【賃貸経営】賃貸経営がしんどくなってきた小規模オーナーへ。【第1回】無理をしない続け方の基本

「1棟だけだし、そんなに大変じゃないだろう。」
そう思ってアパートやマンションを持ったのに、気がつけば空室対応や入居者対応、修繕の判断などで頭がいっぱいになっている。
1棟・数室規模の小さな賃貸経営ほど、「戸数の割に手間とストレスだけが大きい」と感じやすいものです。
このシリーズでは、そんな小規模オーナーの方に向けて、「背伸びをしなくても続けられる賃貸経営」の考え方を全4回で整理していきます。
第1回のこの記事では、まず“無理をしない賃貸経営”とは何か、その基本となる考え方をお伝えします。

小規模オーナーが「無理をしてしまう」よくあるパターン

1棟・数室のオーナーの方とお話ししていると、「真面目だからこそ無理をしてしまう」場面がよくあります。

  • 何でも自分で判断しようとして、誰かに相談するタイミングを逃してしまう。
  • 空室やトラブルが起きるたびに、その場しのぎで対応してしまい、あとから同じ問題が繰り返される。
  • 本業や家庭のこともあるなかで、「賃貸のことを考えている時間」だけがじわじわ増え、気持ちが休まらない。

戸数が少ない分、
「プロに頼むほどでもないかな」
「自分で何とかしないといけない」
と抱え込みやすいのも、小規模オーナーの特徴です。

その結果、

  • 賃貸の電話が鳴るとドキッとする
  • 空室が出るたびに「またか」と気が重くなる
  • 修繕の見積りを見るたびに、お金の不安で眠れなくなる

といった状態になり、「もう賃貸経営自体をやめたい」と感じ始める方も少なくありません。

「無理をしない賃貸経営」のゴールイメージを決める

無理をしないためには、最初に「自分にとって、どんな状態なら“無理をしていない”と言えるのか」を決めておくことが大切です。
ここが曖昧なままだと、「せっかくやっているのだから、できるだけ頑張らないと」と、つい無理を重ねてしまいます。

例えば、次のような項目を一度考えてみてください。

  • 月にどれくらい、賃貸のことに時間を使えるか。
    • 例:月に○時間くらいまでなら対応できる、それ以上は負担に感じる。
  • 毎月の収支は、どのくらい残れば「良し」とできるか。
    • 例:ローンや固定資産税を払ったうえで、毎月○万円プラスなら続けてもいい。
  • 何歳くらいまで、今の形で賃貸経営を続けたいか。
    • 例:65歳までは積極的に続けたい、70歳を目安に負担を減らしたい、など。

この3つを考えていくと、
「自分は、収入だけでなく“時間”と“気力”も一緒に使っている」
という実感が湧いてきます。

そして、

  • 収入はこのくらいでいい
  • 代わりに、これ以上は時間もストレスもかけたくない

という、「自分なりの落としどころ」が見えてきます。
これが、無理をしない賃貸経営のゴールイメージの出発点です。

小規模オーナーが抱え込みがちな「3つの負担」

賃貸経営の負担を整理するうえで、頭の中だけで考えるとごちゃごちゃになりがちです。
そこで、いったん負担を3つに分けて考えてみましょう。

1. 事務・手続きの負担

  • 契約書のやり取り
  • 更新・解約の手続き
  • 敷金精算や原状回復の確認
  • 帳簿付け・確定申告 など

いわゆる「紙仕事」「手続き」の部分です。

2. 入居者対応・トラブル対応の負担

  • 設備不良の連絡に対応する
  • 騒音やゴミ出しなど、生活トラブルの窓口になる
  • 家賃滞納の連絡・督促
  • 夜間・休日の急な電話 など

いつ連絡が来るか分からない、気持ちの面で疲れやすい部分です。

3. 判断・決断の負担

  • 賃料を下げるかどうか、いつ見直すか
  • どこまで修繕にお金をかけるか、いつやるか
  • 管理会社や工事会社を変えるかどうか
  • 将来、相続や売却をいつから考え始めるか など

