第12章 大規模修繕の工事項目一覧と概要|マンション大規模修繕で行う主な工事内容とは?仮設・外壁・防水・設備・バリューアップまで工事項目を一気に解説
2026/02/04
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目次
12-1. 工事項目を「セット」で捉える
大規模修繕の工事は、バラバラの作業の寄せ集めではなく、建物を一周する一連のセットとして進みます。
典型的な流れは、
- 仮設工事
- 高圧洗浄
- 下地補修・タイル補修
- シーリング工事
- 塗装工事
- 防水工事
- 建具・金物・設備関連の改修
- バリューアップ工事(必要に応じて)
という構成です。
ここでは、代表的な工事項目ごとに「目的・やること・ポイント」を整理します。
12-2. 仮設工事(足場・仮囲い・養生 等)の役割
12-2-1. 仮設工事とは
仮設工事は、実際の補修・塗装・防水工事を安全かつ効率的に行うための「準備の工事」です。
主な内容は次のとおりです。
- 足場の設置(外壁・バルコニー側・共用廊下側など)
- 養生ネット・シート(落下物防止・塗料や高圧洗浄水の飛散防止)
- 仮囲い・資材置場・現場事務所・仮設トイレの設置
- 仮設電気・仮設水道の引き込み
足場がなければ外壁やバルコニーの補修・塗装・シーリングはできないため、大規模修繕のスタートラインにあたる工事です。
12-2-2. 仮設工事のポイント
- 安全性:手すり・先行手すり・階段・出入口など、作業員・居住者双方の安全確保が最優先。
- 住民生活への影響:出入口動線、駐車場・駐輪場の一時閉鎖、視線・採光への影響を事前に説明しておく。
- コスト:足場は工事費の中でも大きな割合を占めるため、「今回の足場で何をまとめてやるか」が重要になります。
- 現場事務所が不要の場合など工事に直接関係のない経費をカットできる項目でもある。
12-3. 下地補修工事・タイル補修工事の基本
12-3-1. 下地補修工事とは
「下地補修工事」は、仕上げ材の下にあるコンクリートやモルタルの傷みを補修する工事です。
主な目的は、
- ひび割れ・欠損・爆裂(鉄筋露出)などを補修して躯体を保護する
- 仕上げ材(塗装・タイル)が長持ちするように下地を整える
ことです。
補修内容の例:
- ひび割れ補修(樹脂注入・Uカット+シーリング・表面シールなど)
- 欠損部補修(断面修復材の充填)
- 爆裂部補修(腐食した鉄筋の補修・防錆+断面修復)
12-3-2. タイル補修工事とは
タイル補修工事は、外壁タイルの「浮き」「剥落」「ひび割れ」「欠損」を補修する工事です。
主な工法:
- 浮き補修:アンカーピンニング工法(ピン+樹脂注入)など
- 剥落防止:部分張替えやエポキシ樹脂充填
- ひび割れ・欠け:張替え・樹脂充填・目地補修など
タイルは見た目だけでなく、落下すると重大事故につながるため、安全性の観点からも重要な工事項目です。
12-4. シーリング工事(打替え・増し打ち)の考え方
12-4-1. シーリング工事の役割
シーリングは、外壁目地・サッシまわり・タイル目地などの「隙間」を埋めて、雨水の侵入や空気の流入を防ぐ役割を持つ弾性材です。
経年劣化により、
- ひび割れ
- 硬化・収縮
- 剥離
が進むと、防水ラインが切れて漏水リスクが高まります。
12-4-2. 打替え工事と増し打ち工事
シーリングの更新方法は大きく2種類あります。
- 打替え:既存のシーリング材を完全に撤去し、新しいシーリングを充填する方法。
- コストは高いが、防水性・耐久性が高く、基本的に大規模修繕ではこちらが主流です。
- 増し打ち:既存のシーリングの上から新しいシーリングを重ねる方法。
- 一時的な補修や、撤去が困難な部位に限定して使われることが多いです。
一般的には、サッシ周りや外壁目地などは「全面打替え」を前提に検討し、部位によって増し打ちを組み合わせるかどうかを決めます。
12-4-3. シーリング工事のポイント
- 使用するシーリング材の種類(変成シリコン・ウレタンなど)と耐候性グレードを仕様で明確にする。
- 目地の清掃・プライマー塗布など、下地処理を丁寧に行うことが寿命を左右する。
- 打設後の養生時間(硬化時間)や温度・湿度条件も品質に影響するため、施工管理のポイントになります。
12-5. 外壁・鉄部・天井等の塗装工事概要
12-5-1. 外壁塗装工事
外壁塗装は、建物の美観回復だけでなく、躯体保護(防水性・耐候性)の役割があります。
主な流れ:
- 高圧洗浄(汚れ・カビ・旧塗膜の除去)
- 下地補修(ひび割れ・欠損補修)
- シーラー・フィラー等の下塗り
- 中塗り・上塗り(2回塗りが基本)
塗料の種類(アクリル・ウレタン・シリコン・フッ素・無機系など)により耐久性と価格が変わり、次回大規模修繕の周期とのバランスを見て選定します。
12-5-2. 鉄部塗装工事
鉄部塗装は、錆びや腐食から金属部材を守るための工事です。
対象例:
- 手すり・フェンス
- 階段・踊場の鉄骨
- 架台・配管支持金物
- ルーバー・庇・扉など
流れは、
- ケレン(錆落とし)
- 錆止め塗装
- 中塗り・上塗り
というステップで、下地処理の丁寧さが寿命に直結します。
12-5-3. 天井・軒天塗装
共用廊下・バルコニーの天井(軒天)は、雨水浸入や結露によるシミ・カビ・塗膜剥がれが起きやすい部位です。
