屋上コンクリートのやり直しはできる?費用の目安や注意点について解説

屋上のコンクリートが劣化していると気づいていながら「どこまで直すべき?」「費用はどれくらい?」「DIYでも対応できる?」など、具体的な行動に踏み切れずに悩んでいませんか?
これらを放置すると、屋上だけでなく建物全体の耐久性にも影響が出かねません。
屋上の防水性や耐久性を確保し、建物全体の資産価値を守るためには、正しい知識と適切な施工判断が必要です。

本記事では、屋上コンクリートのやり直しに関して必要な知識を網羅的に解説します。
見逃してはならない劣化のサインから、再施工に適した工法・費用の相場・業者選びのポイント、そしてDIYの可否まで失敗しないための情報を紹介しますので、ぜひご覧ください。

目次

屋上コンクリートのやり直しが必要なタイミングとは

屋上コンクリートは風雨や紫外線などの過酷な外的環境にさらされており、年数とともに劣化が進行します。
以下のような症状が現れた場合、部分補修では対応が難しく、やり直し工事を検討する必要があります。

ひび割れ・クラックが現れたとき

0.3mm以上の幅のひび割れは、構造クラックと呼ばれ雨水の浸入経路となります。
内部の鉄筋にまで水が達すると、腐食や膨張によってコンクリートの剥離が発生し、建物の耐久性が著しく低下します。

白華(エフロ)・浮き・剥がれが見られるとき

コンクリート表面に白く粉をふいたような「エフロレッセンス」が見られる場合、内部に水分が入り込み、成分が溶け出している証拠です。
さらに表層が浮いている、剥がれているといった症状があれば、下地の健全性が失われている可能性があります。

雨漏り・湿気・シミが発生している場合

屋内天井に雨染みが出る、室内がジメジメしているといった現象は、すでに防水層やコンクリートの機能が失われている可能性を示します。
この段階では防水工事だけでなく、下地からのやり直しが必要になるケースもあります。

雑草や苔の繁殖があるとき

屋上に雑草や苔が発生している場合、水分が表面にとどまり、排水不良や防水層の破断が考えられます。
このまま放置すればカビの温床となり、室内環境にも悪影響を及ぼしかねません。

屋上コンクリートのやり直しはどのように行うのか

劣化の程度や面積・下地の状態によって、適したやり直し工法は異なります。
主な工法ごとの特徴と、選び方を見ていきましょう。

表面補修(カチオン系樹脂・エポキシ注入など)

軽度のひび割れや表面剥離には、以下の補修方法が適用されます。

  • カチオン系樹脂モルタル…接着性に優れたモルタルで、浮きや剥がれに部分的に使用されます。
  • エポキシ樹脂注入…構造クラックに有効で、鉄筋腐食の進行を抑える効果もあります。
  • ポリマーセメントモルタル…防水性と強度を兼ね備えた薄塗り仕上げに適します。

いずれも短工期・低コストで済みますが、全体的な劣化には向きません。

塗膜防水の再施工(ウレタン防水・FRP防水)

下地コンクリートに大きな損傷がない場合、防水層の再施工が中心となります。

  • ウレタン防水…柔軟性があり、複雑な形状にも対応しやすい。
  • FRP防水…硬化後は高耐久で、バルコニーや屋上に用いられることが多い。

下地処理が不十分だと早期劣化につながるため、施工技術が重要になります。

コンクリートスラブの打ち直し(全面再施工)

コンクリートそのものが構造的に劣化している場合は、スラブを全面撤去して打ち直す必要があります。

  • 解体・撤去作業…コア抜きや斫り作業が必要で騒音や粉塵も発生。
  • 鉄筋の補強・型枠設置・打設…必要に応じて勾配調整や新規排水口設置も行います。

費用や工期はかかりますが、耐用年数が10〜20年と長く、根本的な再生に適した方法です。

防水工事とセットで行う施工のメリット

コンクリートのやり直しと同時に防水工事を行うことで、以下のような利点があります。

  • 工事コストの圧縮(足場や人件費を一元化)
  • 防水保証の延長(10年以上の保証が可能な場合も)
  • 美観と耐久性を両立できる仕上がり

将来的な再施工の頻度を減らせるため、長期的な費用対効果が高くなります。

屋上コンクリートやり直し工事の費用相場

実際の費用は劣化状況や面積・施工条件により大きく変わりますが、以下に目安となる単価を示します。

工事内容単価目安(円/㎡)備考
クラック補修・表面処理5,000〜15,000小規模補修向け
塗膜防水の再施工7,000〜20,000ウレタン・FRPなど工法で変動
コンクリート打ち直し(全面)20,000〜40,000斫り・新設含む
防水+補修セット25,000〜50,000防水層との一体施工

加えて、以下の要素が費用に影響します。

  • 足場の有無と高さ…高層階ほどコスト増
  • 搬入経路や道路幅…材料搬入の難易度
  • 下地劣化の程度…補修量が増えるほど高額に

また、補助金制度や集合住宅でのスケールメリットを活用すれば、実質的な負担を抑えることも可能です。

DIYで屋上コンクリートをやり直すのは可能?

