コンクリートブロックと打ち継ぎ部の防水工事完全ガイド|工法・費用・注意点を徹底解説

コンクリートブロック造や鉄筋コンクリート構造の建物にとって、防水工事は建物寿命を大きく左右する重要な工事のひとつです。
特にブロック塀や基礎部分、構造的な継ぎ目である「打ち継ぎ部」は、雨水が浸入しやすい箇所として知られており、劣化やひび割れ・内部腐食の原因にもなりかねません。

見た目には頑丈に見えるコンクリートブロックも、実際には水を吸いやすい多孔質素材であり、適切な防水処理を施さなければ、内部に浸透した水分が中性化や鉄筋腐食、さらにはカビや剥離といった深刻なダメージを引き起こす可能性があります。

本記事では、コンクリートブロックの防水がなぜ必要なのか、その理由とともに、主な防水工法の種類、打ち継ぎ部に特化した絶縁防水の考え方、防水工事の施工手順や注意点、費用相場に至るまで解説します。
DIYでの対応が可能かどうかの判断材料としても役立つようまとめましたので、防水工事を検討しているオーナー様や管理者の方は、ぜひ参考にしてください。

目次

なぜコンクリートブロックに防水工事が必要なのか

一見、頑丈で水に強そうに見えるコンクリートブロックですが、実際には水を通しやすいという弱点があります。
そのまま放置すると、雨水が内部に浸透し、建物の構造に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
ここでは、防水工事が必要とされる主な3つの理由を解説します。

コンクリートブロックに防水工事が必要な理由:水分の浸透による中性化と鉄筋腐食

コンクリートは本来アルカリ性で、内部の鉄筋を錆から守っています。
しかし、外部から雨水が浸透し続けるとアルカリ性が失われ「中性化」が進行します。
中性化が進むと、鉄筋の防錆機能が働かなくなり錆が発生します。
さらに鉄筋が腐食すると体積が膨張し、内部からコンクリートがひび割れる「爆裂現象」が起こることもあります。
このような劣化は建物の構造強度そのものを損なう原因となり、補修費用も高額化するため、早期の防水処理が欠かせません。

コンクリートブロックに防水工事が必要な理由:表面仕上げの剥がれ・凍結融解による破損

外気に晒される環境では、季節の温度差によりコンクリート内部の水分が凍結・融解を繰り返します。
この凍結膨張の圧力が内部から塗膜や仕上げ材を押し出し、剥がれや破断を引き起こします。
特に塗装仕上げの外壁やブロック塀では、表面に細かいクラックが発生することで劣化が加速してしまいます。
美観の低下だけでなく、防水層そのものの機能が失われることにもつながります。
防水工事は、こうした自然劣化を防ぐためにも重要な予防策となります。

コンクリートブロックに防水工事が必要な理由:雨漏りやカビの発生

コンクリートブロックの防水性が不十分だと、雨水が室内側に染み出し、湿気がこもりやすい状態になります。
結果として、室内の壁紙が剥がれたり、カビや黒ずみが発生するケースも少なくありません。
カビは健康被害の原因にもなりやすく、小さな子どもや高齢者のいる家庭では特に注意が必要です。
また、湿気による悪臭が室内全体に広がることもあり、生活環境の質を大きく下げる要因ともなります。

コンクリートブロックに適した防水工法と選び方

コンクリートブロックに防水工事を施す際には、場所や用途、ブロックの状態に応じて最適な工法を選ぶことが大切です。
ここでは、代表的な防水工法とその特性について解説します。

ウレタン防水|柔軟性・密着性に優れた万能工法

ウレタン防水は、液状のウレタン樹脂をローラーや刷毛で塗布し、乾燥させることで防水膜を形成する工法です。
複雑な形状や段差がある箇所にも柔軟に対応でき、仕上がりも滑らかで美しいのが特長です。
特にひび割れに追従する柔軟性があるため、経年による細かい動きがあるブロック塀にも適しています。
施工後のトップコートによって耐候性も高められるため、屋外環境でも高いパフォーマンスを発揮します。
費用面は中程度ですが、耐用年数は10年以上と長く、コストパフォーマンスに優れた工法です。

塗膜防水|手軽に施工可能な塗料仕上げ

塗膜防水は、防水性をもつ塗料(アクリル・シリコンなど)をブロック表面に塗ることで、防水膜を形成する工法です。
施工が比較的容易で、材料費・工賃もウレタン防水より安価なことから、補修や部分的な施工に選ばれやすい工法です。
一方で、塗膜の厚みが薄くなると防水性能が十分に発揮されない可能性があるため、下地処理と複数回の塗り重ねが重要です。
また、耐用年数は5〜7年とやや短めで、定期的な再塗装による維持管理が必要です。
外観をあまり変えず、簡易な防水性能を求めるケースには適しています。

