防水工事とは?種類から費用・症状・工法・施工事例などを紹介

建物の屋上やベランダに水たまりができやすい、天井にシミが見えるようになった――。

こうした症状に気づきながらも、「防水工事って具体的に何をするの?」「いつ、どのタイミングで依頼すればいいの?」と悩んでいる方は少なくありません。

防水工事は、建物を雨水から守り、その寿命を大きく左右する重要なメンテナンスです。

しかし、工法の種類が複数あり、費用相場も幅広いため、初めての方にとっては分かりにくい部分も多いでしょう。適切な工法を選ばなければ、せっかくの工事が無駄になってしまうこともあります。

本記事では、防水工事の基礎知識から4つの主要な工法の特徴、費用相場、施工のタイミング、そして信頼できる業者の選び方まで、建物を守るために知っておくべき情報を分かりやすく解説します。

この記事を読めば、あなたの建物に最適な防水工事を自信を持って選べるようになるはずです。

この記事で分かること
  • 防水工事の目的と建物への影響
  • 主要工法(ウレタン・FRP・シート・アスファルト)の特徴と違い
  • 工法別の費用相場と工事期間の目安
  • 防水工事が必要なサインと最適なタイミング
  • 失敗しない業者選びのポイント
  • よくある質問への専門家の回答

防水工事とは?建物を守る重要な役割

防水工事とは、建物の屋上やベランダ、屋根などに防水層を形成し、雨水の侵入を防ぐための工事です。

主にコンクリート造の建物に施工され、建物内部への水の浸入を遮断することで、構造体の劣化を防ぎ、建物の寿命を延ばす役割を担っています。

防水工事が必要な理由と建物への影響

建物は常に雨風や紫外線にさらされ、時間とともに外部からのダメージを受け続けています。特に水は建物にとって最大の敵といえるでしょう。

コンクリートは一見頑丈に見えますが、実は無数の微細な隙間が存在します。

防水層がない状態、あるいは防水層が劣化した状態では、雨水がこの隙間から建物内部に少しずつ侵入していきます。この水分が建物の構造体に到達すると、深刻な問題が発生します。

また、木造部分がある建物では、水分によって木材が腐食し、シロアリの発生リスクも高まります。

建物内部にカビが繁殖すれば、居住者の健康被害にもつながります。喘息やアレルギー症状を引き起こす可能性があり、特に小さなお子様や高齢者のいるご家庭では注意が必要です。

さらに、雨漏りが発生すると、天井や壁のクロスにシミができ、床材も傷んでしまいます。こうなると防水工事だけでなく、内装工事も必要になり、修繕費用が大幅に増加してしまいます。

防水工事は建物の資産価値を維持するためにも欠かせません。

適切なタイミングで防水工事を行うことで、これらのリスクを未然に防ぎ、建物を長期にわたって健全な状態に保つことができるのです。

防水工事を行う主な施工箇所

防水工事が必要な箇所は、建物の構造や用途によって異なりますが、主に以下の場所が対象となります。

屋上・屋根

建物の最も上部に位置し、雨水が直接当たる場所です。特に陸屋根(平らな屋根)は水が溜まりやすいため、防水工事が必須となります。

屋上を人が歩く場所として使用する場合は、高い耐久性を持つ工法が選ばれます。マンションやビルの屋上では、アスファルト防水やシート防水が多く採用されています。

ベランダ・バルコニー

戸建て住宅で特に重要な施工箇所です。洗濯物を干したり、植物を育てたりと日常的に使用する場所であるため、人の歩行に耐えられる強度が求められます。

また、建物の構造上、ベランダの下に居室があることが多く、万が一雨漏りが発生すると生活に直接影響します。FRP防水やウレタン防水が一般的に選ばれています。

外壁の一部

外壁と開口部(窓やドア)の接合部分、サッシ周りなどには、シーリング材による防水処理が施されています。これらの部分は建物の動きや紫外線の影響を受けやすく、定期的なメンテナンスが必要です。

また、パラペット(屋上の立ち上がり壁)や笠木(パラペットの上部に取り付ける仕上げ材)も、雨水が侵入しやすい箇所として注意が必要です。

これらの箇所は、それぞれ受ける負荷や環境条件が異なるため、場所に応じて最適な防水工法を選ぶことが重要になります。

防水工事の主な4つの工法・種類と特徴

防水工事には、大きく分けて4つの代表的な工法があります。

それぞれ特徴や適した施工箇所が異なるため、建物の状態や使用目的に合わせて最適な工法を選ぶことが大切です。

工法名主な特徴費用相場
(1㎡あたり)
耐用年数主な適用箇所
ウレタン防水場所を選ばず施工可能5,000〜7,500円10〜15年ベランダ、屋上、複雑な形状の場所
FRP防水軽量で高強度6,000〜8,500円10〜12年戸建てベランダ、狭い面積
シート防水短工期・低コスト4,000〜7,500円12〜18年広い屋上、平面的な場所
アスファルト防水最高の耐久性5,000〜8,000円15〜30年ビル・マンションの屋上

それぞれの工法について、詳しく見ていきましょう。

ウレタン防水|場所を選ばない万能タイプ

ウレタン防水は、液体状のウレタン樹脂を塗り重ねて防水層を形成する工法です。

現在の防水工事市場において最も普及している工法の一つであり、一般社団法人日本防水材料協会のデータによると、市場シェアの約3割を占めています。

この工法の最大の魅力は、その万能性にあります。液体を塗布するという特性上、複雑な形状の場所や狭い箇所でも施工が可能です。既存の防水層の上から重ね塗りできるため、改修工事にも適しています。

また、適切なメンテナンスを行えば、何度でも塗り重ねて防水性能を維持できるという長期的なコストメリットもあります。

メリット
  • 複雑な形状や狭い場所でも施工可能
  • 既存の防水層の上から施工できる
  • 比較的低コストで工事ができる
  • 定期メンテナンスで長期間使用できる
  • 建物への負担が少ない軽量な防水層

一方で、注意すべき点もあります。手作業で塗布するため、職人の技術力によって仕上がりに差が出やすいという特徴があります。

塗りムラがあると、その部分から劣化が進行しやすくなります。また、施工中はウレタン樹脂特有の匂いが発生するため、近隣への配慮が必要です。

デメリット
  • 職人の技術力で仕上がりが左右される
  • 施工中に特有の匂いが発生する
  • 乾燥時間が必要で天候の影響を受けやすい
  • 定期的なトップコートの塗り替えが必要(5年程度)

