マンションの大規模修繕工事にかかる期間はどれぐらい？目安を工程別に紹介

マンションの大規模修繕工事は、建物の資産価値を維持し、住環境を整えるうえで欠かせない重要な取り組みです。
しかし工事期間が長くなると、居住者の生活への影響や近隣への配慮、管理組合の対応など、さまざまな不安も生じます。
「どのくらいの期間がかかるのか？」「工程はどうなっているのか？」「工期が延びる原因は？」といった疑問を抱える方も多いのではないでしょうか。

この記事では、マンションの大規模修繕にかかる一般的な工期や工程の内容、遅延のリスクと対策までわかりやすく解説します。
また、修繕工事に取り組む際に、管理組合としてどのような準備をしておくべきかも併せて紹介します。

マンションの大規模修繕工事とは？工事期間を理解するための知識

マンションの大規模修繕工事は、建物の寿命を延ばし、快適な居住空間を維持するために行われる、周期的かつ計画的なメンテナンスです。
まずはこの工事の基本的な考え方を整理しておきましょう。

大規模修繕の目的と概要

大規模修繕とは、外壁や屋上防水・共用部分・給排水管など、建物の主要な構造・設備をまとめて補修・更新する工事のことを指します。
通常は建築後12〜15年ごとに実施され、足場を組んだ大規模な施工が必要となるため、建物の運用に一定の影響が出ます。

この修繕工事の目的は、劣化の進行を防ぎ、機能を回復・維持することです。
加えて、見た目の美観向上や耐震性・安全性の確保にもつながり、資産価値の維持・向上に直結します。

大規模修繕は「必要な時に」「計画的に」行うことが重要です。
劣化が深刻化する前に対応することで、結果的に修繕コストを抑えられるというメリットもあります。

修繕工事と改修工事の違い

「修繕工事」と「改修工事」は混同されがちですが、その目的に違いがあります。

• 修繕工事：劣化部分を元の状態に戻すことが目的（例：外壁クラック補修、防水層再施工）
• 改修工事：機能向上や現代仕様への適合を目的（例：バリアフリー化、省エネ機器の導入）

大規模修繕では、基本的に修繕工事を中心に進めつつ、必要に応じて改修工事を組み込むことで、マンションの性能向上を図るケースもあります。

マンション大規模修繕の開始までに必要な準備期間とその流れ

大規模修繕は、実際の工事開始までに1〜2年程度の準備期間を要するのが一般的です。
工期だけでなく、着工前の工程も含めて計画的にスケジュールを立てることが、トラブルを避けるポイントとなります。

大規模修繕の一般的な準備フロー

段階	内容
長期修繕計画の見直し	建物の経年状況を踏まえた修繕周期の確認と更新
調査・診断	専門業者による目視・打診・赤外線調査などを実施
設計・見積もり取得	修繕設計と複数社からの相見積もり
業者選定	評価項目をもとに施工会社を決定
住民説明会・合意形成	総会での議決を経て、正式に着工へ
契約・近隣対応・工程調整	契約締結後、足場や作業場所の調整と近隣挨拶

このように、着工までのプロセスは多岐にわたります。
とくに住民説明会や施工会社との調整を丁寧に進めることで、工事中のトラブル回避にもつながります。

マンション大規模修繕工事の工程と工事期間の目安

実際に着工した後の工程についても、事前に把握しておくことが重要です。
ここでは、代表的な工程と工期目安を表にまとめました。

一般的な工事工程と工期の目安

工程名	工期目安	主な作業内容
仮設工事	1〜3週間	足場・養生・仮設トイレの設置など
下地補修	2〜4週間	外壁のひび割れ・浮き・欠損の補修
タイル補修	1〜2週間	タイルの張り替えや浮きの補修
シーリング工事	1〜2週間	外壁目地・サッシ周りの打ち替え
外壁塗装	2〜4週間	外観美観・防水性向上を目的とした塗装
鉄部塗装	1〜2週間	手すり・扉などの鉄部のサビ防止塗装
防水工事	2〜4週間	屋上やバルコニーの防水層再施工

