マンションの屋上防水工事にかかる費用相場は？工法・耐用年数・コスト削減のコツまで徹底解説

マンションの屋上防水は、建物の寿命や資産価値を守るうえで不可欠なメンテナンスです。

しかし、「費用はどのくらいかかるのか」「どのタイミングで行えばいいのか」「どの業者に頼めば安心なのか」など、疑問や不安を感じている管理組合やオーナーの方も多いのではないでしょうか。

特に中長期的な視点でマンションを維持管理するうえでは、適切なタイミングでの防水工事とその費用感を把握することが極めて重要です。

この記事では、防水工事の種類別の費用相場や耐用年数、劣化サインの見極め方、さらにはコストを抑える方法まで詳しく解説します。

後悔しない防水工事を行うための知識を、この1本に凝縮しました。長期修繕計画にお悩みの方や、初めて防水工事を担当する管理組合の方も、ぜひご一読ください。

マンション屋上防水の費用相場と工法別の特徴

屋上防水工事にかかる費用は、選択する防水工法によって大きく異なります。マンションでは、建物の構造や屋上の形状、気候条件に応じて適切な工法を選ぶ必要があります。

防水工法によって耐用年数や施工費用、工期、メンテナンス頻度も大きく変わるため、予算や長期計画に応じて選定することが大切です。

ここでは、代表的な4種類の防水工法の特徴と費用相場、耐用年数を紹介します。

防水工法	費用相場（㎡単価）	耐用年数	主な特徴	注意点
ウレタン防水 （密着／通気緩衝）	6,500〜12,000円／㎡	約10〜12年	液状材料で複雑な形状にも 対応できる柔軟性が高い	紫外線で劣化しやすく、 5年ごとのトップコート更新が必要
シート防水 （塩ビ・ゴム）	8,000〜15,000円／㎡	約10〜15年	施工が早く品質が安定。 臭い・騒音が少なめ	平面施工が前提、障害物が多い屋上では不向き。 剥がれ対策が重要
FRP防水	6,500〜10,000円／㎡	約10〜12年	軽量・高強度・硬化が早く 短期施工が可能	揺れに弱く、大面積には不向き。 仕上げが滑りやすい
アスファルト防水	11,000〜22,000円／㎡	約15〜25年	耐久性が高く長寿命。 古くから使われ実績も豊富	臭い・煙が発生しやすく近隣対策が必要。 重量が大きい

ウレタン防水｜費用相場と耐用年数

ウレタン防水は、液状のウレタン樹脂を塗布して硬化させることで防水層を形成する工法です。
比較的安価で、複雑な形状の屋上にも対応できる柔軟性があります。
塗膜の厚さや重ね塗りの回数によって防水性能が変わるため、施工者の技量も品質に直結します。

• 費用相場：6,500円〜12,000円／㎡
• 耐用年数：約10〜12年

紫外線や経年劣化によりひび割れが生じやすいため、5年に一度を目安にトップコートの塗り替えを行うと寿命を延ばせます。
コストパフォーマンスに優れた工法ですが、定期的なメンテナンスを前提とした計画が重要です。

シート防水｜費用相場と施工条件

シート防水は、塩ビやゴム製の防水シートを屋上に貼り付ける方法です。
施工が早く品質が安定しているのが特長です。耐久性に優れ、施工時の臭いや騒音も比較的少ないため、居住者への影響も最小限に抑えられます。

• 費用相場：8,000円〜15,000円／㎡
• 耐用年数：約10〜15年

ただし、平坦な面にしか施工できないため、障害物の多い屋上には不向きです。
シートの剥がれには注意が必要で、接着面の処理を適切に行わなければ防水効果を損なうリスクがあります。

FRP防水｜軽量で強度の高い選択肢

FRP（繊維強化プラスチック）を用いた防水工法で、非常に高い強度と軽さを兼ね備えています。
ベランダや屋上などの小面積に向いており、耐衝撃性にも優れています。

また、硬化時間が短く、短期施工が可能な点も魅力です。

• 費用相場：6,500円〜10,000円／㎡
• 耐用年数：約10〜12年

地震などによる動きに弱いため、建物の揺れが想定される地域では注意が必要です。

さらに、表面が硬く滑りやすいため、施工後の安全対策（ノンスリップ加工など）も検討すべきでしょう。

アスファルト防水｜長寿命だが高コスト

アスファルト防水は、ルーフィング材にアスファルトを染み込ませたシートを重ねて施工する工法で、古くから使われています。
熱工法や常温工法など複数の施工方法があり、条件に応じた使い分けが可能です。