軽微な補修であればDIYで対応することも可能ですが、以下の条件やリスクを理解しておく必要があります。

DIYで対応できるのはどこまで?

  • 幅0.2mm未満のヘアクラックの補修
  • 小規模な塗膜剥がれや浮きの処理
  • 表面の簡易的な防水塗装(ローラー塗り)

このような状況であれば、ホームセンターで手に入る補修材を使って対処できますが、下地の状態を正確に見極めるには専門知識が必要です。

DIYのメリット

時間や手間はかかるものの、DIY施工を行うことには以下のようなメリットが挙げられます。

  • 業者費用がかからないためコストが低い
  • 自分の都合に合わせて作業できる
  • 作業工程や建材について学ぶ機会になる

DIYに興味のある方にとっては、知識を深めるきっかけにもなります。

DIYのリスクと失敗しやすい落とし穴

  • 防水層の密着不良による早期剥離
  • クラック補修が不十分で雨漏り再発
  • 高所作業中の落下・転倒など安全面のリスク

特に屋上は転落事故が多いため、安全帯やヘルメットなどの装備が必要です。
知識・経験が不十分な場合は、DIYにこだわらず専門業者に任せることも検討しましょう。

業者施工とDIYの比較表(コスト・安全・仕上がり)

比較項目DIY専門業者
費用安いやや高め
仕上がり精度ムラが出やすい均一で高品質
保証なし保証書あり(5〜10年)
安全性事故リスクあり安全管理体制あり

費用だけで判断せず、耐久性・安心感を重視して選択しましょう。

屋上コンクリート再施工の失敗事例と防ぐためのポイント

せっかく工事をしても、施工不良や業者選定ミスによって数年で再劣化してしまうケースもあります。
ここでは、よくある失敗例とその回避策を紹介します。

よくある施工ミスとその原因

  • 下地処理の不備…ひび割れや浮きの補修をせずに上塗りだけで済ませると、数年で剥がれや再クラックが起こります。
  • 不適切な材料の使用…安価な材料を使ったことによる、耐久性の不備も少なくありません。
  • 排水勾配の未調整…水たまりができると、防水層の劣化が早まります。

下地処理不足による再劣化のリスク

外見上はきれいでも、内部に水分が残っていたり、劣化層が十分に除去されていなかった場合、補修後に早期の不具合が生じます。
特に雨漏りを経験した屋上では、下地処理に時間と手間をかける必要があります。

安すぎる業者選びの落とし穴

極端に安い見積もりを提示する業者は、人件費や材料の質を削っていることがあります。
結果として工事の質が低く、短期間で再工事が必要になる可能性もあります。

やり直し工事を依頼する業者を選ぶためのポイント

屋上コンクリートのやり直し工事を成功させるためには、信頼できる施工業者の選定が非常に重要です。
高所作業や防水処理といった専門的な知識・技術が求められるため、業者選びの段階から慎重な判断が求められます。
ここでは、施工業者を選定する際のチェックポイントを詳しく解説します。

資格と実績のある防水・コンクリート専門業者を選ぶ

施工業者には、国家資格(建築施工管理技士・一級防水施工技能士など)を有しているかどうかを確認しましょう。
資格を持つ職人が在籍している業者は、施工品質が安定しており、工事後の保証や説明内容も信頼しやすい傾向にあります。
また、過去の施工実績が豊富な業者であれば、同様の構造や環境に対応した経験があり、イレギュラーな状況にも柔軟に対応してくれます。
写真付きの事例紹介や施工現場の見学が可能な業者であれば、安心感は一層高まります。

見積書と説明内容の明確さをチェックする

見積書を確認する際は「一式」表記ではなく、材料名・施工範囲・作業内容が具体的に明記されているかをチェックしましょう。
また、工法ごとの比較説明や耐用年数、施工工程の流れなどを丁寧に説明してくれるかどうかも重要なポイントです。
納得いくまで説明をしてくれる姿勢がある業者は、工事中の対応やアフターケアにも信頼が置けます。
不明点に対して「専門用語抜きで説明してくれるか」も信頼性を測る材料です。

保証制度とアフターサポートの有無を確認する

工事完了後に万が一不具合が生じた場合でも、保証期間内であれば無償対応してもらえる制度があるかどうかは非常に重要です。
防水工事であれば5〜10年保証が一般的で、保証内容が明記された書面(保証書)を交付してもらえるかも確認しておきましょう。
さらに、年1回の点検や定期メンテナンスのサポート体制が整っているか・緊急時の対応スピードはどうか、といったアフターサービスの質も見逃せないポイントです。

口コミ・地域密着型かどうかもみておく

地元で長く活動している業者は、近隣の建物特性や気候条件に精通しており、地域に合った最適な工法を提案してくれます。
また、口コミサイトでの評価なども参考にしましょう。
特に、良い評価だけでなく、低評価に対してどう返信しているかを確認することで、トラブル対応力や誠実さも判断できます。
地元密着型の業者であれば、工事後のフォローも早く、急なトラブルにも対応しやすいという利点があります。

