シリコン防水で屋根の寿命を延ばせる?特徴・施工・費用まで詳しく解説
2025/11/17
屋根の防水対策として注目されている「シリコン防水」。高い耐候性と防水性を持ちながら、施工費用も比較的リーズナブルな点から、住宅や工場の屋根塗装に幅広く使われています。
特に、日本のように四季があり気候変化の激しい地域では、シリコン防水の性能が活かされやすく、多くの施工事例でその効果が実証されています。
この記事では、シリコン防水の基本知識から、他の防水工法との違い、施工の流れ、費用相場、業者選びのポイントまでを分かりやすく解説します。
これから屋根のメンテナンスや防水リフォームを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
屋根のシリコン防水とは?|基本的な性質と防水性能
シリコン防水は、シリコン樹脂を主成分とした塗膜によって屋根表面を覆い、防水・防湿・耐熱の効果を発揮する工法です。特に紫外線や風雨に強く、屋外の過酷な環境でも長期間安定した性能を維持できるのが特徴です。
その特徴は、ただの「防水」だけにとどまらず、建物自体の劣化を抑える保護材としての役割も果たします。
また、塗装による施工であるため、複雑な形状の屋根にも柔軟に対応可能です。材料の改良も進んでおり、従来より耐久性や美観も高められています。
- 耐候性が高い
紫外線や酸性雨への耐性が強く、色あせ・ひび割れが起きにくいため、長期間美観を維持できます。 - 防水性に優れる
撥水性が高く、雨水の侵入をしっかり防ぎ、雨漏りリスクを低減します。 - 通気性がある
水は通さず湿気を逃す性質で、下地の腐食やカビ発生を防ぎやすい構造になっています。 - 熱に強い
高温下でも変質しにくいため、金属屋根や夏場の直射日光にさらされる屋根にも適用可能です。 - 環境への影響が少ない
揮発性有機化合物(VOC)が少ない製品も多く、環境面にも配慮されています。
これらの性質から、住宅の屋根はもちろん、倉庫や工場の金属屋根、学校施設、アパートの共有部屋根など、幅広い屋根材・施設で採用されています。
他の屋根防水工法と比べたシリコン防水のメリット・デメリット
屋根防水にはさまざまな工法があり、それぞれに適した用途や特性があります。
ここでは、ウレタン防水やシート防水と比較しながら、シリコン防水の特徴やメリット・デメリットについて解説します。
- 工期が短く乾燥も早いため、雨の多い季節でも施工しやすい
- 紫外線に強く、色あせ・チョーキング(白亜化)が起きにくい
- 熱膨張しやすい素材にも対応可能
- 突発的な天候にもある程度対応できる
- トップコートの塗り直しが数年ごとに必要
- 柔軟性に乏しく、動きのある下地には不向きな場合がある
- 密着不良が起こると早期劣化につながる
- 耐摩耗性はそこまで高くないため、人が頻繁に歩く場所には不適
シリコン防水と他工法との比較一覧
| 比較項目 | シリコン防水 | ウレタン防水 | シート防水 |
|---|---|---|---|
| 耐候性 | ◎(高い) | ○(やや高い) | △(やや弱い) |
| 防水性 | ◎ | ◎ | ◎ |
| 施工のしやすさ | ○(乾燥が早い) | ○(複雑な形にも対応) | △(接合に注意) |
| 耐用年数 | 10〜15年 | 10〜13年 | 12〜15年 |
| メンテナンス頻度 | △(定期塗り替え) | △(トップコート再塗装) | △ |
| 費用の目安 | 中程度(後述) | 比較的安価 | やや高め |
| 適用屋根形状 | 勾配屋根向き | 平屋根向きも可 | 平面向きが主 |
これらを踏まえ、自宅の屋根の材質や使用状況に応じて、シリコン防水が適しているかを専門家に相談するのが最も確実です。
シリコン防水が適している屋根の種類とは?
