コンクリート建物における防水工事の重要性とは?工法の種類や費用を抑えるポイントを解説
2025/07/09
コンクリートの防水工事を検討していても、どのくらい費用が必要なのか、疑問や不安をお持ちの方も多いでしょう。
この記事では、コンクリート防水工事にかかる費用相場や工法の違い・業者選びのコツなどを、詳しく解説していきます。
事前に知っておくことで無駄な出費を避け、長持ちする防水工事を実現することが可能になるでしょう。
目次
コンクリート建物の防水工事における主な役割とは
コンクリートは、建物の構造体として非常に優れた素材であり、耐震性や耐火性・耐久性に優れています。
しかし表面上は硬く見えても、微細な空隙から水分が侵入しやすく、長期間そのまま放置しておくと、建物内部に深刻な影響を及ぼします。
コンクリート防水工事における、主な役割は以下の通りです。
雨水や湿気の侵入を防ぐ
防水工事の役割は、雨水や湿気が建物内部に浸入するのを防ぐことです。
外壁や屋上などに防水層を形成することで、外部からの水分をシャットアウトし、建物内部を常に乾燥した状態に保ちます。
これにより、雨漏りや湿気によるトラブルを未然に防ぐことが可能です。
ひび割れや劣化を抑制する
コンクリートは、経年や温度変化によって微細なひび割れが発生することがあります。
防水工事を施すことで、こうした小さなひび割れから水分が侵入するのを防ぎ、構造体の劣化スピードを大幅に遅らせることが可能です。
結果として、建物の安全性や耐久性が保たれます。
建物の寿命を延ばす
防水工事は、単に水を防ぐだけでなく、建物そのものの寿命を延ばす重要な役割を担っています。
適切に防水処理を行うことで、コンクリートや鉄筋などの主要構造部分が水分による腐食や劣化から守り、長期間にわたって建物を健全に保つことができるでしょう。
カビや結露などの室内被害を防ぐ
防水工事が不十分な場合、内部に侵入した水分がカビやダニの発生を引き起こし、住環境に悪影響を及ぼします。
また、結露による内装の劣化や腐食のリスクも高まるため注意が必要です。
防水工事をしっかり行うことで、室内被害を防ぎ、健康的で快適な居住空間を維持することができます。
防水工事の費用相場
防水工事の費用は、使用する工法や施工面積・現場の状況などによって大きく変わります。
ここでは、一般的に使用される3つの工法について、1㎡あたりの相場・特徴・向いている場所を紹介します。
| 防水工法 | 費用相場(1㎡) | 特徴 | 向いている場所 |
| ウレタン防水 | 約4,500~8,000円 | 柔らかく伸縮性があり、複雑な形状に対応可 | 屋上・バルコニーなど |
| FRP防水 | 約6,500~8,500円 | 硬化が早く、強度と耐久性に優れる | 戸建てのベランダなど |
| シート防水 | 約4,000~8,000円 | 工期が短く、下地が平滑なら施工性が高い | 屋上・大型施設など |
実際にかかる費用は建物の規模や劣化状況・業者などにより異なるため、必ず見積もりを依頼しましょう。
コンクリート建物に施工する防水工事の種類とは?
防水工事には複数の工法があり、建物の構造や施工箇所の特性に応じて最適な方法を選ぶ必要があります。
ここでは代表的な「ウレタン防水」「FRP防水」「シート防水」の3つについて、それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説します。
ウレタン防水の特徴
ウレタン防水は液体状のウレタン樹脂を塗布し、硬化させることで防水膜を形成する工法です。
最大の特徴は、施工箇所の形状を問わず、複雑な形でも対応できる柔軟性にあります。
また、塗膜であるため継ぎ目がなく、均一で美しい仕上がりが得られる点も魅力です。
弾力性があり、下地にひび割れが生じてもある程度追従できるため、モルタルやコンクリートの微細な動きにも対応できます。
塗布作業は職人の技術に大きく左右されるため、確かな技術力を持つ施工業者を選ぶことが重要です。
FRP防水の特徴
FRP(繊維強化プラスチック)防水は、ポリエステル樹脂とガラスマットを組み合わせて硬化させる工法です。
硬化後は非常に硬く、耐久性と耐摩耗性に優れており、強度が求められる場所に適しています。
特に、ベランダやバルコニー・屋上駐車場など、人が歩行したり重量物が置かれたりする場所に多く使われています。
ただし、FRPは硬くて伸縮性が少ないため、建物の動きに追従しにくい点に注意し、施工後は状態管理が重要になるでしょう。
シート防水の特徴
シート防水は、あらかじめ工場で成型された防水シートを、接着剤や機械的固定により下地に貼り付けて施工する方法です。
施工が比較的早く、品質のばらつきが少ないため、大規模な屋上や陸屋根などに適しています。
施工面に凹凸が多い場合や、配管が多く複雑な形状の場所には不向きなことがあります。
また、シートの継ぎ目や端部は劣化しやすいため、丁寧な施工と定期的な点検が必要です。
