【談合の手口】歴史から振り返るマンション大規模修繕工事の裏側と談合を封じる新構造 ― 「中立ファシリテーション」の全貌
2025/10/28
目次
はじめに
「建てた工務店・建設会社に頼めば問題はなかった」——それが修繕の原点でした。ところがマンション普及とともに管理会社・設計コンサルタントが修繕領域へ進出し、管理会社・設計コンサルティング会社の系列の施工業者のみで他社を排除します。本稿は、「業界の変遷」と「現在の不都合な真実」を整理し、談合を“仕組みで封じる”中立ファシリテーションの具体策を提示します。
修繕業界の構造変遷(1970〜現代)
1970〜1980年代:自主管理と工務店・建設会社中心の時代
分譲マンションが全国で急増した時期。
当時は「管理会社」という存在がほとんどなく、自主管理が主流でした。
修繕の依頼は、建物を建てた建設会社や工務店に直接依頼するのが一般的でした。
修繕の流れは次のような構造でした:
管理組合 → 建設会社または工務店 → 左官業者、鳶、塗装業者、防水業者、板金業者、設備業者、電気業者
この時代は「作った人が直す」という関係が自然で、建設会社や工務店が現場管理を行い、信頼関係も明確でした。
この時代のようにこの構造であれば今のような談合という構図には発展していかなかったのです。
1980年代後半:管理会社の登場
マンションが全国的に増加し、住民だけでは管理しきれない問題が表面化します。
その中で、デベロッパー(不動産開発会社)系列の管理会社や独立系管理会社が次々と設立され始めました。
当初は、
- 共用部の清掃
- 点検業務
- 管理組合運営の補助
といった日常管理業務を中心に担っていました。
管理会社はあくまで不動産会社であり、建設会社ではありません。
しかし、次第に修繕工事の提案にも関与し始め、
「うちで工事までまとめて管理しますよ」という形で、
修繕工事領域にまで踏み込むようになります。
1990年代:管理会社が修繕工事の領域まで踏み込む
管理会社は清掃・点検業務に加え、
大規模修繕工事の提案・監理・施工手配までを一体化して行うようになりました。
結果として、修繕の構造は以下のように変化します:
管理組合 → 管理会社 → 建設会社または工務店 → 左官業者、鳶、塗装業者、防水業者、板金業者、設備業者、電気業者
この構図によって、管理会社が中間に介入する仕組みが完成してしまいました。
現在への伏線
こうして生まれた「管理会社中心の修繕構造」は、
やがて見積り操作・談合・系列化といった不透明な仕組みへと発展していきます。
もともと「管理を効率化するため」に生まれた仕組みが、
いつの間にか修繕積立金の利権構造を生む温床になってしまったのです。
管理会社の思うツボになっていませんか?騙されてないですか?
大規模修繕の業界は主導権を握った者が得をする仕組みになっています。
そしてこの主導権を握っているのが「管理会社」です。管理組合の皆さんは「誰かがやってくれる」、「意見を言って面倒なことに巻き込まれたくない」このように思う管理組合の方は多いかと思います。また、大規模修繕の専門家ではないので知識がないのも当たり前です。そこに管理会社は漬け込んで、管理組合は「全部管理会社にお任せ」してしまうケースが多くなってしまいます。
管理会社は、
- 修繕積立金の残高を把握
- 理事会・管理組合員の知識レベル・意思決定構造(誰がキーマンか)も把握
- 過去の修繕履歴・業者リストも保有
これらを踏まえ、「このマンションならこの金額までならギリギリ払えるだろう」とシナリオを先に描くのです。
大規模修繕のコンサルタントを「管理会社」に依頼した時点でほぼほぼ勝負はついています。
この構造は、まさに出来レースの始まりです。
管理組合にとっては普段から定期清掃などの日常管理業務、管理組合運営のサポートなどの業務を委託しており、担当者も顔なじみなので安心感のある委託先です。
しかし、そのマンションのことをよく知っているからこそ大きな問題もあります。
管理会社はもちろん複数のマンションを管理し「いつ」「どのマンションで」大規模修繕工事の計画があり、「修繕積立金がいくら貯まっているか」を知っています。
そのため管理会社は、予算の上限まで管理組合の資産を使って大規模修繕工事を行い、それを工事会社などと山分けするような計画を主導することができるのです。
好意にしている会社に工事を受注させ、バックマージンを受け取ろうとするケースが最近ではしばしば報道されており、業界では問題視されています。
管理会社任せだけは危険
管理会社と施工会社の癒着
前述のように、管理会社は、自らが管理する物件について、いつ、大規模修繕工事の計画が進んでおり、修繕積立金がいくら貯まっているかを把握しています。
すなわち大規模修糖工事に関する重要な情報を一手に握られてます。
管理会社が主導する場合、公募に参加する施工業者は、基本的には管理会社の協力業者です。そのため、管理会社と施工業者の間で行われるやりとりに関しては透明性がなく、管理組合も知る由はありません。
つまり管理組合に提出される見積金額は吊り上げられたものになります。そして、吊り上げた価格との差額は、マージンとして管理会社の懐に入る仕組みです。
管理会社と施工会社はもはや絶対服従の関係です。管理会社がいなければ施工業者は仕事がもらえないため、管理会社にいわれるままにキックバックを支払うしかありません。
キックバックの相場は、工事金額の10~20%程度。ただ、管理会社にも売上目標があり、マ
ンションによってはそれ以上のキックバックが発生する場合もあります。
管理会社にとっては、工事金額が高いほうがキックバックの額が増え、売上アップに繋がります。しかし、これは工事金額をできるだけ安くしたい管理組合とは相反するものです。
施工業者は”ぶら下がる”ことを選ぶ
今回紹介したパターンはあくまで様々な手法で行われているごくわずかなものであり、他にも様々なパターンが存在しています。もちろん談合をしていない管理会社やコンサル、施工業者も存在しますが、
気にして頂きたいのがどの状況でも談合ができてしまう構造にあるということです。
この構造の最大の問題は、自立できない業者を生み出すことにあります。
昨今、管理会社やコンサルの系列に入らず独立して営業を行っている修繕会社は、もちろん存在しますが、それらの多くは年商20億円程度が限界といわれています。
一方で、管理会社の下請けとして仕事を受けている業者は案件が途切れず、年商50億円を超えるケースも珍しくありません。
つまり、独立すれば自由だが、仕事がない。
系列に入れば安定するが、法的に問題がある。
多くの企業は、生活のために“ぶら下がる”ことを選び、
結果的に癒着が文化として定着してしまいました。
この“安定と引き換えに中立性を失う構造”が、現代の談合の温床です。
談合を物理的に不可能にする「ファシリテーション方式」
新東亜工業におけるファシリテーション
では、どうすればこの不正を断ち切れるのか?
