【賃貸経営】確定申告で「賃貸経営が赤字」だった人へ。数字の見方と、「いい赤字・悪い赤字」を仕分ける5つのチェック項目
2026/02/04
確定申告の数字を見て、「今年も賃貸が赤字だったけど、このままで本当に大丈夫なのか」と不安になっているオーナーは少なくありません。
税金は減っているものの、毎年のように赤字が続くと、「この赤字は節税なのか、単なる失敗なのか」が分からなくなってきます。
じつは、賃貸経営の赤字には「税金面ではプラスに働き、将来の収益にもつながる“いい赤字”」と、「放置するとキャッシュが枯れてしまう“悪い赤字”」があります。
確定申告のタイミングは、申告書と通帳を見比べながら、自分の赤字がどちらなのかを冷静に仕分ける絶好のチャンスです。
この記事では、確定申告書を手元に置きながら、「いい赤字・悪い赤字」を5つのチェック項目で判定し、来年以降の対策を決めるための視点を整理します。
目次
第1章 まず「税務上の赤字」と「お金の赤字」を分けて考える
最初に整理したいのは、「税務上の赤字」と「実際のお金の赤字(キャッシュフロー)」を切り分けて考えることです。
確定申告書に出る不動産所得は、「家賃収入などの総収入」から「必要経費(管理費・修繕費・減価償却費・借入金利子など)」を差し引いて計算されます。
そのため、帳簿上の赤字には、次の2パターンがあります。
- 現金は出ていないけれど、帳簿上費用になっている(減価償却のような)要素で赤字になっている
- 実際に現金が出ていく支出(修繕・ローン返済など)が多く、本当に手元のお金も減っている
確定申告の数字だけを見て「赤字だからダメだ」と判断するのではなく、「帳簿の赤字なのか、お金の赤字なのか」を分けて見ることが、最初の一歩です。
第2章 損益通算で税金が軽くなる「いい赤字」とは
多くの兼業オーナーが気になるのが、「賃貸の赤字が他の所得(給与など)と損益通算できて、結果として税金が軽くなる」という点です。
損益通算が使える状況で、かつ将来の収益に結びつく投資が原因の赤字なら、それは「いい赤字」と言えます。
典型的な「いい赤字」のパターンは、次のようなケースです。
- 新築や築浅物件で減価償却費が大きく、帳簿上は赤字だが、毎月の家賃からローン返済・管理費を差し引いても手元に現金が残っている
- 今後の賃料維持や値上げを狙って、エアコン総入れ替えや大規模修繕など、将来価値を高める投資をまとめて行った年の一時的な赤字
こうした赤字は、
「手元のお金はちゃんと残っている」
「物件の価値や競争力を高めている」
という意味で、“投資として許容できる赤字”です。
もちろん、投資額が過大すぎれば話は別ですが、「将来の収入をつくるための赤字」かどうかは、判断の大きなポイントになります。
第3章 放置すると危ない「悪い赤字」とは
一方で、「損益通算で税金が戻ってくるから大丈夫」と考えるのが危険な赤字もあります。
それが、空室・家賃設定・ローン・修繕のバランスが崩れた結果として、毎年のように資金繰りが苦しくなっていく“悪い赤字”です。
悪い赤字には、次のような特徴があります。
- 3年、5年と連続してキャッシュフロー(実際の現金)がマイナスになっている
- 空室が多く、家賃収入がローン返済と固定費に追いついていない
- 家賃を下げざるを得ず、返済や修繕に回す余力がどんどん失われている
このタイプの赤字は、「損益通算で税金が減る」ことを理由に見過ごしてはいけません。
税金の軽減効果より、毎年の持ち出しの方が大きく、数年スパンで見ると、家計全体をじわじわと圧迫していきます。
第4章 確定申告書と通帳で行う「5つのチェック項目」
ここからは、実際に確定申告書と通帳を手元に置きながら、「いい赤字・悪い赤字」を仕分ける5つのチェックをしていきます。