• 費用相場：11,000円〜22,000円／㎡
• 耐用年数：約15〜25年

施工時に煙やにおいが発生するため、近隣対策が必要となることがあります。
耐久性は高いものの、建物への荷重が大きくなる点も確認が必要です。

また、工期も他の工法と比較して長めになる傾向があります。

マンション屋上防水工事の費用比較一覧表｜小規模など規模別の費用相場

マンションの屋上防水工事は、規模（戸数・屋上面積）によって総額が大きく変わります。

同じウレタン防水でも、小規模は固定費比率が高く㎡単価が上がりやすい のに対し、中規模・大規模では面積増により単価が安定 し、総額が抑えられるケースもあります。

防水工事の費用比較一覧表｜小規模マンション・中規模マンション・大規模マンション

以下では、小規模・中規模・大規模の3タイプを「戸数」「想定面積」「ウレタン防水の概算費用」で比較しています。

規模分類	戸数の目安	想定屋上面積	費用相場（ウレタン防水 / 通気緩衝工法）	費用傾向
小規模マンション	10〜30戸	80〜250㎡	60万〜300万円	固定費の影響を受けやすく、㎡単価が高め
中規模マンション	30〜80戸	250〜600㎡	200万〜700万円	面積増で㎡単価が安定し、総額の精度も出やすい
大規模マンション	80〜200戸以上	600〜1,500㎡超	450万〜1,600万円	大規模ゆえの仮設・安全管理費が増加しやすい

マンション屋上防水工事にかかる費用の内訳と補助金・保険制度

防水工事には複数の工程があり、それぞれに費用が発生します。

以下に、代表的な費用項目とその単価相場を整理しました。事前に内訳を把握しておくことで、見積書の妥当性を判断する材料にもなります。

項目	単価相場
仮設工事費	700〜1,200円／㎡
下地補修費	0〜数百万円（状態により変動）
シーリング工事費	600〜1,000円／㎡
高圧洗浄費	70〜250円／㎡
改修ドレン設置費	20,000〜25,000円
廃棄物処理費	30,000円〜
現場管理費	工事費の5〜15％

仮設工事費には、足場の設置・養生・安全対策が含まれます。下地補修費は、既存防水層の状態やコンクリートの劣化状況によって大きく左右され、事前診断の正確さが費用の適正化につながります。

また、改修ドレンの設置は雨水排水機能の向上に直結し、特に築年数の経過した建物には重要な工程です。

補助金や保険の活用も重要なポイントです。
2025年現在、「住宅省エネキャンペーン」や自治体のリフォーム助成制度、自然災害による被害が原因の修繕には火災保険が使える可能性もあります。

事前に調べておくことで、工事費用の大幅な軽減が可能です。

マンション屋上の防水工事が必要になるタイミングと劣化症状の見極め方

防水工事は、築年数だけを目安にするのではなく、実際の防水層の状態を正確に把握することが重要です。
タイミングを誤れば、余計なコストがかかるだけでなく、雨漏りや建物の構造にまで被害が及ぶリスクがあります。

ここでは、マンション屋上防水における代表的な劣化症状と、それに応じた工事判断の目安を詳しく見ていきましょう。

色褪せ・表面のツヤ消失

防水層の表面が紫外線や風雨の影響を長年にわたって受け続けることで、色が薄れたり、光沢が失われたりします。これは初期劣化のサインであり、防水性そのものが大きく失われているわけではないものの、放置するとひび割れなど深刻な劣化へ進行します。

この段階でトップコートの塗り替えを行うことで、防水層の寿命を大幅に延ばすことができます。早期対処が、トータルコストを抑えるカギとなります。

ひび割れ・亀裂の発生

微細なクラックは、特にウレタン防水などの柔軟な塗膜に現れやすい症状です。温度変化による伸縮や、構造躯体の振動・動きにより発生します。亀裂が発見された場合には、その位置や深さ、範囲をしっかりチェックすることが重要です。

補修材による部分補修で済むケースもありますが、放置すると雨水の浸入経路となり、防水層の根本的なやり替えが必要になります。

防水層の膨れ・浮き

防水層と下地の間に水分が侵入し、気温上昇とともに内部で蒸発・膨張することにより、表面が膨らんだり浮いたりします。

この状態では、部分的に防水機能が喪失しており、破断や剥離の危険性も伴います。原因としては、施工時の下地乾燥不良や既存層の撤去不足などが挙げられ、工法選定や施工管理の精度が問われる劣化です。