浸透性防水剤|外観を損なわず内部に防水効果

浸透性防水剤(含浸材)は、ブロック表面から液体を塗布し、毛細管現象を抑えることで防水性を高める工法です。
外観に変化を与えず、素材の質感をそのまま活かせるのが大きなメリットです。
通気性も保てるため、通風を重視する外構や塀などにも適しています。
防水層を作らないぶん、厚膜型の防水と比較すると耐水圧には劣るため、雨が直接かかる場所には不向きです。
補助的な防水対策や、美観を重視する外構部の表面処理におすすめです。

モルタル防水層|下地補修と表面強化を兼ねる工法

劣化の激しいブロック塀や外構では、既存の劣化部分をモルタルで再施工し、防水層として仕上げる工法が用いられます。
クラック補修と下地調整を同時に行いながら、厚みのある防水層を形成できるため、構造的補強にもつながります。

ただし、防水性を持たせるためには混和材や防水材をモルタルに添加する必要があり、適切な配合と施工技術が求められます。
最終的な仕上げとして防水塗装を併用することも多く、ブロックの劣化が進んだケースに有効です。

内部止水が必要なケース|地下・半地下・擁壁への対応

地下室や半地下構造の壁、または外部の擁壁では、土中の水分による水圧がかかるため、表面防水だけでは対応しきれない場合もあります。
このようなケースでは、コンクリート内部からの止水処理が必要となり、エポキシ樹脂の注入や止水材の充填といった工法が選ばれます。
内部止水は再施工が難しく、事前の設計段階から防水計画に組み込むことが重要です。
漏水リスクが高い場所では、外部防水と併用する「二重防水」が有効です。

打ち継ぎ部に防水処理が必要な理由

コンクリート構造物では一度で全体を打設できないため、複数回の作業に分ける際に「打ち継ぎ部」が生じます。
この継ぎ目部分は構造上の弱点となりやすく、水の浸入・劣化の原因となるため、特に入念な防水対策が求められます。

打ち継ぎ部とは?構造上の継ぎ目の特性

打ち継ぎ部とは、コンクリートを施工する際に一度に打設できないために生じる打設と打設の間の継ぎ目を指します。
この部分はコンクリート同士の接着力が弱く、内部に細かな隙間が残りやすい構造的な弱点とも言える部分です。
特に床スラブと立ち上がり、基礎と壁などの接合部では、構造の動きや水の浸入圧がかかることで、クラックや漏水が起こりやすくなります。
そのため、通常の防水工法とは別に、専用の止水処理や絶縁処理が必要とされます。

水の浸入経路になりやすい構造的問題

打ち継ぎ部の隙間や未充填部分は、雨水や地下水が浸入する主な経路となります。放置すれば、内部の鉄筋が腐食し、コンクリートの中性化や剥離につながる恐れがあります。また、湿気がこもることでカビや異臭の原因にもなり、室内環境の悪化を引き起こすこともあります。
このような構造的リスクを未然に防ぐためには、打設時の適切な施工管理とあわせて、打ち継ぎ部に対して特化した防水工法の採用が不可欠です。

ひび割れ・雨漏りの温床になる原因

打ち継ぎ部はコンクリートの乾燥収縮や地震、構造の動きによって応力が集中しやすい部位でもあります。
そのため、他の部位に比べてクラック(ひび割れ)が発生しやすく、防水層が破断されることで漏水のリスクが高まります。

また、目視では問題がないように見えても、内部に進行するクラックや未処理の隙間が原因で、数年後に突然雨漏りが発生するケースもあります。
これを防ぐには、耐久性の高い工法を選び、打ち継ぎ部の特性を理解したうえでの施工が不可欠です。

打ち継ぎ部に適した防水処理と絶縁工法

打ち継ぎ部の防水対策では、単なる密着型の防水では不十分です。
構造体の動きや水圧に対応できるよう、止水材・絶縁緩衝工法・二重防水といった高度な処理方法が必要となります。

絶縁工法(絶縁緩衝工法)の概要と特徴

絶縁工法とは、防水層を下地コンクリートに密着させず、間に緩衝材を挟むことで、構造体の動きによる亀裂や剥がれを防止する工法です。
主に塩ビシートや特殊な絶縁マットを使用し、防水層が構造躯体に追従しないことで、耐久性を高める仕組みとなっています。

この工法は特に、既存コンクリートがクラックの多い箇所や構造的に動きが予想される部位に適しており、通気層を設けることで下地の湿気逃しにも効果があります。
初期費用は高めですが、再防水時の撤去が容易で長寿命な点から、ライフサイクルコストに優れるとされています。

止水材・止水板の活用|ベントナイトや鋼板の応用例

止水材や止水板は、コンクリート打設時に打ち継ぎ部に埋設しておくことで、水の侵入経路を物理的に遮断する材料です。
代表的な素材には、ベントナイト系止水材(吸水膨張型)や金属製止水板(ステンレス、銅など)があり、それぞれの特性に応じて使い分けられます。
新築時やコンクリート再打設のタイミングで設置する必要があるため、設計段階での計画が重要です。
止水材の設置ミスやズレがあると、止水性能が発揮されないため、専門業者による確実な施工が求められます。