チェック1:キャッシュフローはプラスか
- 1年間の家賃収入
- 管理費・修繕費・固定資産税などの支出
- ローン元金+利息の支払い
これらをざっくり合算して、「1年トータルで現金はいくら残ったか」を計算します。
帳簿上赤字でも、現金がしっかり残っているなら、その赤字は「許容できる投資」の可能性があります。
反対に、毎年のように持ち出しが発生している場合は、悪い赤字に近づいているサインです。
チェック2:赤字の主な原因は何か
赤字の原因は大きく3つに分かれます。
- 減価償却・一時的な修繕など「投資系」の支出
- 空室・家賃設定ミスによる収入不足
- ローン条件(返済額や金利)が重すぎる
「投資系」が理由なら一時的な赤字として割り切れますが、空室やローンが原因の場合は、構造的な見直しが必要になってきます。
チェック3:直近3年の赤字・黒字の推移
- 3年前
- 2年前
- 今年
この3年分の賃貸の損益とキャッシュフローを並べてみて、「良くなっているのか、悪くなっているのか」を確認します。
一時的な赤字であれば、翌年以降で回復していくグラフになりますが、悪い赤字は「じわじわ悪化している」という形で現れます。
チェック4:周辺相場と比べた空室・家賃
- 空室率は、同エリア・同グレードの物件に比べて高くないか
- 家賃設定は、周辺の競合と比べて割高になっていないか
ここがズレていると、いくら節税の計算をしても根本的な問題は解決しません。
「賃料を少し下げてでも満室に近づけた方が、トータルでは収入が増える」ケースも多いので、冷静に数字で比較することが大切です。
チェック5:この赤字は「いつまで続く設計」になっているか
最後に、「この状態があと何年続くと想定しているか」を自問自答してみてください。
- 減価償却が厚い最初の10年だけ赤字、その後は黒字に転じる設計なのか
- ローン完済までずっと赤字のままの計画になってしまっていないか
- エリアの将来需要を見ても、今の条件では黒字化が難しそうか
「いずれ黒字化するシナリオが見えている赤字」なのか、「終わりの見えない赤字」なのかで、取るべき戦略はまったく変わります。
第5章 悪い赤字だった場合にやるべき順番
チェックの結果、「これは悪い赤字に近い」と感じた場合、何から手を付けるかが重要です。
いきなり大きな決断(売却・建て替え)をする必要はありません。
- 募集条件と家賃の見直し
- 写真・間取り・コメント・ターゲットを見直し、まずは空室を埋める
- ローン条件の確認
- 金利交渉・期間延長・借り換えなどで、返済負担を軽くできないか検討
- 管理会社・修繕方針のチェック
- 管理の質とコストが見合っているか、修繕計画があるかを確認
- それでも厳しければ、縮小・売却・建替えも含めてシミュレーション
この順番で「できること」を一つずつ整理していくと、感情的に焦るのではなく、冷静に選択肢を比較できるようになります。
第6章 確定申告は「結果を見る日」ではなく「次の一手を決める日」
確定申告は、多くのオーナーにとって「結果を報告する日」になりがちです。
ですが、本来は「数字を見ながら、次の一年の戦い方を決める日」として使う方が、賃貸経営の質はぐっと上がります。
- 今年の赤字は、いい赤字か、悪い赤字か
- 来年の申告書を「どういう形」にしたいのか(赤字を減らすのか、黒字化するのか)
- そのために、今から何をいつまでにやるのか
この3つを、メモ書きでもいいので確定申告書のコピーに書き込んでおくと、「ただ申告して終わり」にならず、次のアクションに結びつきます。
もし自分だけでは判断がつかないと感じたら、数字と物件の状況を整理したうえで、一度第三者に「今の赤字がどちら側なのか」を診てもらうのも一つの手です。