上記の工期は天候や建物条件により変動する場合がありますが、通常はそれぞれの工程が順番に行われ、トータルでは約3ヶ月〜6ヶ月以上を要するのが一般的です。
工程ごとにしっかりと段取りを組むことで、スムーズな工事進行が可能になります。

マンションの規模別に見る大規模修繕工事期間の目安

大規模修繕工事の工期は、建物の構造や施工範囲によって変動しますが、なかでもマンションの規模は大きな要因となります。
以下に、戸数別に一般的な目安をご紹介します。

戸数別の工事期間の目安

マンション規模	戸数目安	工期の目安
小規模マンション	〜50戸	約3〜4ヶ月
中規模マンション	50〜99戸	約4〜6ヶ月
大規模マンション	100戸以上	約6ヶ月〜1年以上

マンションの階数や建築形状・敷地内の作業スペース・足場の設置方法などによっても、工事の難易度と所要時間は異なります。
特にタワーマンションや複合施設の場合は、工事期間が1年以上に及ぶこともあり、住民やテナントへの影響を最小限に抑える工夫が必要になります。

また、同じ規模のマンションでも、外壁や屋上の劣化状態によって必要な補修内容が異なるため、個別の診断による見積もりで正確な工期を把握することが大切です。

マンションの大規模修繕工事期間が延びる主な要因とは？

当初のスケジュールどおりに工事が進まないケースも少なくありません。
大規模修繕では、さまざまな予期せぬトラブルが工期延長につながることがあります。
以下に、代表的な要因を解説します。

不測の事態による遅延

天候不良や建物調査時に見つからなかった劣化箇所の発見など、想定外の事態は工事の進行を大きく左右します。
たとえば、強風の日は足場作業が中止されるケースが多く、雨天も塗装・防水作業に大きな影響を与えます。

また、工事中に外壁の下地腐食や給排水管の劣化が発覚すると、追加の補修作業が発生し、結果的に工程の再調整が必要となります。
このような「見えない部分」の影響は予測が難しいため、工期にはある程度の余裕を持たせることが重要です。

設計変更や追加工事

工事中に住民からの要望や新たな課題が発生し、当初の設計内容に変更が生じる場合もあります。
たとえば「共用部の照明をLEDに変更したい」「手すりのデザインを新調したい」といったケースです。

こうした変更には、新たな材料手配や工程の組み直しが必要になり、工期の延長要因となります。
住民の満足度を高める取り組みではあるものの、事前に想定できる範囲で整理しておくことが望ましいでしょう。

施工会社のリソース配分の変化

施工会社が複数の現場を同時進行している場合、人員や資材の割り当て状況により進行が遅れるケースも見受けられます。
他現場のトラブル対応が長引いた結果、当該マンションの工事スピードが落ちてしまうこともあるでしょう。

このような事態を避けるためには、進行状況を共有できる体制を持つ施工会社や、自社一貫施工の業者を選定することがリスクヘッジになります。

マンション大規模修繕で工事期間の遅延を防ぐためにできる対策

工期延長は住民のストレスや管理コストの増加につながるため、なるべく防ぎたいものです。
ここでは、管理組合が主導して取り組める事前対策について紹介します。

スケジュールに余裕を持たせる

最初から「予定より早く終わる」ことを前提にするのではなく、「予備日を含めたスケジュール」を立てることが基本です。
施工業者との契約時にも「天候による遅延」や「追加工事が発生した場合の対応フロー」を明文化しておくことで、予期せぬトラブルに対処しやすくなります。

業者選定で施工管理体制を確認する

業者を選ぶ際には、価格だけでなく「工程管理の体制」や「現場責任者の常駐有無」なども評価項目に加えるとよいでしょう。
チェックポイントとして以下が挙げられます。

• 自社一貫施工か（外注が少ないか）
• 現場に常駐する監督者がいるか
• 工程管理ソフトや共有ツールの導入実績があるか

工程の「見える化」が進んでいる会社ほど、工期遵守率も高い傾向があります。

住民への周知と協力体制づくり

工事中の騒音や洗濯物の制限など、住民への影響は避けられません。
しかし、事前にしっかりと情報を共有し、理解と協力を得ることで、工事中のクレームや要望による中断リスクを下げることができます。

