【賃貸経営】賃貸経営がしんどくなってきた小規模オーナーへ。【第3回】突然の出費で詰まないために。お金と修繕の守り方

第1回では「無理をしない賃貸経営」の考え方を整理し、第2回では「任せる仕事・自分で見る仕事」の分け方を考えました。
第3回では、多くの小規模オーナーが一番不安を感じやすい「お金と修繕」の守り方についてお話しします。
1棟・数室規模の賃貸経営では、1回の工事が家計や将来の計画に大きく響きます。
「突然の出費」で慌てないために、今日からできる準備のポイントを整理していきます。

「壊れてから考える」だけだと、いつもお金の不安に追われる

小規模オーナーの方からよく聞くのが、次のようなお悩みです。

  • 「エアコンや給湯器が立て続けに壊れて、1年で思っていた以上の出費になってしまった。」
  • 「外壁が傷んできたと言われたが、いくら用意しておけばいいのか分からない。」
  • 「毎月は黒字なのに、大きな修繕が来たときにお金が足りるか心配だ。」

多くの場合、「壊れたらそのとき考える」というスタイルになっているため、出費のタイミングと金額が読めず、常に不安を抱えた状態になりがちです。
無理をしない賃貸経営のためには、完璧な計画まではいかなくても、「どのくらいのお金が、どのタイミングで動きそうか」の見当をつけておくことが大切です。

まずは「お金の通り道」を1枚にまとめる

最初のステップは、難しいシミュレーションではなく、「お金の通り道」をざっくり見えるようにすることです。

A4用紙1枚に、次のような項目を書き出してみてください。

  • 毎月入ってくるお金
    • ・家賃収入(満室時と、1室空いたときの金額)
  • 毎月出ていくお金
    • ・ローンの返済
    • ・管理委託料
    • ・共用部の電気代・清掃費
    • ・固定でかかる通信費や保険料など
  • 年に1回、または数年に1回出ていくお金
    • ・固定資産税・都市計画税
    • ・火災保険・地震保険の更新保険料
    • ・過去に行った大きめの修繕(外壁・屋上・共用部設備など)の金額と実施年

ここまで整理できると、

  • 「毎月の黒字がどのくらいか」
  • 「年トータルで見ると、どのくらい残っているのか」

がイメージしやすくなります。
この“残り”の中から、将来の修繕にいくら回せそうかを考えていきます。

「生活用」と「賃貸用」のお金は、できるだけ分ける

小規模オーナーほど陥りやすいのが、「家計と賃貸のお金がごちゃ混ぜ」になってしまうことです。

  • 家賃収入が生活費の口座にそのまま入ってくる
  • 賃貸の修繕費も生活費も、同じ通帳から出ていく
  • 結果として、「今、賃貸用にいくら蓄えがあるのか」が分からない

こうなると、修繕のタイミングで「生活費を削って工事代を出す」ことになり、心理的な負担が非常に大きくなります。

可能であれば、

  • 賃貸用の入出金専用の口座を1つ用意する
  • 家賃は一度すべてその口座に入れる
  • そこからローン・固定費・管理費・修繕費を支払い、残りを“オーナーへの取り分”として生活用口座に移す

という流れにしておくと、「賃貸として残せている金額」が見えやすくなります。
この「残っている分」が、将来の修繕や予備費の原資です。

「突然の出費」に備えるための、ざっくりした目安

築年数や規模によって違いはありますが、小規模オーナーの方がイメージを持ちやすいように、ごくざっくりした考え方の目安を示しておきます。

  • 築浅〜築15年くらい
    • ・室内設備(エアコン・給湯器など)の交換が少しずつ出てくる時期。
    • ・年間の家賃収入のうち、数%程度を「設備更新・小修繕用」に残しておくイメージ。
  • 築15〜30年くらい
    • ・外壁・屋上防水・配管など、大きな工事が必要になる可能性が高くなる時期。
    • ・数年単位で「まとまった修繕費」が必要になる前提で、毎年少しずつ積み立てておくイメージ。
  • 築30年以上
    • ・建物全体の老朽化、設備の寿命、入居者ニーズの変化が一気に重なりやすい時期。
    • ・「どこまで直して続けるか」「いつ頃まで続けるのか」を、修繕とセットで考える必要が出てくる。

厳密な数字を出すことが目的ではなく、
「自分の建物は今どのあたりにいるのか」
「どのくらいの規模の工事があり得るか」
をイメージしておくことが大切です。

修繕の優先順位を「3段階」で分ける

限られたお金と時間の中で、すべてを一度に直すことはできません。
そこで、修繕を次の3段階に分けて考えると、判断がしやすくなります。

  1. 今すぐ必要な修繕(安全・漏水・法令に関わるもの)
  2. できれば数年以内に手を打ちたい修繕(老朽化や劣化が進んでいる部分)
  3. 余裕があれば改善したい箇所(見た目や使い勝手を良くするためのもの)

具体例:

  • 1(今すぐ)
    • ・雨漏り
    • ・共用部の危険な段差・破損
    • ・法定点検で指摘された重大な不具合
  • 2(数年以内)
    • ・外壁のひび割れや塗装の劣化
    • ・屋上防水の寿命が近い
    • ・給水設備や配管の老朽化
  • 3(余裕があれば)
    • ・共用部の照明のLED化
    • ・エントランスの見栄え改善
    • ・室内設備のグレードアップ

このように分けておくと、「お金が限られている今、どこから手を付けるべきか」を決めやすくなります。
同時に、「今は1だけ」「来年以降に2と3を検討」といった形で、心づもりもしやすくなります。

「お金」と「修繕」の話を、1人で抱え込まない

お金と修繕の話は、どうしても気が重くなりがちです。
そのため、つい後回しにしてしまい、「いざ壊れたときに慌てて決める」ということになりやすい領域でもあります。

ただ、小規模オーナーの方が覚えておきたいのは、

  • すべてを完璧に予測しようとしなくていい
  • ざっくりとした見通しと優先順位だけでも立てておくと、かなり楽になる

ということです。

一人で悩みながら資料やインターネットだけを見ていても、なかなか答えは出ません。

  • 建物の状態
  • 築年数
  • 今後どのくらい続けたいか

といった情報をもとに、「お金と修繕」を一度整理してしまうと、その後の判断がぐっとラクになります。

第3回の実践ポイント

第3回で、やってみてほしいことは次の3つです。

  1. 「お金の通り道」を1枚に書き出す
    • ・毎月・毎年の入出金の全体像を整理する。
  2. 賃貸用と生活用の口座(お金)を、できる範囲で分けてみる
    • ・どこまでが賃貸のためのお金か、線を引いてみる。
  3. 建物の現状から、修繕の優先順位を3段階で考えてみる
    • ・「今すぐ」「数年以内」「余裕があれば」の3つに分けてみる。

すべてを一度に完璧にやる必要はありません。
まずは、「なんとなく不安」だったお金と修繕の話を、紙の上に出してみるところから始めてみてください。

次回【第4回】予告:続け方と引き際をどう考えるか

最終回の【第4回】では、

  • 体力・気力・家族の状況が変わってきたときに、賃貸経営をどう続けるか
  • いつ、どのように「負担を減らす」「やめる」「引き継ぐ」を考えるか

といった、「続け方」と「引き際」の考え方を整理していきます。

「賃貸経営を続けたい気持ちはあるが、今のままのやり方ではしんどい」と感じている小規模オーナーの方にとって、少しでも心が軽くなるきっかけになれば幸いです。