シリコン防水は、すべての屋根に適しているわけではありません。屋根の形状、素材、使用用途などによって適正が変わります。
ここでは、シリコン防水に向いている屋根の例とシリコン防水に向いていない屋根の例を挙げて紹介します。
| 屋根の種類 | 適否 | 備考 |
|---|---|---|
| スレート屋根 | ◎ 適している | 劣化しやすく、塗膜保護による延命効果が高い |
| 折板屋根(鉄板) | ◎ 適している | 継ぎ目が多く、塗膜型防水による一体処理が効果的 |
| トタン屋根 | ◎ 適している | 熱膨張・収縮の影響を受けやすいため、耐熱性の高いシリコン塗料が有効 |
| 既存塗装が劣化した屋根 | ◎ 適している | 屋根葺き替えの前に延命措置として塗布可能 |
| 陸屋根(平らな屋上) | △ 不向き | 勾配がなく水が溜まりやすいため、他の防水工法が適している場合が多い |
| 歩行用途のある屋根 | △ 不向き | 摩耗が激しく、シリコン塗膜では耐えきれないことがある |
| 下地劣化が著しい屋根 | × 不向き | 密着不良のリスクが高く、先に下地補修が必要 |
シリコン防水に向いている屋根の例1.スレート屋根(コロニアル、カラーベストなど)
表面の劣化が進みやすい素材であるスレート屋根は、塗膜での保護が重要です。シリコン塗料を用いることで、耐候性・防水性が向上し、屋根の寿命を延ばせます。
シリコン防水に向いている屋根の例2.折板屋根(金属系で継ぎ目が多い)
金属の重なり部分やビス周辺からの雨水侵入を防ぐ必要がある折板屋根では、継ぎ目を覆えるシリコン防水が効果的です。伸縮性のある塗膜で耐久性も確保できます。
シリコン防水に向いている屋根の例3.トタン屋根
熱による膨張や収縮が起きやすいトタン屋根には、耐熱性に優れたシリコン塗料が適しています。金属の腐食を防ぎつつ、美観も長持ちします。
シリコン防水に向いている屋根の例4.塗装劣化が進んだ既存屋根
既存の塗装が剥がれたり、色あせたりしている屋根でも、シリコン塗料を用いた再塗装で防水性と耐久性を回復させることができます。リフォーム用途にも適しています。
シリコン防水に向いていない屋根の例1.陸屋根(平らな屋上など)
勾配がなく水が溜まりやすい陸屋根では、シリコン塗料ではなくウレタンやシート防水が推奨されます。水はけが悪い環境では不向きです。
シリコン防水に向いていない屋根の例2.歩行用途のある屋根
バルコニーや屋上など人が歩く機会の多い場所では、摩耗に弱いシリコン塗膜は不向きです。摩擦に強い専用の防水工法を選ぶのが望ましいでしょう。
シリコン防水に向いていない屋根の例3.下地の劣化が激しい場合
コンクリートや金属屋根の下地が腐食・破損していると、塗料がうまく密着しません。この場合は防水前に大規模な下地補修が必要です。
シリコン防水は、すべての屋根に適しているわけではありません。屋根の形状、素材、使用用途などによって適正が変わります。以下に、適している屋根・適さない屋根を表形式で整理しました。
また、屋根の勾配が緩すぎる場合も、水が滞留しやすく不向きとされる場合があります。施工前には専門業者による現地調査を依頼し、建物の状況に応じて最適な防水工法を提案してもらうことが重要です。
屋根シリコン防水の費用相場と耐用年数|コストと性能のバランスを理解する
屋根のシリコン防水の導入を検討する際には、初期費用だけでなく、将来的なメンテナンスや耐久性も含めたトータルコストで比較する視点が大切です。