雨漏り・水たまりの常態化

屋上に常に水が溜まっている、排水が悪い、あるいは室内にまで浸水している場合は、防水層の機能がほぼ失われていると判断できます。

このような状況では、部分的な補修では対応が難しく、全面的な防水改修が必要となります。水たまりは防水層の劣化を促進し、最終的には鉄筋の腐食や断熱材の腐敗、カビ・結露など衛生面にも悪影響を及ぼす要因となります。

耐用年数の経過

防水工事は種類ごとに耐用年数が異なります。以下の表を参考に、築年数や前回の工事からの経過年数を基準に、点検・補修の検討を始めましょう。

防水工法	耐用年数の目安	特徴と注意点
ウレタン防水	約10〜12年	柔軟で対応力が高いが紫外線に弱い
FRP防水	約10〜12年	高強度・軽量だが伸縮性が低い
シート防水	約10〜15年	品質安定だが平面施工限定
アスファルト防水	約15〜25年	耐久性最強だが重量・臭気に注意

いずれの工法においても、10年経過を目安に点検を実施し、異常が見られた場合には早めのメンテナンスを行うことが、建物全体の健全性維持につながります。

マンション屋上防水工事の施工フローと業者とのやりとりの実際

防水工事の成功は、業者とのコミュニケーションと、段階ごとの流れを理解しておくことにかかっています。

以下は、一般的なマンション屋上防水工事の一連の流れと、それぞれのフェーズで注意すべきポイントです。

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1. STEP

   お問い合わせ・事前相談

   管理組合やオーナーが防水工事を検討し始めた段階で、まず行うのが専門業者への問い合わせです。
   現地調査や概算見積もりの依頼は無料で対応している業者が多く、不安な点や過去の履歴なども相談できるタイミングです。

2. STEP

   現地調査と劣化診断

   実際に業者がマンションを訪れ、屋上や付帯部を含めた劣化状況を診断します。
   排水溝の詰まり、立ち上がり部のクラック、既存防水層の状態、ドレンの劣化などを写真付きで記録し、必要に応じてドローン調査などを実施する場合もあります。

3. STEP

   見積もりの提示と工法の提案

   調査結果をもとに、最適な防水工法とその理由を丁寧に説明したうえで、詳細な見積書が提示されます。
   ここでは、材料費・人件費・仮設工事・養生費・安全対策費などすべてが明記され、相見積もりを取る際にも比較しやすい形になっているのが理想です。

4. STEP

   契約・施工準備

   内容に納得し契約を交わすと、工程表の作成や必要資材の手配、近隣住民への案内文配布など、工事前の調整に入ります。
   マンションの場合、理事会の承認や居住者説明会の開催が求められることも多く、スケジュールには余裕を持って臨むことが大切です。

5. STEP

   施工開始

   安全管理と工程管理のもと、足場の組み立てや高圧洗浄、下地処理、防水層の塗布・貼付などの作業が進みます。
   各工程ごとに写真撮影が行われ、管理組合やオーナーに進捗が報告されるのが一般的です。
   工期中は職人のマナーや現場の清掃状況も重要な評価ポイントとなります。

6. STEP

   完工・引き渡し

   全工程が終了した後には、立会い確認と共に完工報告書が提出され、保証書や防水材のロット番号・施工写真などもまとめて引き渡されます。
   万が一のトラブルに備えて、書類は大切に保管しておきましょう。

7. STEP

   アフターサポート

   施工後の1年・2年・5年などのタイミングで無料点検を実施している業者もあり、保証期間内での不具合については無償で対応するのが基本です。
   加えて、トップコートの塗り替え時期や次回の点検予定などを事前にスケジュール化してくれる業者は、長期的な信頼にもつながります。

マンション屋上の防水工事の費用を抑えるコツ

マンションの屋上防水工事は、高額になりやすい工事項目のひとつです。

しかし、計画的に情報収集を行い、賢く選択することで、コストを抑えつつ品質の高い施工を実現することも可能です。

ここでは、特に意識したい5つの費用削減ポイントを、より具体的な視点から紹介していきます。

マンション屋上防水費用を抑える方法1.相見積もりをとって価格と内容を比較する

複数の業者に同じ条件で見積もりを依頼する「相見積もり」は、適正価格を知るための基本的かつ有効な手段です。

特に初めて防水工事を発注する管理組合では、1社だけに見積もりを依頼するのではなく、必ず複数の業者から取得して比較しましょう。

• 同一条件（面積、防水工法、工期、使用材料など）で依頼しないと、正確な比較ができません。
• 提示された見積書は、総額だけでなく内訳に注目してください。単価、材料費、管理費、交通費、保証内容などに大きな差が出ることがあります。
• 価格が安すぎる業者には注意が必要です。材料品質や施工手順が省略されている可能性があるため、工事内容の説明の明確さや担当者の対応力も加味して選ぶようにしましょう。

