【アパート経営】築古アパートを「とりあえず満室だから」と持ち続けると出口で困りやすい理由

築20年、30年と年数を重ねたアパートを持っていると、「まだ満室が続いているから大丈夫だろう」「とりあえず今は家賃も入っているし、売却は先でいいか」と考えがちです。​
毎月の入金もあり、ローンも滞りなく返済できているように見えると、「わざわざ今、手放す理由はない」と感じる場面も多いはずです。

実際、空室が多く発生している物件と比べれば、今の時点では「順調に回っている」と言えます。
しかし、「とりあえず満室だから」「とりあえず回っているから」という理由だけで築古アパートを持ち続けていると、いざ出口(売却・建て替え・用途変更など)を考えたときに、「思ったより選択肢が少ない」「もっと早く手を打っておけばよかった」と感じてしまうケースも少なくありません。

この記事では、築古アパートを「満室だから」という理由だけで保有し続けると、なぜ出口で行き詰まりやすくなるのかを整理します。
そのうえで、「満室のうちに」どんな視点で出口戦略を描いておくべきか、アパート経営オーナーが押さえておきたい考え方をお伝えします。​

「満室=順調」と思い込むと見落としやすいサイン

築古アパートのオーナーと話していると、「今のところ満室だから、まだ大丈夫だと思う」という言葉をよく耳にします。
確かに、空室が連発している物件に比べれば、家賃収入が安定しているのは大きな安心材料です。​

ただし、「満室」であることと、「将来も安定して収益を生み続けられること」は別問題です。
たとえば、次のようなサインが出ていないか、一度点検してみる必要があります。

  • 入居者の顔ぶれがほとんど変わらず、ここ数年ほとんど新規入居者がいない。
  • 退去が出るたびに、募集家賃を少しずつ下げている。
  • 周辺相場より明らかに安い賃料で「ようやく満室になっている」状態になっている。
  • 設備や内装の古さは感じているが、「まだ使えるから」と本格的な手入れを先送りしている。

こうした状態は、「今はたまたま空室が表面化していないだけ」という可能性もあります。
特に長期入居者が多い物件では、ある時期に退去が集中すると、短期間で一気に空室率が跳ね上がるリスクもあります。​

また、「満室だから広告や募集条件を見直す必要はない」と考えているうちに、

  • 近隣に新築・リノベ済みのアパートが増えている。
  • 入居希望者の“標準装備”の水準(ネット無料、TVモニタ付きインターホン、宅配ボックスなど)が上がっている。
  • 防犯性や断熱性など、目に見えにくい部分での差が広がっている。

といった変化が進んでいることも多いです。
「満室だから」と安心している間に、競合とのギャップが少しずつ開いていくと、次に大きな空室が出たタイミングで、「以前と同じ条件では決まらない」という現実に直面しやすくなります。

「出口」を意識しないまま年数を重ねると選択肢が減っていく

築古アパートで出口が難しくなる理由のひとつは、「築年数」「修繕リスク」「金融機関の評価」が同時に効いてくる点です。
築10年台であれば、「これからまだ先がある物件」と見られやすい一方、築30年・40年となると、買い手の目線や融資姿勢は厳しくなっていきます。

具体的には、次のようなポイントがチェックされます。

  • 外壁や屋根、防水、共用部など、目に見える部分の劣化具合。
  • 給排水管や設備など、「見えない部分の不安」がどの程度ありそうか。
  • 過去の修繕履歴や、長期修繕計画がどの程度整理されているか。
  • 現在の入居率や賃料水準が、この数年でどう変化してきたか。

「とりあえず満室だから」と出口を意識せずに年数だけ重ねると、次のような状況に陥りやすくなります。

  • 「売るなら修繕してからの方がいい」と分かっているが、そのための費用が重く感じられ、踏み切れない。
  • 修繕をしないまま売ろうとすると、買い手から想定以上の値引きを求められる。
  • 「この状態で売るのは気が引ける」という心理も働き、売却の話を出すこと自体を先送りしてしまう。

結果として、

  • 修繕するには遅く、売るにも条件が悪い。

という、最も動きづらい状態に近づいていきます。

一方で、早めの段階から出口を意識しているオーナーは、

  • 「このアパートはあと〇年持つ」という期限をざっくり決めたうえで、そこまでの修繕と賃料戦略を組み立てる。​
  • 売却前提で、「最低限どこを整えるか」「あえて手を加えず現状有姿で売るか」をあらかじめ考えておく。

といった準備を行なっています。
そのため、「売ろう」と決めたときに、修繕の有無・売り方(オーナーチェンジ・更地・建替え前提など)の選択肢を、現実的な範囲で比較しやすくなります。

