管理会社を変更するときの具体的な流れと、引き継ぎで失敗しないコツ
2026/02/09
目次
はじめに:「勢いで解約」が一番危ない
管理会社の対応に不満があっても、「とりあえず解約してから考えよう」という進め方は、もっともトラブルを生みやすいやり方です。
オーナーが守るべきポイントは、入居者の生活を止めず、家賃の流れを止めず、必要な情報を漏れなく新管理会社へ渡すことです。
この記事では、賃貸オーナー向けに「管理会社変更の全体の流れ」と「引き継ぎで失敗しないための具体的なコツ」を、ステップごとに整理します。
なお、「そもそも本当に変えるべきか」を確認したい方は、別記事「今の管理会社を『見直すべきか、そのまま任せるべきか』のチェックリスト」から読んでいただくのがおすすめです。
全体像:管理会社変更はこの5ステップで考える
多くの専門記事でも、管理会社変更の流れは次のようなステップで整理されています。
- 今の管理委託契約の内容・解約条件を確認する
- 不満点と「変えた先で叶えたいこと」を整理する
- 新しい管理会社を比較・選定する
- 旧管理会社に解約通知を出し、新旧で引き継ぎを行う
- 入居者・保証会社などへの案内を行い、新管理会社が業務開始する
この順番を崩さないことが、トラブルを減らす第一のコツです。
とくに「②③を飛ばして、先に解約してしまう」と、受け皿がないまま管理空白期間が生まれ、家賃の入金やクレーム対応が止まるリスクが高くなります。
ステップ1:今の管理委託契約と解約条件を確認する
3-1.解約の「いつ・どうやって・いくら」が最重要
最初に確認すべきは、現在の管理委託契約書の次のポイントです。
- 契約形態(普通・自動更新、期間)
- 解約の予告期間(○か月前通知が必要か)
- 中途解約違約金の有無・金額
- 解約通知の方法(書面・内容証明など)
ここを確認せずに感情的に解約を切り出すと、「まだ契約期間中なので違約金が発生します」といった余計なコストが発生しかねません。
3-2.解約日から逆算してスケジュールを組む
解約のルールが分かったら、「解約効力発生日」を起点に、そこから逆算してスケジュールを組みます。
例:
- 契約上、「3か月前までに解約通知」となっている場合
- 4月末で解約したければ、1月末までに通知が必要
- 1月末までに「新管理会社の選定」と「引き継ぎの段取り」をつけておくのが理想
この逆算思考を外すと、「解約は決まったが、新しい管理会社がまだ決まっていない」という空白期間が生まれやすくなります。
ステップ2:不満点と「変えた先で叶えたいこと」を整理する
4-1.不満を「改善要望」と「完全にアウト」に仕分ける
管理会社を変える前に、「不満の中身」を整理しておきます。
- 改善を求めれば済むレベルのもの(報告頻度、担当者の変更など)
- 会社としての方針・体制の問題で、改善が見込みづらいもの(コンプラ意識、募集姿勢など)
後者が多いほど、「会社ごと変えた方がいい」状況に近づきますが、この整理をしておくことで、新しい管理会社に「なぜ変えたいのか」「何を改善したいのか」を具体的に伝えられます。
4-2.新管理会社に求める条件をリスト化する
- 募集力(ポータル掲載力、エリア実績、平均空室期間)
- 管理コスト(手数料率だけでなくトータルコスト)
- 報告・提案スタイル(頻度、ツール、レポート内容)
- 修繕対応力(小口工事〜大規模修繕への対応方針)
この「条件リスト」があるかどうかで、管理会社の比較と面談の質が大きく変わります。
なお、「条件整理の視点」が欲しい場合は、第1回の記事「チェックリスト」の各項目を、そのままリストとして活用できます。
ステップ3:新しい管理会社を比較・選定する
5-1.最低でも複数社から見積りと提案をとる
1社だけで決めず、少なくとも2〜3社から見積りと提案を取り、次のような観点で比較します。
- 管理委託料率・その他費用(広告料、更新事務手数料など)の総額
- 空室対策の具体策、賃料設定の考え方
- レポートの内容・頻度・担当者の経験
- 自物件と同規模・同エリアの実績の有無
安さだけで決めると、結局同じような不満が繰り返されることも少なくありません。
5-2.面談・現地同行で「担当者の温度感」を見る
- 物件の現地を一緒に見てもらい、指摘・提案の具体性を見る