マンション屋上防水費用を抑える方法2.補助金や助成制度を活用する

国や自治体では、建物の省エネ化や長寿命化、バリアフリー化などを目的としたリフォーム補助制度を数多く用意しています。これらを賢く活用することで、自己負担額を大きく抑えることができます。

代表的な制度例

• 【全国】住宅省エネ2025キャンペーン（国交省・経産省・環境省連携）
• 【東京都足立区】住宅リフォーム助成金（最大5万円支給）
• 【福岡市】リフォーム支援制度（工事費の10％、上限20万円）

参考元：国土交通省　経済産業省　環境省　「住宅省エネ2025キャンペーン」
参考元：足立区「省エネリフォーム補助金」
参考元：福岡市「介護保険の住宅改修」

補助金を活用するには、以下のポイントを事前に確認しておくことが重要です。

• 対象となる工事内容か（例：省エネ性能向上、防水改修）
• 事前申請が必要か（多くは工事前の申請が必須）
• 登録業者による施工であること
• 提出書類の整備（図面、見積書、施工写真、契約書など）

補助制度の条件や受付期間は自治体によって異なり、年単位で内容が変更されることもあります。最新情報は各自治体の公式サイトや建築相談窓口で確認してください。

マンション屋上防水費用を抑える方法3.火災保険を確認する

自然災害によって屋上防水層が損傷した場合、火災保険や共済から補償を受けられる可能性があります。特に風災・雪災・落下物などで防水層が剥がれたり破れたりした場合には、保険適用の対象になり得ます。

対象になりやすい事例

• 台風による突風で屋上シートが浮き上がった
• 大雨で排水不良を起こし、屋上から雨漏りが発生した
• 強風で飛来物がぶつかり防水層に穴が空いた

保険申請時に必要な主な書類

• 被害状況の写真（施工前・施工後）
• 見積書（補修費明細）
• 被害報告書・施工報告書

まずは保険契約書を確認し、「建物附帯設備補償」や「水濡れ・風災補償」が含まれているかをチェックし、保険会社または代理店に連絡して対応可否を確認してください。

マンション屋上防水費用を抑える方法4.リフォームローンを検討する

積立金だけでは対応できない、もしくは突然の雨漏りで緊急性が高い場合には、リフォームローンの活用も現実的な選択肢です。

近年では、管理組合向けに特化したローン商品も増えており、長期修繕計画に沿って資金調達する動きが広がっています。

ローン利用時の注意点：

• 金利や手数料、返済期間を複数社で比較する
• 無理のない返済計画を立てる（家計や修繕計画を考慮）
• 連帯保証人や担保の有無を事前に確認する

将来的な大規模修繕との兼ね合いも踏まえたうえで、資金の柔軟性を保つ手段として有効です。

マンション屋上防水費用を抑える方法5.自社施工の専門業者に依頼する

マンション管理会社や不動産会社経由ではなく、実際に施工を担当する防水専門業者に直接依頼することで、中間マージンを削減できます。

また、専門業者の中には下請けを使わず自社職人のみで対応する会社もあり、施工品質や対応力が高いことが多いです。

自社施工業者を選ぶメリット

• 見積もりから工事完了まで一貫対応
• 担当者と直接相談でき、意思疎通がスムーズ
• 価格交渉や工程変更にも柔軟に対応可能

選定時は「建設業許可の有無」「過去の施工実績」「保証内容」「第三者評価」なども確認しましょう。

マンションの屋上防水工事に関するよくある質問（FAQ）

マンションの屋上防水工事を検討している管理組合やオーナー様から寄せられる、代表的な質問にお答えします。

Q3.

Q4.

Q5.

まとめ｜マンション屋上防水工事は早めの検討と準備が成功のカギ

屋上防水工事は、マンションの建物寿命を延ばし、資産価値を維持するうえで欠かせないメンテナンスのひとつです。防水層の劣化を放置すれば、雨漏りだけでなく、構造体の腐食や断熱材の損傷にもつながり、大規模な修繕が必要になるケースもあります。

こうしたリスクを避けるためにも、以下のポイントを意識した検討が重要です。

屋上防水工事の成功には、「情報収集」と「早めの判断」が不可欠です。施工後の保証体制やアフターサポートまで含めた業者選定を行い、住民全体が安心できる住環境づくりを目指しましょう。

適切な防水工事で、マンション全体の資産価値と快適性を守りましょう。