ウレタン防水には「密着工法」と「通気緩衝工法」という2つの主要な工法があります。

密着工法は、下地に直接ウレタン樹脂を塗布する最もシンプルな方法です。

コストが抑えられ、工期も短いというメリットがありますが、下地に水分が残っている場合は施工できません。

通気緩衝工法は、下地と防水層の間に「通気緩衝シート」という特殊なシートを敷き、その上からウレタン樹脂を塗布する方法です。

密着工法よりもコストは高くなりますが、耐久性に優れており、長期的には信頼性の高い選択肢といえます。

ウレタン防水は、戸建て住宅のベランダ、マンションの廊下や階段、形状が複雑な屋上など、幅広い場所で採用されています。

費用相場は1㎡あたり5,000〜7,500円程度で、標準的な10㎡のベランダであれば総額5万〜10万円程度が目安となります。

FRP防水|軽量で高強度が魅力

FRPは、ガラス繊維などの繊維にポリエステル樹脂を含浸させて硬化させた複合材料で、軽量でありながら非常に高い強度を持つという特性があります。

身近なところでは、浴槽やプール、船舶などにも使用されている信頼性の高い素材です。

施工方法は、下地の上にガラス繊維製のマット(シート状のもの)を敷き、その上からポリエステル樹脂を塗布して硬化させます。これにより、継ぎ目のない一体化した強固な防水層が完成します。

FRP防水の大きな特徴は、その硬化速度の速さです。樹脂が硬化するまでの時間が短いため、工期を大幅に短縮できます。

最短で1日、通常でも1〜2日程度で工事が完了するため、「できるだけ早く防水工事を終わらせたい」という方に適しています。

また、硬化後の防水層は非常に硬く、人が歩いても傷つきにくいという耐摩耗性を持っています。そのため、日常的に使用するベランダやバルコニーに最適です。

メリット
  • 軽量で建物への負担が少ない
  • 高い強度と耐摩耗性を持つ
  • 工期が短く1〜2日で完了
  • 継ぎ目のない美しい仕上がり
  • 耐水性・耐薬品性に優れる

一方で、FRP特有の注意点もあります。最も大きな弱点は、伸縮性がほとんどないことです。プラスチック素材であるため硬く、建物の揺れや温度変化による伸縮に追従できません。

そのため、地震や温度変化で建物が動くと、防水層にひび割れが発生しやすくなります。

この特性から、広い面積の屋上にFRP防水を施工することは推奨されません。面積が広いほど温度変化による伸縮も大きくなるため、ひび割れのリスクが高まるのです。

一般的には、10〜20㎡程度までの比較的狭い面積に適した工法とされています。

また、紫外線に弱いという弱点もあります。紫外線を長期間浴び続けると、樹脂が劣化して表面が粉状になる「チョーキング現象」が発生します。

このため、表面を保護するトップコートの塗り替えを5年程度の周期で行う必要があります。

デメリット
  • 伸縮性がなくひび割れしやすい
  • 広い面積には不向き
  • 紫外線に弱く定期的なトップコート塗り替えが必須
  • 施工中に強い匂いが発生する
  • 他の工法と比べてやや高額

FRP防水は、新築戸建て住宅のベランダやバルコニーで多く採用されています。

狭い面積で高い強度が求められる場所に最適な工法といえるでしょう。

費用相場は1㎡あたり6,000〜8,500円程度で、10㎡のベランダの場合は総額6万〜10万円程度が目安です。

シート防水|コストパフォーマンスに優れる

シート防水は、工場で製造された防水シートを現場で貼り付けることで防水層を形成する工法です。

使用するシートの種類によって「塩ビシート防水」と「ゴムシート防水」に分かれますが、現在の主流は塩ビシート防水です。

シート防水の最大の特徴は、シート自体が工場で品質管理された状態で製造されているため、品質が安定していることです。現場での職人の技術による品質のばらつきが少なく、安定した防水性能を発揮します。

また、シートを貼り付けるという施工方法のため、広い面積を短期間で施工できるというメリットもあります。

ウレタン防水のように乾燥時間を待つ必要がないため、工期を短縮でき、その分人件費も抑えられます。

メリット
  • 品質が安定している
  • 広い面積を短期間で施工可能
  • 比較的低コストで工事ができる
  • 耐久性に優れている(特に塩ビシート)
  • カラーバリエーションが豊富

一方で、シートを貼り付けるという施工特性上、複雑な形状の場所や障害物が多い箇所には向いていません。

シートを正確に貼り付けるには平坦な面が必要であり、凹凸が多い場所では隙間ができやすくなります。

また、シート同士の接合部分は熱で溶着させますが、この接合部分が施工不良を起こすと、そこから雨水が侵入するリスクがあります。

デメリット
  • 複雑な形状の場所には不向き
  • 接合部分の施工不良リスク
  • シートの端部処理に技術が必要
  • 施工時に機械音が発生することがある

シート防水で使用される2種類のシートには、それぞれ特性があります。

塩ビシートは塩化ビニル樹脂製のシートで、現在のシート防水の主流となっています。耐久性が高く、紫外線や熱、オゾンに対する耐性に優れています。

ゴムシートは合成ゴム製のシートで、以前は広く使われていましたが、現在では採用されることが減っています。

伸縮性に優れるというメリットがある一方で、シート同士が一体化せず接着剤で貼り合わせるため、接合部分からの雨水侵入リスクが高いというデメリットがあります。

また、シート防水の施工方法には「密着工法」と「機械的固定工法」があります。

密着工法は、接着剤を使ってシートを下地に直接貼り付ける方法です。シンプルな工法のためコストを抑えられますが、下地に水分が含まれている場合は施工できません。比較的狭い面積のベランダやバルコニーに適しています。

