【話します①】マンション大規模修繕工事の裏側―誰も知らない「談合の現場」
2025/10/30
目次
はじめに:透明な顔をした“出来レース”の闇
多くの理事会はこう信じています。
「管理会社が紹介してくれる業者なら安心」
「コンサルタントが審査した業者なら公平」
しかしその“安心”こそが、最大の罠です。
表面上は3社見積り、形式上は入札、議事録も整い、理事会の承認も取れている。
けれどもその裏では、金額も業者も、最初から決まっている。
理事会が知らないところで、すべての筋書きが用意されています。現場では「競争」を演出するための名刺の使い回し、見積調整、心理操作が日常的に行われています。
透明な制度の顔をした“出来レース”こそが、大規模修繕業界の真の姿です。
こちらも参照ください。
【話します②】マンション大規模修繕工事に潜む“見えない談合”構造
第1章:コンサルによる“選別制度”の真の目的
事例①:審査制度の裏に隠された「排他構造」
あるコンサル会社では、「審査に合格した施工会社のみ紹介可能」とする登録制度を導入していました。
形式的には“品質管理のため”。
しかし実態は、コンサル側がコントロール可能な業者だけを囲い込み、その業者からバックマージンをもらうように自社の利益を確保する仕組み。
――これは一見、安心できる制度のように聞こえます。
あるマンションで、管理組合が「A社にも見積りを取ってほしい」とそのコンサルに依頼。
そのA社は現地調査を行い、正式な見積書を提出。
ところが数日後、「価格は非常に魅力的ですが、今回はお断りします」と返答。
プレゼンの機会すら与えられませんでした。
後日理事長に話を聞くと、コンサルが「今回は時間がない」「審査が間に合わない」と説得していたという。
つまり、“時間”を口実に外部業者を排除していたのです。
コンサルが掲げる「公平性」や「透明性」は、しばしば自分たちの支配を正当化するための装飾に過ぎません。
書類上は完璧でも、実態は談合を制度化した排他構造です。

第2章:理事会を分断する「心理的誘導」
事例②:6,300万円 vs 8,500万円の不可解な逆転
談合は、金額だけでなく「人の心理」を巧みに操ることで成立します。
とある物件では、我々の見積が6,300万円、管理会社が8,500万円。
仕様も同等。差額は2,200万円でした。
それでも最終的に選ばれたのは管理会社側の高額業者。これは管理会社と理事長が裏で繋がっていたパターンです。
「長年付き合いがある」「何かあったら責任を取ってくれる」――そのように理事長も他の高齢の方には誘導していった。
一方で若い世代の理事は「合理性とコスト」を重視。
会議は対立し、意見が分かれます。
その空気を変えるのは、たった一言。
「3か月後に着工なんてありえないです。その会社で本当に大丈夫なんですか?」
3か月後の着工は猶予もあり各署、書類申請は問題なく終わります。
人間の“恐れ”と管理組合員の大規模修繕における知識レベルに漬け込んだ典型的な心理操作。
「準備がしっかりとできない会社」と管理会社は誘導。
さらに管理会社は「念のための再調査」を提案し、本命業者が再見積で少し値下げ。
「誠意を見せた」と印象付け、理事会は“自分たちで選んだ”と思い込む。
出来レースは理事会の手で完成するのです。

第3章:現場で行われる“偽装競争”のカラクリ
事例③:名刺を使い回し、現地調査を演出
管理会社が慕っている下請け施工業者は多く存在します。A社、B社、C社を推薦し、A社に採用させたい場合、A社はB社やC社から名刺をもらいA社がその名刺を使用し、B社やC社を装い現地調査や見積作成まで行うことがあります。つまり、見積もり上は複数社が参加しているように見せかけて、実際には管理会社と通通の下請け施工会社同士で参加しているという構図になります。。
こうして書類上は3社、実際は1社という構図が作られる。
さらに、入札条件を「直近1年以内に同規模の修繕工事を○○件以上実施」や「ISO22000取得」に限定することで、他の業者の参加ができないように仕組まれています。
これで形式上は“公正な入札”が成立する。
しかし実際には、最初から落札業者が決まっている。
「競争しているように見せること」こそが、管理会社の本当の目的なのです。