工法の選び方について
それぞれの工法には一長一短があり、建物の状態や使用環境・施工箇所の形状などを考慮することが大切です。
たとえば、屋上のような広くて平らな面にはシート防水、複雑な形状のバルコニーにはウレタン防水、強度を重視するならFRP防水が一般的に適しています。
どの工法が適しているかは、信頼できる防水業者による現地調査と提案に基づいて選びましょう。
コンクリート建物の防水工事費用の内訳と見積もりで確認すべき項目
防水工事を検討するうえで、もっとも気になるのが「実際にいくらかかるのか」という点です。
見積もり書を受け取った際に、記載されている内容を正しく理解し、適正価格かどうかを判断するためには、各費用項目の内訳を把握しておきましょう。
主な費用項目の内訳
防水工事における主な費用の内訳として、以下の項目が挙げられます。
- 材料費:ウレタン樹脂やFRP樹脂・塩ビシートなど、使用する防水材の種類や量によって費用が決まります。グレードの高い材料を使用するとその分高額になりますが、耐久性が増すため長期的にはコストパフォーマンスが良くなる場合もあります。
- 人件費:職人の作業時間や人数に応じた費用です。工期が長くなれば人件費も増加します。一般的には、難易度の高い施工や複雑な形状の部位では人手がかかるため、この部分のコストが高くなる傾向があります。
- 足場代:屋上や高所・段差のある箇所では、安全のために足場の設置が必要になります。仮設足場の費用は工事全体の中でも大きな割合を占めることがあるため、見積書で特に注目したい項目です。
- 下地処理費:古い防水層の撤去・ひび割れや浮きの補修・プライマーの塗布など、施工前の下準備にかかる費用です。下地の状態が悪い場合には、補修費が増える可能性もあります。見積書に下地処理が含まれているかは必ず確認しましょう。
- 諸経費:工事現場までの交通費や資材の搬入・搬出費・廃材処分費・工事中の管理費・保証に関する費用などです。これらは「諸経費」としてまとめて記載されることが多く、どこまで含まれているかは業者によって異なります。
見積もりのチェックポイント
防水工事の見積もり書を受け取った際には、以下の点をチェックすることが重要です。
- 単価と数量が明記されているか:材料費や作業費に関して、具体的に記載されているかを確認します。不明瞭な記載があると、価格が適正かどうかの判断が難しくなります。
- 「一式」表記が多すぎないか:「○○作業 一式」など、詳細が曖昧な記載が多い場合は要注意です。一式の中に何が含まれているのか、明確な説明を求めることが大切です。
- 保証内容や施工後の対応が明記されているか: 工事後の保証期間や、万が一の不具合が起きたときの対応方法が記載されているか確認しましょう。口頭での説明ではなく、書面に残っているかがポイントです。
- 複数業者から相見積もりを取る: 同じ施工内容であっても、業者によって価格や工法が異なることがあります。複数の見積もりを比較することで、価格の妥当性や業者の説明の丁寧さがわかります。
防水工事は専門性が高いため、知識がないと業者の言いなりになってしまうこともあるでしょう。
見積書の内容をしっかり読み込み、わからない点は遠慮なく質問することが、納得のいく工事を実現する第一歩です。
コンクリート建物における防水工事の費用を抑えるコツ
防水工事は、建物の寿命を延ばす重要なメンテナンスですが「費用が高い」という理由でつい後回しにしがちです。
しかし、防水が劣化したまま放置すると、雨漏りや鉄筋の腐食など建物の構造部分に深刻なダメージを与え、結果的に修繕費用が大幅に膨らむリスクがあります。
依頼する際は、コストを抑えるポイントについても把握しておきましょう。
相見積もりを必ず取る
複数の業者から見積もりを取得することで、相場感を把握できます。
また業者間の価格競争が働き、より良い条件で契約できる可能性が高まるでしょう。
同じ条件で比較し検討するためには、工事内容や使用材料を詳しく伝えることが重要です。
地元密着型の専門業者を活用
大手の業者や全国展開している企業に比べ、地元密着の専門業者は中間マージンが少なく、無駄なコストを削減しやすい傾向にあります。
また地域の特性や気候を熟知しており、最適な施工プランの提案も期待できるでしょう。
助成金・補助金を活用する
建物の老朽化対策や省エネ改修を目的とした防水工事に対して、地方自治体が助成金や補助金を出している場合があります。
申請条件や対象範囲は地域によって異なるため、事前に役所や専門業者に相談して利用できる制度を確認しましょう。
利用可能な制度があれば、実質的な負担額を大きく軽減できます。
これらの方法を組み合わせて賢く費用を抑えつつ、必要な防水性能を確保することが建物の長寿命化につながります。
単に価格だけで業者を選ぶのではなく、施工実績や保証内容も含めて総合的に判断することが重要です。
コンクリート建物の防水工事を依頼する業者選びのポイント