「今の満室」を、5年・10年スパンで点検してみる

築古アパートの出口で困らないためには、「今の満室」を一度、5年・10年というスパンで見直してみることが大切です。

例えば、次のような問いを、自分の物件に当てはめてみてください。

  • 今の入居者のうち、5年後も住み続けている可能性が高そうなのはどれくらいか。
  • 退去が重なったとき、現状の家賃と設備水準で、どの程度のスピードで埋まりそうか。
  • もし今より家賃を1割下げないと決まりにくくなった場合でも、「持ち続ける意味がある」と言えるか。

また、修繕の観点では、

  • 今後10年の間に、ざっくりどの程度の修繕コストが発生しそうか(外壁・屋根・共用部・設備など)。
  • その修繕を前提にして持ち続けるのか、修繕前に売却を検討するのか。

といった中長期の視点も必要です。

ここで重要なのは、「完璧な数字」を出そうとしないことです。
修繕費も空室率も、実際には動くものなので、

  • 「この10年で、ざっくりこのくらいの修繕と、このくらいの家賃の変化がありそうだ」という“幅”の感覚。
  • 「それでも持ち続けたい」と思えるか、「そこまでして持つ意味は薄い」と感じるか。

を、自分なりの物差しで確認することが大切です。​

この点検をせず、「今は満室だから」とだけ考えていると、外部環境や物件の状態がじわじわ変化しているのに気づきにくくなります。
「気がついたら、出口の選択肢がかなり限られていた」という事態を避けるためにも、今の満室を5年・10年の視点で一度点検してみる価値は大きいと言えます。

「満室のうちに考えておくべき出口のパターン」

築古アパートの出口戦略として、代表的なパターンは次のようなものです。

  • アパートとして売却する(オーナーチェンジ)
  • 建物を解体して更地で売却する
  • 建て替えて、新しいアパートや別用途で再スタートする

【アパートとして売却する】

まだ入居率や収益性が維持できている段階であれば、「オーナーチェンジ物件」として売却するのが最も現実的な選択肢になることが多いです。​
この場合、「満室であること」は大きな強みになります。

ただし、

  • 賃料が周辺相場よりもかなり低くなっていないか。
  • 修繕履歴や今後の修繕リスクを、買い手に説明できる状態になっているか。

といった点を整えておくことで、「なぜこの価格なのか」を納得してもらいやすくなります。

【建物を解体して更地で売却する】

老朽化が進み、空室が増えてきた段階では、「アパートとして売る」のが難しくなるケースもあります。
その場合、建物を解体し、土地として売却するという選択肢もあります。

ただし、

  • 解体費用がかかる。
  • 更地価格が、アパートとしての売却価格より低くなることもある。

といった点を踏まえたうえで、「どの段階でこの選択肢が現実的になるか」を早めに検討しておく必要があります。

【建て替えて再スタートする】

エリアとしての賃貸需要が今後も見込める場合、「築古アパートを一度解体し、新築アパートとして再スタートする」という戦略もあります。
この場合、

  • 土地のポテンシャル(立地・用途地域・容積率など)。
  • 建築費と新しい賃料水準を踏まえた収支。

を見ながら、「どのタイミングで建て替えるのが現実的か」を検討していくことになります。

これらの出口パターンは、どれか一つに絞る必要はありません。
「まずはオーナーチェンジでの売却を第一候補とし、難しい場合は更地売却や建て替えも視野に入れる」といった形で、“順番”として持っておくだけでも、判断のブレは抑えやすくなります。​

まとめ|「満室だから様子見」ではなく、「満室のうちに出口を描いておく」

築古アパートを「とりあえず満室だから」という理由だけで持ち続けていると、気づいたときには築年数や修繕リスクが進み、「売るにも直すにも動きづらい」状態に陥りやすくなります。
その背景には、

  • 「満室=順調」という思い込みで、将来の空室リスクや競合環境の変化を見落としがちなこと。​
  • 築年数と修繕の節目が、出口の選択肢(売却・建替え・用途変更)に大きく影響すること。
  • 5年・10年スパンでの見直しをしないまま、「今は大丈夫」と先送りし続けてしまうこと。

があります。

大切なのは、「満室だから様子見」ではなく、「満室のうちに出口を描いておく」という発想に切り替えることです。
いつまで持つ前提なのか、どのタイミングで売却や建替え、別の土地活用(駐車場・戸建て・新築アパートなど)を視野に入れるのか──そのイメージを持っておくだけでも、築古アパートの出口で慌てずに済む可能性は高まります。

「今は満室だからこそ」、一度立ち止まって、自分のアパートの10年後をイメージしてみてください。
その小さな作業が、「何となく保有を続ける」状態から抜け出し、納得のいく出口戦略につながっていきます。