機械的固定工法は、専用の固定ディスクを使ってシートを固定する方法です。

既に雨漏りが発生している建物の改修工事に適していますが、固定ディスクを設置する際に機械音が発生するため、近隣への配慮が必要です。

シート防水は、マンションやビルの広い屋上で多く採用されています。費用相場は1㎡あたり4,000〜7,500円程度と、4つの工法の中では比較的リーズナブルです。

アスファルト防水|最も高い耐久性を誇る

アスファルト防水は、日本において100年以上の歴史を持つ、最も伝統的で信頼性の高い防水工法です。

この工法の最大の強みは、その圧倒的な耐久性です。耐用年数は15〜30年と他の工法を大きく上回り、適切な施工とメンテナンスを行えば、30年以上使用できることもあります。

また、アスファルトという素材自体が水を通さない性質を持っており、複数層を重ねることで防水性能がさらに高まります。台風や豪雨などの過酷な気象条件下でも、高い防水性能を維持できます。

メリット
  • 耐用年数が非常に長い(15〜30年)
  • 防水性能が極めて高い
  • 長期的な実績と信頼性がある
  • 押えコンクリート仕上げが可能
  • メンテナンス頻度が少ない

一方で、アスファルト防水には独特のデメリットもあります。まず、防水層に重量があるため、建物への負荷が大きくなります。

そのため、耐震性の高い鉄筋コンクリート造のビルやマンションでの採用が中心となり、一般的な木造住宅には向いていません。

また、施工時に熱を使用する工法では、アスファルト特有の匂いや煙が発生します。

近隣住民への事前説明が必要となり、住宅密集地では施工が難しい場合もあります。さらに、高度な技術を要する工法であるため、対応できる業者が限られるという点も考慮が必要です。

デメリット
  • 重量があり建物への負担が大きい
  • 木造住宅には不向き
  • 施工時に匂いや煙が発生する(工法による)
  • 施工可能な業者が限られる
  • 初期コストが比較的高い

アスファルト防水には、主に3つの工法があります。

熱工法は、最も伝統的な工法です。200〜270℃の高温でアスファルトを溶かし、これを接着剤としてルーフィングシートを貼り重ねていきます。

非常に高い防水性能を発揮しますが、溶融釜という大型設備が必要なため広い場所でないと施工できません。また、高温のアスファルトから匂いと煙が発生するため、近隣への配慮が必要です。

トーチ工法は、現在のアスファルト防水の主流となっている工法です。裏面にアスファルトが塗布された改質アスファルトシートを、トーチバーナーで炙りながら貼り付けていきます。

熱工法のような大型設備が不要で、比較的狭い場所でも施工が可能です。匂いや煙の発生も熱工法より少なく抑えられます。ただし、高温のバーナーを扱うため、高度な技術力が必要です。

常温粘着工法(冷工法)は、熱を使わずに施工できる工法です。裏面に粘着層が施された改質アスファルトシートを貼り付けていくため、匂いや煙がほとんど発生しません。

住宅密集地でも施工しやすく、環境に配慮した工法といえます。ただし、他の2工法と比べて使用するシートの枚数が多くなり、防水層の重量が増すため、建物の耐久性を十分に確認する必要があります。

アスファルト防水は、ビルやマンションの屋上、駐車場の屋根など、大規模で高い耐久性が求められる場所で採用されています。費用相場は1㎡あたり5,000〜8,000円程度ですが、工法や仕様によって幅があります。

防水工事の費用相場

防水工事の費用は、選択する工法、施工面積、建物の状態、地域などによって大きく変動します。

ここでは、一般的な費用相場をご紹介しますので、予算計画の参考にしてください。

工法1㎡あたりの単価10㎡での総額目安30㎡での総額目安
ウレタン防水5,000〜7,500円5万〜10万円15万〜25万円
FRP防水6,000〜8,500円6万〜10万円18万〜28万円
シート防水4,000〜7,500円4万〜9万円12万〜25万円
アスファルト防水5,000〜8,000円5万〜10万円15万〜28万円

上記の単価には、一般的に以下の作業費用が含まれています。

  • 高圧洗浄による下地清掃
  • 下地補修(軽微なひび割れ補修など)
  • プライマー塗布(下地と防水材の密着性を高める下塗り材)
  • 防水材の施工
  • トップコート塗布(防水層を保護する仕上げ材)
  • 養生・清掃

ただし、以下のような状況では追加費用が発生する可能性があります。

  • 既存防水層の撤去が必要な場合:1㎡あたり1,000〜3,000円程度
  • 下地の大規模な補修が必要な場合:状況により数万円〜数十万円
  • ドレン(排水口)の交換が必要な場合:1箇所あたり1万〜3万円程度
  • 脱気筒の設置が必要な場合(通気緩衝工法):1本あたり5,000〜1万円程度
  • 笠木やパラペットの補修が必要な場合:状況により数万円〜
  • 足場の設置が必要な場合:1㎡あたり700〜1,000円程度

費用を抑えるためには、複数の業者から相見積もりを取ることが重要です。

3〜5社程度から見積もりを取り、価格だけでなく、施工内容や使用材料、保証内容なども比較検討しましょう。

極端に安い見積もりは、必要な工程が省かれている可能性があるため注意が必要です。

また、防水工事と外壁塗装や屋根工事を同時に行うことで、足場代を共有でき、トータルコストを抑えられる場合があります。

建物全体のメンテナンス計画を立てる際は、こうした同時施工の可能性も検討してみましょう。

防水工事の期間と施工の流れ

防水工事にかかる期間は、選択する工法や施工面積、建物の状態、天候などによって変わります。

一般的な工期の目安を知っておくことで、生活への影響を最小限に抑える計画が立てられます。

工法標準的な工期天候の影響
ウレタン防水3〜7日受けやすい(乾燥時間が必要)
FRP防水1〜3日受けやすい(硬化時間が必要)
シート防水3〜7日比較的受けにくい
アスファルト防水5〜10日やや受けやすい

