【賃貸経営】2026年税制改正で賃貸不動産の相続税評価はどう変わる?関東のアパートオーナーが「子どもに迷惑をかけない」ための3つの相続対策
2026/02/04
目次
はじめに:2026年税制改正のニュースを見て不安になっているオーナーへ
最近、「2026年税制改正で賃貸不動産の相続税節税が封じられる」「相続前5年以内に取得したアパートは時価評価へ」といったニュースやコラムを目にする機会が増えました。
東京・千葉・神奈川・埼玉・茨城・栃木といった関東エリアでアパートや賃貸マンションを持っているオーナーの中には、「相続税対策でアパートを建てたのに、これからどうなるんだろう」と不安になっている方も多いはずです。
まず最初にお伝えしたいのは、「2026年の税制改正で、すべての賃貸不動産の相続税対策が無意味になるわけではない」という点です。
どのくらい影響を受けるかは「いつ・どんな目的で・どのような物件を取得したか」によって大きく変わります。
この記事では、2026年税制改正のうち賃貸不動産と相続に関わるポイントだけを、関東の個人オーナー向けにわかりやすく整理します。
そのうえで、「子どもに迷惑をかけない相続」を実現するために、今から取れる3つの実務的な対策を解説します。
2026年税制改正「5年ルール」を、相続オーナー向けにざっくり解説
今回、多くの賃貸オーナーが気にしているのが、いわゆる**「5年ルール」**と呼ばれる貸付用不動産の評価見直しです。
どんな不動産が対象になりそうか
公表されている情報を整理すると、対象のイメージは次のようになります。
- 相続開始前5年以内に
- 現金や預金などで購入した賃貸用不動産
- 新築した賃貸アパート・賃貸マンション
- 特に、「相続税評価額より実勢価格が大幅に高い」ことを利用した節税スキームを抑えたい狙いがあるとされています。
これまでは、路線価や固定資産税評価額をベースに、「貸家建付地」「貸家」として一定の評価減を受けることで、現金よりも相続税評価を下げられるケースが多くありました。
2026年の改正では、相続直前5年以内に取得した賃貸用不動産について、時価に近い評価や、取得価額ベースの8割程度で評価するといった方向性が示されています。
いつから影響が出そうか
- 令和8年度(2026年度)税制改正大綱として決定後、
- 概ね2027年以降の相続・贈与から適用される見込みとされています。
2026年中の相続については、基本的には現行ルールが適用されると見込まれていますが、従来から存在する「総則6項」(著しい節税のみを目的とした取引に対して否認されうる規定)の適用リスクは引き続き残ります。
すべての賃貸物件に5年ルールがかかるわけではない
重要なのは、相続開始前5年以内に取得した賃貸用不動産が主なターゲットになっている点です。
- 10〜20年前から保有しているアパート・マンション
- 親の代から長期保有している貸家
- 元々収益性を重視して購入した賃貸用不動産
こうした「長期保有の賃貸不動産」は、5年ルールの直接の対象にはならないとされています。
もちろん、将来さらに評価方法が見直される可能性はありますが、「今すぐすべての賃貸物件が相続税対策として意味を失う」という話ではありません。
「相続税対策で建てたアパート」はどこまで危ないのか?ケース別に整理
同じ「アパート」でも、取得の経緯によって2026年改正の影響度は大きく変わります。
影響が大きい可能性が高いケース
次のような物件は、5年ルールの影響を強く受ける可能性があります。
- この数年(2022〜2026年頃)に、「相続税対策ができます」と勧められて新築アパートを建てた/購入した
- 提案の主な売り文句が、
- 「現金で持つより相続税評価を大きく下げられる」
- 「借入を使えば評価がほとんどゼロになる」
など、「節税メリット」が前面に出ていた
- 立地や収益性よりも、「評価差(時価と相続税評価の差)」だけを強調したスキームだった
このような物件は、相続直前にお金で買った賃貸用不動産として、取得価額ベースに近い評価をされる可能性が指摘されています。
つまり、「現金をアパートに変えたから評価が半分になる」という従来の前提が崩れるリスクがあるわけです。
影響が比較的小さいケース