断面修復+二重防水による再生強化

既存の打ち継ぎ部が劣化している場合、まずは断面修復材によってクラックや欠損部を補修したうえで、防水層を二重に形成する「二重防水」工法が有効です。
1層目で構造躯体を保護し、2層目で防水性を強化することで、水の浸入を多重でブロックできます。
地下や雨のかかりやすい箇所など、高い防水性能が求められる箇所では、このような多重防護が推奨されます。

ジョイント仕上げ|目地処理による最終仕上げ

打ち継ぎ部の最終仕上げとして重要なのが、シーリング材による「目地処理」です。
防水層と接合部との間に隙間を残さないよう、柔軟性と密着性のあるシーリング材を丁寧に充填します。
特に構造が動く箇所では、伸縮性や耐候性に優れた材料の選定が重要で、紫外線や経年劣化にも強い変成シリコン系やポリウレタン系シーリングがよく使われます。
丁寧な目地処理が、防水層の最後の砦となります。

防水工事の標準的な施工手順

防水工事の効果を最大限に発揮させるためには、正確な施工手順を守ることが欠かせません。
以下では、標準的な防水工事の流れを確認しておきましょう。

工程1.下地処理とクラック補修

施工前の下地処理では、ホコリや油分・旧塗膜などを除去し、防水材の密着性を高めます。
クラック(ひび割れ)は適切な補修材で埋め戻し、浮きや欠けがある場合にはモルタル等で平滑に仕上げます。
この工程を丁寧に行わないと、防水層がすぐに剥がれたり、施工後のひび割れに追従できない恐れがあるため、見えない工程こそ最も重要といえます。

工程2.プライマー塗布と防水層形成

下地に密着性を与えるためのプライマーを塗布し、その上に防水材を均一に塗布していきます。
塗布量や膜厚は仕様に従い、均等な厚みを確保することで防水性能を安定させます。
1層施工で済むものもあれば、2~3層の重ね塗りを行う仕様もあるため、乾燥時間や気温条件の管理も重要なポイントです。

工程3.トップコートと保護層仕上げ

最終仕上げとして、防水層を紫外線や摩耗から守るトップコートを施工します。
遮熱性のあるもの、耐摩耗性の高いものなど、用途や環境に応じた選定が必要です。
トップコートは、防水性能の維持だけでなく、美観の維持にもつながります。
経年劣化が早い部分のため、定期的な再塗装も検討するとよいでしょう。

防水工事の費用と見積もり時の注意点

防水工事は、施工内容や場所によって費用が大きく変わります。
ここでは、コンクリートブロック・打ち継ぎ部の防水に関する費用相場と、見積もり時のチェックポイントを紹介します。

コンクリートブロック・打ち継ぎ部の費用目安

項目費用相場
塗膜防水約2,000〜4,000円/㎡
ウレタン防水約3,500〜6,000円/㎡
止水板設置約5,000〜10,000円/m
絶縁緩衝工法約15,000円/㎡(材料・養生込)

見積もり時に確認すべきポイントは、以下のとおりです。

  • 使用する防水材の種類と耐用年数
  • 工法の明記(密着・絶縁など)
  • 保証の年数・内容(防水層・トップコートそれぞれ)
  • 追加費用の有無(足場代・下地補修費など)

費用だけでなく、工事の信頼性や保証体制も重視することで、長期的に安心できる施工を選べます。

よくある質問

Q1:防水工事は何年ごとに行えば良いですか?

A:防水材や環境により異なりますが、5〜10年を目安に点検・再施工が必要です。

Q2:打ち継ぎ部の処理をしないとどうなりますか?

A:雨水が浸入し、鉄筋の腐食・漏水・内装損傷などの原因になります。

Q3:絶縁工法と密着工法の違いは?

A:絶縁工法は下地と防水層を分離し、構造の動きに対応しやすい。密着工法は強度が高いがクラックに弱い。

Q4:DIYで防水は可能ですか?

A:部分補修程度なら可能ですが、下地補修や膜厚管理が難しいため全面施工は専門業者が望ましいです。

Q5:保証はどのくらい付きますか?

A:工法によりますが、3〜10年の保証が一般的。保証内容の明示を確認しましょう。

Q6:梅雨や冬でも施工できますか?

A:湿度・気温により硬化が不安定になるため、天候に配慮した施工計画が必要です。

まとめ:防水工事は構造の要所を守る「資産保全の鍵」

コンクリートブロックや打ち継ぎ部は、建物の中でも特に水に弱い箇所として知られており、防水工事の成否が建物の寿命を左右するといっても過言ではありません。
構造の継ぎ目である打ち継ぎ部は、クラックや漏水の温床となるため、絶縁工法や止水板の設置、二重防水といった対策が不可欠です。

また、防水層の耐用年数を考慮し、定期的な点検やトップコートの再施工も重要です。
施工の精度と信頼性は、専門業者の技術力に大きく左右されるため、安易なDIYよりも専門業者への依頼が安心といえるでしょう。

見積もりの際には、費用だけでなく工法の妥当性・保証内容・施工管理体制を確認し、建物の将来を見据えた長期的な視点で防水計画を立てていくことが大切です。
しっかりとした防水対策は、資産価値を守るうえでの最良の投資となるでしょう。