防水工事の基本的な施工の流れは、以下のステップで進行します。

  1. STEP

    現地調査と見積もり

    業者が現地を訪問し、施工箇所の状態を詳しく調査します。

    • 既存の防水層の劣化状況
    • 下地のひび割れの有無
    • 排水設備の状態

    この段階で詳細な見積もりが作成されます。

  2. STEP

    近隣への挨拶と養生

    工事開始前に、業者が近隣住民へ工事の説明と挨拶を行います。

    工事期間や作業時間、騒音や匂いの発生可能性などを事前に伝えることで、トラブルを防ぎます。

    施工箇所周辺には養生シートを設置し、汚れや飛散を防ぎます。

  3. STEP

    既存防水層の撤去・高圧洗浄

    必要に応じて既存の防水層を撤去します。

    撤去が不要な場合は、高圧洗浄機で表面の汚れ、苔、藻などを徹底的に洗い流します。

    この清掃作業が不十分だと、新しい防水層の密着性が低下するため、非常に重要な工程です。

  4. STEP

    下地補修

    ひび割れや欠損部分をモルタルやシーリング材で補修します。

    下地が不安定な状態では防水層がしっかり密着せず、早期劣化の原因となるため、丁寧な補修が求められます。

  5. STEP

    プライマー塗布

    下地と防水材の密着性を高めるため、プライマー(下塗り材)を塗布します。

    このプライマーが乾燥するまで待つ必要があり、天候によっては翌日まで作業が持ち越されることもあります。

  6. STEP

    防水層の施工

    選択した工法に応じて、防水層を形成します。

    • ウレタン防水であれば複数回塗り重ね
    • FRP防水であればガラス繊維マットと樹脂を施工
    • シート防水であればシートを貼り付け
    • アスファルト防水であればルーフィングを積層

    各工法とも、この段階が最も重要で時間のかかる工程です。

  7. STEP

    トップコート塗布

    防水層を紫外線や摩耗から保護するため、仕上げとしてトップコートを塗布します。

    このトップコートは定期的に塗り替えることで、防水層の寿命を延ばすことができます。

  8. STEP

    最終確認・清掃

    施工箇所全体を確認し、塗り残しや不具合がないかチェックします。

    排水テストを行い、水がきちんと排水口に流れることを確認します。

    その後、養生を撤去し、周辺を清掃して工事完了となります。

工事期間中、ベランダでの洗濯物干しができなくなったり、屋上への立ち入りが制限されたりします。

生活への影響を考慮し、事前に業者と工程を確認しておくことをおすすめします。

防水工事が必要なサインと最適なタイミング

防水工事は、劣化症状が現れてから慌てて行うのではなく、適切なタイミングで計画的に実施することが理想的です。

早期発見・早期対応により、建物へのダメージを最小限に抑え、工事費用も抑えることができます。

こんな症状が見られたら要注意

以下のような症状が見られた場合は、防水層の劣化が進行しているサインです。

放置すると雨漏りに発展する可能性が高いため、早めに専門業者による点検を受けることをおすすめします。

色褪せ・チョーキング現象

防水層の表面が色褪せ、手で触ると白い粉が付着する状態を「チョーキング現象」といいます。

これはトップコートが紫外線によって劣化し、表面が粉状になっている状態です。

防水層自体がまだ健全であれば、トップコートの塗り替えだけで対応できる場合もあります。

緊急性は高くありませんが、そのまま放置すると防水層本体の劣化が進行します。

ひび割れ・膨れ・浮き

防水層にひび割れが発生している場合、そこから雨水が侵入するリスクが非常に高い状態です。

特に、ひび割れの幅が広く、下地が見えているような状態は要注意です。

膨れは、防水層の内部に水分が侵入し、その水分が蒸発する際に防水層を押し上げることで発生します。

膨れた部分は内部に水が溜まっている状態であり、すでに防水機能が失われています。

放置すると膨れが破裂し、そこから大量の雨水が侵入する可能性があります。

シート防水で見られる「浮き」も同様に危険な状態です。

シートが下地から剥がれて浮いている部分は、すでに防水機能を失っており、早急な補修が必要です。

これらの症状が見られた場合、緊急性が高く、できるだけ早く防水工事を行うべきです。

水漏れ・水たまりができる

雨が降った後、ベランダや屋上に水たまりができ、なかなか乾かない場合は、排水機能に問題があるか、防水層が劣化している可能性があります。

水たまりができる箇所は常に水分にさらされるため、防水層の劣化が加速します。

室内に雨漏りが発生している場合は、すでに防水層が完全に機能を失っている状態です。

この段階では、防水工事だけでなく、内部の建材の腐食や劣化も進行している可能性が高く、修繕費用が大幅に増加します。

雨漏りが確認されたら、直ちに専門業者に調査を依頼しましょう。

パラペット・笠木の劣化

屋上の外周部にある立ち上がり壁(パラペット)や、その上部に取り付けられている仕上げ材(笠木)の劣化も見逃せません。

笠木が浮いていたり、パラペットとの間に隙間ができていたりすると、そこから雨水が建物内部に侵入します。

笠木の内部に水が入り込むと、金属製の笠木であれば錆びて穴が開き、パラペット内部のコンクリートや防水層も劣化します。

パラペット部分からの雨漏りは発見が遅れやすく、気づいたときには大規模な補修が必要になることも少なくありません。

これらの劣化症状を定期的にチェックし、早期発見することで、大きなトラブルを未然に防ぐことができます。

防水工事に適した季節

防水工事は天候に大きく左右される工事です。

最適な時期を選ぶことで、工期の遅延を防ぎ、施工品質を高めることができます。

春(3月〜5月)と秋(9月〜11月)がおすすめ

春と秋は、気温が安定し、降雨量も比較的少ないため、防水工事に最も適した季節です。

ウレタン防水やFRP防水など、塗膜系の防水工事では乾燥時間が必要ですが、春秋の穏やかな気候であれば計画通りに工事を進めやすくなります。

また、真夏や真冬と比べて作業環境が良好なため、職人が丁寧な施工を行いやすく、仕上がりの品質も安定します。

ただし、春は梅雨前、秋は台風シーズン前後という時期でもあるため、天気予報をよく確認しながらスケジュールを組む必要があります。

夏(6月〜8月)の注意点

梅雨時期は降雨日が多いため、工事が中断されやすく、工期が延びる可能性があります。

特に塗膜系の防水工事は雨の日には施工できないため、梅雨時期は避けるのが無難です。

梅雨明け後の夏場は、晴天が続きやすく施工しやすいというメリットがあります。乾燥時間も短縮されるため、工期を短くできる可能性があります。

ただし、真夏の猛暑日は作業員の体調管理が課題となり、作業効率が下がることもあります。

冬(12月〜2月)の注意点

冬場は気温が低いため、塗膜系防水材の乾燥・硬化に時間がかかります。

特に気温が5℃以下になると、ウレタン樹脂やFRP樹脂が正常に硬化しない可能性があり、施工不良のリスクが高まります。

また、降雪地域では積雪により工事が中断されることもあります。

一方で、冬場は業者の繁忙期を外れるため、工事費用の値引き交渉がしやすかったり、希望の日程で予約が取りやすかったりするというメリットもあります。

いずれにしても、季節だけで判断するのではなく、建物の状態を優先すべきです。

劣化症状が深刻な場合は、季節を問わず早急に対応することが重要です。

業者と相談しながら、最適な施工時期を決定しましょう。

防水工事は新築から何年で必要?