一方で、次のようなケースは、5年ルールによる直接の影響は限定的と考えられています。
- 10〜20年以上前から保有している賃貸物件
- 親や祖父母の代から引き継いだアパート・貸家
- 元々、キャッシュフロー・利回り・立地条件など、収益性を重視して購入した賃貸用不動産で、節税は「結果としてついてきている」ようなケース
ただし、長期保有の物件であっても、将来の税制改正や評価方法の見直しが完全にないとは言えないため、「影響ゼロ」と断言はできません。
それでも、「直近5年で節税目的だけで建てたアパート」と比べれば、優先度は下がると考えるのが現実的です。
自分の物件がどちら寄りかを確認するチェック
ざっくりと以下の3点を確認してみてください。
- 取得(新築・購入)したのはいつか
- 「2022〜2026年頃」「それ以前」
- 取得の動機は何か
- 「銀行やハウスメーカーに節税になると言われて建てた」
- 「立地が良く、長期運用を前提に収益目的で買った」
- 現在の評価はどうか
- 路線価・固定資産税評価額から計算した相続税評価と、実際に売れそうな価格(実勢価格)に大きな差があるか
これを整理するだけでも、「自分の物件が、今回の改正の中心ターゲットに近いのかどうか」の感触がつかめます。
「相続税が減ればOK」では危ない3つの理由
ここからは、税制改正そのものよりも重要な話です。
それは、「相続税が減るかどうか」だけに目を奪われると、子ども世代にとってはかえって迷惑な相続になりかねないということです。
理由1:相続人から見れば「赤字物件+多額ローン」は資産ではなく負債
節税のためにアパートを建てたものの、
- 空室が多い
- 修繕費がかさむ
- ローン返済が重い
といった状態だと、**相続した子どもにとっては「毎月お金が出ていく物件」になってしまいます。
親世代が「相続税が減ったからよかった」と思っていても、子ども世代から見れば「ローンと修繕だけ背負わされた」と感じるケースも少なくありません。
特に、関東でも郊外・地方寄りのエリア(茨城・栃木、千葉・埼玉の駅遠エリアなど)では、今後の賃貸需要が読みにくく、「節税のために建てたが、その後空室に苦しんでいる」という事例が指摘されています。
理由2:税制は変わっても、空室・修繕・老朽化の現実は変わらない
税制改正は数年おきに行われますが、物件の築年数や設備の老朽化は止まりません。
- 築20年を超えると、大規模修繕や設備交換のコストが増える
- 競合物件が増えれば、賃料を下げざるをえなくなる
- 高齢化でオーナー自身が管理に関われなくなる
こうした現実を無視して、「相続税評価が下がるから」という理由だけで物件を持ち続けると、相続税以上にキャッシュフローと精神的負担が重くなってしまう場合があります。
理由3:兄弟間の相続トラブルが「相続税の節約分」をあっさり吹き飛ばす
アパートや賃貸マンションは、現金と違ってきれいに分けにくい資産です。
- 長男がアパートを相続
- 次男・長女は現金で調整
- しかし、アパートの評価や今後の収益性について、兄弟間で認識が違う
このようなケースで、遺産分割協議やその後の運営でトラブルになる例が増えています。
節税のつもりで建てたアパートが、結果的に「兄弟の関係を壊す火種」になってしまっては本末転倒です。
対策1:自分の賃貸不動産の「相続税評価」と「時価」を見える化する
では、関東のアパートオーナーは何から始めればいいのでしょうか。
最初のステップは、「自分の賃貸不動産が、相続の観点でどう見えるのか」を数字で見える化することです。
相続税評価額をざっくり把握する
相続税評価額は、主に以下の情報から計算されます。
- 土地:路線価 × 面積 × 各種補正(奥行き・形状など)
- 建物:固定資産税評価額
- 賃貸用不動産の場合:
- 土地は「貸家建付地」として一定割合減額
- 建物は「貸家」として一定割合減額
具体的な計算は税理士や相続専門家に任せるとしても、**「路線価」と「固定資産税評価額」**は自分でも確認できます。
- 路線価:国税庁の路線価図で番地ごとの評価を確認(オンライン公開)
- 固定資産税評価額:毎年届く固定資産税の納税通知書に記載
これらをもとに、**「自分のアパート1棟で、相続税評価がいくらくらいになるのか」**を、ざっくりでも知っておくと、全体像がつかみやすくなります。