防水工事は建物の耐久性や快適な住環境を維持するために欠かせませんが、業者選びを誤ると施工不良やトラブルの原因となり、逆に建物の寿命を縮めてしまうリスクがあります。
ここでは実際によくある失敗例と、安心して任せられる業者を選ぶためのチェックポイントを詳しく解説します。
よくある失敗例
防水工事の業者選びで起こりやすい失敗例には、以下のようなケースが挙げられます。
- 安さ重視で選び、防水層の厚みが基準に満たない:防水層の厚みは耐久性に直結しますが、安価な見積もりに惹かれて十分な厚みを確保しない施工を行う業者もいます。薄すぎる防水膜はすぐに劣化し、早期の再施工が必要となることが多いです。
- 保証がない、または保証内容が不明確:工事後に不具合が発生した場合に備え、施工保証は必須です。しかし保証がまったくない、もしくは保証期間や範囲が曖昧である業者も存在します。保証内容は契約前に必ず確認しましょう。
- 無資格の職人や下請けによる粗雑な施工:防水工事は専門技術が必要なため、資格を持つ職人が施工することが望ましいです。無資格の職人や下請け任せの業者は、施工品質にムラが生じやすく、後々のトラブルにつながる可能性が高まります。
業者選びのチェックリスト
業者を選ぶ際は、下記のポイントをチェックしてみましょう。
- 防水工事の専門資格を持っているか:例えば「防水施工技能士」といった国家資格や公的な認定を持っている業者は、一定の技術力と知識を保証しています。資格の有無は信頼の目安となるでしょう。
- 実績(写真付きの施工例)を提示してくれるか:過去の施工実績を写真や事例で見せてくれる業者は、施工内容に自信がある証拠です。特に類似の建物や条件の実績があるかを確認すると安心です。
- 保証期間と内容を明記しているか:工事の保証期間(例:5年、10年など)や保証対象範囲を契約書など書面で明確に示してくれるかを確認します。口頭だけの説明は後々のトラブル原因になるため避けましょう。
- アフターサポートの体制があるか:工事完了後の定期点検や、不具合時の迅速な対応体制がある業者は安心して任せられます。連絡先や対応の流れについても事前に確認しましょう。
防水工事の工程と作業内容
防水工事は見た目では判断しづらいため、工程をしっかり理解しておくことがとても重要です。
工事の流れを把握しておくことで、手抜き工事や不要な作業を見抜く力にもつながります。
以下では、一般的な防水工事の主な工程とその内容について詳しく解説します。
- STEP
現地調査・診断
工事の最初のステップは、現地の調査と劣化状況の診断です。
ひび割れや防水層のはがれ・浮き・膨れといった症状を、目視や打診・赤外線カメラなどで確認し、適切な工法の選定や施工面積の正確な算出に役立てます。
この段階で、建物の構造や築年数、過去の防水履歴なども合わせて確認されます。 - STEP
高圧洗浄・下地処理
次に行うのが、高圧洗浄と下地処理です。
既存の防水層がある場合はこれを撤去し、表面に付着した汚れやホコリ・藻類・油分などを高圧洗浄でしっかりと洗い流します。
その後、クラック(ひび割れ)や浮き部分があれば補修を行い、凹凸をならすモルタル処理やケレン作業を実施することが基本的な流れです。
これにより、防水材がしっかり密着する下地が整えられます。 - STEP
プライマー塗布
プライマーとは、防水材と下地の密着性を高めるための下塗り材です。
プライマーの塗布は、防水層を施工する前段階で必ず行われ、塗りムラなく均一に塗布される必要があります。
この工程を丁寧に行うことで、防水層の剥離や浮き上がりといった不具合のリスクを大幅に軽減できます。 - STEP
防水層の施工
この工程では、選定された工法に基づき、防水材を塗布または貼付けて防水層を形成していきます。
ウレタン防水の場合は、液状の材料を複数回重ねて塗布し、所定の厚みを確保します。
FRP防水ではガラスマットと樹脂を交互に重ねて硬化させ、シート防水では防水シートを下地にしっかりと密着させるよう貼り付け作業を行います。
いずれの工法も、気泡や塗りムラがないよう慎重な施工が求められる作業です。 - STEP
トップコート(仕上げ)
防水層の上に、保護塗料であるトップコートを塗布する工程です。
トップコートには、防水層を紫外線や風雨・摩耗から保護する役割があります。
防水層の寿命を延ばし、美観を保つためにもトップコートは重要です。
トップコートは数年ごとに再施工することで、防水性能を長期間維持することが可能になるでしょう。 - STEP
乾燥・完了検査・引き渡し
すべての作業が完了した後は、十分な乾燥時間を確保し、防水層が完全に硬化したことを確認します。
その後、施工業者による完了検査を実施し、漏水の有無や施工不良がないかをチェックします。
問題がなければ施主への引き渡しとなり、工事完了後の注意事項やメンテナンス方法についての説明が行われることが一般的です。
コンクリート建物にひび割れや空隙が発生するのはなぜ?