新築時には必ず防水工事が施されていますが、経年劣化により防水性能は徐々に低下していきます。

適切なタイミングでメンテナンスを行うことで、建物を長期間良好な状態に保つことができます。

工法耐用年数トップコート塗り替え目安
ウレタン防水10〜15年5年ごと
FRP防水10〜12年5年ごと
シート防水12〜18年必要に応じて
アスファルト防水15〜30年押えコンクリート仕上げの場合は不要

上記の耐用年数は、あくまで標準的な目安です。

実際の寿命は、建物の立地条件(日当たり、風の強さなど)、使用頻度、メンテナンスの実施状況などによって大きく変わります。

5年目:トップコートの塗り替え時期

防水層を保護しているトップコートは、紫外線や雨風の影響を直接受けるため、約5年で劣化します。

この時期にトップコートを塗り替えることで、防水層本体を保護し、耐用年数を延ばすことができます。

トップコートの塗り替えは、防水層全体を作り直す工事と比べて費用が大幅に抑えられます。

1㎡あたり1,000〜2,000円程度が相場で、10㎡のベランダであれば総額2万〜3万円程度です。

この小さな投資が、将来の大規模修繕を防ぐことにつながります。

10年目:大規模メンテナンスの検討時期

新築から10年が経過すると、多くの防水工法で耐用年数の中間地点を迎えます。

この時期には、専門業者による詳細な点検を受けることを強くおすすめします。

点検の結果、防水層にひび割れや膨れなどの劣化症状が見られる場合は、部分補修または全面的な防水工事を検討する必要があります。

症状が軽微であれば部分補修で対応できることもありますが、劣化が広範囲に及んでいる場合は、防水層全体を作り直す工事が必要です。

また、10年目は住宅ローン減税や各種保証の節目でもあります。

この時期に外壁塗装や屋根のメンテナンスも同時に検討し、建物全体の修繕計画を立てることで、トータルコストを抑えられる可能性があります。

定期点検の重要性

防水工事の寿命を最大限に延ばすためには、年に1〜2回の定期的な自己点検が効果的です。

雨が降った後にベランダや屋上を確認し、水たまりの有無、ひび割れの発生、排水口の詰まりなどをチェックしましょう。

また、台風や地震など、建物に大きな負荷がかかる自然災害の後には、必ず点検を行うことをおすすめします。目に見える変化がなくても、内部で損傷が発生している可能性があるためです。

異常を発見したら、自己判断で補修を試みるのではなく、専門業者に相談しましょう。

不適切な補修は、かえって状態を悪化させることがあります。

防水工事業者の選び方

防水工事の品質は、業者の技術力と誠実さに大きく左右されます。

信頼できる業者を選ぶことが、長期的に建物を守る第一歩です。

確認すべき5つのチェックポイント

業者選びで失敗しないためには、以下の5つのポイントを必ず確認しましょう。

施工実績の豊富さ

防水工事の実績が豊富な業者は、様々な建物の状態に対応できるノウハウを持っています。

業者のウェブサイトやパンフレットで、過去の施工事例を確認しましょう。

特に、あなたの建物と同じタイプ(戸建て、マンション、ビルなど)での実績があるかが重要です。

また、施工事例の写真だけでなく、どのような課題があり、どう解決したかという説明が詳しく記載されている業者は、技術力と説明力の両方を備えていると判断できます。

防水施工技能士などの資格保有

「防水施工技能士」は、国が認定する防水工事の専門資格です。1級と2級があり、1級はより高度な技術と知識を証明するものです。

この資格を持つ職人が在籍している業者は、一定の技術水準が担保されていると考えられます。

見積もり時や問い合わせ時に、「防水施工技能士の資格を持った職人さんはいますか?」と直接尋ねてみましょう。

資格保有者の人数や、実際にあなたの工事を担当するのが資格保有者かどうかも確認できると安心です。

自社施工かどうか

防水工事を受注した会社が実際に施工するのか、それとも下請け業者に丸投げするのかは、重要なポイントです。下請けに出す場合、中間マージンが発生し、その分工事費用が高くなります。

また、依頼主と実際の施工者との間に距離ができるため、細かい要望が伝わりにくくなる可能性もあります。

自社施工の業者であれば、見積もりを出した担当者と施工する職人が同じ会社に所属しているため、コミュニケーションがスムーズです。

何か問題が発生した際の対応も迅速に行われやすいでしょう。

見積もりの透明性

信頼できる業者は、見積もりの内訳を明確に提示します。

「防水工事一式 ○○万円」というような曖昧な表記ではなく、「高圧洗浄 ○○円/㎡」「下地補修 ○○円」「ウレタン防水材施工 ○○円/㎡」「トップコート塗布 ○○円/㎡」と、各工程の費用が詳細に記載されているかを確認しましょう。

また、使用する材料のメーカー名や製品名が明記されているかも重要です。

「ウレタン防水材」とだけ書かれていても、品質の良い製品なのか判断できません。

具体的な製品名があれば、自分でもインターネットで調べて、その製品の評判や性能を確認できます。

アフターフォロー・保証内容

防水工事後の保証内容は、業者によって大きく異なります。

一般的には5〜10年程度の保証が付きますが、保証の範囲(施工不良のみか、自然劣化も含むか)、保証期間中の定期点検の有無、万が一のトラブル時の対応方法などを詳しく確認しましょう。