屋上コンクリートやり直し工事を依頼する流れ

実際に屋上コンクリートをやり直す際の一般的な工事の流れを把握しておくと、スムーズな進行や信頼関係の構築に役立ちます。
以下は、基本的なステップです。

劣化診断と現地調査の実施

最初に行うのは、既存コンクリートの劣化状態を把握するための現地調査です。
施工業者は屋上に上がり、クラックや剥がれ・浮き・排水状態・既存防水層の劣化などを、目視・打音・赤外線カメラなどで診断します。
調査結果は写真付き報告書として提出され、どの程度の劣化が進行しているのか、どの範囲に補修・再施工が必要かを明示してくれます。

見積もり取得と工法の比較検討

調査に基づき、業者は複数の施工方法を提案してくることがあります。
ウレタン防水のみで済む場合もあれば、コンクリートの打ち直しが必要なケースなど状況によってさまざまなです。
工法ごとの費用・工期・耐用年数・メンテナンス頻度などを、比較検討しましょう。
ここで複数の業者から相見積もりを取ることで、価格の妥当性だけでなく、説明の丁寧さや対応スピードも見えてきます。

屋上コンクリートやり直し工事の施工〜完了検査・保証書発行までのステップと注意点

施工の一般的な流れ

  1. 足場・養生の設置
  2. 下地の補修・清掃・プライマー処理
  3. 防水層またはコンクリート再施工
  4. 仕上げ処理と養生期間
  5. 完了検査(立ち会い可)と保証書の発行

以上を経て、アフターサポート付きでの工事完了となります。

工事スケジュールと天候調整の重要性

防水工事やモルタル施工は、乾燥時間や温度管理が重要なため、気象条件の影響を受けやすいです。
梅雨時期や台風シーズンは避け、余裕を持ったスケジューリングを意識しましょう。
また、工事中の騒音や立ち入り制限などについても、居住者・利用者と調整が必要なため、事前の告知・周知も業者に依頼しておくと安心です。

コンクリートのやり直しと屋上防水工事と同時施工するべき理由

屋上のコンクリートやり直しを実施する際には、同時に防水工事を行うことで多くのメリットがあります。
以下に、主な理由を整理します。

工事コストの圧縮が可能になる

足場や養生・搬入などの共通工程を1回でまとめて実施できるため、別々のタイミングで工事を行うよりもトータルコストを削減できます。
予算に制限がある場合でも、優先順位を明確にして必要な工程を同時に進めることで、効率のよい工事が実現します。

仕上がりの統一と施工精度の向上

下地補修と防水施工を別のタイミングや業者で行うと、継ぎ目の不整合や施工精度の差によって不具合が生じることもあります。
一体施工により、材料の密着性が高まり、全体の防水性能も向上します。

保証期間の延長につながるケースも

同一の業者が補修と防水をまとめて行うことで、一括保証の対象となりやすく、保証期間が10〜15年に延長される場合もあります。
保証対象となる範囲が明確になることで、万が一の際の対応もスムーズです。

防水+構造補強で雨漏りを根本解決できる

雨漏りの原因の多くは、コンクリートのひび割れや浮きなどの下地劣化と、防水層の老朽化が同時に発生しているケースです。
両方に同時に対応することで、再発リスクを限りなく減らすことができます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 小さなひび割れでも工事が必要?

A. 0.2mm以下のヘアクラックであっても、継続的な浸水により内部鉄筋が腐食するリスクがあります。
小規模なうちに補修しておくことで、将来的な大規模修繕を回避できます。

Q2.防水だけでコンクリートの劣化は防げる?

A. 防水層はあくまで雨水の浸入を防ぐ役割であり、下地がすでに劣化している場合には、防水だけでは十分とはいえません。
必ず下地の状態を診断し、必要に応じて補修・再施工を行うことが必要です。

Q3.工事期間はどのくらいかかる?

A. 工事内容によって異なりますが、部分補修であれば2〜5日程度、全面スラブ打ち直しを含む場合は10〜14日を見込んでおくと良いでしょう。
雨天による延期も想定したうえでの、余裕を持った計画が望まれます。

Q4.工事中に屋上は使えなくなる?

A. はい。
安全確保のため、工事期間中は原則として立ち入りが制限されます。
工事前に居住者・関係者への掲示やアナウンスを行い、理解を得ることが重要です。

まとめ

屋上コンクリートの劣化を放置すると、建物全体に悪影響を与えるリスクがあります。
見た目の問題だけでなく、雨漏り・鉄筋の腐食・断熱性能の低下といった構造的なトラブルにもつながります。

やり直し工事を検討する際は、まず専門業者による現地調査を依頼し、劣化状況を正確に把握することが第一歩です。
そのうえで、複数の工法や見積もりを比較し、最適なプランを選択しましょう。

信頼できる専門業者と連携し、長期的な視点で建物の維持管理を行うことが、安心・安全な暮らしを守る最大のポイントとなります。