第4章:下請けが語る「沈黙の現場」
事例④:下請け施工会社は修繕する順番が暗黙のルールで決まっている
とある施工会社では、見積依頼・現地調査の段階から、「すでに“本命業者”が決まっている。」と言われる。
「この金額より高く出してほしい。次の修繕は頼むから」となだめられ、本命以外は完全な“当て馬”。
ある現場では、現地調査の時点で本命業者以外は現場を歩き、写真を撮るだけ。
工事を受注してもらいたいという熱量を全くみせない。次回の修繕工事の番が回ってくるまでは自分たちが選ばれることがないのだから当たり前だろう。
談合とは、単なる不正ではありません。
業界全体の“暗黙のルール”として存在している。
正直な業者ほど声を上げられず、沈黙が続く。
だから談合は何十年も消えないのです。

第5章:数字と制度で談合を“合法化”する仕組み
談合の恐ろしさは、すべてが「合法的」に見える点にあります。
審査書、議事録、入札結果、すべて整っている。
しかしその裏では、管理会社が修繕積立金の残高や借入可能額を基準に見積金額を調整しています。
建物の劣化状況ではなく、「出せる範囲」で修繕内容を決める。
必要な修繕ではなく、“積立金を使い切る修繕”。
これが制度として定着しているのです。
本来は少しの補修で済むものを「劣化している」と説明し、全部取り替えたりと
修繕積立金の範囲いっぱいに使わせる。
理事会は「計画通りだから安心」と錯覚しますが、
それは巧妙に設計された“予算消化型修繕”です。
目一杯修繕積立金を支払った場合、次回の修繕計画に対して基本的に積立金が上がってしまいます。それは1世帯当たりの資産価値が下がることを意味します。
第6章:物価高騰・人手不足という“口実”
コロナ以降、ほとんどの管理会社が「物価高騰」と「人手不足」を口実に見積りを吊り上げています。
新築であれば、鉄筋や木材等材料が大半を占めるので物価高騰の意味は理解できます。
しかし、修繕においては、新たに鉄骨や木材といった材料は基本的には必要ありません。確かに塗料などの材料費は上がっていますが、㎡あたりで換算した場合、全体の見積金額の数%上昇した程度です。20-30%以上上がっているというような業者には気を付けてください。差額の正体は、管理会社・コンサル・下請けのマージンになっている可能性が高いです。
「自社では職人が確保できない」と言いながら、実際は協力会社任せ。
“外注コントロール型”にしておきながら、あたかも「職人不足」を演出します。 本当に人手不足であればその会社は工事を請け負うべきではありません。それでも理事会は「そういうものだ」と受け入れてしまう。
恐ろしいのは、不正が“納得”によって合法化している点なのです。
第7章:「責任を取れるのか?」という心理操作
理事会が他の業者を検討しようとすると、必ず言われる言葉。
「その業者で何かあったら責任を取れるんですか?」
しかしその“責任”は誠意ではなく、価格に含まれた保険です。
10%~15%の上乗せマージンの中に、“何かあったときの面倒見料”が入っている。
つまり「高くても責任を取る」のではなく、「高くするために責任を取る」と言い換えられるのです。
理事会の心理を巧みに突き、“責任”を口実に判断を封じる。
これが、談合構造を支える最後の鎖です。

