外壁用塗膜防水とは?種類や仕組み・費用・施工方法からメンテナンス・選び方まで解説
2025/07/10
外壁の劣化や雨漏り対策において、防水性能を持つ「塗膜防水」は近年、注目される施工方法のひとつです。特に、既存の外壁の美観を保ちつつ、機能的な防水性能を付加できるという点から、戸建て住宅はもちろんマンションやビルの改修にも活用されています。
本記事では、外壁用塗膜防水の基礎知識から、施工方法、使用される防水材の種類、費用相場、他の工法との比較、おすすめの塗料メーカー、そして業者選びのポイントまで、初めての方にもわかりやすく解説します。これから外壁防水を検討されている方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
目次
外壁用塗膜防水とは?基本の仕組みと特徴
外壁用塗膜防水とは、液体状の防水材を外壁に塗布し、乾燥後に形成される薄い膜によって防水性能を発揮する工法です。主に塗料や防水材の樹脂成分が、硬化することで弾性のある膜を作り、ひび割れや浸水を防ぐ役割を果たします。
この工法の最大の特徴は、複雑な形状の壁面にも継ぎ目なく施工できる点です。加えて、既存の外壁材の上から施工が可能なケースも多く、既設壁材の解体や張替えを伴わない分、工期やコストの面でもメリットがあります。
また、塗膜防水は塗装と同様に色を選ぶことができるため、美観の維持や意匠性の確保にも適しています。とくに雨風や紫外線にさらされる外壁に対して、耐候性と柔軟性を兼ね備えた防水層を形成できる点が評価されています。
外壁用塗膜防水が必要なタイミングと劣化のサイン
外壁に塗膜防水が必要となるのは、次のような劣化症状やタイミングが見られる場合です。
- ひび割れ(クラック):塗装面に細かいひび割れが入っている場合、水が浸入して内部に悪影響を与える可能性があります。
- チョーキング現象:手で触れると粉が付くような現象は、塗膜の劣化が進行しているサインです。
- 剥がれ・浮き:外壁材や旧塗膜が膨れたり剥がれたりしている場合も、防水性が著しく低下している状態です。
- 室内の湿気やカビ:雨水の浸入が原因となり、内側にカビや結露が見られるケースも。
これらの症状が見られたら、早めの防水対策を講じることが、建物の寿命を延ばす鍵となります。特に外壁は日常的に確認する機会が少ないため、定期的な点検もおすすめです。
さらに、一般的な外壁塗装の耐用年数は10〜15年程度とされており、築10年を過ぎたあたりでの点検・再塗装が推奨されています。
外壁用塗膜防水の施工方法と工程
塗膜防水の施工は、以下のような工程で進行します。しっかりと手順を踏むことで、防水性能が最大限に発揮され、長持ちする外壁が実現します。
- 高圧洗浄:外壁に付着したホコリやカビ、旧塗膜の劣化部分を除去します。
- 下地処理:ひび割れの補修や段差調整など、塗布前の面の調整を行います。
- プライマー塗布:防水材の接着力を高める下塗り材を塗布します。
- 防水材の塗布:主となる防水材を複数回に分けて塗布。乾燥時間を設けつつ層を形成します。
- 仕上げ塗装(トップコート):紫外線や熱から防水層を保護するための仕上げを行います。
戸建住宅の場合、通常3〜5日程度の工期で完了するケースが多いですが、天候や施工範囲により前後します。マンションや集合住宅の場合は、足場設置や共用部の配慮が必要となるため、1〜2週間程度かかることもあります。
外壁塗膜防水に使用される主な防水材の種類
外壁用の塗膜防水には、さまざまな種類の防水材が使用されます。それぞれに特徴や適性があり、建物の構造や立地条件、予算に応じて選択されます。以下では、代表的な4種類の防水材について紹介します。
アクリル樹脂系塗膜
アクリル樹脂を主成分とした塗料は、比較的安価で施工もしやすく、戸建て住宅を中心に幅広く使われています。紫外線や雨風に対する耐性もあり、透湿性を持っているため結露の発生も抑えやすいです。ただし、耐久性はやや短め(5〜7年程度)で、頻繁なメンテナンスが必要です。