コンクリートは丈夫な材料として知られていますが、施工や環境条件によって「ひび割れ」や「空隙」が発生することがあります。
これらは見た目の問題だけでなく、建物の耐久性や防水性を損なう原因となるため、理解と対策が重要です。
【ひび割れの主な原因】
ひび割れは構造の安全性に影響するだけでなく、水分の侵入経路となり、防水性能を大きく低下させる原因となります。
| 原因 | 説明 |
| 乾燥収縮 | 硬化する過程で水分が抜け、体積が縮むことで、引っ張り応力が発生しひび割れる。 |
| 温度変化 | 日中と夜間の温度差や、季節ごとの寒暖差で膨張・収縮が繰り返され、ひびが入ることがある。 |
| 外部からの荷重や沈下 | 建物の重み・地盤沈下・地震などにより、想定外の力が加わってひび割れが生じる。 |
【空隙の主な原因】
空隙は外からは見えにくい欠陥ですが、水の通り道になったり、強度の低下を招いたりするため、施工時の品質管理が重要です。
| 原因 | 説明 |
| 締固め不足 | 打設時にバイブレーターなどで十分に締め固めないと、気泡が残り空洞ができる。 |
| 型枠の形状や密閉不足 | 複雑な型枠や隙間の多い型枠では、コンクリートがうまく行き渡らず、空隙が発生しやすい。 |
| 配合不良 | 水が多すぎたり、骨材が偏っていたりすると、分離が起きて空隙が発生しやすくなる。 |
ひび割れと空隙は、どちらも建物の寿命や安全性に関わる現象です。
防水工事や補修を行う際は、これらの原因を正しく把握したうえで、適切な対処をすることが求められます。
コンクリート建物の防水工事に関するよくある質問(FAQ)
コンクリート建物の防水工事は建物の劣化を防ぐために欠かせませんが、工事に関して気になる方も多いでしょう。
この記事では、よくある質問を紹介します。
Q
防水工事の保証期間は?
A
多くの業者が5年~10年保証を提供しています。ただし工法や契約内容により異なるため、事前に書面で確認することが大切です。
Q
自分でDIYできますか?
A
小規模な補修であれば可能な場合もありますが、耐久性や防水性が大きく劣るため、基本的には専門業者に依頼するのが安心です。
Q
雨が続く時期でも施工できる?
A
乾燥工程が必要なため、連日の雨天では施工できません。天候の安定している時期がベストです。
Q
工期中、生活に支障は出ますか?
A
屋上など外部の工事であれば居住への影響は最小限ですが、バルコニーや玄関近くの場合は通行制限などがある場合もあります。
Q
防水工事の費用はどのような要素で決まりますか?
A
使用する防水工法や施工面積・建物の形状・下地の状態によって、費用は変わります。また、高所作業や足場設置の有無も価格に影響する要素です。事前に現地調査と見積もりを依頼することが重要です。
コンクリート建物の防水工事で安全性を確保しよう|まとめ
コンクリート建物の防水工事は、建物の寿命を延ばし資産価値を守るために欠かせない重要なメンテナンスです。
適切な防水施工を行うことで、雨水の浸入を防ぎ、ひび割れや鉄筋の腐食などの劣化を防止できます。
費用の目安は、一般的に1㎡あたり約4,000~8,500円程度ですが、使用する工法や施工面積・現場の状況によって変動します。
価格だけで判断するのではなく、施工内容の品質や保証の有無・業者の信頼性をしっかり確認することが成功のポイントです。
工事を検討する際は、複数の業者から相見積もりを取り、補助金や助成金を活用するなど、賢く計画することで費用を抑えつつ安心して依頼できるでしょう。
また、防水工事の仕上がりは建物の耐久性に影響を及ぼすため、信頼できる業者を選び、見積もりや契約書の内容を丁寧に確認することが重要です。
不明点があれば、納得がいくまで質問することでトラブル回避につながります。
防水工事は大切な建物を守るための投資のため、適切な知識を持って計画的に進め、快適で安全な住環境を長く維持しましょう。