掲示板や回覧板、定期的な説明会を通じて、進捗状況やスケジュールの変更点を伝えることが重要です。

マンション大規模修繕で管理組合が担うべき役割と体制づくりの重要性

大規模修繕工事をスムーズに進行させるためには、施工業者任せにせず、管理組合が中心となって体制を整えることが不可欠です。
準備段階から工事完了までのすべての過程において、適切な意思決定と情報共有が求められます。

管理組合の役割と体制づくりのポイント

項目	内容
役割分担	理事長・副理事長・会計・監査などに役割を明確に設定
合意形成	総会での決議により、工事内容・予算を住民と共有
情報共有	掲示板・回覧板・説明会などを通じて継続的に周知
施工会社との窓口	質問・クレームへの対応を一元管理できる体制を整備

これらの体制がしっかり構築されていないと、住民間の不信感が生まれたり、工事の遅延につながることがあります。
大規模修繕は、数年に一度の大きなプロジェクトだからこそ、理事会主導で責任ある運営を行うことが求められます。

また、外部の修繕コンサルタントを活用することで、技術的・契約的な判断をサポートしてもらうという選択肢もあります。

マンションの大規模修繕工事期間でよくある質問

ここでは、マンションの大規模修繕に関して、特によく寄せられる質問を5つ取り上げてお答えします。

Q1. 大規模修繕中にエアコンや給排水は使える？

A. 基本的には、エアコンや給排水は通常どおり使用可能です。ただし、ベランダ側の外壁や配管に工事が及ぶ場合、一時的に室外機の移動や使用制限が生じることがあります。事前に施工業者から案内があるため、指示に従って対応してください。

Q2. 洗濯物は外に干しても大丈夫？

A. 工事期間中は足場やネットが設置されるため、日差しや風通しが制限されます。塗装や高圧洗浄の工程では、粉じんや塗料が付着するリスクもあるため、原則として室内干しかコインランドリーの利用が推奨されます。

Q3. ベランダの荷物やアンテナはどうすればいい？

A. ベランダに設置している私物（プランター・収納箱・物干し台など）は、工事開始前に室内へ一時撤去する必要があります。また、アンテナや物干し竿も外すよう指示される場合があります。指示内容は説明会や通知で事前に周知されます。

Q4. 工事期間中に在宅や立ち会いは必要？

A. 外部工事が中心であれば、原則的に在宅の必要はありません。ただし、バルコニー側のサッシ調整や配管点検などで、一時的に室内に立ち入る作業が発生することがあります。その際は事前に日時が通知され、在宅または立ち会いが求められることがあります。

Q5. 工事中の騒音や振動はどれくらいある？

A. 外壁の補修や塗装作業、足場設置・解体時には、ある程度の騒音や振動が発生します。特に午前中や作業開始直後は音が響きやすく、平日昼間に在宅している方にとっては気になることもあります。施工業者からのスケジュール通知をもとに、在宅時間の調整を検討するとよいでしょう。

マンションの大規模修繕工事期間を正しく把握して円滑な施工を｜まとめ

マンションの大規模修繕工事は、建物の機能を回復し、住環境と資産価値を守るために欠かせない重要な工事です。
しかし、その規模ゆえに工期が長くなりがちで、居住者の生活にも多くの影響を及ぼします。
だからこそ、管理組合や居住者が「どれくらいの期間がかかるのか」「なぜ延びることがあるのか」「どんな対策が取れるのか」を正しく理解しておくことが大切です。

一般的な工事期間は3ヶ月〜6ヶ月程度ですが、マンションの規模や建物の状況、施工内容によっては1年以上かかることもあります。
また、天候や設計変更・施工体制の問題によって、工期が延びるリスクも存在します。
こうしたトラブルを最小限に抑えるためには、管理組合が主導してスケジュールを管理し、適切な業者選定や住民との情報共有を徹底することが求められます。

大規模修繕は単なる補修ではなく、マンション全体の未来を左右するプロジェクトです。
計画性を持って臨み、信頼できるパートナーとともに、安全かつ円滑な工事を進めていきましょう。