また、「瑕疵保険」に加入している業者かどうかも重要なポイントです。

瑕疵保険とは、工事に欠陥があった場合に、第三者機関が補償してくれる保険です。

万が一、施工業者が倒産してしまった場合でも、保険から修繕費用が支払われるため、長期的な安心感が得られます。

見積もりで注意すべき項目

複数の業者から見積もりを取った際、以下の点に注意して比較しましょう。

適正価格の見極め方

一般的に、3〜5社から見積もりを取ると、適正価格の範囲が見えてきます。

極端に安い見積もりや、逆に高すぎる見積もりには注意が必要です。

極端に安い見積もりの場合、必要な工程が省略されていたり、安価な材料が使用されていたりする可能性があります。

例えば、本来必要な下地補修が含まれていない、トップコートの塗布が1回しか予定されていない、といったケースです。

安さに飛びついて契約すると、工事後すぐに不具合が発生し、結局高くつくことになりかねません。

逆に、相場よりも大幅に高い見積もりの場合も、その理由を確認しましょう。

使用する材料が特別高品質なものであったり、特殊な工法が必要であったりする合理的な理由があれば問題ありませんが、単に会社の利益率が高いだけという可能性もあります。

「一式」表記に注意

「防水工事一式」「付帯工事一式」といった表記が多い見積もりは、内容が不透明で比較しづらくなります。

何が含まれているのか、どの作業にいくらかかるのかが分からないため、後から追加費用を請求されるリスクもあります。

見積もりに「一式」表記が多い場合は、業者に対して「この一式の中には具体的にどのような作業が含まれていますか?」と質問し、詳細な内訳を求めましょう。

誠実な業者であれば、きちんと説明してくれるはずです。

追加費用の確認

見積もり時点では予測できなかった問題が、工事中に発覚することがあります。

例えば、防水層を剥がしてみたら下地の劣化が予想以上に進んでいた、というケースです。

契約前に、「工事中に追加工事が必要になった場合はどうなりますか?」と確認しておきましょう。

信頼できる業者であれば、「追加工事が必要な場合は、事前にご説明して承諾をいただいてから作業します」と答えるはずです。

勝手に追加工事を行って、後から高額な追加費用を請求されることがないよう、事前の取り決めが重要です。

悪徳業者を見抜くポイント

残念ながら、防水工事の業界にも悪質な業者が存在します。

以下のような特徴が見られた場合は、契約を避けるべきサインです。

極端な値引きを提示する

「今日契約してくれたら半額にします」「今月中なら特別に○○万円値引きします」といった、極端な値引きを提示してくる業者は要注意です。

適正な利益を確保しながら質の高い工事を行うためには、大幅な値引きは本来できないはずです。

こうした値引きの裏には、最初から高めの見積もりを出しておいて値引きしたように見せかける、あるいは値引き分の質を下げた手抜き工事を行う、といった悪質な手法が隠れている可能性があります。

契約を急かす

「今すぐ工事しないと大変なことになります」「他のお客様も待っているので、今日中に決めてください」といった言葉で契約を急かす業者も危険です。

確かに劣化が進んでいる建物では早めの対応が必要ですが、それでも数日考える時間がないほど緊急性の高いケースは稀です。

適切な業者は、顧客がじっくり検討する時間を尊重します。

複数の業者から見積もりを取って比較検討することは当然の権利であり、それを妨げようとする業者は避けるべきです。

会社情報や実績が不明確

会社の所在地や電話番号が明確でない、ウェブサイトがない、または内容が乏しい、過去の施工実績を示せない、といった業者は信頼性に欠けます。

万が一トラブルが発生した際に、連絡が取れなくなるリスクがあります。

また、飛び込み営業で「近くで工事をしていたら、お宅の屋根が気になったので」と訪問してくる業者にも注意が必要です。

すべてが悪質とは限りませんが、このような営業手法を取る業者には、後日改めて会社情報をしっかり確認してから判断することをおすすめします。

防水工事は建物の寿命を左右する重要な工事です。

価格だけで判断せず、技術力、誠実さ、アフターフォローの充実度を総合的に評価して、信頼できる業者を選びましょう。

【施工事例】新東亜工業が実際に行った防水工事

実際の施工事例を通じて、防水工事の具体的な内容や効果をご紹介します。

ここでは、新東亜工業が手がけた3つの代表的な事例を取り上げ、それぞれの現場で直面した課題や採用した工法、施工期間、費用などを詳しく解説します。

実際の施工事例を知ることで、ご自身の建物に必要な防水工事のイメージが具体的に描けるはずです。

施工事例1:東京都足立区にあるマンションの防水工事

東京都足立区に位置するマンションでは、屋上からの雨水侵入リスクが高まったことから、建物の長寿命化を目的とした防水改修工事を実施しました。

この現場では、室内から屋上へのアクセスが不可能という特殊な制約条件がありましたが、外部から直接昇降できる仮設足場を設置することで、安全かつ効率的な施工体制を構築しました。

施工の概要

項目内容
所在地東京都足立区
建物種類マンション
施工箇所3階屋上および最上階屋上
防水工法ウレタン塗膜防水(密着工法)
施工期間6日間
工事金額104万円

採用した工法と特徴

防水工事の核となる工法には、ウレタン塗膜防水の密着工法を採用しています。

液状のウレタン樹脂を塗布して連続的な防水層を形成するこの工法は、複雑な形状や勾配にもなじみやすく、建物の隅々まで一体化した防水性能を発揮します。

密着工法は既存の下地が良好な状態であれば、大がかりな撤去作業を行わずに施工できるため、工期を短縮しつつ費用面でも無駄を抑えることが可能です。

さらに、防水の要となる笠木ジョイント部には、ブリッジシール工法を適用しました。

笠木とは外壁上部の仕上げ材のことで、そのジョイント部分は微細な動きが生じやすい箇所です。

ブリッジシール工法は、こうした動きにも対応できる柔軟性を持ち、水密性と耐久性を両立する信頼性の高いディテール処理技術です。

施工によって得られた効果

この施工により実現した主な効果は以下の通りです。

得られた効果
  • 外部からの水の侵入を完全に遮断し、建物内部の構造材や内装材の劣化を未然に防止
  • 短期間(6日間)での施工完了により、居住者への負担を最小限に軽減
  • 今後のメンテナンス負担を軽減し、安心して住み続けられる環境を整備
  • 室内アクセス不可という制約条件を仮設足場の工夫で克服し、効率的な施工を実現