実際に売れる価格(時価)も把握する
同時に重要なのが、**「もし売却した場合にいくらで売れそうか」という実勢価格(時価)**です。
- 不動産会社に価格査定を依頼する
- 近隣の成約事例・売出し事例を調べる
これにより、
- 相続税評価額:例えば5,000万円
- 実勢価格:例えば7,000万円
といった**「評価差」**を確認できます。
2026年改正の5年ルールは、まさにこの「評価差」を狙い撃ちにしているため、自分の物件の評価差を知っておくことは非常に重要です。
「節税額」と「経営リスク」を同じ土俵で比較する
上記の情報をもとに、ざっくりで構わないので次のような比較をしてみてください。
- アパートを持っていることで、現金と比べて相続税がどれくらい減りそうか
- その代わりに、
- 毎年のキャッシュフローはどのくらいか
- 将来の大規模修繕費はどのくらい見込まれるか
- 空室・老朽化・管理の手間といった「経営リスク」はどの程度か
相続税の節約額と賃貸経営のリスク・手間を、同じ土俵で見比べることで、「この物件を本当に子どもに残すべきか」という判断材料が、かなりクリアになります。
対策2:「相続後どうするか」のシナリオを3パターン描いてみる
次に大切なのは、**「相続が起きた後、この物件をどう扱うか」**をイメージしておくことです。
ここでは、分かりやすく3つのシナリオに分けて考えてみます。
シナリオA:今のまま個人名義で保有し、そのまま相続する
もっともシンプルなのが、「何もしない」シナリオです。
- メリット
- 手続きが比較的シンプル(遺言書+相続登記で引き継げる)
- 現在の賃料・ローン条件・管理体制をそのまま維持できる
- デメリット
- 相続時にまとめて相続税がかかる
- 子どもが複数いる場合、「誰がアパートを持つか」「どう分けるか」で揉めやすい
- ローン・管理・修繕の負担が、相続発生のタイミングで一気に子ども世代にのしかかる
関東のオーナーの多くは、何も対策をしなければこのシナリオAになります。
**「このままで本当にいいのか?」**を考える叩き台と捉えてください。
シナリオB:一部売却+一部保有で、現金と不動産をバランスよく残す
次に考えたいのが、収益性の低い物件から順番に売却し、残す物件を絞るシナリオです。
- 空室が多い、修繕費がかさむ、将来性が低い物件から売却して、
- 相続税の納税資金
- 子ども間の現金による調整原資
をあらかじめ確保する。
- メリット
- 「残す物件」「手放す物件」を親の代で整理できる
- 子どもが複数いても、現金を交えた分配がしやすくなる
- デメリット
- 売却のタイミングや価格によっては、思ったほど資金が残らない
- 売却益に対して譲渡所得税がかかる可能性がある
特に、すでに収益性が悪化している物件や、今後の修繕負担が重くなりそうな物件は、このシナリオで早めに整理する価値が高いと言えます。
シナリオC:贈与・法人化・家族信託などを組み合わせて、段階的に承継する
最後は、相続発生を待たずに、少しずつ承継していくシナリオです。
- 例1:相続時精算課税制度を使って、2026年中に一部の賃貸不動産を子どもに贈与し、「評価を固定」しておく。
- 例2:賃貸不動産を法人に移し、不動産そのものではなく法人の株を承継させる形にする(いわゆる法人化)。
- 例3:家族信託を使って、管理権限だけ子どもに移し、収益や最終的な承継先を信託契約で指定する。
- メリット
- 相続時の負担を平準化できる
- 親の判断能力低下(認知症など)に備えやすい
- 「誰が引き継ぐか」「どう管理するか」を事前に決めておける
- デメリット
- 手続きが複雑で、専門家のサポートが必須
- 贈与税・登録免許税など、初期コストが発生する
ここで大事なのは、最初から完璧なシナリオを作ろうとしないことです。
まずは、ざっくりとA・B・Cのどれに近い形で家族に引き継ぎたいかを考え、そのうえで専門家と一緒に具体化していくイメージで十分です。
対策3:2026年のうちに「相続と賃貸経営をまとめて見てくれる窓口」に相談する
2026年税制改正は、かなり専門的な内容を含みます。
さらに、税金だけでなく、賃貸経営の収益性・修繕・売却のタイミングなど、複数の視点を同時に考える必要があります。