費用と性能のバランスを理解することで、より納得感のある選択ができるようになります。
| 屋根の種類 | 費用相場(㎡単価) | 備考 |
|---|---|---|
| スレート屋根 | 約2,500~3,500円 | 屋根の勾配や下地劣化の程度で変動 |
| 金属屋根 | 約3,000~4,000円 | 錆止め処理や高圧洗浄の範囲で費用加算 |
| 折板屋根 | 約3,000~4,500円 | 継ぎ目やビス部のシーリング費用を含む |
一般的な30〜50㎡の住宅屋根の場合、総額は12万円〜20万円前後が目安です。
ただし、足場の設置や下地補修の範囲によっては追加費用が発生し、10万円以上差が出ることもあります。
外壁塗装など他の工事と同時に行えば、足場費を共有できるためコスト削減に有効です。
- 耐用年数の目安
10〜15年程度(地域の気候や屋根材によって前後) - トップコート再塗装
5〜7年ごとに実施することで、耐候性を維持可能 - 目視点検の推奨頻度
年に1回程度、雨漏りや塗膜劣化の兆候をチェック - 再施工のサイン
ひび割れ・色あせ・チョーキング・苔や藻の付着などが見られたとき
こまめな点検と定期メンテナンスを実施することで、初回施工の耐用年数を超えて長期的な防水性能を維持できます。
屋根シリコン防水の施工手順と注意点|失敗しないためのポイント
屋根のシリコン防水を成功させるには、正しい施工手順を守り、下地処理や環境条件にも十分配慮することが重要です。
シリコンは非常に優れた塗膜防水材ですが、施工の手順や注意点を怠ると性能を十分に発揮できず、逆に早期劣化につながる恐れがあります。
ここでは、一般的な施工の流れと、実務でよくある注意点を具体的に解説します。
- STEP
現地調査・点検
屋根の材質や傾斜、既存防水層の劣化具合、雨漏りの有無などを詳細に確認します。施工方法の可否や、補修箇所の有無を判断するために不可欠な工程です。
- STEP
高圧洗浄
ホコリ・汚れ・藻・カビ・コケなどを徹底的に洗浄し、旧塗膜や油分も除去することで、新しい塗料の密着性を高めます。これを怠ると塗膜剥離の原因になります。
- STEP
下地処理
ケレン(サビや劣化部の除去)、ひび割れ補修、シーリングの打ち替えなどを丁寧に行います。状態によってはモルタルやパテなどでの補修も必要です。
- STEP
プライマー塗布
下地と塗料の密着性を高める専用プライマーを塗布。吸い込みムラが出ないよう、全体に均一な厚みで塗ることが大切です。
- STEP
主材(シリコン塗料)の塗布
ローラーまたはエアレススプレー等を使用し、2回以上に分けて塗布。塗りムラを防ぐため、1回目と2回目で方向を変えて塗るのが一般的です。
- STEP
トップコート仕上げ
耐紫外線・美観維持のための仕上げ塗装。これにより耐久性がさらに向上し、10年以上の保護効果を実現できます。
- 気温・湿度に注意:施工中は気温5〜35℃、湿度85%未満が推奨条件です。高湿度下では乾燥不良が起きやすく、塗膜に膨れ・剥がれが発生する恐れがあります。
- 下地処理の徹底:劣化下地の上にそのまま塗装しても、すぐに剥がれてしまいます。状態に応じた下地補修・素地調整が肝です。
- 乾燥時間の確保:塗り重ね間隔や最終乾燥時間を守らないと、内部に湿気を閉じ込めてしまい、耐久性に大きな悪影響を及ぼします。
- 安全対策の実施:足場設置・飛散防止シート・近隣への配慮など、安全とマナーにも細心の注意が必要です。
屋根のシリコン防水業者の選び方|信頼できる施工会社を見つけるには?