密着工法は既存下地の状態が良好であれば撤去作業が不要なため、工期と費用の両面で効率的な選択肢となります。

マンションのような集合住宅では、居住者の生活への影響を最小限に抑えながら確実な防水性能を確保することが求められるため、この事例のような計画的な施工が重要です。

▶参考元:【個人オーナー様】東京都足立区マンション 防水工事 費用公開

施工事例2:埼玉県富士見市にある戸建て住宅の防水工事

埼玉県富士見市に所在する戸建て住宅では、屋上の防水性能を高めるための防水工事を8日間にわたって実施しました。

既存のシート防水が劣化していたため、まずすべてを撤去し、劣化箇所をしっかりと確認する作業から始めました。

さらに、屋上周囲に設置されているアルミ笠木を一時的に取り外すことで、より精密な防水処理を可能にしました。

施工の概要

項目内容
所在地埼玉県富士見市
建物種類戸建て住宅
施工箇所屋上全面
防水工法ウレタン塗膜防水(通気緩衝工法)
施工期間8日間
工事金額160万円

採用した工法と特徴

この現場で採用したのは、ウレタン塗膜防水の通気緩衝工法です。

通気緩衝工法は、下地の湿気を効率的に逃がしながら、防水層を均一かつ強靭に形成できる最新の防水技術です。

特に戸建て住宅のような木造建築においては、躯体への負荷を軽減しつつ高い防水性を実現できるため、非常に有効な工法として評価されています。

通気緩衝工法の最大の特徴は、下地と防水層の間に通気層を設けることで、建物内部の湿気を効率的に排出できる点です。

これにより、防水層の膨れや剥離といったトラブルを防ぎ、長期的に安定した防水性能を維持できます。

特に木造住宅では、湿気による躯体の劣化が深刻な問題となるため、この工法の採用は建物の寿命を大きく延ばす効果があります。

施工の流れと工夫したポイント

施工の手順と特徴は以下の通りです。

工夫したポイント
  • 既存のシート防水を完全撤去し、下地の状態を詳細に確認
  • アルミ笠木を一時的に取り外し、防水処理の精度を向上
  • 仮防水材を塗布し、工事中の雨天にも対応できる準備を実施
  • 通気緩衝工法により、下地の湿気を逃がしながら強靭な防水層を形成
  • アルミ笠木のジョイント部分にブリッジシールを施し、接合部からの漏水を徹底防止

また、細部へのこだわりとして、アルミ笠木のジョイント部分には専用のブリッジシールを施工しました。

笠木は外壁と屋上の境界部分に設置される重要な部材であり、そのジョイント部分は建物の動きによって隙間が生じやすい箇所です。

ブリッジシールによる処理は、こうした微細な動きにも追従し、長期的な水密性を確保します。

▶参考元:【個人様】埼玉県富士見市戸建て 屋上防水工事 費用公開

施工事例3:東京都港区にある倉庫の防水工事

東京都港区に所在する倉庫では、老朽化が進んでいた塔屋部分の防水性能を回復させるため、10日間にわたる防水工事を実施しました。

限られた範囲での施工ながらも、建物の保全において極めて重要な工程となる防水処理を、専門的な知見と確かな技術力で対応しました。

施工の概要

項目内容
所在地東京都港区
建物種類倉庫
施工箇所塔屋部分、3階三角庇
防水工法ウレタン塗膜防水(密着工法)
施工期間10日間
工事金額68万円

採用した工法と足場の工夫

作業の安全性と効率性を考慮し、仮設足場は建物の2面のみに設置しました。

これは3階の三角庇部分の塗装と屋上への作業導線確保を目的としたもので、無駄を省いた合理的な施工計画によって、コストと工期を最適化しています。

全面足場を組むのではなく、必要最小限の範囲に絞った部分足場の採用は、限られた施工範囲に対してコストパフォーマンスの高い選択肢となります。

ウレタン塗膜防水の密着工法は、下地と防水層を直接密着させる工法であり、比較的狭い面積や複雑な形状に対しても柔軟に対応できるのが特徴です。

塔屋のような高所かつ部分的な施工対象には最適な選択であり、施工性に優れながらも確実な防水層を形成できます。

施工の流れとポイント

施工の流れと採用した工法の特徴は以下の通りです。

工事のポイント
  • 仮設足場を建物の2面のみに設置し、コストと安全性を両立
  • 高圧洗浄により、蓄積された汚れや劣化塗膜をしっかり除去
  • 塔屋部分にウレタン塗膜防水の密着工法を採用し、下地と防水層を一体化
  • 狭い面積や複雑な形状にも柔軟に対応できる施工性を活用
  • 必要最小限の範囲に絞った精密な施工により、コストパフォーマンスと耐久性を実現

防水工事に先立って実施した高圧洗浄は、防水材の密着性を高めるために欠かせない工程です。

長年蓄積された汚れや劣化した旧塗膜をしっかりと除去することで、新しい防水層が下地にしっかりと密着し、施工後の耐久性向上にもつながります。

この工事によって、塔屋からの漏水リスクを大幅に低減し、倉庫全体の防水性能が強化されました。

外装全体を施工することなく、必要最小限の範囲に絞った精密な施工は、コストパフォーマンスと耐久性の両面で高い効果を発揮します。

▶参考元:【企業様】東京都港区倉庫 防水工事 費用公開

防水工事に関するよくある質問(FAQ)

防水工事について、多くの方から寄せられる質問とその回答をまとめました。

疑問や不安の解消にお役立てください。

Q

建築・建設における防水工事とはなんですか?

A

建築・建設における防水工事とは、建物の屋上、屋根、ベランダ、外壁など、雨水にさらされる部分に防水処理を施し、建物内部への水の侵入を防ぐ工事のことです。

建築物の多くはコンクリートで作られていますが、コンクリートには目に見えない微細な隙間が無数に存在します。

これらの隙間から雨水が侵入すると、内部の鉄筋が錆びたり、木材が腐食したりして、建物の強度が低下します。

防水工事によって建物表面に防水層を形成することで、こうした劣化を防ぎ、建物の寿命を大幅に延ばすことができます。

Q

防水工事のシングル葺きとはなんですか?