なぜ「窓口選び」が重要なのか
- 税理士
- 相続税・贈与税・所得税といった税金のプロ
- ただし、物件の収益性や売却タイミング、賃貸経営の現場感は、必ずしも得意とは限らない
- 不動産会社・ハウスメーカー
- 売却・建築の提案は得意
- ただし、「相続税」や「家族全体の資産バランス」には中立的とは限らない
- 金融機関
- ローンや資金計画には強い
- ただし、物件の将来性や家族関係までは踏み込めないことが多い
誰か一人にだけ相談すると、「部分最適」な提案に偏りやすいのが実態です。
そのため、「相続税」「賃貸経営(収益性)」「不動産の売却・活用」をワンセットで見てくれる窓口を持つことが理想的です。
相談前に準備しておきたい情報
相談をスムーズに進めるために、最低限以下の情報を整理しておくと良いでしょう。
- 物件情報
- 所在地・構造・築年数・戸数
- 現在の入居状況・賃料
- 過去の大きな修繕履歴
- ローン残高・金利・残期間
- 家族の情報
- 法定相続人(配偶者・子どもなど)
- 誰が賃貸経営に関わる意思があるか
- 相続人それぞれの希望(本音ベースでわかる範囲でOK)
- 現在の収支
- 年間の家賃収入総額
- 年間の経費(管理費・修繕費・固定資産税など)
- 現在のキャッシュフロー(手元にいくら残っているか)
これらを整理したうえで相談すれば、**「2026年改正を踏まえた、あなたの家族に合った相続プラン」**を具体的に検討しやすくなります。
よくある相続の疑問Q&A
Q1:2026年の税制改正で、アパートの相続税対策はもう意味がなくなる?
A:「一部の短期保有スキームに風当たりが強くなる」というのが実態で、長期保有の賃貸不動産まで一括で否定されたわけではありません。
ただし、「節税だけ」を目的にした新規アパート建築は、今後ますます厳しく見られる可能性があります。
Q2:2026〜2027年までに、急いでアパートを売った方がいい?
A:取得時期・収益性・家族構成によって答えは変わります。
「節税目的でここ数年に建てた新築アパート」など、5年ルールの影響が大きそうな物件は早期売却を検討する価値がありますが、一律に「とにかく売れ」という話ではありません。
Q3:今から新築アパートを建てても、相続税対策にはならない?
A:「短期で評価を一気に下げる節税スキーム」としては難しくなりますが、「長期保有+収益性重視」の賃貸不動産は依然として相続対策の選択肢になり得ます。
ただし、これまで以上に「立地」と「収益性」を厳しく見る必要があります。
Q4:子どもに全部任せるつもりだから、特に何もしなくていい?
A:何もしないと、相続が発生した瞬間に、すべての判断と負担が子どもに丸投げされます。
「誰に引き継がせるのか」「売る前提なのか、持つ前提なのか」だけでも、生前に話し合っておくことで、相続後の混乱を大きく減らせます。
まとめ:2026年は「節税」ではなく「何をどう残すか」を見直す年
2026年税制改正は、「節税目的だけで賃貸不動産を利用するスキーム」に対して、国が明確にブレーキをかけ始めたサインと言えます。
しかし、それは同時に、「本当に意味のある賃貸不動産だけを、次の世代にどう残すか」を考え直すチャンスでもあります。
関東の個人オーナーとして、まず取り組みたいのは次の3つです。
- 自分の賃貸不動産の「相続税評価」と「時価」、そして「収益性」を見える化すること。
- 「このまま全部残す」のではなく、「残す物件」「手放す物件」「形を変える物件」のシナリオを家族と一緒に考えること。
- 2026年のうちに一度、「相続」と「賃貸経営」をまとめて相談できる専門窓口に、現状を診てもらうこと。
「相続税がいくら減るか」だけでなく、
- 子どもがその物件を引き継いだとき、本当に助かるのか
- 管理やローンを含めて、家族の人生にどんな影響が出るのか
まで含めて考えることが、オーナーとしての最後の大事な仕事と言えるかもしれません。
自分だけで判断するのが難しいと感じたら、数字と家族の状況を整理したうえで、早めに相談の場を持つことをおすすめします。
「今のうちに方向性だけでも決めておく」ことが、将来の相続トラブルと子どもの負担を大きく減らしてくれます。