防水工事は一度施工すると10年以上その効果が続く重要な工事です。だからこそ、施工を依頼する業者選びが防水の成功を大きく左右します。
適切な業者を選べば、品質の高い仕上がりと長期的な安心を得ることができます。
ここでは、実際に比較・検討する際に見るべき具体的なポイントを解説します。
- 施工実績を確認
- 有資格者の在籍
- 保証内容の有無
- 見積書の明確さ
- コミュニケーションの丁寧さ
それぞれ詳しく見ていきましょう。
屋根のシリコン防水業者選びポイント1.施工実績を確認
過去にどのような屋根でシリコン防水を行っているかを確認することで、その業者の得意分野や対応力が見えてきます。
ホームページやSNSで施工写真や事例が公開されていれば、仕上がりや対応範囲をイメージしやすくなります。
屋根のシリコン防水業者選びポイント2.有資格者の在籍
国家資格である防水施工技能士や雨漏り診断士、建築士などが在籍している業者は、技術や診断力が高く、施工品質の信頼性が増します。
専門的な知識を持つ職人が工事を担当することで安心して任せられます。
屋根のシリコン防水業者選びポイント3.保証内容の有無
防水工事後の保証がどれだけ付いているかは非常に重要です。5〜10年の施工保証があれば、万が一の不具合にも対応してもらえるため、長期的な安心感につながります。
保証内容は必ず書面で確認しましょう。
屋根のシリコン防水業者選びポイント4.見積書の明確さ
項目が明確に分かれておらず、「一式」だけで表記されている見積書は注意が必要です。
材料費・人件費・諸経費・足場費用などが明細として記載されている業者を選ぶことで、納得感のある契約ができます。
屋根のシリコン防水業者選びポイント5.コミュニケーションの丁寧さ
説明が分かりやすく、質問にも誠実に答えてくれる業者は信頼できます。
専門用語ばかりで理解しづらい説明や、一方的な提案だけの業者は避け、対話を重視する業者を選びましょう。
相見積もりで比較検討を!
1社だけではなく、最低でも2〜3社に見積もり依頼をすることで、金額の妥当性や工法提案の差を比較できます。また、担当者の対応力や説明の分かりやすさからも信頼度を判断できます。
- 見積もり依頼時に現地調査が無料か、有料かも確認すること
- 工事の工程や保証内容を口頭ではなく書面で提示してもらうこと
失敗しない業者選びには「安さ」だけでなく「安心感」と「実績」が大きな判断材料になります。
屋根のシリコン防水に関するよくある質問(FAQ)
屋根のシリコン防水工事を検討している方の中には、「どのくらいの期間で効果が薄れるの?」「天気の悪い日はどうするの?」「施工中に屋根に登れる?」「防水後のメンテナンス方法は?」など、具体的な疑問を持つ方が多くいます。
ここでは、実際に現場でよく尋ねられる質問をもとに、屋根のシリコン防水に関するポイントをQ&A形式でわかりやすく解説します。
Q
シリコン防水は何年くらい持ちますか?
A
使用環境やメンテナンス状況にもよりますが、耐用年数の目安は10〜15年です。トップコートを5〜7年ごとに塗り直すことで、より長く性能を維持できます。
Q
雨が降っている日でも施工は可能ですか?
A
施工は基本的に晴天時に限られます。雨天や高湿度下で施工すると塗膜がうまく定着せず、剥がれやふくれの原因となります。
Q
施工中に屋根へ登っても大丈夫ですか?
A
塗装中や乾燥中の屋根には絶対に登らないようにしましょう。塗膜が傷つくだけでなく、滑って転倒する危険性もあります。
Q
防水施工後のメンテナンスは必要ですか?
A
はい。年に1回程度の目視点検と、5〜7年ごとのトップコート再塗装が推奨されます。これにより劣化の早期発見と寿命延長が可能です。
Q
他の塗料と比べてシリコン防水の強みは何ですか?
A
シリコン防水は耐候性・撥水性・防カビ性に優れ、紫外線や熱への耐性も高い点が強みです。特に金属屋根や高温多湿の地域で効果を発揮します。
まとめ|シリコン防水はコスパ重視の屋根防水に最適
シリコン防水は、塗膜型防水の中でもバランスの取れた性能を持ち、特に住宅や中小規模施設の屋根防水においては定番とも言える工法です。耐候性・防水性・美観保持力に優れ、定期的なメンテナンスを行うことで長期間にわたり屋根を守り続けることが可能です。
ただし、その性能を最大限に引き出すには、正しい施工手順と信頼できる業者の選定が欠かせません。価格の安さに惑わされず、見積り内容や施工体制、保証条件までしっかりと比較した上で依頼先を選ぶことが重要です。
屋根の防水対策を検討している方は、まずは専門業者に相談し、現地調査や見積もりを受けたうえで、シリコン防水が自宅に最適かどうかを判断しましょう。