第8章:沈黙の連鎖と業界の構造 声をあげる勇気
多くの業者は不正を知っています。
しかし、声を上げた瞬間に管理会社やコンサルの“見積依頼リスト”から外される。
現場を失い、経営が立ち行かなくなる。
だからこそ、誰も声を上げられない。
談合を告発した会社は業界から干される。
「正しいことをした者が損をする」――この構図が業界を腐らせています。
そして理事会は「それが普通」と思い込み、
談合を支える“無意識の共犯者”になっていくのです。
第9章:談合を物理的に不可能にする「ファシリテーション方式」
新東亜工業におけるファシリテーション
では、どうすればこの不正を断ち切れるのか?
答えは、「現役の工事会社で、なおかつ施工を請けない第三者」による精査です。
利益を受け取らない立場が、見積書の妥当性を検証する仕組み――それが新東亜工業のファシリテーション方式です。
この方式はどの業者に見積依頼をし、どの業者を選定したのかが把握できないため
「絶対に」談合ができません。
見積書はすべて匿名化され、社名やロゴ、連絡先をマスキングしてもらいます。
弊社は、「A社・B社・C社」として精査します。
会社のブランド・関係性・先入観を完全に排除し、談合の余地を、構造的に消すのです。
報酬は固定5%のみ。
前受2.5%・選定後2.5%の二分割制で、追加報酬は一切ございません。
「後から増える」ことが物理的に不可能な仕組みです。
また、プレゼン当日は弊社は出席しません。
事前に質問リストを理事会へ配布し、プレゼン終了後5日以内に別日で内容を「業者名を伏せたまま」共有してもらい、見積の精査結果を報告させていただきます。
見積の精査内容ですが、その建物に対して「どのくらいの人工がかかるか」、「どのくらいの材料の原価か」、「諸経費はどのくらいか」を算出します。これを行うことによりその会社が暴利な見積を出していないかなどの判断ができます。原価を算出してどのくらいの利益であれば会社が存続するかなどもお伝えしますのでどの業者が正当かの判断材料になるかと思います。その後はどの施工業者を選定したかは我々どもも確認することはありません。
皆様は見積の整合性が分からないと思います。そこを弊社が精査することにより、修繕積立金の過払いを死守致します。

実際の効果と理事会(管理組合)の変化
この方式を導入したマンションでは、平均で1,000万円以上のコスト削減が実現しています。修繕費が1億円以上のマンションであれば5000-6000万円の差があることもあります。
不要項目の削除や単価の適正化により、理事会(管理組合)が納得して契約を締結して頂いております。
工期の短縮、追加費用の抑制、内部対立の解消など、効果は多方面に及びます。
「理事会(管理組合)が主体で動く」ことにより、組合員の信頼度も上がり、
最終承認はほぼ全会一致で通るようになった事例もあります。
もはや“管理会社・コンサル任せ”ではなく、“理事会(管理組合)が主役”の修繕が現実化しているのです。
理事会(管理組合)がまるで知識を持ったかのように公正に業者選定を進められるのが最大のメリットです。

理念――「構造的正義」を仕組みで実現する
私たちは、正義を理念ではなく構造で実現しました。
正直な会社が報われ、理事会(管理組合)が納得して意思決定できる環境作りをしました。
談合の余地をなくし、透明性を制度として確立してきました。
それが、新東亜工業のファシリテーションの本質です。
私たちはもうただの施工会社という訳ではありません。現役の工事会社が「誠実な判断の伴走者」となり、「談合を封じる構造改革の担い手」となります。
誰が得をするかではなく、誰が損をしないかで設計された仕組み。
その結果、理事会(管理組合)も施工会社も、真の意味で公平な関係を築けるようになりました。
結論:あなたのマンションは、誰のための修繕か?
理事会(管理組合)は建物を守るために存在します。
しかし現実には、“管理会社にすべてを投げつけ、談合を成立させるための承認機関”となっているケースが少なくありません。
あなたのマンションが――
・管理会社・コンサルが主導で進めている
・新しい施工業者に見積依頼をしようとする際、排除するような動きをしている
・一社以外工事を受注したいという熱量を感じない
このどれかに当てはまるなら、それは出来レースのサインです。
今こそ理事会(管理組合)が主体となり、工事を請けない第三者が精査する“透明な仕組み”を導入する時です。
談合を暴き、構造で封じる。
それが新時代の修繕の在り方であり、
「管理会社でもコンサルでもない第三の選択肢」――新東亜工業のファシリテーションです。
監修:石川繁雄(一級建築士・一級建築施工管理技士)