ウレタン塗膜防水
柔軟性と密着性に優れ、下地の動きにも追従できるため、ひび割れが起こりやすい外壁にも適しています。施工中は臭いがありますが、乾燥後は無臭で、安全性も高め。耐用年数は8〜12年程度。防水性能のバランスが良く、多くの現場で選ばれている素材です。
シリコン系塗膜防水
高い耐候性と撥水性を持ち、長期間にわたって外壁を紫外線や風雨から守ってくれます。防カビ性能もあり、湿気の多い地域や日当たりの悪い面にもおすすめ。塗膜の光沢があり、美観を重視したい方にも向いています。耐久年数は10〜15年程度。
フッ素系塗料との違いと相性
フッ素塗料は非常に高価ですが、その分耐久年数が長く(15〜20年程度)、メンテナンス周期を延ばしたい方に適しています。ただし、柔軟性には欠けるため、外壁のひび割れ対策としてはやや不向き。ウレタンやシリコンとの相性や重ね塗りの可否など、専門家の判断が必要です。
| 材料名 | 耐久年数 | 特徴 | 向いている建物タイプ |
|---|---|---|---|
| アクリル系 | 5〜7年 | 低価格・透湿性あり | 戸建て住宅 |
| ウレタン系 | 8〜12年 | 柔軟性・密着性に優れる | 戸建・集合住宅 |
| シリコン系 | 10〜15年 | 撥水性・防カビ性が高い | 湿気の多い地域 |
| フッ素系 | 15〜20年 | 高耐久・高価格 | 長期的なコスト削減重視 |
外壁塗膜防水の費用相場と内訳
外壁に塗膜防水を施す際の費用は、建物の規模や使用する塗料、足場設置の有無によって変動します。以下では、一般的な費用相場と内訳を紹介します。
費用の目安(m²単価)
| 建物タイプ | 費用相場(防水塗装のみ) |
| 戸建て住宅 | 約2,500〜4,000円/m² |
| 小規模アパート | 約3,000〜4,500円/m² |
| 中規模マンション | 約3,500〜5,000円/m² |
※上記は防水材の塗布のみ。足場設置・下地処理などは別途加算されることが一般的です。
主な費用内訳
- 材料費:全体の30〜40%程度。選ぶ塗料のグレードによって変動。
- 施工費(人件費):40〜50%。経験豊富な職人を雇うとコストは上がるが、仕上がりの品質に差が出ます。
- 足場代:15〜25%。2階建て以上の建物では必須。
- その他:廃材処理費、交通費、追加補修費など。
相見積もりの重要性
防水工事は専門性が高く、同じ工事内容でも業者によって金額に大きな差が出ることがあります。2〜3社以上から見積もりを取り、工事内容と価格を比較することが大切です。金額だけでなく、「使用塗料の詳細」「保証内容」「施工実績」なども合わせて確認しましょう。
外壁用塗膜防水と他の外壁防水工法の違い
塗膜防水は非常に柔軟で多用途な工法ですが、外壁防水には他にもいくつかの選択肢があります。ここでは、主な防水工法と比較しながら、それぞれの特徴と適した用途を整理します。
シート防水との比較
シート防水は、塩ビやゴム製の防水シートを壁面に貼り付ける方法で、主に平坦な屋上やベランダで使用される工法です。外壁にはあまり使用されませんが、部分的な補修で用いられることもあります。
- メリット:均一な防水層を確保しやすい
- デメリット:複雑な形状の外壁には不向き、下地との密着が弱い場合あり
防水モルタルとの比較
防水モルタルは、セメントに防水材を混ぜて塗り付ける工法で、下地の不陸調整と同時に防水性能を持たせることができます。
- メリット:強度があり、物理的な保護層にもなる
- デメリット:クラックが入りやすく、ひび割れ対策には塗膜との併用が効果的
タイル防水との比較
タイル張りは外観の美しさを保ちながら防水性も付加できる仕上げ方法です。ただし、目地部分からの浸水が課題になる場合があります。
- メリット:高級感ある仕上がり、美観重視に適している
- デメリット:メンテナンスが必要、目地劣化による漏水リスクあり
塗膜防水の総合的な位置づけ
