に自信がある証拠でもあります。

個人のマンションのベランダ防水工事は、共用部分の扱い・管理組合の承認・施工品質・近隣配慮・保証内容
の5つを正しく理解しておくことが重要です。

特に、

  • 管理組合の承認なしの着工
  • 技術力の低い業者選び
  • 保証確認不足

これらは後々の大きなトラブルにつながります。

安心して工事を行うためには、区分所有者向けの工事経験が豊富な防水工事業者を選び、必ず複数社見積もりを取ることが最重要ポイントです。

個人のマンションのベランダ防水工事でよくある質問(FAQ)

個人のマンション(区分所有)のベランダ防水工事は、「共用部分の扱い」「管理組合の承認」「費用区分」「工事可能な範囲」など、戸建てとは異なる独自のルールが多く存在します。
そのため、個人が直接防水工事業者へ依頼してよいのか、どんな手続きが必要なのか不安を抱く方も少なくありません。

ここでは、区分所有者から特に相談の多い質問をまとめ、安心して工事を進めるためのポイントを解説します。

Q

個人でベランダ防水工事を業者依頼してもいいのですか?

A

多くのマンションではベランダが「専用使用権付き共用部分」に該当するため、個人が勝手に工事を依頼することはできません。
工事前に必ず管理組合(管理会社)へ申請し、承認を得てから防水工事業者へ依頼する流れになります。

Q

誰が工事費用を負担するのですか?

A

原則として「防水層そのもの」は共用部分であるため、経年劣化による補修は管理組合が負担するケースが多いです。
ただし、鉢植えによる腐食やペットによる損傷など、居住者の過失による劣化は個人負担となります。

Q

工事にはどれくらいの期間がかかりますか?

A

ベランダの広さや工法によって異なりますが、一般的には 1〜3日程度 が目安です。
ウレタン防水は乾燥時間が必要なため日数が延びることもあります。天候にも左右されるため、余裕を持った日程調整が必要です。

Q

防水工事業者施工会社によって工事品質はそれほど違いますか?

A

はい、工事品質の差は非常に大きいです。
同じウレタン防水でも、下地処理の精度・塗布量・乾燥時間の管理・立ち上がり処理 などで耐久年数が大きく変わります。
経験の浅い業者が施工すると2〜3年で剥がれが発生することもあり、結局再工事で高額になるケースが多いです。
マンションのベランダ工事に慣れた防水工事業者を選ぶことが、最大のリスク回避になります。

Q

どの防水工事業者や施工会社を選べば安心ですか?

A

区分所有者向けの工事経験が豊富で、管理組合への提出書類を整えてくれる業者がおすすめです。
特に以下を満たすと安心です:

  • 防水施工技能士の資格者が在籍
  • 工程写真の提出に対応
  • 見積書が詳細(膜厚・材料メーカー明記)
  • 5〜10年の保証を提示

複数社から見積もりを取り、仕様・保証・実績を比較することが重要です。

個人のマンションのベランダ防水工事業者は複数社に依頼しよう|まとめ

マンションのベランダ防水工事は専用使用権があるものの共用部分に該当するため、戸建てのように個人で自由に依頼できる工事ではありません。

工事の進め方、費用負担の考え方、管理組合への申請手順、そして依頼先となる防水工事業者・会社の選び方まで、居住者が正しく理解しておくことが工事成功の大きな鍵となります。

また、複数社の施工会社から見積もりを取り、内容や工法、保証の違いを比較することで、より納得感のある判断ができ、トラブル防止にもつながります。

適切な会社選びと正しい手順を踏むことで、安心して防水性能を回復させることができます。

この記事のポイントを以下にまとめました。

  • ベランダは専用使用権付きの共用部分であり、工事には管理組合の承認が必須。
  • 劣化サイン(色あせ・ひび割れ・水たまり・階下漏水)は早期発見が重要。
  • 必要書類は施工会社と連携し、正しい手順で管理組合へ提出する。
  • 防水工事業者・会社を複数社比較して、信頼性・実績・見積内容を確認する。
  • 施工後の保証内容とアフターサービスの充実度は、会社選びの重要指標。

ベランダ防水は建物全体の寿命に影響する大切な工事です。

小さな異変でも気づいた段階で管理会社や防水専門会社へ早めに相談し、複数社の意見と提案を比較しながら進めることで、安心して長く暮らせる住環境を維持できます。

信頼できる施工会社と共に、適切な工事を計画し、快適なマンションライフを守っていきましょう。