答えは、「現役の工事会社で、なおかつ施工を請けない第三者」による精査です。
利益を受け取らない立場が、見積書の妥当性を検証する仕組み――それが新東亜工業のファシリテーション方式です。
この方式はどの業者に見積依頼をし、どの業者を選定したのかが把握できないため
「絶対に」談合ができません。
見積書はすべて匿名化され、社名やロゴ、連絡先をマスキングしてもらいます。
弊社は、「A社・B社・C社」として精査します。
会社のブランド・関係性・先入観を完全に排除し、談合の余地を、構造的に消すのです。
報酬は固定5%のみ。
前受2.5%・選定後2.5%の二分割制で、追加報酬は一切ございません。
「後から増える」ことが物理的に不可能な仕組みです。
また、プレゼン当日は弊社は出席しません。
事前に質問リストを理事会へ配布し、プレゼン終了後5日以内に別日で内容を「業者名を伏せたまま」共有してもらい、見積の精査結果を報告させていただきます。
見積の精査内容ですが、その建物に対して「どのくらいの人工がかかるか」、「どのくらいの材料の原価か」、「諸経費はどのくらいか」を算出します。これを行うことによりその会社が暴利な見積を出していないかなどの判断ができます。原価を算出してどのくらいの利益であれば会社が存続するかなどもお伝えしますのでどの業者が正当かの判断材料になるかと思います。その後はどの施工業者を選定したかは我々どもも確認することはありません。
皆様は見積の整合性が分からないと思います。そこを弊社が精査することにより、修繕積立金の過払いを死守致します。

実際の効果と理事会(管理組合)の変化
この方式を導入したマンションでは、平均で1,000万円以上のコスト削減が実現しています。修繕費が1億円以上のマンションであれば5000-6000万円の差があることもあります。
不要項目の削除や単価の適正化により、理事会(管理組合)が納得して契約を締結して頂いております。
工期の短縮、追加費用の抑制、内部対立の解消など、効果は多方面に及びます。
「理事会(管理組合)が主体で動く」ことにより、組合員の信頼度も上がり、
最終承認はほぼ全会一致で通るようになった事例もあります。
もはや“管理会社・コンサル任せ”ではなく、“理事会(管理組合)が主役”の修繕が現実化しているのです。
理事会(管理組合)がまるで知識を持ったかのように公正に業者選定を進められるのが最大のメリットです。

理念――「構造的正義」を仕組みで実現する
私たちは、正義を理念ではなく構造で実現しました。
正直な会社が報われ、理事会(管理組合)が納得して意思決定できる環境作りをしました。
談合の余地をなくし、透明性を制度として確立してきました。
それが、新東亜工業のファシリテーションの本質です。
私たちはもうただの施工会社という訳ではありません。現役の工事会社が「誠実な判断の伴走者」となり、「談合を封じる構造改革の担い手」となります。
誰が得をするかではなく、誰が損をしないかで設計された仕組み。
その結果、理事会(管理組合)も施工会社も、真の意味で公平な関係を築けるようになりました。
結論:あなたのマンションは、誰のための修繕か?
理事会(管理組合)は建物を守るために存在します。
しかし現実には、“管理会社にすべてを投げつけ、談合を成立させるための承認機関”となっているケースが少なくありません。
あなたのマンションが――
・管理会社・コンサルが主導で進めている
・新しい施工業者に見積依頼をしようとする際、排除するような動きをしている
・一社以外工事を受注したいという熱量を感じない
このどれかに当てはまるなら、それは出来レースのサインです。
今こそ理事会(管理組合)が主体となり、工事を請けない第三者が精査する“透明な仕組み”を導入する時です。
談合を暴き、構造で封じる。
それが新時代の修繕の在り方であり、
「管理会社でもコンサルでもない第三の選択肢」――新東亜工業のファシリテーションです。
監修:石川繁雄(一級建築士・一級建築施工管理技士)