「正解が一つではない」テーマについて、毎回悩まされる部分です。

「無理をしない賃貸経営」とは、
この3つのうち

  • どこを減らしたいのか
  • どこは自分で握っておきたいのか

をはっきりさせて、負担のかかる場所を意識的に軽くしていくことでもあります。

1棟・数室だからこそ決めておきたい「線引き」

小規模オーナーの場合、大きな会社のように、すべての業務を細かく仕組み化する必要はありません。
その代わりに、「ここから先は自分ではやらない」という線を、いくつか決めておくことが大切です。

例えば、次のような線引きがあります。

  • 夜間・休日の一次対応は、自分では受けない
    • 管理会社や緊急受付サービスに任せる前提にする。
  • 一定額以上の修繕は、必ず相談してから決める
    • 例:○万円以上の工事は、見積りを取ってからオーナーが最終判断する。
  • 法律・税金・相続まわりは、自分で調べすぎない
    • 基本的な考え方だけ押さえ、細かい判断は専門家に相談する前提にする。

「全部自分で分かっていないといけない」
「全部自分で選ばないといけない」

と思えば思うほど、判断の負担は重くなっていきます。
1棟・数室という小さな賃貸経営だからこそ、

  • ここは任せる
  • ここだけ自分で見る

という線を早めに引いておくことが、無理をしないためのポイントです。

※具体的に「どこまで任せて、どこから自分でやるのか」は、第2回の記事で詳しく整理していきます。

「やることを減らす」前に、全体像をざっくり見える化する

「負担を減らしたい」と思っても、いきなり何かを削ろうとすると、何から手を付けていいか分からなくなってしまいます。
その前に、今の自分の賃貸経営がどうなっているかを、一度ざっくり「見える化」しておくと、整理がしやすくなります。

1棟・数室であれば、A4用紙1枚に、次のような項目を書き出すだけでも十分です。

  • 物件の基本情報
    • ・所在地
    • ・戸数
    • ・間取り
    • ・築年数
  • 入居状況
    • ・満室かどうか
    • ・各部屋の賃料
    • ・それぞれの入居開始時期
  • 管理会社に任せていること/自分がやっていること
    • ・募集・契約・更新
    • ・入居者からの問い合わせ窓口
    • ・清掃・点検
    • ・賃料の入金管理
  • 最近行った修繕と、その金額
    • ・ここ1〜2年で実施した工事の内容と費用
  • これから気になっていること
    • ・老朽化(外壁・屋上・設備・配管など)
    • ・借入の残高や返済期間
    • ・将来の相続や売却のこと

こうして全体像をひと目で見えるようにしておくと、

  • どこに手間がかかっているのか
  • どこが不安やストレスの元になっているのか

が客観的に見えてきます。
誰かに相談するときも、この1枚があるだけで話が通じやすくなり、「説明するだけで疲れてしまう」という状態を避けやすくなります。

無理をしない賃貸経営に変えるための「最初の一歩」

第1回でやってほしいのは、「一気に何かを変えること」ではありません。
まずは、次の2つを紙かメモ帳に書き出してみてください。

1.今の自分にとって、賃貸経営で一番の負担になっていることは何か

     例:
     - 空室が出るたびに、不安で落ち着かなくなる
     - 入居者からの連絡が精神的につらい
     - 修繕のたびに「お金を出すかどうか」で悩み続けてしまう

    2.5年後も今の賃貸経営を続けるとしたら、どんな状態なら「続けていてもいい」と思えるか

       例:
       - 空室が出ても、慌てずに対応できる
       - 毎月の収支が大きな赤字にならない
       - 自分の時間や体力に見合った負担に収まっている

      この2つが書き出せれば、「無理をしない賃貸経営」に向けたスタートラインには、すでに立てています。

      次回【第2回】では、今回整理した考え方を踏まえて、

      • どこまで自分でやるのか
      • どこから、誰に任せるのか

      を、具体的な業務ごとに分けていく方法をお伝えします。

      「自分の場合は、どこを減らせるのか、第三者の目で一度整理してほしい」と感じた方は、物件の状況やお困りごとを簡単にまとめてから、専門家や相談窓口を頼ってみるのも一つの方法です。
      一人で抱え込まず、「無理をしないライン」を一緒に探していきましょう。