- 下地の浮き・剥がれがあれば補修し、必要に応じて換気口などの改善も検討します。
- 防カビ性の高い塗料を選ぶケースも多く、見た目と衛生面の両方を改善する工事項目です。
12-6. 屋上・バルコニー・廊下の防水工事概要
12-6-1. 屋上防水工事
屋上防水は、建物内部への雨水侵入を防ぐ「最後の砦」です。
主な工法:
- アスファルト防水(トーチ工法など)
- シート防水(塩ビシート・ゴムシート)
- ウレタン塗膜防水
既存防水層の状態や勾配・下地の状況、荷重制限などを踏まえて工法を選定します。
防水層の更新周期はおおむね12〜20年程度が目安とされることが多く、大規模修繕の中核工事のひとつです。
12-6-2. バルコニー・廊下・階段の防水・床工事
バルコニー・共用廊下・外階段の床は、歩行と雨水の両方にさらされるため、防水性と防滑性を両立する仕上げが求められます。
- 長尺シート(防滑性のあるシート)
- ウレタン塗膜防水+トップコート
- タイル・モルタル仕上げの補修+防水
雨水が溜まりやすい箇所では、勾配調整や排水口の改善も合わせて検討します。
12-7. 取替修繕(手すり・金物・サッシ周り 等)
12-7-1. 手すり・金物工事
手すり・フェンス・金物は、経年劣化で腐食・ぐらつきが進むと安全上のリスクになります。
- 手すり・笠木の補強・交換
- フェンスや目隠し板の更新
- 雨樋・庇・ルーバー・金物の交換・補強
腐食が軽微な場合は補修・塗装で対応しますが、耐用年数を超えている場合は部分的・全体的な取替えを検討します。
12-7-2. サッシまわり・建具関連
- サッシ枠周りのシーリング打替え(防水性能確保)
- 共用部建具(玄関扉外側・非常扉・メンテナンス扉)の補修・塗装・必要に応じた交換
- 避難ハッチ・避難ハシゴの点検・補修(非常時の安全確保)
サッシ本体の交換は、共用部なのか専有部なのかの扱いが管理規約により異なるため、事前に位置づけを確認しておく必要があります。
12-8. 設備関連の改修(給排水・電気・インターホン 等)
12-8-1. 給排水設備の改修
築年数が進むと、給排水配管・受水槽・ポンプなどの設備も更新時期を迎えます。
代表的な改修内容:
- 受水槽から直結増圧方式への変更(自治体の水道事情による)
- 鋼管から樹脂管への更新(錆び・赤水対策)
- 排水管の部分更新・ライニング工事
- 給水ポンプ・加圧ポンプの更新
これらは「単独の設備更新」として行うこともありますが、足場設置や天井開口が絡むため、大規模修繕のタイミングと合わせて検討するケースも多いです。
12-8-2. 電気設備・インターホン・防犯設備
- 共用照明のLED化(省エネ・メンテコスト低減)
- 分電盤・受変電設備の更新(安全性・信頼性向上)
- インターホン設備の更新(カメラ付き・モニター付きへのリニューアル)
- 防犯カメラ・オートロックの増設・更新(セキュリティ強化)
これらは「保全」と「バリューアップ」の両面を持つため、長期修繕計画と資金計画を踏まえて優先順位を検討します。
12-9. バリューアップ工事(デザイン・機能向上)
12-9-1. バリューアップ工事の位置づけ
バリューアップ工事は、単に傷んだ部分を直すだけでなく、デザインや機能を高めて資産価値・居住価値を向上させるための工事です。
- 維持・保全:性能を元に戻す
- バリューアップ:性能を高める・付加価値をつける
という違いがあります。
12-9-2. 代表的なバリューアップ工事の例
- デザイン・意匠:
- 外壁色の一新・ツートンカラー化
- エントランスホールのリニューアル(床・壁・照明・サイン計画)
- セキュリティ向上:
- オートロックの新設・更新
- 防犯カメラ増設・性能向上
- モニター付きインターホン・エレベーター内カメラ
- 省エネ・快適性:
- 断熱塗料・遮熱塗料の採用
- LED照明化+人感センサー・明るさセンサー
- 玄関ドアやサッシの断熱性向上(ケースによる)
- バリアフリー・利便性:
- スロープ設置・手すり追加
- 宅配ボックス・ベビーカー置き場・自転車ラック整備
12-9-3. バリューアップ工事を決めるときのポイント
- 「誰にとって」「どのくらいの期間」「どんなメリットがあるか」を見える化する(賃貸オーナー・自住者で価値の感じ方が違う)。
- ランニングコスト(光熱費・保守費)の削減効果を試算し、「投資回収」の目安を示す。
- デザイン変更は好みが分かれやすいため、カラーシミュレーションやモックアップ、お試し照明などで合意形成を図る。
12-10. この章のまとめと次章へのつながり
第12章では、大規模修繕で一般的に行われる工事項目を、「仮設」「下地・タイル」「シーリング」「塗装」「防水」「建具・金物」「設備」「バリューアップ」という8つのカテゴリに分けて整理しました。
ポイントは、どの工事項目も単独ではなく、「足場を掛けるこのタイミングで、優先度の高いものをどう組み合わせるか」という視点でセットとして考えることです。
次の第13章では、こうして決めた工事内容を実際に現場で形にしていく段階として、「工事中の管理と品質・安全・環境配慮」に焦点を当てます。工程管理・検査・安全対策・騒音や臭気への配慮など、工事を「計画どおり・安全に・約束の品質で」進めるためのチェックポイントを掘り下げていきます。
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