- 質問への回答スピードと内容の的確さ
- 自社の都合ではなく、オーナーの収益視点で話をしているか
ここで感じる「相性」や「温度感」は、書類だけでは分からない大事な判断材料になります。
ステップ4:旧管理会社への解約通知と、新旧管理会社の引き継ぎ
6-1.解約通知は「新管理会社との契約が固まってから」
解約通知は、原則として「新管理会社と契約する目処が立ってから」出すのが安全です。
手順としては、次の順番を崩さないことがポイントです。
- 新管理会社を選定し、条件をすり合わせる
- 新管理会社と管理委託契約の内容を固める(署名前でも方向性を合意)
- そのスケジュールに合わせて、旧管理会社に解約通知を出す
こうすることで、「解約はしたが、受け皿がない」という事態を防げます。
6-2.引き継ぎで必要な主な書類・データ
引き継ぎ時に新管理会社へ渡すべき情報は、主に次のようなものです。
- 契約関係の書類
- 各戸の賃貸借契約書
- 家賃保証委託契約書
- レントロール(家賃表)
- 賃貸管理関係の書類
- 建物管理報告書・巡回記録
- 修繕履歴・点検報告書(法定点検含む)
- 家賃管理関係の情報
- 預り敷金の残高・内訳
- 現在の滞納状況
- 家賃振込先・送金スケジュール
- その他
- 保証会社との契約状況
- マスターキー・各戸の鍵
- 退去予定者リスト・入居予定者情報
これらは多くの場合、新旧の管理会社同士でやり取りされますが、オーナー自身も「何が渡るのか」を把握しておくことで、漏れやトラブルの早期発見につながります。
6-3.家賃の行き先を止めないためのコツ
- 引き継ぎ時期に家賃振込先が変わる場合は、オーナー名義または新管理会社名義で、入居者に書面で案内する
- 誤って旧管理会社へ振り込まれた場合の対応フローを、新旧管理会社と事前に決めておく
家賃の振込先変更は、管理会社変更に伴うトラブルとしてよく挙げられるポイントなので、慎重に進めましょう。
ステップ5:入居者・保証会社などへの案内と、新体制スタート
7-1.入居者への案内は「早めに・分かりやすく・一元化」
- 管理会社変更の事実
- 変更日(いつから新体制か)
- 家賃振込先の変更有無・内容
- 問い合わせ窓口(電話・メール)の変更点
これらを分かりやすくまとめた案内文を、新管理会社と相談して作成し、できれば1か月以上前には配布しておくと安心です。
入居者側にとっては、「オーナーが変わるわけではない」「契約条件はそのまま」という点も明確に伝えておくと、不安や誤解を減らせます。
7-2.管理開始後の「最初の3か月」でやっておきたいこと
新管理会社への切り替え後、最初の3か月は次のようなポイントを意識して様子を見ます。
- 報告頻度・内容は事前の約束どおりか
- 空室対策や賃料見直しの具体的な提案が出てきているか
- 入居者からのクレームや問い合わせ対応に問題はないか
この「最初の3か月」で感じたことは、後々の評価軸にもなります。
新管理会社との付き合い方や、変更後のチェックポイントについては、別記事「管理会社を変えたあとに『しまった』とならないための注意点とチェック項目」で詳しく整理しています。
よくあるトラブルと、その予防策
8-1.よくあるトラブル例
- 解約条件の見落としによる違約金・トラブル
- 引き継ぎ漏れによる滞納・敷金・鍵の混乱
- 家賃振込先変更の周知不足による誤振込
- 管理空白期間中のクレーム対応不在
8-2.予防のためのシンプルなコツ
- 必ず「契約書の確認」→「新管理会社選定」→「解約通知」→「引き継ぎ」→「入居者案内」の順番で進める
- 引き継ぎ書類のチェックリストを作り、新旧管理会社と共有する
- 入居者への案内は、新管理会社と一緒に文案を作り、早めに配布する
次に読むべき記事
- まだ「本当に変えるべきか」を悩んでいる方
→ 第1回「今の管理会社を『見直すべきか、そのまま任せるべきか』のチェックリスト」 - 変更後の評価軸や、新管理会社との付き合い方を知りたい方
→ 第3回「管理会社を変えたあとに『しまった』とならないための注意点とチェック項目」
この3本を通して、「なんとなく不満だから変える」のではなく、「数字と事実に基づいて、段取りよく変える」ための判断材料として活用していただければと思います。