| 工法 | 柔軟性 | 耐久性 | メンテ性 | 見た目 | コスト |
|---|---|---|---|---|---|
| 塗膜防水 | ◎ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| シート防水 | △ | ◎ | ○ | △ | ○ |
| 防水モルタル | ○ | ○ | △ | △ | ◎ |
| タイル防水 | △ | ○ | △ | ◎ | △ |
塗膜防水は、総合的なバランスに優れた工法であり、外壁に求められる美観性・防水性・コスト面のバランスを取りやすいのが強みです。
外壁塗膜防水でおすすめの塗料メーカー3選
防水性能だけでなく、耐候性や仕上がりの美しさを重視するなら、信頼できる塗料メーカーを選ぶことが重要です。以下は、国内で実績のあるメーカーとその主力製品の一例です。
日本ペイント
- 製品例:「ファインシリコンフレッシュ」など
- 特徴:シリコン・フッ素系製品に強み。色展開が豊富で、仕上がりの美しさに定評があります。
エスケー化研
- 製品例:「クリーンマイルドシリーズ」など
- 特徴:建築塗料専門メーカー。高耐久・防カビ性能に優れ、公共施設でも多数採用。
関西ペイント
- 製品例:「アレスダイナミックTOP」など
- 特徴:ウレタン・シリコン・フッ素まで幅広く展開。コストパフォーマンス重視の現場に最適。
各メーカーともに塗膜防水に対応した製品群をそろえており、施工業者によって採用実績が異なるため、見積時には必ず製品名や仕様を確認しましょう。
外壁用塗膜防水の施工業者を選ぶ際のポイント
塗膜防水は材料の品質と同じくらい、「誰が施工するか」が仕上がりに影響を与えます。以下の点に注意して業者を選ぶと安心です。
業者選びのポイント
- 防水工事の実績が豊富か:ホームページで事例写真や施工歴を確認。
- 防水施工技能士などの資格保有者が在籍しているか:国家資格の有無で信頼度が異なる。
- アフター保証が明記されているか:塗膜剥がれや施工ミスに対応できる保証期間があると安心。
注意すべき業者の特徴
- 相場より極端に安い見積もりを提示してくる
- 使用塗料や施工方法の説明が曖昧
- 契約を急がせる(特に訪問販売系)
価格だけで選ぶと後悔する可能性もあるため、「適正価格」と「施工品質」の両方を重視するのが賢明です。
外壁用塗膜防水に関するよくある質問(FAQ)
Q
外壁に塗膜防水って本当に必要?
A
建物の防水性を維持し、内部の劣化を防ぐために非常に有効です。特にひび割れが出やすい外壁には効果的です。
Q
防水塗料だけ塗れば雨漏りは防げる?
A
下地処理や施工工程が不十分だと効果は発揮されません。正しい施工が前提です。
Q
DIYで塗膜防水は可能?
A
小規模の補修程度なら可能ですが、外壁全体となると専門知識と技術が必要です。
Q
冬や梅雨の施工は問題ない?
A
湿度や気温の影響を受けやすいため、気候が安定している春・秋が最適です。
まとめ|外壁用塗膜防水は美観と防水を両立する優れた選択肢
塗膜防水は、外壁の美しさと防水性能を同時に高められる施工方法として、多くの建物で採用されています。施工手順や塗料の選定、業者選びをしっかり行えば、耐久性にも優れた外壁を実現できます。建物の価値を守るためにも、適切なタイミングでの防水対策を検討しましょう。
大規模修繕工事・防水工事・外壁塗装・外壁補修参引用、参考サイト
国土交通省
特定非営利活動法人集合住宅管理組合センター
公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会
一般社団協会マンション管理業協会
一般社団法人日本防水協会
日本ペイント
独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)
一般社団法人 マンション大規模修繕協議会
日本ウレタン建材工業会
FRP防水材工業会
株式会社ダイフレックス(シーカ・ジャパン株式会社)