A

シングル葺きとは、屋根の仕上げ材の一種である「アスファルトシングル」を使用した屋根材の施工方法のことです。

防水工事の一つとして扱われることもありますが、厳密には屋根材の施工であり、屋上やベランダに施す一般的な防水工事とは異なります。

アスファルトシングルは、ガラス繊維にアスファルトを染み込ませ、表面に石粒を付着させたシート状の屋根材です。

北米で広く普及しており、日本でも輸入住宅や一部の新築住宅で採用されています。軽量で施工しやすく、デザイン性に優れているという特徴があります。

メンテナンスとしては、10〜20年程度で表面の石粒が剥がれたり、シングル材自体が劣化したりするため、部分補修や全面葺き替えが必要になります。

Q

新築を建てる際に防水工事で気をつけるべきポイントはありますか?

A

まず、建物の設計段階から防水を意識することが重要です。

屋上やベランダの排水勾配(水が排水口に向かって流れるための傾斜)が適切に設計されているか、排水口の位置や数が十分か、といった点を確認しましょう。

次に、施工する防水工法の選定です。建物の用途や構造、将来のメンテナンス計画を考慮して、最適な工法を選びましょう。

施工業者の選定も重要です。新築の場合、ハウスメーカーや工務店が一括して防水工事も手配することが多いですが、実際に施工するのは下請けの防水専門業者です。

可能であれば、実際に施工する業者の実績や資格保有状況を確認しておくと安心です。

最後に、引き渡し後の保証内容を必ず確認しましょう。

防水工事に関して何年間の保証が付いているのか、保証範囲は施工不良のみか、自然劣化も含まれるのか、といった詳細を書面で確認し、保管しておくことが大切です。

Q

防水工事の保証期間はどのくらいですか?

A

防水工事の保証期間は、業者や使用する材料、工法によって異なりますが、一般的には5〜10年程度が標準的です。

保証内容は大きく分けて2種類あります。一つは「施工保証」で、これは施工業者の工事に不備があった場合に無償で補修してくれるものです。

例えば、防水層の塗り残しがあった、シートの接合部分が不完全だった、といった施工不良が原因で雨漏りが発生した場合に適用されます。

もう一つは「製品保証」で、これは防水材メーカーが製品の性能を保証するものです。

ただし、製品保証が適用されるためには、メーカーが指定する施工方法を守り、認定施工店による施工が条件となることが多いです。

注意すべき点は、保証期間内であっても、すべてのトラブルが無償で対応されるわけではないことです。

自然災害による損傷、通常の経年劣化、使用者の不適切な使用や管理が原因の場合は、保証の対象外となることがあります。

Q

マンションの防水工事は誰が負担しますか?

A

マンションの防水工事費用の負担者は、施工箇所が共用部分か専有部分かによって異なります。

屋上、外廊下、階段、エントランスなど、住民全員が共同で使用する共用部分の防水工事は、管理組合が修繕積立金から費用を支出します。

各住戸の所有者は、毎月支払っている修繕積立金を通じて、間接的に負担していることになります。

ベランダやバルコニーは、使用権は各住戸の所有者にありますが、法律上は共用部分として扱われることが多いです。そのため、基本的には管理組合が費用を負担します。

ただし、マンションの管理規約によっては、ベランダの防水工事を専有部分の修繕として、各所有者の負担とする場合もあります。

また、所有者の不適切な使用(重量物の設置、排水口の詰まりを放置など)が原因で劣化が進んだ場合は、その所有者が費用を負担することになります。

Q

防水工事をしないとどうなりますか?

A

防水工事を適切な時期に行わず放置すると、建物にさまざまな深刻な問題が発生します。

  • 雨漏りの発生
  • 建物の構造劣化
  • カビや健康被害
  • 資産価値の低下
  • 修繕費用の増大

雨漏りは天井や壁から水が侵入し、家具や家電を濡らすだけでなく、建物自体に深刻なダメージを与えます。

鉄筋は錆びて膨張しコンクリートを破壊し、木材は腐朽とシロアリ被害の原因となり、耐久性が低下します。

また、室内にカビが発生すると健康被害のリスクも高まります。さらに、雨漏り歴のある建物は不動産価値が下がり、売却にも不利です。

防水工事は早期対応のほうが費用を抑えられ、放置すると修繕費が数倍になる可能性があります。

まとめ|防水工事で大切な建物を長く守ろう

防水工事は、建物を雨水から守り、その寿命を大きく左右する重要なメンテナンスです。

本記事でお伝えした内容を、以下のチェックリストでもう一度確認しましょう。

ポイントまとめ
  • 防水工事とは、建物の屋上やベランダに防水層を形成し、雨水の侵入を防ぐ工事
  • 主な工法は、ウレタン防水・FRP防水・シート防水・アスファルト防水の4種類
  • それぞれの工法には特徴があり、建物の状態や使用目的に応じて選ぶことが重要
  • 費用相場は1㎡あたり4,000〜8,500円程度、工法や建物の状態で変動する
  • 耐用年数は10〜30年だが、5年ごとのトップコート塗り替えで長持ちする
  • 色褪せ、ひび割れ、膨れ、水たまりなどの症状が見られたら早めの対応が必要
  • 防水工事に適した季節は春と秋だが、劣化症状が深刻な場合は季節を問わず対応すべき
  • 業者選びでは、施工実績、資格保有、自社施工、見積もりの透明性、保証内容を確認する
  • 極端な値引きや契約を急かす業者は避け、複数社から相見積もりを取る
  • 定期的な点検とメンテナンスが、建物を長期間良好な状態に保つ鍵となる

建物は、私たちの暮らしや仕事を守る大切な財産です。その建物を健全な状態に保つためには、目に見えにくい防水層の状態にも気を配る必要があります。

「まだ大丈夫だろう」と先延ばしにせず、定期的な点検と適切なタイミングでのメンテナンスを心がけましょう。

もし、ご自宅やお持ちの建物で気になる症状が見られたら、まずは信頼できる専門業者に相談してみることをおすすめします。早期発見・早期対応により、大切な建物を末永く守ることができます。

本記事が、あなたの建物を守るための第一歩として、お役に立てれば幸いです。適切な防水工事によって、安心で快適な住環境を維持し、建物の資産価値を守っていきましょう。